19.オーロラ?

  アバディーンは、北緯57度に位置する。札幌が北緯43度なので札幌より遥か北である。雪深く、相当寒いのだろうなと想像しがちだが、これまでに積もるほどの降雪は2回だけだし、それも自然に融けてしまうような雪であるし、冷え込むとはいってもマイナス1度ぐらいである(あくまでもこれまでのところ)。東京や大阪に住んでいる人にとっては、そんな気候でも寒々しいと思うかも知れないが、札幌に住んでいた小生にとって、雪投げ(雪かき)がないだけでもホッとするし(実をいえば雪投げも恋しいのだが)、何より暖かく感じる。

  北緯57度に位置するアバディーンであるがゆえ、日本ではお目にかかれないものが見られることもある。その代表が気象現象である。だいぶ前からうわさに聞いていたのはアバディーンでオーロラ(Northern Lights:aurora)を見ることができるというものだった。果たしてアバディーンでオーロラを見ることができるのか。「最近では見たことはない」というのが知人(いわずと知れたクリスのこと)の答えだったが、クリスは5〜10年前にはオレンジ色のオーロラを見たことがあるといっていたし、アバディーンとオーロラの関係はそれなりに深い。というのも、当地に来て知ったのだが、‘The Northern Lights of Old Aberdeen’という歌があるほどなのだ。Old Aberdeenとは、いうまでもなくアバディーン大学がある一帯を指す。旧市街のことだ。ということは確かにアバディーンでオーロラが見える可能性はあるのである。
  さて、ここで紹介する気象現象もまた、日本では見ることのできない気象現象である。

  上の2枚の写真は、11月30日の午後3時頃、自宅2階の窓から写したものである。写真の下の方が明るくなっている。沈みかけた太陽の残光である。この日は午後からにわか雨があり、強い風が吹いていた。しかし雨が上がると、強い風のせいで雨雲がサーッと流れていった。その後西日が窓に射し込み、まぶしいくらいだった。小生、午後からこの部屋で仕事中であり、考え事をしながら窓越しに外を眺めて目に飛び込んできたのが、この虹色に輝く雲であった。実際には写真で見るほど暗くはなく、青空も残っていたのであるが、何とも幻想的な風景だった。仕事の手を止め、頭の思考も停止して、しばしこのショーを眺めていた。

  ところでこの現象は、Mother Of Pearlというらしい(日本名はわからない。「真珠雲」なんていうのかもしれない)。この現象について情報を得たのは12月2日付の夕刊紙“Independent”の記事によってである(日刊紙を購読していないので情報が遅れたが、たぶん日刊紙にも紹介されたに違いない)。


Independent, 12月2日号に掲載された記事

  記事によれば、11月30日の夕方、北東方向でMother Of Pearl現象が起きたという。この虹色の雲は、強い北西の風が吹いているとき、雲に対して斜めに陽光が当たることによって発生する。この現象は、通常、日没後か日の出前に発生し、スコットランドやノルウェーの空でしか見られないという。記事に出ていたアバディーン気象センターの職員の話「まったくめずらしい。11月30日のような最高のショーはいまだかつて見たことがない。」

 もし、アバディーン気象センターの職員の話が誇張でないとすれば、小生は素晴らしいショーを目撃したことになる。もしかしたら、オーロラと同じほどの希少価値のある現象かもしれないのだ。こんな素晴らしい体験を人に話さずにいられようか・・・。
(というわけで、これもしっかりホームページのネタにしました。)[9/Dec/1999]


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