極私的簿記用語・勘定科目集(中級編)

 こんなことも知っていると役立つ用語・勘定科目です。

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入金伝票
 入金取引を記入する伝票。現金の受け取りがある場合に、つまり借方「現金」と仕訳する取引の場合に使用する。伝票それ自体が赤インクで印刷されるため「赤伝」などといわれることがある。

出金伝票
 出金取引を記入する伝票。現金の支払いがある場合に、つまり貸方「現金」と仕訳する取引の場合に使用する。伝票それ自体が青インクで印刷されるため「青伝」などといわれることがある。

仕入伝票
 5伝票制を採用している場合に、商品の仕入取引で使用する。仕入戻しや値引きは赤字で記入する。
 仕入伝票を使う場合には、仕入がすべて掛けで行われたと仮定して処理する。
 たとえば、「商品100円を掛けで仕入れした」という取引の場合は、無条件で仕入伝票に記入する。でも「商品100円を現金で仕入れした」という取引の場合には、出金伝票に書くか、仕入伝票に書くか迷ってしまう。そこで、この場合にも、@とりあえず掛けで仕入れたことにして仕入伝票に記入し、Aただちに現金支払いを行ったと考えて、出金伝票に記入するわけである。つまり、伝票を2枚使って処理するわけ。

売上伝票
 5伝票制を採用している場合に、商品の販売取引で使用する。売上戻りや値引きは赤字で記入する。
 仕入伝票と同様に、売上伝票を使う場合には、販売がすべて掛けで行われたと仮定して処理する。

振替伝票
 5伝票制を採用している場合に、入金・出金・仕入・売上以外の取引で使用する。

仕訳日計表
 1日の取引を勘定科目ごとに金額を集計する一覧表。

当座借越(当座でも可)〔負債〕
 銀行の当座預金口座に1,000円しか残高がないのに、1,200円と書いた小切手を振り出し、その小切手を受け取った相手が銀行に持ち込んでも、200円が不足しているので決済できない。これでは円滑な経営活動が行えない。信用問題にも発展する。そこで、そういった事態に備えて、あらかじめ銀行との間で契約を結び、万が一に備えることになる。その契約を当座借越契約という。契約を結んでいれば、上記の例の場合、200円分は銀行が立替払いしてくれる。自分が支払うものを一時的に銀行に立て替えてもらうのだから、いずれ銀行に立替額を返済する必要がある(だから負債)。

(借方) (貸方)
小切手の振出時の処理: (適当な勘定科目) ×× 当座預金 ××
当座借越 ××

銀行勘定調整表
 決算日における銀行側の当座預金残高と、銀行側の残高証明書の金額との不一致を明らかにする表。
 不一致の中で企業側の修正が必要なものは修正仕訳を行って企業側と銀行側の当座預金残高を一致させる。
 貸借対照表の「当座預金」残高は、修正後の残高になる。

有価証券〔資産〕
 他社が発行した株式、社債、あるいは国や地方公共団体が発行した公債(国債・地方債)を購入したときに処理する勘定。取得原価+手数料等で処理する。自分の会社が発行した株式や社債を処理する勘定ではないことに注意。

売買目的有価証券〔資産〕
 文字通り、もっぱら売ったり買ったりすることを目的に保有する有価証券。なぜ売買目的の有価証券を保有するのか考えてみよう。

満期保有目的有価証券〔資産〕
 国債などを保有するのは、売買目的というよりは長期の利殖(半期ごと一定の利子を受け取る)ことを目的としている。このような場合には、いったん保有した国債は満期(10年とか20年とか)まで持ち続けるのが普通。こういった国債や社債を保有した場合、満期保有目的有価証券勘定で処理する。しかし、満期保有かどうかは会社側の判断によるので、かなり主観的な処理になる。投資有価証券勘定でも可。

その他有価証券〔資産〕
 売買目的でも満期保有目的でもなく購入した有価証券を処理する勘定。じゃあ一体どんな目的で保有するのだろうか・・・。

有価証券の売買
 売買目的有価証券を保有する目的は、第一義的に値上がり益(キャピタルゲイン)を得ようとするから。たとえば、東京証券取引所に上場されているある株式を1株1500円で買い入れたとしよう。株価は時々刻々変化している。そこで、買ったときより高くなったとき(このケースでは1501円以上)に売却すれば、もうけが出る。その利益は商品売買以外から得られた利益だ。これも会社にとっては魅力的。というわけで、会社に余剰資金があれば他社の株式を買い、売却時を見定めて値上がり益を狙うわけだ。しかし、かならず値上がりするとは限らないので、損失を出すこともある。

端数利息
 社債や国債は、年2回利息の支払いがある。その支払日は3月31日と9月30日に決まっている。一方、社債や国債を購入するのは必ずしも4月1日や10月1日というわけではない。Aさんが持っている社債を4月10日に買ったとすれば、本当なら4月1日から4月10日までの10日分の利息はAさんの取り分だ。しかし次の利息の支払日(利払日)は9月30日。このときに社債を保有しているのはあなただからあなたが半年分の利息を全額受け取ることになる。これではAさんがかわいそうだ。そこで、利払日の翌日以外に社債を買ったときには、前利払日から購入日までの利息分をAさんに支払っておくということになる。このような前利払日から購入日までの利息を端数利息という。この端数利息は有価証券利息勘定で処理する。

有価証券利息〔収益〕
 社債の利息を受け取ったときに処理する勘定。端数利息を支払った場合にもこの勘定で処理する(ただしこの場合には収益の消滅ということで借方で処理する)。受取利息や社債利息という勘定で処理してもいい。

有価証券の期末評価
 有価証券の保有目的に応じて評価方法が異なる。
 売買目的の場合には時価で評価する。満期保有目的の場合には取得原価。ただし、満期保有目的で保有している社債・国債の場合、もし額面価額と取得原価に差額がある場合には、償却原価法という特殊な処理が必要になる。

その他有価証券評価差額金
 売買目的でもなく、満期保有目的でもなく保有している有価証券の原価と時価の差額を、決算時に処理する勘定。

償却原価法
 満期保有目的で保有している社債・国債で、額面価額と取得原価に差額がある場合、その差額を満期日までに均等額ずつ加減する方法。満期日には取得原価が額面金額と一致するようにする方法。額面1000円の社債(満期日まで4年)を800円で買ったとすれば、200円が差額になる。この差額は、あなたにとっては「前もって受け取った利息」と同じ意味になる(平べったくいえばあなたの利益になる)。それを一括して当期の利益として計上するのではなく、満期日までに毎年同じ金額だけ利息を受け取ったことにし(この場合200÷4=50円)、その利息分だけ取得原価に加算していけば、最終的には額面金額になる。

(借方) (貸方)
毎決算時の処理: 満期保有目的有価証券 ×× 有価証券利息 ××

差入有価証券〔資産〕
 新たなお金を借りるために、保有している有価証券を銀行などの貸し手に、担保として渡したときに処理する勘定。お金の返済をしたときには相手から返してもらう。差入保証有価証券、担保差入有価証券勘定でも可。

保管有価証券〔資産〕
 お金を貸した相手から担保として受け取った有価証券を処理する勘定。お金を返済してもらったときには相手に返す。担保受入有価証券、預り保証有価証券でも可。

貸付有価証券〔資産〕
 保有する有価証券を誰かに貸し付けたときに処理する勘定。

借入有価証券〔負債〕
 取引先などから相手が保有する有価証券を借り入れたときに処理する勘定。

手形の裏書
 他人(Aさん)振出の手形で、現在自分が持っているものを、第三者(Cさん)に渡すこと。将来の支払いを約束したものが手形で、それを支払日以前にCさんに渡してしまうと、手形に記載された代金を実際に受け取るのは自分ではなくCさんということになる。つまり、手形代金を受け取る権利を手放してしまうことになる。でも、Aさんが何らかの事情でCさんに代金を支払えなくなったらどうなるか。そのときにはあなたがCさんに支払う義務が発生する。裏書には偶然発生する支払い義務があることに注意。

手形の割引
 他人(Aさん)振出の手形で、現在自分が持っているものを、支払日前に銀行に持ち込んで現金化してもらうこと。たとえば、Aさんから3ヶ月後に支払日が設定された10,000円の手形を受け取ったとき、あなたは3ヶ月間その手形を持ち続けなければならない。支払日よりも前に現金が必要になったとき、Aさんから受け取った手形を銀行に持っていって現金化してもらうことができる。このとき、代金支払日にはあなたではなく、銀行がその代金10,000円を受け取ることになる。銀行は、実際の支払日よりも早く現金化してくれるので、あなたは銀行に手数料を支払う必要がある。

融通手形
 商業手形に対する手形の総称。商業手形は商品売買にかかわって使われる約束手形や為替手形のこと。融通手形は、お金の貸し借りの際に使われる約束手形。

裏書義務見返〔特殊勘定〕
 「うらがきぎむみかえり」と読む。手形を裏書した際に、その事実を備忘的に帳簿に書きとどめ、偶発債務に備えるために使う勘定。このような備忘的な勘定処理を対照勘定処理ともいう。
 常に次のような形式で発生し、その事実が消滅したときには(裏書した手形が決済されたり不渡になった場合)、貸借逆に記入して帳簿から消す。

(借方) (貸方)
手形を裏書譲渡した時: 仕入       ×× 受取手形    ××
裏書義務見返 ×× 裏書義務    ××
裏書した手形が決済された時: 裏書義務    ×× 裏書義務見返 ××

偶発債務
 何らかのアクシデントであなたに降りかかってきた支払義務。手形を裏書した場合や割引した場合に、その恐れがある。

裏書義務〔特殊勘定〕
→裏書義務見返

裏書手形〔特殊勘定〕
 手形を裏書したときに、偶発債務をあらわすために使う勘定。実際の勘定(この場合、受取手形)を減らさずに、偶発債務をあらわす勘定(この場合、裏書手形)を使って処理する方法を評価勘定処理という。偶発債務が消滅したときには、実際の勘定を帳簿上減らす仕訳をする。

(借方) (貸方)
手形を裏書譲渡した時: 仕入    ×× 裏書手形 ××
裏書した手形が決済された時: 裏書手形 ×× 受取手形 ××

割引義務見返〔特殊勘定〕
 「わりびきぎむみかえり」と読む。手形を割引した際に、その事実を備忘的に帳簿に書きとどめ、偶発債務に備えるために使う勘定。このような備忘的な勘定処理を対照勘定処理ともいう。
 常に次のような形式で発生し、その事実が消滅したときには(裏書した手形が決済されたり不渡になった場合)、貸借逆に記入して帳簿から消す。

(借方) (貸方)
手形を銀行で割引した時: 現金       ×× 受取手形    ××
支払利息    ××
割引義務見返 ×× 割引義務    ××
割引した手形が決済された時: 割引義務    ×× 割引義務見返 ××

割引義務〔特殊勘定〕
→割引義務見返

割引手形〔特殊勘定〕
 手形を銀行で割引したときに、偶発債務をあらわすために使う勘定。実際の勘定(この場合、受取手形)を減らさずに、偶発債務をあらわす勘定(この場合、割引手形)を使って処理する方法を評価勘定処理という。偶発債務が消滅したときには、実際の勘定を帳簿上減らす仕訳をする。

(借方) (貸方)
手形を銀行で割引した時: 現金    ×× 割引手形 ××
支払利息 ××
割引した手形が決済された時: 割引手形 ×× 受取手形 ××

手形の更改
 満期日(支払日)に、現金の支払いができずに、先方に支払いを猶予してもらうようお願いすること。あなたは、受取人(Cさん)に手形を振り出した。しかし、支払日になっても現金が準備できない。そこでCさんにお願いして支払いを猶予してもらうことにした。このとき、手形の支払日は確定しているので、以前にCさんに渡した手形を回収し、新たに手形をCさんに交付することになる。これによって支払日が延期されることになるので、それに見合う利息の支払いが必要。

(借方) (貸方)
振出人の処理: 支払手形 ××× 支払手形 ×××
支払利息   ×× 現金     ××
受取人の処理: 受取手形 ××× 受取手形 ×××
現金      ×× 受取利息  ××

手形の不渡り
 手形代金が満期日に決済されないこと。
 なお、不渡りの際に使用する「不渡手形」勘定は、資産勘定。通常の「受取手形」勘定とは性質が違う手形であるということを明らかにするための勘定科目。

(借方) (貸方)
保有していた手形が不渡りになった時: 不渡手形 ××× 受取手形 ×××
現金      ××

荷為替手形
 商品代金の早期の回収のために振り出す為替手形。通常、遠隔地への商品の売り上げに際して「売り手」側が振り出す。
 荷為替手形は、商品代金の70〜80%で、残りは売掛金となる。振り出した荷為替手形は、銀行に持ち込んで、手数料を支払って現金化する。

(借方) (貸方)
荷為替を銀行に持ち込んだ時: 当座預金 ××× 売上   ×××
支払利息   ××
売掛金   ×××

生産高比例法
 定額法や定率法と同じく減価償却方法の一つ。減価償却の計算を毎年(毎期)の資産の利用度に応じて行う。前提として、その資産の全利用量をあらかじめ決めておかなければならない。たとえば、自動車を買ったときの金額が200万円、残存価額は20万円、その自動車の総走行可能距離を10万qとする。最初の年に2万q走ったとすれば、この年の減価償却費は(200万−20万)×2万q/10万q=36万となる。

負債性引当金
 引当金はすべて負債勘定。そしてとくに、貸借対照表の負債の部に表示する引当金を総称して負債性引当金と呼ぶ。これは、評価性引当金と区別するためにあえてこのように表現している。
 ただ、注意しなければならないことは、負債性引当金には、債務としての性格を持つもの(条件付き債務としての引当金)と債務としての性格は持たずに、会計上の必要性から引当金に分類されるもの(会計上の引当金)とがあることである。
 なお、簿記の問題とは直接関係ない話ではあるが、法人税法では、負債性引当金としての性質を持つ引当金のうち、返品調整引当金だけが損金計上が認められている(法人税法53条)。

評価性引当金
 資産評価の必要上、特定の資産のマイナス項目として、資産の部に表示する引当金。代表は正味の売上債権(売掛金や受取手形)を表示するために資産の部に掲載される貸倒引当金。もちろん、貸倒引当金それ自体は負債勘定。
 なお、貸倒引当金は、法人税法で損金計上が認められている(法人税法52条)。

製品保証引当金〔負債〕
 たとえば、テレビやビデオなどの家電品を購入したときに保証書が付いている。そこには「製品保証1年間」などという説明がある。これは、購入後1年間は、通常の使用により故障や不具合があったときには、無償で修理に応じるという、メーカー側のユーザに対する契約である。ということは、メーカー側は、「もしかしたら万に一つ、故障するかもしれない」ということを考えているのであり、それへの対応を考えているわけである。このメーカー側の対応を勘定科目であらわしたものが製品保証引当金。

(借方) (貸方)
引当金計上時(決算時): 製品保証引当金繰入   ××× 製品保証引当金      ×××
契約にしたがって修繕を行った時: 製品保証引当金        ×× 材料等(適当な勘定科目)  ××

修繕引当金〔負債〕
 将来のメンテナンスの必要に備えて設定される引当金。

(借方) (貸方)
引当金計上時(決算時): 修繕引当金繰入   ××× 修繕引当金      ×××
修繕を行った時: 修繕引当金        ×× (適当な勘定科目)    ××

特別修繕引当金〔負債〕
 将来の定期的かつ大規模メンテナンスの必要に備えて設定される引当金。

(借方) (貸方)
引当金計上時(決算時): 特別修繕引当金繰入   ××× 特別修繕引当金      ×××
修繕を行った時: 特別修繕引当金        ×× (適当な勘定科目)       ××

 なお、実際の修繕額が、計上していた引当金より多かった場合には、引当金取崩額と実際の支払額との差額を「修繕費」勘定で処理する。

(借方) (貸方)
引当金計上時(決算時): 特別修繕引当金繰入 ××× 特別修繕引当金      ×××
修繕を行った時: 特別修繕引当金    ××× (適当な勘定科目)      ×××
修繕費            ××

退職給付費用〔費用〕
 退職給付引当金を計上するときの相手勘定。

退職給付引当金〔負債〕
 従業員の退職に備えて、退職時に支給する退職金のうち、当期に計上すべき引当金。

(借方) (貸方)
引当金計上時(決算時): 退職給付費用      ×× 退職給付引当金     ××
退職金を支払った時: 退職給付引当金   ××× 現金(普通預金)    ×××

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