5.紙幣は3つの銀行が発行(続報)

 小生が所属しているDepartment of Accountancy(会計学部)の掲示板に、Marischal Museum(マーシャル博物館。博物館というより資料館の雰囲気)で行われている“Scottish Banknotes”についての特別展示のポスターが貼ってあった。Marischal Museumは、Marischal College内にある博物館である(ちなみにMarischal CollegeはKing's Collegeと同じように、University of Aberdeenの前身の一つ。ただし、King's Collegeからは遠い。というより、Marischal CollegeはCity centreにあり、King's CollegeはOld Aberdeen地区にある)。9月10日から10月28日まで開催されているとのことで、早速行ってみた。

 結果的には、なぜ複数の銀行が通貨を発行しているかは釈然としなかった。ただスコットランドの銀行と通貨の歴史については多少知ることができた。
 スコットランドで最初に貨幣を発行したのはBank of Scotlandで1695年(ちなみに、Bank of Scotlandの紙幣には「300 years of Service to the Community 1695-1995」と印刷されている)。次はThe Royal Bank of Scotlandで1727年、Clydesdale Bankは1838年であった。この通貨は、最初はEdinburghのみで流通していて、Glasgowでは1749年、Dundeeでは1973年、Perthでは1766年、そしてAberdeenでは1767年になって流通するようになる。そして、この頃がスコットランドの産業革命の時期で、多くの企業(traders)が資金調達の必要性に迫られ、銀行がそれに応えたらしい。

 当初は、銀行間の貨幣の交換はできず、1770年頃から他銀行の貨幣を扱えるようになった。1844・45年法(1844 & 45 legislation、内容は不明)制定以降は新銀行の設立はなかったが、面白いことは、1844・45年法制定以前は、かなり多くの銀行が貨幣を発行していたということである。それが閉鎖に追い込まれたり、合併を繰り返して、第一次世界大戦(1914-18だったっけ?)以前には8つの銀行になり、その後また合併を繰り返して、現在のように3つの銀行が残ったというわけである。どうやら、法律の要件を満たしている限り、どの銀行も貨幣を発行できる土壌があったようだ(このあたりは説明がなかったので類推)。それから、キーワードのような気がするので触れておくが、3つの銀行は、De La Rueによって認められたという。De La Rueは、19世紀初頭から紙幣やコイン、各種カードを発行している会社で、この会社のホームページから得た情報によれば、現在、150カ国以上の国の紙幣を発行し、英国内で22,000台、全世界で600,000台のCD機を設置し、120カ国の中央銀行がDe La Rueの作った施設設備や紙幣を利用しているという。ということは、スコットランドの3つの銀行は、お墨付きを得るためにDe La Rueに紙幣の発行を依頼したようにも考えられる。他方、De La Rueはそれを受けたわけである(全くの邪推。誰かこのあたりの事情を教えて下さい)。なお、トラベラーズ・チェック(T/C)にもThomas De La Rueの文字が印刷されている。

 いずれにしても、認められた銀行から、真正な貨幣が発行されており、それがスコットランドでは3つあるということは事実である。これが疑問の答え(なぜ複数の銀行が通貨を発行しているかという疑問に対する答え)だとすれば、何か釈然としないのもがあるにせよ、「そんなもんかな」と思わざるを得ない。

 もう一つ、面白い発見。日本ではコインには発行年が記されているが紙幣にはない。ところが、こちらの紙幣には、発行年月日が記されている。手元にあるBank of Scotland発行の£20紙幣を見ると・・・「1st APRIL 1998」。これって真正なお金だよね。[14/Sept/1999]






Previous Turn to Top Next