51.神様への贈り物

 アバディーンから戻って早5年。
 多くのことを忘れかけているが、年に2、3回、当時書きつづったホームページを読んでは往時を懐かしんでいる。

 それは9月下旬のことだった。
 Malt Whisky Trailのページをつらつら読んでいるとカーデュで購入したジョニーウォーカー・ブルーラベルのことが書いてある。そのウィスキーは、ブルーの化粧箱に入ったもので、当時、わずか5clしか入っていないものを15.95ポンドもの大枚をはたいて購入したものである。
 帰国後、そのブルーラベルは、開封することなく、化粧箱に入れたまま本箱の一角に飾っていた。

 さて、9月下旬。
 ホームページを読んで、『そういえば、しばらく箱を開けてなかったな』と思い立った小生は、おもむろに化粧箱を手にとって箱を開けた。
 「!!!!!」
 「ナ、ナント!」
 箱の中に収まっていたボトルを手に取ってみると、すぐにその異変に気づいた。

 箱の中から取りだしたボトルには、確かにウィスキーは入っていたのだが、半分近くがなくなっていたのである。
 もちろん開封したわけでもなく、ずっとボトルを立てて保存していたので漏れたわけでもない。
 「うーん、どうしたんだろう?」

 ウィスキーの語源はゲール語Uisge-beatha(ウシュクベーハー) 、つまり「生命の水」といわれるらしい。小生が購入したブルーラベルは、まさに小生にとっての生命の水になるべきものだった。
 それが、すでに半分近くが蒸発している。

 それを見た小生は、「これは、本当においしいお酒なので神様が飲んだんだ」という、勝手な解釈をすることにした。
 もちろん、そんなおいしいお酒であるので、神様にだけ飲ませてあげるわけにはいかない。
 残りは、小生の生命の水となって体内を駆けめぐっていった。
 そしてまた一つ、「アバディーンを知るもの」が「思い出」に変わっていった。

 [31/10/2005]

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