横断面データ(cross sectionor profile data)というのは,最初に取り上げた自動車産業の主要な企業を対象とした経営データのように,ある時点における複数の対象に関する状況を記録する,あるいは記録したデータのことである。 その利用目的は,対象の項目またはプロパティごとの比較をし,順序付けをしたり,全体に占める割合を計算したりして,対象全体の特徴を把握することにある。
通常に「一覧表」というとき,例えば,都道府県別の労働人口,食品に含まれる栄養素の量,入学試験の成績表など,その一覧表を横断面データとして処理していることが多いので,読者はこのようなデータの処理に慣れていると思われる。この節では,ある企業の人事課における人事考課のための社員データを例にして,棒グラフや円グラフに表すことに止まらず,横断面データの読み方をより深く考えていく。
練習1 : 社員の人事考課【ブック名=社員表】
次の「社員表」のデータを用意する。
ワークシートSheet1のセル範囲A2〜E2に,社員番号,氏名,支店(勤務地),学歴,人件費(給料+諸手当,単位は千円)の各項目の項目名を,そのデータをセル範囲A3〜E12にそれぞれ入力する。
次に,社員を対象とした特別な試験や点検評価の結果を5項目(科目とも呼ぶ)に分けてセル範囲F3〜J12に入力する。
ただし,すべての科目は100点満点で基準化されている。
| A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | L | ||
| 2 | 社員番号 | 氏名 | 支店 | 学歴 | 人件費 | 業績度 | 業務知識 | 積極性 | 責任感 | 協調性 | 単純平均 | |
| 3 | 9304 | 山田太郎 | 東区 | 短大 | 162.5 | 55 | 50 | 80 | 65 | 80 | 66.0 | |
| 4 | 9301 | 渡辺三郎 | 中央区 | 大学 | 187.3 | 60 | 65 | 75 | 55 | 85 | 68.0 | |
| 5 | 9205 | 鈴木 聡 | 東区 | 大学院 | 275.2 | 55 | 75 | 65 | 80 | 75 | 70.0 | |
| 6 | 9202 | 青木博史 | 西区 | 短大 | 174.6 | 70 | 65 | 85 | 70 | 65 | 71.0 | |
| 7 | 9106 | 井上和子 | 中央区 | 大学 | 225.0 | 60 | 75 | 60 | 65 | 70 | 66.0 | |
| 8 | 9103 | 田中一郎 | 東区 | 大学 | 245.8 | 70 | 90 | 70 | 65 | 55 | 70.0 | |
| 9 | 9101 | 池田秋子 | 西区 | 短大 | 265.0 | 75 | 80 | 65 | 75 | 80 | 75.0 | |
| 10 | 9008 | 飯島 匡 | 中央区 | 大学院 | 344.1 | 90 | 85 | 60 | 75 | 60 | 74.0 | |
| 11 | 9002 | 山田邦彦 | 中央区 | 大学 | 321.5 | 90 | 80 | 85 | 85 | 65 | 81.0 | |
| 12 | 9001 | 阿部淳一 | 西区 | 大学 | 372.0 | 80 | 95 | 70 | 75 | 65 | 77.0 |
このデータの各行は社員番号の降順に並んでいる。社員番号のような順序をもつ項目は,各行を元の順番に戻すために必要であり,横断面データの分析には欠かすことができない。全ての列データの先頭に項目名(フィールド名)を付けてあるのでExcelのデータベース機能を利用することができる。 これをデータベースシステムが管理する場合は,システムが各レコードにレコード識別番号を付けるので,ユーザが各行の順番を付ける必要はない。 《教科書� �Excel編 10 章》
さて,これらのデータに基づいて,社員の総合評価(企業では人事考課という)をすることを試みる。 《参考書�─Щ�永祥三『ロータス 1-2-3 による経営財務分析』牧野書店,特に2.3節》
社員の総合評価のためには,人事考課のための試験成績を単純に比べるだけでは不十分であり,5科目の相対的な重みを取入れる等,適切にデータを加工する必要がある。 しかし,ここではそもそも科目の選定に至る考察および各科目100点に基準化してある段階でその加工がなされていると仮定する。 勤務年数の項はないが,その影響については,人件費と業務知識や責任感を評価科目に加えることで考慮されていると考えられる。 当然ながら,総合評価のためには人件費もその要因に加える必要がある。
練習2: 試験の成績を積み重ね棒グラフで表す。
勤務年数と試験の成績の関係を調べたい。そのために,まず,データを人件費の昇順にソート(データベース機能)する。 次に,5科目の点数について下図のような積み重ね棒グラフを作成しなさい。 積み重ね棒グラフに模様(パターン)を付けるには,どれか1つの棒グラフの変更したい部分を右クリックで選択し,〔データ系列の書式設定 (O)…〕→〔パターン〕のページで,〔塗りつぶし効果 (I)…〕→1つのパターンを選んで,〔OK〕ボタンを選ぶ,の順に操作する。
結果(図を重ねて縮小してあるが)を以下に示す。 このグラフから人件費の大小と5科目の合計点は概ね対応しているが,部分的に順位が入れ替わっていることが分る。積み重ね棒グラフはその名の通り構成要素の大きさが示されているので,単に合計点だけで比べる以上の観察ができる。
練習3: RANK関数で順位を求める《教科書�◆В�.1.5節》
業績度(F列)から協調性(J列)までの5つの科目に関して,社員の順位をSheet2に求める。 順位を求めるには,統計関数グループにあるRANK関数を利用する。 以下では,業績度の順位を求める方法を示す。 これはSheet1のデータを別のSheet2で利用する方法の説明も兼ねている。同様にすれば,他の試験科目の順位も得られる。
��Sheet1のデータを社員番号の降順にソートして元の順に戻しておく。Sheet1全体をSheet2に複写して,Sheet2の業績度から協調性までの数値をすべて消す。
��Sheet2で,例えば,山田太郎氏の業績度の順位を求めるためにセルF2を選択し,ツールバーから関数ウィザードを選択する。関数ウィザード1/2のダイアログボックスで,「分類=統計」,「関数名=RANK」を選んで,〔次へ>〕を選択する。
�4愎凜Ε�ザード2/2で,「数値」の入力欄にマウスポインタを置き,Sheet1のセルF3を選択する。数値の入力欄の表示がSheet1!F3になるはずである。 次にTabキーを押すと,マウスポインタが「範囲」の入力欄に移るので,Sheet1のセル範囲F3からF12までを選択する。 範囲の入力欄の表示 Sheet1!F3:F12 を絶対参照の Sheet1!F$3:F$12に変更する。 再びTabキーを押して,「順序」の入力欄には降順を指定するために0(数字のゼロ)を入れる。
�ず埜紊法夢偉� (F) 〕を選択すると,Sheet2のセルF3に山田氏の業績度の順位が”9”と出る。 セルF3の計算式が =RANK(Sheet1!F3, Sheet1!F$3:F$12,0) となっていることを確かめなさい。
��Sheet2でセルF3の式をセル範囲F3〜F12に複写すれば,業績度についてすべて社員の順位が求まる。範囲の入力欄を行番号のみ絶対参照 Sheet1!F$3:F$12にしてある理由を考えなさい。そして他の科目の順位を計算しなさい。
練習4: 総合的な評価(その1)
5科目の点数は定量的な意味よりも比較を相対的に行なう意味合いが強い。試験内容が適切であったかどうかも問題となる。そこで,これらの成績を社員の総合的な評価に利用するために,5科目の得点合計の代わりに,それぞれの順位の合計を計算してみる。(サッカーJリーグの勝ち点による順位やフィギュアスケートの席次点の考え方がこれに近い)
Sheet2で各データ項目に関する順位を求めた結果を見るといくつかの特徴が明らかになってくる。 例えば,給料の高い社員という場合に一般的に考えられることは,業績度と業務知識の評価が良いことであろう。給料の高い社員が順位合計でも上位にあれば,社員の評価が公平に行なわれていると言える。また,社員番号の新しい勤務年数の浅い社員には特に積極性や協調性が求められているのではなかろうか。 次の練習をして,その結果の特徴を読んでこれらの検討を行なう。
練習5: 総合的な評価(その2)
Sheet2の順位データに関して,2.2. (ii)節の「データ検索と抽出」の方法を適用して,業績度と業務知識が共に5位以内の社員を検索しなさい。 また,Sheet2の順位データに関して,積極性と協調性が共に5位以内の社員を検索しなさい。いずれについても,結果を人件費についてソートした方が検討しやすいはずである。
| A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | |
| 2 | 社員番号 | 氏名 | 支店 | 学歴 | 人件費 | 業績度 | 業務知識 | 積極性 | 責任感 | 協調性 | 順位点 | 合計 |
| 3 | 9304 | 山田太郎 | 東区 | 短大 | 162.5 | 9 | 10 | 3 | 7 | 2 | 2 | 31 |
| 4 | 9301 | 渡辺三郎 | 中央区 | 大学 | 187.3 | 7 | 8 | 4 | 10 | 1 | 3 | 30 |
| 5 | 9205 | 鈴木 聡 | 東区 | 大学院 | 275.2 | 9 | 6 | 7 | 2 | 4 | 5 | 28 |
| 6 | 9202 | 青木博史 | 西区 | 短大 | 174.6 | 5 | 8 | 1 | 6 | 6 | 6 | 26 |
| 7 | 9106 | 井上和子 | 中央区 | 大学 | 225.0 | 7 | 6 | 9 | 7 | 5 | 1 | 34 |
| 8 | 9103 | 田中一郎 | 東区 | 大学 | 245.8 | 5 | 2 | 5 | 7 | 10 | 4 | 29 |
| 9 | 9101 | 池田秋子 | 西区 | 短大 | 265.0 | 4 | 4 | 7 | 3 | 2 | 8 | 20 |
| 10 | 9008 | 飯島 匡 | 中央区 | 大学院 | 344.1 | 1 | 3 | 9 | 3 | 9 | 7 | 25 |
| 11 | 9002 | 山田邦彦 | 中央区 | 大学 | 321.5 | 1 | 4 | 1 | 1 | 6 | 10 | 13 |
| 12 | 9001 | 阿部淳一 | 西区 | 大学 | 372.0 | 3 | 1 | 5 | 3 | 6 | 9 | 18 |
練習6 : レーダーチャートで考える
レーダーチャートは,対象の性質を構成する要素のデータを多角形の頂点の位置に対応させ,データの全体的なバランスを表示するのに適している。地方自治体の行政サービス度,企業の経営状況,食品の栄養価などのバランスの表示に有効である。

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