1995年3月

卒業証書の価値

 ご卒業おめでとう。
 学生時代、恩師の一人いわく「大学の卒業証書は、大学が学生に発行した領収書。4年間学費を納付してくれた証としてくれるものだよ。」
 思わずニヤリとするような話。「大学は教育というサービスの提供を行っているわけで、サービスの提供に対する対価は当然必要になる。これが学費というわけだ。」
 なるほど、いわれてみればその通りかもしれない。続けて云う、「しかし領収書というものは、お金を払えばいつでも発行してくれるものだよ。ただ、卒業証書という領収書の価値は、キミたちが決めることになる。そして学費が安いなあと実感できなければ意味がない。受けた教育の価値が高い、学生時代が充実していたと思えれば、学費は安く感じるものだよ。どうかね、キミの場合は。大学からもらった領収書の記載金額は妥当なものかね?」
 皆さんは今、大学時代を振り返って、消費した時間とお金に対して「それ以上のものを手に入れた」と云えるだろうか。この「価値」判断は皆さんにしかできないのである。そして卒業式の今だからこそそれができるのである。卒業生すべてが、それぞれに価値ある卒業証書を手にしたと思っていると願いたいものである。
 なお、蛇足ながら、学費は大学にとって収益ではない。教育に対する前受費用である。これは継続した教育を行うことによって費用化されていく。収益は、皆さんの今後の成長によって認識される。会計理論上、この収益の認識基準はいまだ確立されていない。

おくることば 1994年→1995年→1996年

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