2006年3月

会計学で考える身近な事例

ご卒業おめでとうございます。
 今、会計がちょっと話題になっています。山田真哉氏が書いた『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』。サブタイトルは「身近な疑問からはじめる会計学」です。これまでは、どちらかといえばとっつきにくい、あるいはわかりにくい領域と考えられてきた会計学ですが、発行部数が125万部を超えたといいますから、この本のおかげで会計学が身近になったといえるかもしれません(『本体価格は700円でその10%が印税だから山田氏のもうけは・・・』などと考えてはいけませんよ)。
 さて、会計学で考える身近な事例を一つ。
 皆さんが在学中に得たものは何だったでしょうか。
 新しい友人を得た、いい恩師に出会った、恋人ができた等々、在学中に人間関係を豊かにした方が多いでしょう。それはそれで重要なことですが、大学生活の基本には学びがあったと思います。
 大学で学ぶためには学費が必要でした。会計学では、ものごとを二つの側面でとらえるという特徴があります。学費の場合も同じようにとらえることができます。まず学費は、皆さんの手もとから流出したお金です。はやりの言葉でいえばキャッシュ・アウト・フローということになります。この見方をすれば、自分のお金を学費として使ったということになりますね。しかし別の見方をすれば、皆さんが持っていたお金という財産を、知識という財産に変えるための投資額であったと見ることができます。この場合、お金にせよ知識にせよ、財産という点では変わりがありませんので、所有する財産の形態がお金から知識に変わったと考えるわけです。
 もっとも学費=投資額と考えることができても、悩ましい問題は、大学での学びを通して身につけた(であろう)知識という無形財産が投資額に見合っているかどうか、現時点で測定することが難しいことです。いうまでもなく投資は、将来、その金額を回収し、さらにより多くの金額を得ることを期待して行うものです。こればかりは、しばし時間を経過しなければわかりません。
 今日卒業する皆さんが、いつの日かきっと、投資額を回収して余りあるだけの知識を身につけた学生時代だった、と振り返ることができる方ばかりだと信じたいと思います。 

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