2007年3月

「含み益」たっぷりの資産価値

 ご卒業おめでとうございます。
 昨年の「おくることば」の続きになりますが(誰も読んでないでしょうが)、大学で学ぶということは一種の投資で、豊かな教養と知識を身につけることを通して、将来、投下した金額以上の収入が得られることを想定していると考えることができます。
ところで、企業会計において、2006年3月期決算から土地を含む固定資産に減損会計という制度が適用されました。減損とは、現在使っている土地や建物の価値が将来得られると思われる収入額より少ない状態をいいます。よって減損会計は現在使用している資産価値がそれ以上の収入をもたらさないと判断されるときには、その分を評価して(計算して)資産価値から減らしなさいという会計制度です。
 たとえば、企業が400万円でモノを買う(400万円の投資)といった場合、そのモノが400万円かそれ以上の収入(利益)をもたらすことを想定します。しかし、400万円で買ったモノが400万円以上の収入をもたらさない事態もあります。バブル時代の土地神話は、お金を持っているよりそのお金で土地を買った方が、将来、より多くのお金が入ってくる、ということを前提にして生まれました。400万円で買った土地は将来売るとしたら必ず400万円以上で売れるという前提でしたので、所有するだけで「含み益」が期待できると考えたわけです。ところが、400万円で買った土地が400万円では売れない時代になると、今度は「含み損」が生じます。もし売るとしたら100万円にしかならない土地なのに、いつまでも「これは400万円で買ったんだ」と主張しても明らかに過大評価ですし、それを知っている人は誰も相手にしませんよね。
 さて皆さん。皆さんは知識という無形資産を買いました。将来、その資産を使用して投資額と同額かそれ以上の収入が得られると考えることに間違いはありません。在学中にそれだけの知識を身につけたからです。
 しかし、ここに減損会計の考え方を持ち込むと、減損の兆候(減損が生じている可能性)が見られる場合、つまり、大学で得た知識(資産)が目減りし、投資額に見合わない状態に陥ってしまった場合、資産価値を減らさなければならなくなります。
 ただ、減損の兆候は、絶えず資産価値に目配せしていないと発見できません。卒業後、定期的に減損の兆候が見られないか確認するとともに、知識という無形資産を減らさないよう、いえ、大いに活用して「含み益」たっぷりの資産価値を持つよう自らを高めていってください。
 期待しています。

おくることば 2006年→2007年→2008年

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