3.バーグヘッドの井戸(Burghead Well)

  バーグヘッドは、エルギンとフォレスのちょうど中間に位置する、北海に面した漁村である。

  我々は、フォレスでスエノス・ストーンを見て、バーグヘッドに向かった。フォレスからバーグヘッドまでは、B9089からB9013に入って15分、わずか10マイルほどの行程である。

  B9013に入るとそこはバーグヘッドであり、道路の両側にピクト模様をかたどった石が立っていた。左側の石を見るとWelcome to burgheadの文字。右側にはPictish Capitalと刻まれている。「もしかしたらここはピクト人が数多く住んでいた場所かもしれないね」などといいながら町なかに入る。

  町の中は道路をはさんで両側に家並みが続く。
  そのまま車を進めると、道はやがて細くなり、起伏が大きくなる。左右に交差する細い道をいくつかまたいでバーグヘッドの突端に進む(バーグヘッドの町は、バーグヘッド湾の東の突端に広がっている)。このあたりまで来ると、「Burghead Well」と書かれた道標が道案内をしてくれる。やがてバーグヘッドのキングストリート(King Street)に入る(King Streetというのは多くの町にある道路名だ)。キングストリートとはいっても車がかろうじてすれ違えるほどの道で、そのそばの、そこから先は行き止まりという路地の奥に目的地があった。

  路地に車を停め、さらに狭くなった路地を歩く。両手を伸ばせば立ち並んだ家々の壁に届きそうな路地である。その路地をやや下るように歩いて行くと、左手に上に格子のついたドア。それがバーグヘッドの井戸であった。

  残念ながらドアのカギが閉まっていた。よく見ると、このドアのカギは近所の人が管理しているという。「そのカギが必要な人はその管理人の家まで来て下さい。」と地図まで貼ってあった。しかしそのあとに「リーズナブルな時間に来ること」と但し書がしたためられていた。『いったい当地の人にとってリーズナブルな時間とは何曜日の何時頃なのだろう』と思ったが、我々が訪れたのは、日曜日の、しかも正午頃。『日曜日のこんな時間じゃだめだろうな』と勝手に思い込み、ドア越しに井戸をのぞくだけにした。

  井戸というからには、地中にまっすぐに掘られたものを想像するが、ここの井戸は井戸という概念を覆すもので、岩肌を斜めに地中に掘り進んだ、ちょうど竪穴式住居のような形をしていた。ちょうど、カルシュ・アース・ハウスのような作りだ(しかしカルシュ・アース・ハウスよりも規模は大きい)。
  ドア越しに見ると、地中に続く穴はどこまでも続いているように見える(穴の内部の高さは、実際には1.3メートルぐらいらしい)。
  ドア近くの壁にはこの井戸の由来や、そこにあるピクト人が描いたと思われる絵などの説明があった。それを読むと、この竪穴式住居のような造りは、石の階段を通らせて雨水を穴の中に貯めるような構造であるという。しかし説明文のだいたいのところを読むと(というよりだいたいのところしかわからなかったのだが)、実際にはいつの時代に、誰がどのようにこれを使ったのかについては諸説ありそうな気配だ。

  それにしても、この井戸の三方、すぐ近くに民家が建ち並び、ここだけがポッカリと時間を止めた空間のように思えた。


Aberdeen-(A96)[79.7miles]-Sueno's Stone-(B9089-B9013)[10.1miles]-Burghead Well-(B9012)[7.1miles]-St Peter's Kirk-(B9012)[1.7miles]-Duffus Castle-(B9135-A941)[6.9miles]-Spynie palace-(A941-A96)[76.1miles]-Aberdeen[Mileage:183.3miles]

戻る