極私的簿記用語・勘定科目集(上級編)

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 中級編はこちらから。

資産
 現金・商品・備品・建物など企業に役立つ財貨や、売掛金・貸付金などの権利の総称。
 やや乱暴にいえば、売ろうと思えば売れるものの集まり(現金は違うけど・・・。そして繰延資産は売れないものだけど)。

負債
 買掛金や借入金など、将来一定の金額を支払わなければならない義務。
 「今日200円を借りた」「今日商品を仕入れて代金50円を支払っていない」ということは、「将来200円を返さなければならない」「将来50円を支払わなければならない」ことを意味する。支払義務のあるものの集合体が負債(あとで触れるけど、支払義務のあるものばかりではなく、支払義務を持たない負債もある)。

資本
 企業が経営活動を行うための元手。

費用
 給料・交通費・支払家賃など、資本が減少する原因。
 たとえば、資本金が100円で、それが全額現金ならば、資産100円=資本100円となる(200円あるわけではないよ!)。
 その現金(資産)のうち10円を交通費として使ったとすれば、資産が10円だけ減少することになる。資産と資本は釣り合っていなければならないので(貸借平均の原理)、資産が90円になれば資本も90円になる。なぜ資本が90円になったのかといえば、資産の一部が交通費という費用になった(性質が変わった)ためだと考える。つまり、資産が費用に変われば、その分だけ資本が減少する(見方を変えれば、資産というものは、いつかは費用に性質を変えるものの集合体であるともいえるわけ)。「資本が減少する原因」というのは、このように考えることによって理解できる。
 または、収益を獲得するために犠牲になったものを金額表示したものともいえる。

収益
 売上高、受取利息や受取家賃など、資本が増加する原因。または、あるものを犠牲にして獲得されたものを金額表示したもの。
 これも、費用と同じ理屈で考えてみよう。

貸借対照表
 一定時点(期末=決算日)の財政状態を一覧表示したもの。期末に財産がどれだけ残っているかを表示する一覧表。資産・負債・資本によって構成される。貸借対照表から資産=負債+資本という等式が成り立つ。

損益計算書
 一定期間(期首から期末まで)の経営成績を計算したもの。期首から期末までの間にどれだけ儲けたかを計算した表。費用・収益によって構成される。損益計算書から費用+利益=収益という等式が成り立つ。ここから利益=収益−費用という等式で利益は計算される。
 「損益計算」ではないのでご注意を!

決算
 帳簿を締め切ること。帳簿を締め切る日は決算日。通常年1回。
 企業会計は、会計期間を定めて利益を計算することを前提にしている。計算対象の始まりを期首、その終わりを期末といい、期首から期末までの期間にどれだけ利益を上げたかを計算する。そのときの期末が決算日ということになる。

現金〔資産〕
 我々が通常「お金」といっているもの(通貨)のやりとりの際に使う勘定科目(本当は通貨以外のものにも使うけど)。→簿記上の現金
 受け取ったときには借方に、支払ったときには貸方に記入する。

簿記上の現金
 あえて簿記上の現金と表現している意味を考えよう。
 簿記上の現金には、通貨(いわゆる現金)以外に、他人振出の小切手・郵便為替証書・振替貯金払出証書・利払期の到来した公社債の利札(りふだ・りさつ)・配当金領収書などがある。これらを所有している、あるいは受け取った場合には、借方「現金」と処理する。これらは通貨と同じ性質を持っていると考えるわけ。

(借方) (貸方)
受取時(1,000円)の処理: 現金 1,000 (適当な勘定科目) 1,000

小切手
 小さい切手ではない。
 代金決済手段として振り出される、それ自体価値を持った紙片。チェック。トラベラーズ・チェックは旅行者小切手ですね。

当座預金(当座でも可)〔資産〕
 銀行預金、郵便貯金など、銀行や郵便局にお金を預けることはよくある。簿記では、たとえそれが自分のお金でも、財布にある(手許にある)お金と区別して処理する。
 銀行との契約によって開設される当座預金は、出し入れ自由で無利息の口座。通常、当座預金の引き出しには小切手が使われる。したがって、簿記では、「小切手を振り出した」場合には貸方「当座預金」と処理することになる。ただし「小切手を受け取った」場合には、借方「現金」と処理することに注意。→簿記上の現金

(借方) (貸方)
小切手1,000円の受取時の処理: 現金        1,000 (適当な勘定科目) 1,000
小切手500円の振出時の処理: (適当な勘定科目) 500 当座預金         500

貨物代表証券
 正確には「かぶつだいひょうしょうけん」と読む。
 商品の運送を引き受けた業者が、売り手に対して発行する有価証券。ということはこれ自体、価値を持っているということ。
 陸送業者の場合は貨物代表証券、海運業者の場合には船荷証券を発行する。

荷為替手形
 商品代金の早期の回収のために振り出す為替手形。通常、遠隔地への商品の売り上げに際して「売り手」側が振り出す。
 荷為替手形は、商品代金の70〜80%で、残りは売掛金となる。振り出した荷為替手形は、銀行に持ち込んで、銀行に手数料を支払って現金化する。

(借方) (貸方)
荷為替1,000円分を銀行に持ち込んだ時: 当座預金   600 売上   1,000
支払利息   100 
売掛金    300

未着商品〔資産〕
 運送途中にある商品で、すでに所有権を有する商品をいう。具体的には、商品それ自体がまだ届いていなくても、一足早く貨物代表証券(船荷証券)を受け取った時に、その他の商品と区別するために「未着品」勘定で処理する。

(借方) (貸方)
貨物代表証券1,000円受取時: 未着商品  1,000 買掛金   1,000
荷為替が取り組まれていた時: 未着商品  1,000 支払手形   700
買掛金     300

受取手形〔資産〕
 手形を受け取ったときに使う勘定科目。債権の一つ。

(借方) (貸方)
約束手形あるいは為替手形1,000円を受け取った時の処理: 受取手形  1,000 売上    1,000

積送品〔資産〕
 委託販売において、受託者に対して商品を発送した時に処理する勘定。一般の商品と区別するために用いる。受託者に渡した商品を積送品勘定で処理する際には、「仕入」勘定から同額を控除する処理を行う。

(借方) (貸方)
委託品1,000円分を先方に渡した時: 積送品  1,000 仕入  1,000

支払手形〔負債〕
 手形代金を支払う義務があるときに使う勘定科目。債務の一つ。約束手形の場合と為替手形の場合では、実際の支払人が異なるので、処理の仕方に注意。

(借方) (貸方)
約束手形1,000円を振り出した時の処理: 仕入     1,000 支払手形    1,000
他人が振り出した為替手形1,500円の支払いを引き受けた時の処理: 買掛金   1,500 支払手形    1,500

買掛金〔負債〕
 「かいかけきん」と読む。商品を買って、まだ代金を支払っていない状態をあらわす勘定科目。いわゆる「ツケ」。
 掛けで商品を買ったときには貸方に、その代金を支払ったときには借方に記入する。→売掛金

仕入〔費用〕
 商品勘定を3分法で処理している場合、商品の仕入をあらわす勘定科目。

積送販売費〔費用〕
 委託販売を行っていて、商品を発送する際に生じた費用を処理する勘定科目。

支払保管料〔費用〕
 商品は、いつでも自社の倉庫で保管できるとは限らない。むしろ最近は、倉庫を持っているだけコストが高くなるということで、倉庫業者と契約して商品を保管している会社も多い。そんな場合、倉庫業者に支払った代金をあらわす勘定科目が支払保管料。

未着商品売上〔収益〕
 商品が届いていないにもかかわらず、すでに受け取っている貨物代表証券を転売したときに使う勘定。

(借方) (貸方)
貨物代表証券1,000円分を転売した時: (適当な勘定科目)  1,000 未着商品売上  1,000

積送品売上〔収益〕
 商品の販売を他人に委託する販売形態で、受託者から商品の売り上げの事実を知らされたときに計上する収益勘定。
 たとえば、受託者は、委託者から販売を引き受けた商品について、売上計算書を作成して委託者に送付して販売の事実を知らせてくる。そこには、売上高とともに、受託者が受託販売によって得た手数料なども記載されている。
 委託者側では、その売上計算書によって収益を認識することになる。
 その処理方法には、手取金のみを計上する場合と、先方が受け取った手数料等も含めて計上する場合がある。つまり、10,000円の商品販売について受託者の手数料500円を控除して手取金のみを売上として計上する場合と先方への販売手数料も計上する場合である。

(借方) (貸方)
手取金のみを売上として計上する場合: 委託販売     9,500 積送品売上   9,500
先方への販売手数料も計上する場合: 委託販売     9,500 積送品売上  10,000
積送販売費      500

受取手数料〔収益〕
 何らかの事情で、相手から手数料を受け取った場合に使う勘定科目。

委託販売〔資産〕
 商品の販売を他人に委託する販売形態。
 相手に商品を委託しただけでは収益は認識しない。
 また、先方に委託した商品が販売され、その代金がまだ届いていない時に処理する勘定。この場合、「委託販売」という勘定科目は、委託先に対する債権(お金を受け取る権利)をあらわすことになる。したがって、先方から代金を受け取ったときには、この勘定科目の金額を減じる(貸方に記入する)。

受託販売〔特殊勘定〕
 商品販売の委託者に対する支払い額と控除額の両方を処理する勘定。
 受託者側は、委託者に成り代わって商品を販売している。商品の販売に際して各種の費用が発生することもあるし、商品の販売によって販売手数料を受け取ることが普通である。こういった受託販売にかかわる一切の費用や収益をまとめて処理する勘定が受託販売勘定である。

(借方) (貸方)
受託品を10,000円で販売して現金を受け取った時: 現金    10,000 受託販売  10,000
販売手数料500円を受け取り、販売額を精算して委託者に伝えた時: 受託販売    500 受取手数料    500
販売手数料控除後の金額を委託者に送付した時: 受託販売  9,500 現金      9,500

 上記のことから、受託者側では、結局、受取手数料500円のみが自分のものであることがわかる。

割賦売掛金〔資産〕
 割賦販売により、相手に商品を渡したときに記帳する勘定科目。

売掛金〔資産〕
 「うりかけきん」と読む。商品を売って、まだ代金を受け取っていない状態をあらわす勘定科目。日常生活ではなかなか理解できないが、一般の商取引ではよく行われる取引。
 売掛けが行われたときには借方に、掛け代金を受け取ったときには貸方に記入する。→買掛金

繰越商品〔資産〕
 商品勘定を3分法で処理している場合、期末(決算日)に売れ残った商品を次期に繰り越すために使う勘定科目。この金額は貸借対照表に記載されるが、貸借対照表上では、単に「商品」と表現する。

試用販売
 一定の「お試し期間」を設けて、相手に商品を渡し、気に入ってくれたら販売するという商品売買の形態。
 相手に商品を渡しただけでは収益は認識しない。

試用品〔資産〕
 試送品、試用商品でもよい。
 仕入れた商品を試用販売のために使う場合に、その他の商品と区別するために使う勘定。

(借方) (貸方)
仕入れた商品1,000円分を試用品勘定に振り替えた時: 試用品   1,000 仕入   1,000

試用販売未収金〔特殊勘定〕
 試用販売売掛金でもよい。
 試用販売のために、相手に商品を渡したときに、「相手に渡した」事実を忘れないように記帳するときに使う勘定(対照勘定)。

(借方) (貸方)
試用品(仕入値1,000円、売価1,500円分を先方に渡した時: 試用販売未収金  1,500 試用仮売上  1,500

試用仮売上〔特殊勘定〕
 試用販売のために、相手に商品を渡したときに、「相手に渡した」事実を忘れないように記帳するときに使う勘定(対照勘定)。

試用品売上〔収益〕
 一定の「お試し期間」を設けて、相手に商品を渡し、気に入ってくれたら販売するという商品売買の形態で、相手が気に入ってその商品を買ってくれたときに処理する勘定。

(借方) (貸方)
対照勘定の場合: 売掛金     1,500 試用品売上     1,500
試用仮売上  1,500 試用販売未収金  1,500
試用品勘定の場合: 売掛金     1,500 試用品売上     1,500

割賦販売
 相手に商品を販売し、代金は後日、分割で受け取る契約に基づいた販売形態。

割賦売上〔収益〕
 割賦販売により、相手に商品を渡したときに、販売基準で収益を認識する場合に記帳する勘定科目。または、回収基準で、相手から商品代金の一部を受け取った場合に記帳する勘定科目。10,000円の商品を割賦販売し、そのうち1,000円を現金で回収した場合は次のようになる。

(借方) (貸方)
販売基準の場合: 割賦売掛金 10,000 割賦売上    10,000
現金       1,000 割賦売掛金   1,000
回収基準(対照勘定)の場合: 割賦売掛金 10,000 割賦仮売上  10,000
現金       1,000 割賦売上     1,000
割賦仮売上  1,000 割賦売掛金   1,000

割賦仮売上〔特殊勘定〕
 対照勘定で割賦販売の事実を記録するときに使う勘定科目。相手勘定は割賦売掛金。

未実現利益
 まだ自分の利益とはなっていない金額。「捕らぬ狸の皮算用」「ペーパープロフィット」「机上の利益」。「もしアルバイトで10万円稼いだら旅行に行こう」という計画を立てて、現実に10万円のお金もないのに「10万円がある」と考えて行動してはいけないわけで、まずアルバイトをしなければ始まらない。
 帳簿上、利益があるように見えていてもその利益が実際に実現しなければ、その金額は帳簿上減らす処理をしなければならない。
 これは、「未回収額×売上利益率」で計算できる。なお、売上利益率は売上高に占める利益の割合をいう。

繰延売上割賦利益〔特殊勘定〕
 回収基準において、未実現利益控除法によって処理する場合に使われる勘定。決算時に出てくる。
 次のような事例を考えてみよう。当期に原価4,000円、売価12,000円の商品を4回払いで割賦販売した。当期中に回収した代金は3,000円だったとすると、この3,000円は商品原価では1,000円分に相当する。簿記では、この3,000円と1,000円の差額2,000円を利益というが、あえて実現利益と表現することもある。つまり受け取った3,000円の中に2,000円の利益が含まれており、誰が見てもそれは自分のポケットの中に入った(実現した)からである。ということは、未回収額9,000円に含まれる利益(9,000円−3,000円=6,000円)は「まだ自分のポケットには入っていない」、つまり未実現利益ということになる。
 未実現利益控除法は、決算時に、売価と原価で記帳した売上高(12,000円)と売上原価(4,000円)をそのままの金額で表示し、いったん仮の利益(8,000円)を計上して、そこから未実現の利益部分(6,000円)を差し引いて売上総利益を計算する方法である。
 繰延売上利益は、未実現利益を控除する取引で使われる勘定。

割賦売上利益控除〔特殊勘定〕
 回収基準において、未実現利益控除法によって処理する場合に使われる勘定。

営業費〔費用〕
 損益計算書で示される販売費及び一般管理費の別名。

人名勘定
 取引先名を勘定科目にしたもの。
 とくに取引が多い相手の場合、そことの取引がどの程度なのかがわかっていれば、何かと便利。とくに、得意先(よく商品を買ってくれるところ)や仕入先(自分がよく商品を買うところ)については、得意先名、仕入先名を勘定科目にすることがある。

「支店」勘定・「本店」勘定
 本支店会計において、本店の支店に対する債権債務を集約する勘定が「支店」、支店の本店に対する債権債務を集約する勘定が「本店」となる。
 たとえば、本店が支店の売掛金10,000円を現金で回収したときには、次のような仕訳を行う。

(借方) (貸方)
本店: 現金 10,000 支店 10,000

 本店が受け取った現金10,000円は、本店のものではなく、本来は支店が受け取るべきものである。そこで「受け取った10,000円は本店のものではない(支店のものである)」ことを明らかにするため、貸方に支店に対する債務をあらわすために「売掛金」ではなく「支店」勘定を使って処理することになる。
 一方、支店は、みずからが受け取るべき売掛代金が回収されたのであるから、「売掛金」勘定を減らす仕訳が必要になる。

(借方) (貸方)
支店: 本店 10,000 売掛金 10,000

 しかし、現実的には現金10,000円は、まだ支店には届いていないわけで、それは本店が回収しているのだから、支店側では、本店に対する債権をあらわすために借方に「本店」勘定を使って処理する。
 この本店側の「支店」勘定残高と支店側の「本店」勘定残高は必ず貸借逆に金額的に一致する。
 これが一致しない原因が未達事項ということになり、一致させるために追加的な仕訳が必要になる。
 なお、「支店」勘定も「本店」勘定も決算時には相殺されて財務諸表には記載されない。

「本店から仕入」勘定・「支店へ売上」勘定
 支店が本店から商品を受け取った場合、あるいは本店が支店へ商品を発送した場合に、支店、本店ともに同じ金額を計上する。そのときに使う勘定科目が、この2つ。当然、同じ金額になるのだが、どちらかの情報が相手側に伝わっていない場合には片方だけが仕訳して、もう一方が仕訳していない状態、つまり金額が異なる状態になる。そこで、決算では、原因を突き止め(だいたいが未達事項か記帳漏れ)、両方の金額を合わせる必要がある。
 たとえば、本店が支店に商品10,000円を発送したときには次のような仕訳になる。

(借方) (貸方)
本店: 支店       10,000 支店へ売上 10,000
支店 本店から仕入 10,000 本店     10,000

 なお、「支店へ売上」勘定も「本店から仕入」勘定も決算時には相殺されて財務諸表には記載されない。

未達事項
 本支店会計において、決算日現在で、先方に伝わっていない取引の総称。いいかえれば、一方だけで処理が終わっていて他方では処理が行われていない取引の総称。
 たとえば、Aさんにお金を貸したあなたは、返済期日になってもお金が届いていないとしよう。しかし、Aさん側では、返済日の前日に送金していたとすれば、Aさんは返済したことになっていても、入金の事実をあなたは知らない状態になる。まさに情報が届いていないこと(未達)になる。このときの返済日を決算日、あなたを本店、Aさんを支店と考えれば、支店では本店に対する支払いが済んでいても、その事実が本店に届いていない状態で双方が帳簿を締め切ることになってしまう。そこで、簿記では、本店側、支店側が連絡を取り合い、こういった自体が判明したら処理していない側の処理を行う必要がある。これが未達事項の仕訳である。

未達現金
 本支店間の取引で、決算日現在で、送金の事実が一方に伝わっていない場合に使う勘定科目。「決算日現在」というのがミソ。

未達商品
 本支店間の取引で、決算日現在で、商品発送の事実が一方に伝わっていない場合に使う勘定科目。「決算日現在」というのがミソ。

内部利益
 本店から支店への商品発送の際に加算される利益。
 本支店間の商品のやりとりは、あくまでも一つの会社内のやりとりなので、お客さんに対する商品の販売とは違って利益を加算する必要がない。この場合(原価法といわれる)、単に商品が本店から支店に移動したに過ぎない。しかし、支店にも独立採算(しっかりと利益を確保できるようにすること)を求める場合には、本店側ではいくらかの利益を加算して支店に商品を発送する。その際の利益が内部利益である(原価+内部利益を内部振替価格という)。
 この内部利益は、支店で商品が販売されていれば、大きな問題にならない。問題になるのは、販売されないまま在庫として商品が残った場合であり、この場合には、合併財務諸表の作成に際して、内部利益は控除されなければならない。

内部利益の計算
 内部利益の計算は次のように考える。
 本店が原価10,000円の商品に10%の利益(1,000円)を加算して支店に発送したとすれば、支店では11,000円で商品を引き取ることになる。つまり原価の1.1倍の価格で受け取ったわけである。ということは、逆に考えて、11,000円が1.1倍であれば1.0倍(つまり原価)はいくらかを計算すれば、11,000円÷1.1倍=10,000円となる。ということは1,000円が内部利益だったことがわかる。
 では、本店から支店に10%の利益を加算して発送した商品16,500円の内部利益はいくらだろうか。
 内部利益は、15%の場合もあるし20%の場合もある。考え方は10%の場合と同じである。本店から支店に10%の利益を加算して発送した商品11,500円の内部利益は11,500×0.15/1.15=1,500円である。また、本店から支店に20%の利益を加算して発送した商品12,000円の内部利益は12,000×0.2/1.20=2,000円である。

仮払法人税〔資産〕
 法人税額が確定する前に、仮に支払っておいた金額を処理する勘定科目。
 ちなみに税額の確定は決算後ですね。

仮払消費税〔資産〕
 消費税の処理方法として「税抜方式」を採用している場合に計上される支払消費税のこと。

未払法人税〔負債〕
 決算で確定した納付すべき法人税を処理するための勘定科目。税額が確定してすぐに納付するわけではなく、決められた期日に納付するので、一時的に税額を「保管」する必要がある。

未払消費税〔負債〕
 決算で確定した納付すべき消費税を処理するための勘定科目。税額が確定してすぐに納付するわけではなく、決められた期日に納付するので、一時的に税額を「保管」する必要がある。

仮受消費税〔負債〕
 消費税の処理方法として「税抜方式」を採用している場合に、預かった消費税額をあらわす勘定科目。いずれ国に納付することになる。

資本金〔資本〕
 元手。商売を始めるときに、自分が準備したお金。自分のお金をお店の資本金にすることを「元入れ」という。
 商売を始めるときに元入れしたお金は資本金として貸方に記入する(実はもっと複雑だけど、ここではこの程度にしておきましょう)。

株式会社の資本金
 株式会社は、個人商店とは違って、株式(細切れにされた所有権)を発行する会社形態を取っている会社。
 1株5,000円で株式を売り出し、5,000円が投資家から会社に手渡されると、その金額だけ資本金になる。しかし、会社法上、その全額を資本金にしなくてもよく、払い込まれた金額の1/2は「資本金」と処理しなくてもよい。見方を変えれば、5,000円のうち2,500円は必ず「資本金」にしなければならないことになる。もっとも残りの2,500円を自由に使っていいわけではなく、これは「株式払込剰余金(資本準備金)」という別勘定で処理しておくに過ぎない。

資本準備金(株式払込剰余金)〔資本〕
 株式の発行価額のうち、「資本金」として処理しなかった金額を処理する勘定。会社法上、株式の発行価額のうち1/2は資本金にしないことが認められているので、もし、発行価額(払込金額)が5,000円の場合の処理は次のようになる。

(借方) (貸方)
株式発行時: 現金(当座預金) 5,000 資本金       2,500
株式払込剰余金 2,500

法人税等〔費用〕
 法人税・事業税および住民税など企業の課税所得に基づいて計上される税金のこと。
 税金の計算は、課税所得(当期純利益とは違う計算によって求める)に基づいて、法人税(国税)=課税所得の30%、事業税(地方税)=課税所得の9.6%、住民税(地方税)=法人税率×17.3%となる。しかし、実際に納める税金は課税所得の40%ぐらい(これを実効税率という)。所得の40%っていうのは結構しんどい金額ですな(かつては50%の時代もありましたが)。

租税公課〔費用〕
 国税、地方税をまとめていう用語。
 ちなみに、租税とは国税及び地方税などの税金、公課とは国・地方公共団体などから課せられる賦課金、罰金などの金銭負担。公課には、商工会の会費、自動車取得税や固定資産税、登録免許税、駐車違反の罰金なども含められる。駐車違反の罰金も費用として認められるわけですな。
 ただし、講義では、消費税の会計処理で「税込方式」を採用している場合に租税公課勘定を使用する。

売上〔収益〕
 収益の代表。商品を販売して得られた金額をあらわす勘定科目。ただし、金額だけであって実際に現金が入ってきたかどうかは問わない。掛け取引では、売上勘定を使うけど、代金はまだもらってないですよね。

未払配当金〔負債〕
 株主総会で株主に支払うことが決定した配当金を、実際に支払うまでの間、計上しておくための勘定科目。

繰越利益剰余金
 株主総会で使い道を決定する利益の金額。前期に処分されなかった繰越利益と損益計算書で計算された当期純利益(税引後)を足したもの。
 ということは、精算表の貸借対照表で計算された当期純利益がそのまま貸借対照表に引き継がれるというわけではないわけだ。

任意積立金〔資本〕
 使い道を特定せずに資本の部に留保される積立金の金額。会社の「貯金」ってところでしょうか、ね。

利益準備金〔資本〕
 利益を源泉として資本の部に留保される金額。もうけを全部使わないように、法律で定められた準備金(貯金と一緒)。資本を源泉として留保されるものは資本準備金。
 会社法では、資本準備金と合わせて、資本金の4分の1に達するまで利益準備金を積み立てなければならないと決めている。
 会社がもうけたものなのに、なぜ法律は、貯金(準備金)にしろ!と命令するのだろうか?(ちゃんと理由がありますよ)

損益勘定
 決算時に、すべての収益とすべての費用を集めて、利益や損失を確定するための勘定。総勘定元帳に設置される。

別段預金〔資産〕
 振込資金等の一時的な管理を行うための預金をいう。
 当座預金口座は、小切手の決算や手形の決済など、いろいろな場面で使われるが、増資に際して、払込金を当座預金口座に入れておくと、他の入金と区別がつかなくなるので、あえて当座預金から別段預金に振り替えておく。それだけ資本というのは大事だってことですね。

株式申込証拠金〔資本〕
 株式を発行して投資家から銀行口座に払い込まれた金額を一時的に処理するために設けられる勘定。
 通常、株式を発行すると公告してから一定期間、投資家からの申込を受ける。その申込期間内に募集株数に達すれば申込締切となる。その際、実際に株式購入の意思を確かめ、払込の事実を確保するために、投資家から申込金を徴収する。これが株式申込証拠金。投資家からの払込の都度、別段預金とする。それだけ資本というのは大事だってことですね(あ、このフレーズ、また使った)。

別段預金〔資産〕
 普通預金、当座預金と違って、一時的に銀行に預かってもらうお金を入金する口座。もちろん勘定科目でもある。
 別段預金とするものはいくつかあるが、講義では、新株発行増資をして投資家から振り込まれたお金を一時的に処理するケースとして採り上げた。「一時的」というからには、そのあとに何らかの取引が発生して、別段預金から振り替えが行われることになる。

(借方) (貸方)
新株発行増資をして投資家からお金が10,000円振り込まれた時: 別段預金  10,000 株式申込証拠金  10,000

未処理損失(繰越損失金)〔資本〕
 当期純損失が生じた場合に計上される資本のマイナス勘定。会社法の施行に伴い繰越損失金と呼称されることとなった。
 未処理損失(繰越損失金)は、株主総会によって、前期繰越利益、任意積立金などによって補填(穴埋め)される。繰越損失金が補填されずに翌期に繰り越される場合、翌期の繰越損失となる。
 たとえば、当期純損失が50万円出たとしよう。これは計算上の赤字なので、この段階で会社が倒産するということはない。しかし会社としても赤字のままだと恰好が悪い。そこで、使わないで取っておいた過去の利益30万円や何かに備えて積み立てておいた積立金100万円で穴埋めする。まずは前期繰越利益の30万で穴埋めし、それでも足りない20万円は任意積立金から穴埋めするわけだ。

資本金減少差益〔資本〕
 減資を行った際、有償減資(実際に株主にお金を払い戻す)の場合は、株主への払い戻し金額(たとえば80万円)と資本金の減少額(100万円)との差額(20万円)をあらわす勘定科目となる。
 ちなみに未処理損失(70万円)を補填するため無償減資(実際にお金の出入りがなく帳簿上資本金を減らすだけ)を行った場合は、資本金の減少額(100万円)との差額(30万円)をあわらす勘定科目となる。

社債発行費〔資産〕
 資金調達の必要から、社債を発行したときにかかった費用。告知のための新聞への告知費用など。
 繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
 もし社債発行費を資産の部に計上する場合には、償却期間は発行後3年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。

(借方) (貸方)
社債発行費9,000円計上時: 社債発行費    9,000 現金(当座預金)   9,000
決算時: 社債発行費償却 3,000 社債発行費      3,000

社債〔負債〕
 資金調達の一手段。銀行からお金を借りることを間接金融といい、広く一般からお金を借りることを直接金融という。社債の発行は直接金融の代表格。

償却原価法
 満期保有目的で保有している社債・国債で、額面価額と取得原価に差額がある場合、その差額を満期日までに均等額ずつ加減する方法。満期日には取得原価が額面金額と一致するようにする方法。額面1000円の社債(満期日まで4年)を800円で買ったとすれば、200円が差額になる。この差額は、あなたにとっては「前もって受け取った利息」と同じ意味になる(平べったくいえばあなたの利益になる)。それを一括して当期の利益として計上するのではなく、満期日までに毎年同じ金額だけ利息を受け取ったことにし(この場合200÷4=50円)、その利息分だけ取得原価に加算していけば、最終的には額面金額になる。

(借方) (貸方)
毎決算時の処理: 満期保有目的有価証券 50 有価証券利息 50

額面発行
 社債の発行形態の一つ。社債の額面(券面に書いてある金額)と実際の発行価額(相手から受け取る金額)が同じ。
 たとえば、デパートの洋服に値段を書いたタグ(値札)が付いている。そこには「5,000円」と書いてあったとすれば、これが額面。5,000円の洋服を5,000円で買う。フツーの取引。

割引発行
 社債の発行形態の一つ。社債の額面(券面に書いてある金額)より実際の発行価額(相手から受け取る金額)が少ない場合。その差額は社債発行差金となる。
 たとえば、デパートの洋服に値段を書いたタグ(値札)が付いている。そこには「5,000円」と書いてあったとすれば、これが額面。でもお金がないあなたは販売員に「安くならないか」と交渉する。その結果、4,800円まで引き下げさせることができた。5,000円の洋服を4,800円で買うことになる(割引発行)。差額の200円はあなたに対するサービス。

打歩発行
 社債の発行形態の一つ。社債の額面(券面に書いてある金額)より実際の発行価額(相手から受け取る金額)が多い場合。
 たとえば、デパートの洋服に値段を書いたタグ(値札)が付いている。そこには「5,000円」と書いてあったとすれば、これが額面。販売員は、「もし5,200円を支払ってくれれば、300円分の商品券を差し上げます。」と申し出るとしよう。あなたは、5,000円で買うか、5,200円で買って300円の商品券をもらうか悩むだろう(この300円はプレミアムと呼ばれる)。
 打歩発行は、額面より高い金額で社債を発行することと引き替えに、額面発行や割引発行より利息を高く設定した社債の発行形態である。

新株予約権付社債〔負債〕
 買った人に、将来新株を引き受ける権利を付与した社債。最初は社債としての売買だが、将来、一定の条件下で発行会社の株式を取得する権利が付与される。

社債利息〔費用〕
 社債を発行すると、通常、年2回利息を支払う義務がある。たとえば、年5%の利率で100,000円の社債を発行すると、利息は5,000円になる。年2回の利払いということは、1回の支払額は2,500円ということになる。これが社債利息。

(借方) (貸方)
利払い時: 社債利息   2,500 現金(当座預金)   2,500

社債発行費償却〔費用〕
 社債発行費を繰延資産として処理した場合、その発行費用を社債の償還期間内に均等額以上で償却する。

社債償還益〔収益〕
 社債を満期日前に時価で買い入れて償還した場合に発生する、償還時の社債の価値と買入価額との差額。

繰延資産
 適正な期間損益計算のために資産として認められる勘定科目。
 たとえば、会社を創立するためにかかった準備費用は、本質的に費用だ。しかし、その費用は、将来の収益を獲得するために費やされたと考えることもできる。そこで、こういった性質を持つ費用は、支出した年に全額費用計上するのではなく、いったん、資産として計上し、一定期間にわたって少しずつ費用化することが認められている。このような資産を繰延資産といい、損益計算書ではなく、貸借対照表の資産の部に計上することができる。いわば、「本籍:費用、現住所:資産」ということになる。
 繰延資産として認められているものには、創立費、開業費、新株交付費、社債発行費、開発費がある。
 なお、繰延資産については今後、縮小傾向にある。というのも、繰延資産は本来は費用なので、なるべく資産性を認めないようにしようという動きがあるからである。だったらどうして繰延資産なんて制度を作ったんだ? これは会計理論の問題(ちゃんと理屈があるんですよ)。

創立費〔資産〕
 会社を設立するまでにかかった費用。設立登記費用や定款を認証してもらうために公証人役場に支払った費用などがこれにあたる。
 繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
 もし創立費を資産の部に計上する場合には、償却期間は支出後5年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。

(借方) (貸方)
創立費1,500円計上時: 創立費     1,500 現金(当座預金) 1,500
決算時: 創立費償却    300 創立費         300

創立費償却〔費用〕
 創立費を繰延資産にした場合、創立費は支出後5年以内で、毎年均等額以上で償却する。→創立費

開業費〔資産〕
 会社設立から実際の開業までにかかった準備費用。広告宣伝費や従業員給料などがこれにあたる。
 繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
 もし開業費を資産の部に計上する場合には、償却期間は支出後5年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。

(借方) (貸方)
開業費1,500円計上時: 開業費    1,500 現金(当座預金) 1,500
決算時: 開業費償却   300 開業費         300

開業費償却〔費用〕
 開業費を繰延資産にした場合、開業費は支出後5年以内で、毎年均等額以上で償却する。→開業費

株式交付費〔資産〕
 資金調達の必要などから、新しく株式を発行したときにかかった費用。告知のための新聞への告知費用など。
 繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
 もし株式交付費を資産の部に計上する場合には、償却期間は発行後3年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。

(借方) (貸方)
株式交付費1,500円計上時: 株式交付費   1,500 現金(当座預金)   1,500
決算時: 株式交付費償却  500 株式交付費        500

 なお、会社の設立に際して株式を発行した場合には、その発行費用は創立費に含める。新株発行費は、あくまでも会社が開業してから新しく発行する株式の場合に使う勘定であることに注意。

株式交付費償却〔費用〕
 株式交付費を繰延資産にした場合、株式交付費は発行後3年以内で、毎年均等額以上で償却する。→株式交付費

開発費〔資産〕
 新技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓、工場設備の大規模な配置替え等のために特別に支出した費用を処理するための勘定科目。新市場を開拓するための市場調査費、企画調査費、広告宣伝費などがこれにあたる。

開発費償却〔費用〕
 もし開発費を資産の部に計上する場合には、償却期間は支出後5年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。

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