2002年3月

対症療法にご注意を!

 あるお医者さんに聞いた話。
 最近、子供がちょっと熱を出しただけであわてて病院に駆け込んで、「とにかく熱冷ましを下さい」という親が増えたそうです。彼によれば、熱が出るというのは、体内の体温調節センター(というのがあるらしい)が、何らかの原因でその働きに狂いを生じさせ、体温を高温に設定してしまうことによるといいます。だいたい熱は細菌などが体内に入ることで高くなるそうですが、普通の人間ならばほっておけば数日で元に戻るようにできているそうです。投薬は、熱の発生原因を突き止めて行うべきものであるにもかかわらず、熱が下がればそれでいいと考える親が多すぎる、と彼は嘆いていました(表現はもっと過激でしたが、こんなめでたい日にはばかられるので割愛)。元来、虚弱体質で薬好き(それでいて医者嫌い)の小生、ニヤニヤ笑いながらこの話を聞きつつも内心冷や汗ものでした。
 このようにすぐに対症療法を望むことは、最近の、子を持つ親だけの発想ではないでしょう。我々を取り巻く社会全体が、いい意味でも悪い意味でも対症療法的な発想に侵されつつあるように思えます。たとえば携帯電話の普及。話したい時に(すぐに)電話する(結果を求める)という発想は、皆さんにとって普通のことでしょう。一事が万事です。しかしこのことは、早く結果を求めるという考え方を蔓延させているのではないかと危惧します。
 さて皆さん、大学での勉強は決して抗生物質のようなものではありません。漢方薬のようにジワジワ効いてくるものです。効果を確かなものにするために最低4年間という服用期間が必要でした。今日卒業される皆さんが、服用上の注意をよく読み、根気よく、たゆまず服用し続けたといえる方たちばかりであることを祈念します。

おくることば 2001年→2002年→2003年

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