生産設備は、稼動し続けると年々その資産価値を減少する。さらに、企業は古くて効率が悪くなった設備の更新に備えて、資金を計画的に留保しなければならない。また、税務会計では固定資産の減価償却額が損金扱いされるので、その損金分だけ経常利益が毎期減額されることになり、法人税の負担が継続的に軽減されるメリットもある。 次の表5にいくつかの減価償却資産の法定耐用年数と償却率を引用しておく。(参考書 7:福井幸男、第3章11節より作成)
資産の例 | 耐用年数 | 定額法 | 定率法 |
オフィス用建物/工場 (鉄筋コンクリート) | 65年/26年 |
0.016/0.039 |
0.035/0.085 |
コンピュータ/コピー機 | 6年/5年 |
0.166/0.200 |
0.319/0.369 |
鉄鋼鋳造業用設備/印刷設備 | 12年/10年 |
0.083/0.100 |
0.175/0.206 |
定率減価償却法とは、初期に償却額を多くし、年を経るごとに償却額が減少するように、毎年一定の割合で償却を行なう方法である。これに対して、定額減価償却法とは、資産が毎年同程度の金額で減価するとみなし、償却額を毎年均等に割り振る方法である。ただし、耐用年数を経過した時点の残存価額は取得価額の10%相当額とする。従って、毎年の償却額は次の式で与えられる。
練習5: 定率減価償却法とDB(...)関数
あるM工場の設備機械は、購入価格が 2000万円で耐用年数 12年が経過時点でのスクラップ価値 (最終残存価額) は 200万円であるとき、定率減価償却法によって毎年の償却価額を求める。 それには財務関数の分類にある次のDB(...)関数を使う。
さて、次の表6のワークシートをブック名「M減価償却」で作成する。
A | B | C | D | E | F | G | H | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 《定率減価償却法》 | (金額の単位=千円) | ||||||
2 | 経過年数 | 減価償却額 | 累計 | 残存価額 | 償却率 | |||
3 | 取得価額 | 20,000 |
0 |
20,000 |
||||
4 | 1 |
\3,500 |
\3,500 |
16,500 |
0.175 |
|||
5 | 耐用年数 | 12 |
2 |
\2,888 |
\6,388 |
13,613 |
0.175 |
|
6 | 3 |
\2,382 |
\8,770 |
11,230 |
0.175 |
|||
7 | 最終残存価額 | 2,000 |
4 |
\1,965 |
\10,735 |
9,265 |
||
8 | 5 |
\1,621 |
\12,356 |
7,644 |
||||
9 | 6 |
\1,338 |
\13,694 |
6,306 |
||||
10 | 7 |
\1,104 |
\14,798 |
5,202 |
||||
11 | 8 |
\910 |
\15,708 |
4,292 |
||||
12 | 9 |
\751 |
\16,459 |
3,541 |
||||
13 | 10 |
\620 |
\17,079 |
2,921 |
||||
14 | 11 |
\511 |
\17,590 |
2,410 |
0.175 |
|||
15 | 12 |
\422 |
\18,012 |
1,988 |
0.175 |
その年の償却率は、=(当年の減価償却額)÷(当年の始め、つまり前年末の残存価額)、で定義される。セルH4に式「=E4/G3」を入力し、これを 12年後までコピーする。 確かに償却率は 17.5 %の定率となっていることが分る。 しかし、残存価額は約 198.8万円となっており、200万円と比較すると少し計算に誤差があるようだ。
定率法では、固定利率で減価償却費が計算される。特定の期に対する減価償却費は、次の数式
【コラム】 表5の結果にあるように、残存価額は4年後に半分以下の 925万円になりますが、このM工場の設備機械の生産能力も半分以下になるのですか? (答え)いいえ、減価償却は会計上の手続きですから、機械の生産能力が半分に落ちることは、大きな故障でもない限り、まずないでしょう。 |
練習問題5.4:
ある大手半導体メーカーが九州の大分県に総額 1600億円で 64M(メガバイト)半導体集積回路の製造設備を完成させたとする。定率法および定額法で毎年の減価償却額を計算しなさい。また、減価償却の推移をグラフで表しなさい。なおこのような先端技術かつ精密機械装置の法定耐用年数は5年である。
(参考書 3: 寺島和夫ほか 第6章 6.2に、Excelによる減価償却についてもう少し詳しい説明がある)
練習問題5.5:
現価法(現在価値法)による投資案の比較とPV関数(教科書 1 第1版:11章の発展課題)
ここで右表のような3つの投資案があったとします。
投資の寿命はいづれも6年で、6年後の処分価額はゼロ、報酬は毎回年度末に生じるものとします。
表の見方は、例えば、投資案Aでは2000万円の初期投資に対して、年間700万円の報酬が6年間得られる予定です。 さて、資本の年利率を10%とすると、どの投資案を選ぶのが最も有利になるでしょうか。 |
|
解説:ある投資の有利さの程度を比較したり、複数の投資案の優劣を比較する場合には、それぞれの案の時間的な価値を調整した上で判定する必要がある。 資本の利率を割り引いて、時間換算をそろえる代表的な時点は次の3つです。分析の目的に応じてどの時点にそろえるかを選ぶ。
練習6: 財務関数 PMT() 等を利用したローン返済方法の比較
第2章で,財務関数 PMT()とPPMT() を利用してボーナスを併用したローン返済の例題を学びました.返済総額の内訳では、元金に対して利息の支払いがあまりに大きいことを知りました. その利息を少しでも減らすために,いくらかの金額を返済期間よりも先に臨時に返済し,利息の山を少しでも取り崩すことを「繰り上げ返済」といいます. ここでは繰上げ返済によって,元金の返済と利息の支払いがどのように変わるか調べてみる.
例題として,2500万円を借り入れ,それを25年間かかって毎月返済することにします.元利均等返済で返済するものとし,1年間の利子を 4.0% とします. まず,繰り上げ返済をしない場合,毎月いくらの金額を返済しなければならないのか,また,支払い期間が経過するにつれて元金返済と利息支払いの関係はどうなっているのか,について調べてみる. それから,繰り上げ返済による利息の軽減の様子を検討してみる. 次のようなシートを準備する.ここで,「支払回数」は返済「年」目の最初の月を表す.25年目の最終の支払い月は300回目となる.
A | B | C | D | E | F | G | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ローン返済の比較 | ||||||
2 | 注:各自の練習のために***部分は伏せてある | ||||||
3 | 借入金額 | \25,000,000 | |||||
4 | 返済年数 | 25 | |||||
5 | 年利率 | 0.04 | |||||
6 | 繰り上げ返済なし | 繰り上げ返済 | 49回目 | \1,000,000 | |||
7 | 月返済額 | \131,*** | 109回目 | \0 | |||
8 | |||||||
9 | 支払回数 | 元金返済分 | 利息支払分 | 年 | 元金返済分 | 利息支払分 | 月返済額 |
10 | 1 | \48,626 | \83,333 | 1 | \48,626 | \83,333 | \131,*** |
11 | 13 | \50,607 | \81,352 | 2 | \50,*** | \81,*** | \131,*** |
12 | 49 | \57,048 | \74,911 | 5 | \54,*** | \71,*** | \126,*** |
13 | 109 | \69,655 | \62,304 | 10 | \66,*** | \59,*** | \126,*** |
14 | 169 | \85,*** | \46,*** | 15 | \81,*** | \45,*** | \126,*** |
15 | 229 | \103,*** | \28,*** | 20 | \99,*** | \26,*** | \126,*** |
16 | 289 | \126,*** | \5,*** | 25 | \121,*** | \4,*** | \126,*** |
17 | 300 | \131,*** | \*** | \126,*** | \*** | \126,*** | |
18 | |||||||
19 | 返済総額 | \39,***,763 | \39,***,614 |
練習問題5.6:
若いサラリーマンが、乗用車の購入資金 150万円を、自動車販売会社の無担保のカードローン (年利12%) から短期間の予定で借りるとしよう。返済期間 12〜30ヶ月について毎月の返済額と返済総額を調べたい。借入金の返済方法として、元利均等返済と元金均等返済の2つの場合を考える。
具体的には、返済期間(月)を変量とし、毎月の返済額と返済総額が一覧できる計算表を作成しなさい。利用する財務関数は、元利均等返済法は PMT(...) 、元金均等返済法は ISPMT(...) である。それぞれの使用法はEXCELのヘルプをみること。
練習問題5.7:
支払回数、および繰り上げ返済による利息支払の減少
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