極私的簿記用語・勘定科目集(基礎編)

 初めて簿記を学ぶときに必要な用語・勘定科目を集めました。ちょっと困ったときに読んでみてください。

 中級編はこちらから。

 上級編はこちらから。

記録・計算・整理・報告
 簿記(帳簿記入:bookkeeping)は、帳簿を付ける技術ですが、帳簿を付けることが何を意味し、どんな目的を持っているのかを考える際に、必ず引き合いに出される用語が、記録・計算・整理と報告。簿記は、経済活動を勘定という形式で記録し、記録したものを計算して(集計して)、意味のある情報として整理する技術。その情報は、情報を利用したいという人に報告される。→利害関係者

利害関係者
 ある組織に「利」と「害」を持つ人たち。ここでは、組織は企業であるので、企業にかかわることで自分にメリットがある人々(集団)あるいは企業活動が自分たちにデメリットになると思っている人々(集団)をいう。その代表は、投資家、株主、債権者、従業員、消費者などである。
 最近では、ステイク・ホルダー(ステーク・ホルダー)と表現するのが一般的になりつつある。

期首・期末
 経済活動を記録・計算・整理するために、あらかじめ設定しておく区切り。始めと終わり。

会計期間
 どの時点での経済活動を記録・計算・整理するかを明らかにするために設定する期間。期間の始めが期首、終わりが期末。
 計算対象になる期間を当期という。ちなみに、当期より前は前期、後ろは次期という。
 会計期間は、通常、1年(でも、初めのうちは1ヶ月単位で説明します)。

決算日
 帳簿を締め切ること。帳簿を締め切る日は決算日。通常年1回。
 企業会計は、会計期間を定めて利益を計算することを前提にしている。計算対象の始まりを期首、その終わりを期末といい、期首から期末までの期間にどれだけ利益を上げたかを計算する。そのときの期末が決算日ということになる。

貸借対照表(B/S)
 一定時点(期末=決算日)の財政状態を一覧表示したもの。期末に財産がどれだけ残っているかを表示する一覧表。資産・負債・資本によって構成される。

資産
 現金・商品・備品・建物など企業に役立つ財貨や、売掛金・貸付金などの権利の総称。
 やや乱暴にいえば、売ろうと思えば売れるものの集まり(現金は違うけど・・・。そして繰延資産は売れないものだけど)。

負債
 買掛金や借入金など、将来一定の金額を支払わなければならない義務。
 「今日200円を借りた」「今日商品を仕入れて代金50円を支払っていない」ということは、「将来200円を返さなければならない」「将来50円を支払わなければならない」ことを意味する。支払義務のあるものの集合体が負債。

資本
 企業が経営活動を行うための元手。

貸借対照表等式
 貸借対照表の構成要素(資産・負債・資本)の金額の関係をあらわす等式。
 貸借対照表は、箱の左側と右側に分かれており、左側の大きさと右側の大きさは等しい。箱の大きさは金額をあらわす。このとき、箱の左側は資産、右側は負債と資本によって構成されるので、資産の合計は負債と資本を足したものに等しいということになる。つまり資産=負債+資本の関係が成り立つ。これを貸借対照表等式という。

資本等式
 貸借対照表等式の変形と考えればよい。
 企業にとって、資本がどれだけあるか、あるいはどれだけ増えたかを知ることは重要なこと。資本は経済活動の源だからね。ということは、資本の大きさを直接的に計算するために、先の貸借対照表等式を変形して、資本=資産−負債という表現の仕方をすれば、資本の大きさ(変化)を知ることができる。この式を資本等式という。

財産法
 貸借対照表で純利益(純損失)を計算する方法を示す用語。
 貸借対照表で純利益を計算するためには、資本の変動に着目して、会計期間にどれだけ資本が増えたかを計算すればよい。具体的には、期末資本から期首資本を差し引くこと(期末資本−期首資本)によって計算する。この結果がプラスの金額ならば純利益、マイナスの金額ならば純損失となる。
 ここで質問。
 貸借対照表は資産と負債と資本から構成される。なぜ資本の変動に着目するのだろうか。なぜ、資産や負債ではダメなのだろうか?

損益計算書(P/L)
 一定期間(期首から期末まで)の経営成績を計算したもの。期首から期末までの間にどれだけ儲けたかを計算した表。費用・収益によって構成される。損益計算書から費用+利益=収益という等式が成り立つ。ここから利益=収益−費用という等式で利益は計算される。
 「損益計算」ではないのでご注意を!

費用
 給料・交通費・支払家賃など、資本が減少する原因。
 たとえば、資本金が100円で、それが全額現金ならば、資産100円=資本100円となる(200円あるわけではないよ!)。
 その現金(資産)のうち10円を交通費として使ったとすれば、資産が10円だけ減少することになる。資産と資本は釣り合っていなければならないので(貸借平均の原理)、資産が90円になれば資本も90円になる。なぜ資本が90円になったのかといえば、資産の一部が交通費という費用になった(性質が変わった)ためだと考える。つまり、資産が費用に変われば、その分だけ資本が減少する(見方を変えれば、資産というものは、いつかは費用に性質を変えるものの集合体であるともいえるわけ)。「資本が減少する原因」というのは、このように考えることによって理解できる。
 または、収益を獲得するために犠牲になったものを金額表示したもの。

収益
 売上高、受取利息や受取家賃など、資本が増加する原因。または、あるものを犠牲にして獲得されたものを金額表示したもの。
 これも、費用と同じ理屈で考えてみよう。

損益計算書等式
 損益計算書の構成要素(費用・収益・純損益)の金額の関係をあらわす等式。利益が出る場合、費用+純利益=収益という関係が成り立つ。

損益法
 損益計算書で純利益(純損失)を計算する方法を示す用語。

取引
 資産・負債・資本を増加あるいは減少させる事柄。したがって帳簿に記載する事柄。
 教室の中で扱う取引は、すべて資産・負債・資本を増加あるいは減少させる事柄なので、問題はないが、実務においては、どれが資産・負債・資本を増加あるいは減少させる事柄なのかを、あなたが判断しなければならないので、よく考えると結構難しい。

勘定
 記録・計算の単位。
 簿記は、まず勘定記入から始まる。

勘定記入の法則
 資産・負債・資本・費用・収益という大きな塊(大勘定)には、それぞれ記帳する際に一定のルールがある。
 T字型の勘定で説明すると、資産の増加は勘定の借方(左側)に記入し、資産の減少は勘定の貸方(右側)に金額を記入する。一方、負債と資本は勘定の貸方が増加となる。また、費用は借方に発生額、収益は貸方に発生額を記入する。これは、すべての資産勘定、負債勘定、資本勘定、費用勘定、収益勘定に共通するルール。

勘定科目
 簿記を学んでいく上で、もっとも難関なのが勘定科目を理解すること。
 資産・負債・資本・費用・収益には、それぞれ性質を同じくする仲間がある。その仲間の一つ一つを勘定科目という。
 たとえば、資産勘定の仲間は、現金、建物、機械、貸付金などがある。これらは、計算技術的には、すべて増加額を借方に、減少額を貸方に記入する。負債・資本・費用・収益の場合も、同じ勘定記入の法則が適用される。
 問題は、一つ一つの勘定科目を資産・負債・資本・費用・収益に分類して考えなければならないこと。これに王道はありません。一つ一つコツコツと。

仕訳
 勘定記入のための準備的手続き。簿記上の取引はすべて仕訳される。
 仕訳は、一つの取引を2つの側面から捉えるところに特徴がある。仕訳を完成させるためには、@使う勘定科目を決定し、Aその勘定科目の記入場所(借方か貸方か)を決定し、B金額を決定する必要がある。

現金〔資産〕
 我々が通常「お金」といっているもの(通貨)のやりとりの際に使う勘定科目(本当は通貨以外のものにも使うけど、これは後ほど)。
 受け取ったときには借方に、支払ったときには貸方に記入する。

普通預金〔資産〕
 銀行の預金口座の一つ。勘定科目としては資産勘定。
 自分の手許にあるお金を自分の普通預金口座に入金しても自分のお金。いつでもキャッシュカードで引き出せる。
 しかし、簿記では、手許にあるお金を「現金」勘定で表現し、それがたとえ自分のお金であっても、銀行の普通預金口座に入っていれば、普通預金という勘定科目で表現する。

(借方) (貸方)
現金500円を普通預金口座に預け入れた時: 普通預金   500 現金      500
普通預金口座から現金500円を引き出した時: 現金      500 普通預金   500

売掛金〔資産〕
 「うりかけきん」と読む。商品を売って、まだ代金を受け取っていない状態をあらわす勘定科目。日常生活ではなかなか理解できないが、一般の商取引ではよく行われる取引。
 売掛けが行われたときには借方に、掛け代金を受け取ったときには貸方に記入する。→買掛金

商品〔資産〕
 そのお店でお客さんに販売するために購入した品物をあらわす勘定科目。
 商品を仕入れたときには借方に、販売したときには貸方に記入する。

備品〔資産〕
 そのお店で使うために購入した物品をあらわす勘定科目。家電量販店でお客さんに売るために購入したパソコンは「商品」だが、品物管理のために購入したパソコンは「備品」となる(わかるかな)。
 備品を購入したときには借方に記入する。

貸付金〔資産〕
 「かしつけきん」と読む。自分のお金を、誰かに貸したときに、貸したことを明らかにするために使う勘定科目。
 お金を貸したときには借方に、返してもらったときには貸方に記入する。→借入金

買掛金〔負債〕
 「かいかけきん」と読む。商品を買って、まだ代金を支払っていない状態をあらわす勘定科目。いわゆる「ツケ」。
 掛けで商品を買ったときには貸方に、その代金を支払ったときには借方に記入する。→売掛金

借入金〔負債〕
 「かりいれきん」と読む。他人のお金を借りたときに、借りたことを明らかにするために使う勘定科目。
 お金を借りたときには貸方に、返したときには借方に記入する。→貸付金

資本金〔資本〕
 元手。商売を始めるときに、自分が準備したお金。自分のお金をお店の資本金にすることを「元入れ」という。
 商売を始めるときに元入れしたお金は資本金として貸方に記入する(実はもっと複雑だけど、ここではこの程度にしておきましょう)。

給料〔費用〕
 会社が従業員に支払うお金。もらう立場で考えないように!
 給料は会社にとって費用となる。したがって、給料を支払ったときには借方に記入する。

支払利息〔費用〕
 お金を借りているときには、相手に決められた利息を支払わなければならない。その支払額をあらわすのが支払利息という勘定科目。
 これも会社にとっては費用なので、利息を支払ったときには借方に記入する。ただし、単に「利息」と書いただけでは支払ったものか受け取ったものかわからないので、支払利息と書く。→受取利息

支払広告料〔費用〕
 会社にとって広告というのは、販売促進のため重要。広告代理店に支払った広告代金をあらわす勘定科目がこれ。
 通常、広告代理店以外、広告料は支払うものであって受け取るものではないので、「支払」をとって広告料と表現することが多い。

支払保険料〔費用〕
 いわゆる生命保険ではなく、建物の火災や商品の盗難などの損害に備えて支払う保険料。これも、広告料と同様に、通常、支払うものであって受け取るものではないので、単に保険料と表現することがある。

商品販売益〔収益〕
 商品をお客さんに販売して得た利益。仕入れた商品の代金が5,000円、お客さんに販売したときの代金が6,000円のとき差額の1,000円が商品販売益。
 これは会社にとっては収益となるので、売買益が発生したときには貸方に記入する。商品売買益ともいう。

受取利息〔収益〕
 お金を貸しているときに、相手から利息を受け取る権利がある。その受取額をあらわすのが受取利息という勘定科目。
 相手から利息を受け取った時には、その金額を貸方に記入する。→支払利息

受取手数料〔収益〕
 何らかの取引によって得た手数料をあらわす勘定科目。
 相手から手数料を受け取った時には、その金額を貸方に記入する。自分が手数料を支払ったときには支払手数料(費用)勘定を使うことになる。

受取家賃〔収益〕
 部屋を貸している大家さんが受け取るのは家賃。会社だって同じ。自分が所有している建物をテナントに貸したときに、毎月受け取るのが受取家賃。

受取地代〔収益〕
 こちらは、土地を貸している場合に使う勘定科目。

仕訳伝票
 取引を伝票という形式で処理するために使う紙切れ。さまざまな取引を、統一的にスッキリした形で処理できるので重宝。
 すべての取引は、この仕訳伝票か仕訳帳という帳簿に記入する。

総勘定元帳
 すべての勘定をひとまとめにした帳簿で、すべての会社が作成しなければならない帳簿(主要簿という)。ただ単に元帳ということが多い。
 元帳には、その会社で使う勘定が、科目ごとにつづられている。こうすることによって、勘定科目ごとの増減が一目瞭然となる。

転記
 仕訳伝票(または仕訳帳)から、必要事項を総勘定元帳に書き移すことを転記(てんき)という。

試算表
 元帳への転記が正しく行われたかどうかを確かめるために作成する一覧表。その計算のよりどころは貸借平均の原理。
 試算表には、目的の違いによって合計試算表、残高試算表、合計残高試算表(合計試算表と残高試算表をまとめたもの)の3種類がある。講義では、合計残高試算表を対象にする。

精算表
 残高試算表、損益計算書、貸借対照表を一覧表示したもの。当期純利益(当期純損失)が計算される。

現金過不足〔特殊勘定〕
 資産でもない、負債でもない、特殊な勘定科目。
 朝500円を持って家を出た。講義を終え、帰宅して財布を見ると100円残っている。400円使ったことになる。レシートを見ながら支出をこづかい帳に記入すると、350円しか記帳できない。50円は何に使ったのだろうか?
 本来ならば、財布にある現金残高と、こづかい帳の残高は一致するハズである。しかし、一致しないことがままある。考えて原因がわかればいいけれど、収支の回数が多くなるとただちに原因がわからない場合もある。
 そこで、原因が判明するまで、現金の実際有高と帳簿残高の差額を処理しておく勘定として「現金過不足」を使用する。現金の実際有高が帳簿残高より多い場合には「現金××/現金過不足××」と処理し(現金が増えたことにする)、反対の場合には「現金過不足××/現金××」と処理する(現金が減ったことにする)。
 決算日までに現金が不明の場合には、過剰額は「雑益(雑収入)」、不足額は「雑損(雑損失)」勘定に振り替えて、「現金過不足」勘定を整理する(帳簿上なくす)。

(借方) (貸方)
現金の実際有高が1,000円で帳簿残高が700円だった時: 現金      300 現金過不足 300
現金の実際有高が600円で帳簿残高が800円だった時: 現金過不足 200 現金     200

雑益(雑収入)〔収益〕
 「ざつえき」と読む。お金はあるのだけれど、そのお金をどういう理由で受け取ったのかわからない場合に使う勘定科目。ただし、いつでも使えるワケではなく、決算日までに理由がわからない場合のみ使うことができる。→現金過不足

雑損(雑損失)〔費用〕
 「ざっそん」と読む。帳簿に記載している現金の残高より実際の現金が少ない場合に使う勘定科目。ただし、これも雑益と同じで、ただし、いつでも使えるワケではなく、決算日までに理由がわからない場合のみ使うことができる。→現金過不足
 そういえば、世の中には、雑損と雑費の違いがわからない大人が結構いる。皆さんは使い分けできるようになってね。

小切手
 小さい切手ではない。
 代金決済手段として振り出される、それ自体価値を持った紙片。

当座預金〔資産〕
 銀行預金、郵便貯金など、銀行や郵便局にお金を預けることはよくある。簿記では、たとえそれが自分のお金でも、財布にある(手許にある)お金と区別して処理する。
 銀行との契約によって開設される当座預金は、出し入れ自由で無利息の口座。通常、当座預金の引き出しには小切手が使われる。したがって、簿記では、「小切手を振り出した」場合には貸方「当座預金」と処理することになる。ただし「小切手を受け取った」場合には、借方「現金」と処理することに注意。

(借方) (貸方)
小切手1,000円受取時の処理: 現金          1,000 (適当な勘定科目) 1,000
小切手1,000円振出時の処理: (適当な勘定科目) 1,000 当座預金       1,000

小口現金〔資産〕
 経理係が小口現金係(用度係)に、日々の支払いに充てるために手渡す少額資金。および、その資金のやりとりをあらわす勘定科目。

インプレスト・システム
 定額資金前渡法。
 週初めには、いつも一定金額を小口現金係が保持しているように、使った金額だけ補充してやる方法。
 たとえば、定額資金を10,000円とする。月曜日に経理係が小口現金係に10,000円を渡し、小口現金係が一週間で8,500円を使ったとする。そうすると、小口現金係の手元には1,500円が残っていることになる。翌週の月曜日に経理係は8,500円使ったという報告を受けて、使った分、つまり8,500円を小口現金係に補充してあげると、小口現金係は、また10,000円を保持することになる。

小口現金出納帳
 小口現金係が、自分が使った使途を明らかにするために作成する帳簿。補助簿の一種。

三分法
 「商品」を3つの側面から分割して仕訳する方法。
 この方法では、商品を仕入れたとき、商品を販売したとき、決算時に売れ残ったときの3時点で、それぞれ仕訳処理が行われる。三分法では、「仕入」「売上」「繰越商品」という3つの勘定科目を使う。言い換えれば、商品売買時に「商品」も「商品売買益」も使わない方法が三分法といえる。

仕入〔費用〕
 三分法で、商品を仕入れたとき借方に仕訳する勘定科目。

(借方) (貸方)
商品1,000円を仕入した時の処理: 仕入        1,000 (現金・当座預金・買掛金など) 1,000

売上〔収益〕
 三分法で、商品を販売したとき貸方に仕訳する勘定科目。

(借方) (貸方)
商品を1,500円で販売した時の処理: (現金・当座預金・売掛金など) 1,500 売上        1,500

繰越商品〔資産〕
 三分法で、決算日に、売れ残った商品を処理する勘定科目。
 たとえば、1個1,000円の商品を3個仕入れ、そのうち2個売れて、そのまま決算日を迎えたとしよう。そうすると、今会社に残っている商品(在庫)は1個で、その商品の仕入値は1,000円。この1,000円の商品は、「次期以降に販売する商品ですよ」ということをあらわすために使う勘定科目が「繰越商品」。もっとも、貸借対照表に書くときには、単に「商品」と表現するけどね。

商品評価損〔費用〕
 仕入単価と時価との差額。
 金額に着目して計算する。たとえば、帳簿上、仕入単価100円の商品が50個在庫があることになっていたにもかかわらず、流行遅れなどの理由によって商品価値が下落し、時価が40円になっていた場合、原価と時価の差額(10円×50個=500円)が商品評価損。これを繰越商品から差し引く。つまり、次期に繰り越す商品の原価は4,500円ということになる。もっともこれは、帳簿上の在庫数量と実際の棚卸数量が一致していた場合の話で、実際の棚卸数量が45個しかなかった場合には、10円×45個=450円が商品評価損となる。

(借方) (貸方)
帳簿上の繰越商品: 繰越商品   5,000 仕入    5,000
決算時: 商品評価損   450 繰越商品   450

棚卸減耗損〔費用〕
 帳簿上の商品の在庫と、実際に棚卸をして確認した商品の在庫との差を処理する勘定。
 数量に着目して計算する。たとえば、帳簿上、仕入単価100円の商品が50個在庫があることになっていたにもかかわらず、実際に調べてみると45個しかなかった場合、その差5個が何らかの理由で減少してしまったことになる。その5個分の金額(100円×5個)が棚卸減耗費となり、繰越商品から差し引く。つまり、次期に繰り越す商品の原価は4,500円ということになる。

(借方) (貸方)
帳簿上の繰越商品: 繰越商品   5,000 仕入    5,000
決算時: 棚卸減耗費   500 繰越商品   500

売上原価〔費用〕
 仕入れた商品のうち、実際に販売された商品の仕入れ原価。むずかしいかな。
 たとえば、1,000円で仕入れた商品が2,500円で売れたときの売上原価は1,000円。1個1,000円の商品を3個仕入れ、そのうち2個売れたときの売上原価は1,000円×2個=2,000円となる。

売上総利益
 商品売買から計算される利益。売上高(収益)から売上原価(費用)を差し引いて計算される利益の一つ。
 たとえば、1個1,000円の商品を3個仕入れ、そのうち2個を@2,500円で売ったときの売上総利益は、売上高5,000円(2,500円×2個)−売上原価2,000円(1,000円×2個)=3,000円となる。→当期純利益

商品有高帳
 商品管理のため、商品の受け入れ(仕入れ)、払い出し(販売)、残高を、数量と金額の両面から取引日順に一覧した補助簿。
 この帳簿の作成によって、一定期間の売上原価を知ることができる。

先入先出法
 商品有高帳の作成方法の一つ。
 先に仕入れた商品から先に販売されたと「仮定」して受け入れ、払い出し、残高を記録する方式。
 たとえば、お店に売価100円の同じ商品が5個あるとする。この5個がすべて同じ金額で仕入れできたとすれば何も問題ない。しかし、5個のうち3個を70円で仕入れ、残りの2個を60円で仕入れたとすれば、お客さんがどちらの商品を購入するかで、利益額が違ってくる。もし、70円で仕入れた商品を買っていけば、100円−70円=30円が利益、もし60円で仕入れた商品を買っていけば、100円−60円=40円が利益となる。お店がいつでもお客さんを誘導できれば問題ないが、お店の思ったとおりに購入するとは限らない。そこで、売上原価を適切に計算するための方法として考え出された方法の一つが先入先出法ということになる。

移動平均法
 商品有高帳の作成方法の一つ。
 同じ日にお店にある商品は、いつも同じ金額であると「仮定」して受け入れ、払い出し、残高を記録する方式。
 この方法は、持っている商品と同じものを新たに仕入れしたとき、持っている商品の仕入値と新たに仕入れした商品の仕入値に違いがある場合、その平均値を出して、平均原価をもって売上原価の計算に利用する。たとえば、70円で仕入れた商品1個を持っていて、新たに同じ商品でありながら60円で仕入れした場合、(70円+60円)÷2=65円を売上原価の計算に利用するのである。

貸倒損失〔費用〕
 掛けで商品を販売していて、何らかの事情で相手から商品代金を受け取れなくなった場合に使う勘定科目。悲しい事例だけど、相手が倒産してしまうと商品代金が回収できなくなる。どうしても回収できない場合は、貸倒損失で処理するしかない。→貸倒引当金

貸倒引当損(貸倒引当金繰入・貸倒償却)〔費用〕
 貸倒引当金を計上する場合の相手勘定。→貸倒引当金

貸倒引当金〔負債〕
 決算時に計上する、将来の貸し倒れに対する備え。
 たとえば、掛けで商品15,000円を販売したとする。その意味は商品だけ今渡して、代金は後日受け取るということ。これは、相手が必ず代金を支払ってくれると信用しているわけ。でもね、もし、信用した相手が代金を支払うことができなくなった場合にはどうなるか。当然、自分の「損」。これは痛い。
 そこで、会社では、そういった事態に備えて、あらかじめ「積み立て」のようなことをしておく。そうすれば、もし不測の事態が発生しても、自分の損を少なくすることができる。その不測の事態が貸し倒れといわれるものであり、貸し倒れに備えるために計上されるのが貸倒引当金である。
 負債勘定の一つでも、実際に、お金を支払うわけではないのでご注意を。

(借方) (貸方)
決算時に貸倒引当金1,500円を計上した時の処理: 貸倒引当損  1,500 貸倒引当金       1,500

営業費〔費用〕
 営業活動を行っていく上で必要な費用。給料も広告宣伝費も、旅費交通費も通信費も、すべて営業活動を行っていく上で必要な費用。こういった費用を総称して営業費という。なお、この営業費は損益計算書に記載されるものであるが、損益計算書上では、営業費という言葉は使わず「販売費及び一般管理費」と表現する。

引出金〔特殊勘定〕
 個人商店でだけ使う勘定科目で、資本金を減らすときに使う勘定科目。

消耗品〔資産〕
 金額が小さいものを買ったときに使う勘定科目。

(借方) (貸方)
消耗品500円を購入し資産計上した時の処理: 消耗品    500 現金  500
期末に使用した消耗品分200円を消耗品勘定から減らす時の処理: 消耗品費   200 消耗品 200

消耗品費〔費用〕
 消耗品を消費したときに使う勘定科目。

(借方) (貸方)
消耗品500円を購入しはじめから使ったことにして費用化した時の処理: 消耗品費    500 現金  500

費用収益の見越・繰延
 決算日は、連続している日々を、利益計算の必要上、二つの区分に区切る日といえる。
 そういった区切りから発生する問題としては次のようなものがある。
@当期に支払うべき利息をまだ支払っていない。
A当期に受け取るべき家賃をまだ受け取っていない。
B次期に支払うべき保険料まで当期に支払っている。
C次期に受け取るべき地代まで当期に受け取っている。
 これらは、費用と収益の計上にかかわる問題で、簿記では費用・収益の見越(みこし)・繰延(くりのべ)という。見越とは当期中に処理しなければならない金額を追加的に計上する手続きであり、繰延とは次期に負担すべきもので当期に授受があったものを当期の費用・収益から取り除く手続きである。
 ちなみに、@は当期分の支払利息(費用)を払っていないので追加計上することなので費用の見越。Aは当期分の受取家賃(収益)を受け取っていないので収益の見越。Bは当期に支払った次期の支払保険料(費用)を取り除くことなので費用の繰延。Cは次期の受取地代(収益)を当期に受け取っているので収益の繰延ということになる。ちょっと難しいですね。

未払○○〔負債〕
 当期に支払うべきものをまだ支払っていないときに、それを追加計上するために使う勘定科目。未払広告料、未払利息など。まだ支払っていないとは、次期に支払う義務があるということなので負債となる。費用の見越。

(借方) (貸方)
期末に当期に支払うべき利息500円をまだ支払っていない時の処理: 支払利息  500 未払利息  500

未収○○〔資産〕
 当期に受け取るべきものをまだ受け取っていないときに、それを追加計上するために使う勘定科目。まだ受け取っていないとは、次期に受け取る権利があるということなので資産となる。収益の見越。

(借方) (貸方)
期末に当期に受け取るべき家賃1,000円をまだ受け取っていない時の処理: 未収家賃  1,000 受取家賃  1,000

前払○○〔資産〕
 次期に支払ってもいいものを当期に支払ったときに、それを繰り延べるために使う勘定科目。前もって支払ったとは、次期にその支払額に相当する何かを相手からしてもらう権利があることを意味するので資産となる。費用の繰延。

(借方) (貸方)
次期に支払うべき保険料1,000円を当期に支払っている時の期末の処理: 前払保険料  1,000 支払保険料  1,000

前受○○〔負債〕
 次期に受け取るべきものを当期に受け取っていたときに、それを繰り延べるために使う勘定科目。前受手数料、前受地代など。前もって受け取っているとは、次期にその受取額に相当する何かをしてあげなければならないことを意味するので負債となる。収益の繰延。

(借方) (貸方)
次期に受け取るべき地代500円を当期に受け取っている時の期末の処理: 受取地代  500 前受地代  500

当期純利益
 商品売買だけでなく、すべての収益とすべての費用との差額として計算されるのが当期純利益。収益−費用がプラスの場合は純利益だが、収益−費用がマイナスの場合は純損失となる。前者は黒字、後者は赤字だ。→売上総利益

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