英国の大学[概要編]

1.英国の大学
  通常、英国の高等教育機関は、国が設立した高等教育基金機関(HEFC:Higher Education Funding Council)から資金の提供を受ける。この意味で英国の大学はほとんどが国立(王立)であるといえるかもしれない。

2.唯一の私立大学
  1974年に英国でたった一校の私立大学(Private University)が設立された。それはバッキンガム大学(University of Buckingham)である(この大学は1992年以降、マーガレットサッチャー女史が名誉学長をつとめている)。学生数も800名程度、英国一小さな大学だ。とはいえ、日本の私立大学とは性質が異なっているようで、すべて授業料で運営されている大学、というのがプライベート大学の特徴らしい(つまり「ひも付き」ではない)。日本のように国立大学(国が設置母体)・私立大学(個人の財団が設置母体)という区別で理解できるようなものではないのだろう。
  この大学、調べてみると結構ユニークだ。まず政府の資金援助を受けていない。つまり運営資金は授業料でまかなっている。授業料は年額£9,996[注]。学位は2年で取得できる。そのために、2年間を4つの学期にわけて(第1学期は1月から始まる)、各学期同じ20週間で講義が行われる(合計80週間)。ということは長期の休暇はない。また、学生10に対して教員1の割合だ。
[注:大学の学費についてはアバディーン大学のページで述べているが、最高£1,025である。]

3.英国の大学数
  実のところこれははっきりしない。というのもあとで触れるように、連邦型大学傘下のカレッジをどのように扱うかによって数が異なるからである。
  ウォルバーハンプトン大学(Univ of Wolverhampton)のホームページには英国の大学の一覧表がある。これによれば、オープンユニバーシティー(Open University:日本の放送大学にあたる)やバッキンガム大学を含めて89大学(University)がリストアップされている。いずれも総合大学である。一方、いわゆる単科大学(College)もまた、日本では大学と呼ばれる。英国でもカレッジは限定された学問領域を教授する大学であるが、地域の総合大学と連携して実質的に学位を授与できる機関をも意味する。これもウォルバーハンプトン大学の資料によれば、67のカレッジがリストアップされている。ということは、日本流にいえば、英国には156の大学があるということができる。しかし、総合大学と単科大学をまとめて扱うことは少ないようである。ユニバーシティーはあくまでもユニバーシティーであってカレッジと同格ではない。

4.大学ビッグバン?
  かつてはポリテクニクス(Polytechnics)といわれた高等教育機関が1992年から改組転換し大学(University)になった。これは1992年の職業訓練および高等教育法(1992 Further and Higher Education Act)によって、一定の条件を満たしているポリテクニクスが大学を名乗ることが認められた(規定された)ためである。これによってUniversityを名乗る大学数は1992年以前のほぼ2倍になった。  

5.英国の大学の分類
  “Education in the UK”(D.Mackinnon & J.Staham,The Open University,1999)によれば、英国の大学は次のように6つに分類できる[pp.98-99]。
(1)伝統のある大学(Ancient univ)
 500年以上の歴史を持つ大学。イングランドではOxford、Cambridgeの2大学、スコットランドではSt Andrew's、Glasgow、AberdeenそしてEdinburghの4大学。
(2)わりと新しい大学または古都型大学('Redbrick' or older civic univ)
 19世紀後半に、工業都市に創設された大学(LeedsやManchesterなど)。
(3)新しい都市型大学(Newer civic univ)
 第二次大戦後に、既存のカレッジからできた大学(NewcastleやLeicesterなど)。
(4)新設大学(New Univ)
 第二次大戦後に新設された大学(KentやStirlingなど)。
(5)先端技術カレッジだった大学(The former Colleges of Advanced Technnology:CATs)
 1964年以降、大学資格を与えられた機関(AstonやStrathclydeなど)。
(6)1992年以降の大学(The post-1992 univ)
 かつてのポリテクニクスすべて、6つのスコットランドのかつての中央教育機関(Central Institutions)[注]およびかつての高等教育に属するカレッジ(Huddersfield、Glasgow Caledonian、Lutonなど)。
[注:1992年以前は、スコットランドには16の中央教育機関があった。これはイングランドやウェールズのポリテクニクスに相当する。そのうちの6つがユニバーシティーに改組転換した。]

6.連邦型大学
  英国には我々を悩ませる大学形態がある。それは、連邦型(Federal)大学である。あとで見るように連邦型大学は、ロンドン大学、マンチェスター大学、ベルファストクイーンズ大学、ウェールズ大学などである(オックスフォード大学やケンブリッジ大学も一見すると連邦型の大学に思われるが、これはこれでまた違う制度のようだ)。これらの大学は、傘下にいくつかの大学やカレッジがあり、傘下のそれぞれの大学が「大学」と同じ権限を持っているのである。日本でも大学の各学部には学部の自治権があるが、学部がその大学を代表することはない(「この大学はこの学部が有名だ」と表現することはある)。この意味で日本にはない制度が連邦型大学である(“The Times Good University Guide 1999”でも97の大学がランク付けされているが、「ロンドン大学」がランク付けされているわけではない。傘下の大学がランク付けされているのである)。

7.修業年限と学位
  大学の学位は、通常ディグリー(Degree)といわれる。学位を取得するためにはフルタイムで3年または4年の勉強が必要である(スコットランド以外3年であるらしい)。学位は、一般に、初等学位(first degrees)と上級学位(higher degrees)に分類できる。日本の学部卒に対して与えられる学位と同じ水準は初等学位で、これは「学士(bachelor)」と呼ばれる。よく見るのはBA(Bachelor of Arts)、BSc(Bachelor of Science)、BEng(Bachelor of Engineering)である。ただスコットランドの伝統校(St Andrew's、Glasgow、AberdeenそしてEdinburgh)では、文系の場合、MA(Master of Arts)を使うから厄介だ。 


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