極私的原価計算用語集(原価計算U)

※もっと基本的な用語は、極私的原価計算用語集(原価計算T)を参照してください。

部門別計算
 原価計算の第2段階。

原価部門(cost department)
 個別原価計算上、製造間接費を配賦するために設けられる区分。総合原価計算では工程といわれる。

部門個別費(direct departmental cost)
 特定部門に集計可能な間接費。基準では「賦課」という表現をとっている。これは、直接計算できる(集計できる)、というような意味。

部門共通費(indirect departmental cost)
 特定部門に賦課できず、各部門に配賦しなければならない間接費。部門個別費がお膳に盛りつけられた和食であるとすれば、部門個別費は大皿をみんなで分けて食べる中華料理のようなもの。

製造間接費部門別配賦表
 部門共通費を各部門に配賦し、部門共通費とともに各部門の部門費を集計するための一覧表。結果的に、一定期間の製造間接費総額が、各部門に振り替えられることになる(仕訳を考えればわかる)。
 部門費配分表、部門費集計表などともいわれる。

補助部門費
 文字通り、補助部門に集計された原価。講義では間接費の集計場所として補助部門をとらえた。その部門に賦課された部門個別費と配賦された部門共通費の合計が補助部門費となる。

補助部門費配賦表
 補助部門費を製造部門費に振り替えるための集計表。
 部門費振替表ともいわれる。 

直接配賦法(direct distribution method)
 補助部門費を製造部門に配賦するための方法の一つ。
 補助部門間のサービスの提供を無視して、直接的に補助部門費が製造部門に配賦される。とにかく簡単な計算方法。

階梯式配賦法(step ladder method)
 補助部門費を製造部門に配賦するための方法の一つ。
 補助部門費配賦表の形式が階段状になるように作成される。そのために配賦表作成前にちょっと策を弄しなければならない。つまり、もっとも多くの部門にサービスを提供している部門を一番右端に置いて、次に多くの部門にサービスを提供している部門を配置する。したがって、製造部門にしかサービスの提供をしていない補助部門が左端になる。一部補助部門間のサービスの提供を考慮している点で、直接配賦法に比べて、精緻な方法である。

相互配賦法(reciprocal distribution method)
 補助部門費を製造部門に配賦するための方法の一つ。
 補助部門間のサービスの提供を考慮して補助部門相互で配賦計算を行う。もっともこのままでは補助部門に配賦額が残ってしまうので、補助部門間の配賦が終わったあと、直接配賦法によって製造部門に再配賦を行わなければならない。直接配賦法・階梯式配賦法に比べて、より精緻な方法であるといわれている。

月末仕掛品原価
 →仕掛品原価

平均法による月末仕掛品原価の計算
 月初仕掛品原価と当月製造費用(当月に製造工程に投入したモノの原価)を合計し、これを完成品原価と月末仕掛品原価に分けて計算する方法。完成品の数量と月末仕掛品の数量がわかっていなければならない。

完成品換算数量
 原料費は、工程の最初に投入しその後は投入しないと考えれば、最初に投入したモノの金額が原料費となる。しかし、加工費は、加工の程度によってその金額は徐々に増えていく。たとえば、1,000円の原料を使って製品を製造する場合、原料費は1,000円のまま。しかし、作業員が何時間作業をしたかによって加工費は異なる。製品化のために10時間の作業が必要で、そのときの労務費が2,000円だと仮定すれば、1時間しか作業をしていなければ、200円が加工費、3時間しか作業をしていなければ600円が加工費になる。この200円とか600円という金額は、加工費の完成品原価(2,000円)から見て作業の進み具合を金額であらわしたものであると考えられる。これと同じように考えて、月末仕掛品が完成品の何%完成したのかを数量で表現したものを月末仕掛品完成品換算数量という。加工費のみにかかわる数量。→進捗度

進捗度
 「しんちょくど」と読む。完成品1単位に対する月末仕掛品1単位の原価の負担割合。というと難しいが、月末仕掛品が完成品に比べて何%完成したと考えられるかをあらわす割合。月末仕掛品数量×進捗度=完成品換算数量ということになる。→完成品換算数量

先入先出法による月末仕掛品原価の計算
 製造工程に先に投入したモノから順次完成品になったと考える方法。計算技術的には、月初仕掛品原価はすべて完成品原価を構成することになる。したがって、月末仕掛品原価は、当月製造費用の一部から構成されるため、計算上は当月製造費用だけが対象になる。

後入先出法による月末仕掛品原価の計算
 製造工程に後から投入したモノから順次完成品になったと考える方法。計算技術的には、当月製造費用が月初仕掛品原価に先駆けて完成品原価を構成すると考える。しかし、月初仕掛品数量と月末仕掛品数量との関係から、2種類の計算方法があり、まず、月初仕掛品数量と月末仕掛品数量を比較することが必要になる。たとえば、月初仕掛品数量が10、当月投入量が100、月末仕掛品数量が7である場合(完成品数量は10+100−7=103)、当月投入量はすべて完成品になり、さらに月初仕掛品の一部(3)も完成品になったと「考える」。逆に、月初仕掛品数量が7、当月投入量が100、月末仕掛品数量が10である場合(完成品数量は7+100−10=97)、当月投入量のうち一部(3)が月末仕掛品となり、月初仕掛品はすべて月末仕掛品になると「考える」のである。

仕損費(spoilage cost):総合原価計算
 仕損とは、いわゆる出来損ない、おしゃか。
 総合原価計算における仕損費の処理は、特別に仕損費勘定で処理せずに、完成品や月末仕掛品に負担させて処理することになる。
 たとえば、材料10個(単価5円)で1個の製品を製造すると考える。当月に材料100個を製造工程に投入し、完成品が8個で、月末仕掛品が1個、製造途中での不合格品(完成品として認められないもの)が1個出た場合、不合格品の材料費は10個×5円=50円となる。この50円をどうすればいいかが問題になる。完成品に負担させたり(それだけ完成品原価が大きくなる)、完成品と月末仕掛品に負担させたり、あの手この手で仕損費を吸収しようと考えるわけ。

等級別総合原価計算(class cost system)
 同じ製造原価要素で製品を製造しても、完成品の形状、大きさ、重量が異なる製品を連続生産する製造業に適用される原価計算方法。牛丼屋では、同じ材料等を使って牛丼を作っている。しかし並盛、大盛、特盛などと重量が異なる製品を扱っている。考え方としてはこれを思い出せばいい(でも厳密にいえば、客の注文を受けて牛丼を作るので個別原価計算かな)。

等価係数(equivalent coefficient)
 等級製品の原価の負担割合をあらわす比率。等価係数はその会社が適宜定めることになっている。ただし、その製品の性質を見て妥当なものを選ぶ必要がある。たとえば、重さが100g、200g、300gの等級製品を製造した場合、重さを基準に原価の負担割合を決めようとすれば、1:2:3の割合ということになる。これが等価係数である。

積数
 「せきすう」と読む。等価係数×生産数量で求められる数。各等級製品の積数を加算したものが積数合計。

組別総合原価計算
 同じ製造ラインを使って、複数の異なる製品を製造する場合がある。この場合に適用される原価計算方法。ここでの組は「1組、2組」というような意味ではなく、「製品種類別」という意味。製品ごとに材料の投入割合は決まっているので、ある製品に直接的に集計できる原価(組直接費)は、その組で原価を集計すればよい(個別原価計算と一緒だね)。ポイントは組間接費。→組間接費

組間接費
 組別総合原価計算において、各組に直課できない原価。同じ製造ラインで異なる種類の製品を製造している場合に生じる。たとえば、自動車製造において、同じラインで2種類以上の自動車を製造することがある。それぞれの自動車の材料費は決まっているのでそのまま製品に直課できる。しかし、そのラインで働く作業員は、自動車のブランドが違っていても同じラインで働いている。この場合の労務費が(たとえそれが直接労務費であっても)組間接費となる。

工程別総合原価計算
 技術的な理由などによって同一工程で製品を生産できない場合に、別工程で製品を製造することがある。この場合、工程ごとに原価を計算することになる。たとえば、AからBを作り、BからCという順番で製品を製造する場合、A、B、Cそれぞれで発生した原価は工程費と呼ばれる。

前工程費
 A、B、Cの工程があり、AからBを作り、BからCを作る場合、AからB、BからCに引き継がれる原価を前工程費という。前工程費は、当該工程では、原材料費(直接材料費)とみなす。→累加法

累加法
 A、B、Cの工程があり、AからBを作り、BからCを作る場合、AからB、BからCに原価を引き継ぐ計算方法を累加法と呼ぶ。引き継がずに、各工程別に原価を集計し、最後に合算する方法は非累加法といわれる。どちらの方法を採ってもいいが、講義では累加法を解説した。

仕損品(spoilage):個別原価計算
 簡単にいえば、できそこない、おシャカ。製品の製造途中で何らかの事情(材料の不良・機械の故障・従業員の過失など)で、予定していたとおりの製品ができなかった場合、それを仕損品という。

仕損費(spoilage cost):個別原価計算
 仕損品を手直しするためにかかった費用、または新しく代わりの製品を作るためにかかった費用。
 仕損費の処理方法は、状況に応じていくつかある。まず補修によって完成品になる場合。たとえば、完成したと思った製品(製造原価1,000円)の一部に不具合が見つかり補修を行い、補修にかかった費用が20円だったとすれば、20円が仕損費になる。この20円は製造原価に加算され、完成品の製造原価は1,020円となる。一方、補修によっても完成品にはならず、まったく新しい製品を製造しなければならない場合。この場合には2つの処理方法が考えられる。一つは、全部を改めて製造する場合。たとえば、新しく製造した製品の製造原価が1,000円で、最初に製造して失敗したモノの費用が700円だった場合(これが仕損費)、完成品の製造原価は1,700円になる。二つ目は、一部を改めて製造する場合。たとえば、最初に製造した製品の製造原価が1,000円、その一部に不具合があったため、改めて一部分だけ作り直し、その費用が100円だった場合(これが仕損費)、完成品の製造原価は1,100円になる。

作業くず(waste、scrap):個別原価計算
 製造途中で、不可避的に発生するくず。発生額を見積もって直接材料費から控除する。

原価標準
 製品一単位あたりに標準的にかかる原価。単位あたりの標準直接材料費+標準直接労務費+製造間接費の標準額(標準配賦額)によって計算される。

標準直接材料費
 標準消費数量に標準消費価格(予定価格でも可)を乗じて計算されたもの。

標準直接労務費
 標準直接作業時間に標準賃率を乗じて計算されたもの。

標準配賦額と標準配賦率
 標準配賦額とは製造間接費の標準。ちょっとややこしいかもしれないが、すでに触れたように、製造間接費は、いくつかの製品、いくつかの部門で共通に発生するものだから製品一単位でどれだけ消費されたか(標準原価計算では消費が見込まれるか)をダイレクトに計算することはできない。これを解決するために、標準原価計算では、@年度の製造間接費予算と、A基準操業度(基準作業時間が一般的)をあらかじめ決定し、年度の製造間接費予算を基準操業度で除して基準操業度1単位における製造間接費予算を計算する。これが標準配賦率となる。標準配賦率に製品一単位あたりの基準操業度を乗じれば、製品一単位あたりの標準配賦額、つまり製造間接費の標準が計算できる。なお、標準配賦率に一ヶ月の標準操業度を乗じると月あたりの標準配賦額が計算できる。

固定予算と変動予算
 標準配賦率を計算するための基本的データの一つが製造間接費予算。その予算の組み方の方法に固定予算と変動予算がある。固定予算は、単一の基準操業度での製造間接費の予算。いったん基準操業度を決めてしまえば、あとはその基準操業度と実際の操業度との比較すればいいので簡単。しかし、実際の操業度が基準操業度と大きく異なった場合、製造間接費額に大きな差異が生まれる可能性がある。そこで、変動的に発生することが予測できる間接費は操業度の変動に応じて計算して予算を編成する方法が考えられた。これが変動予算。講義で扱ったのは、公式法による変動予算で、固定費+変動費率×操業度という公式によって計算する。

標準原価カード(standard cost card)
 製品一単位あたりの標準原価を記載したカード。標準直接材料費(計算要素として標準消費数量と標準消費価格)、標準直接労務費(標準直接作業時間と標準賃率)、製造間接費の標準(標準配賦率と基準操業度)が記載されている。

期間標準原価
 当月の製造原価の標準値。いいかえれば一ヶ月に生産された製品の原価標準の総額。完成品の原価標準と月末仕掛品の原価標準を合算して求める。

直接材料費差異
 標準直接材料費と直接材料費の実際発生額との差額。標準直接材料費−実際直接材料費によって算出する。

価格差異
 直接材料費差異の構成要素の一つ。標準価格(標準消費単価)と実際価格(実際消費単価)の差によって発生する。計算公式は、(標準価格−実際価格)×実際消費数量。

数量差異
 直接材料費差異の構成要素の一つ。標準消費量と実際消費量の差によって発生する。計算公式は、(標準消費量−実際消費量)×標準価格。

直接労務費差異
 標準直接労務費と直接労務費の実際発生額との差額。標準直接労務費−実際直接労務費によって算出する。

賃率差異
 直接労務費差異の構成要素の一つ。賃金水準の変化によって発生する。計算公式は、(標準賃率−実際賃率)×実際時間。

作業時間差異
 直接労務費差異の構成要素の一つ。作業時間の変動によって発生する。計算公式は、(標準時間−実際時間)×標準賃率。

製造間接費差異
 製造間接費の標準配賦額と実際発生額との差額。

操業度差異
 固定予算では、実際配賦額−予算額として計算される。また、変動予算では、標準配賦額−標準時間に対する予算許容額として計算される。

能率差異
 固定予算では、標準配賦額−実際配賦額として計算される。また、変動予算では、標準時間に対する予算許容額−実際時間に対する予算許容額として計算される。

予算差異
 固定予算では、予算額−実際発生額として計算される。また、変動予算では、実際時間に対する予算許容額−実際発生額として計算される。

パーシャル・プラン(partial plan)
 最後に仕掛品勘定で原価差異を把握する方法。アウトプット法ともいわれる(パーシャル・プランとアウトプット法は厳密には違うけど・・・)。仕掛品勘定の借方に実際原価、貸方に標準原価を記入して原価差異を把握し(差額が原価差異ですよね)、それを各勘定に振り替える。

シングル・プラン(single plan)
 材料等の投入時に原価差異を把握する方法。インプット法ともいわれる。仕掛品勘定には標準のデータが記入される。差異は直接材料費、直接労務費、製造間接費の各勘定で計算する。標準を貸方に記入しておき、材料等を投入した都度、実際のデータを借方に記入する。そうすることによって、各勘定で差異が把握できる。

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