48.Who Wants to Be a Millionaire ? AGAIN

  アバディーン滞在中、欠かさず見ていた番組が“Who Wants to Be a Millionaire ?”だった。 この番組についてはすでに紹介したが、その後、そのページを読んだゼミ生の一人が、「今度、日本でも『クイズ$ミリオネア』という番組が始まりましたよ。多分、同じような番組です。ただし司会は上岡竜太郎ではなく、みのもんたです」というメールをくれた。これを読んだ小生は、『Who Wants to Be a Millionaire ?日本語版か。こりゃ帰国が楽しみだ』と思っていたものである。

  帰国後、早速『クイズ$ミリオネア』を見た。驚いたことに、スタジオのセットが同じであるばかりでなく、BGMもかなり似ている。しかも、クリス・タラントの決まり文句「Final Answer?」を、みのもんたも使っていた。
  「これはまさしく“Who Wants to Be a Millionaire ?”だ」
  賞金こそ、最高で1,000万円で、これは日本の法律上賞金の上限が決まっているから仕方のないことなのだろう。
  『英国でも面白かった番組だから、日本でも面白いハズだ』
  ところが、帰国後『クイズ$ミリオネア』を見たのは、最初の一回だけだった。つまらなかったのである。

  その理由は色々考えられる。たとえば、みのもんた。小生は上岡竜太郎をイメージしていたため、その落差が激しい。たとえば、そのタイトル。『クイズ$ミリオネア』は極めてわかりやすいけれど、なぜドル単位で表現している? たとえば解答者。かつてクイズ番組で優勝したことのある顔ぶれが挑戦している。
  そして最も大きな要因は、小生が初めに見たのが英国だったということだった。もし日本で『クイズ$ミリオネア』を見ていて、その後英国に行き、この番組を見たならば、『日本と同じ番組をやっている』といった程度の感慨しかもたなかったかもしれなかった。しかし実際には、英国で初めに見て、その後日本で見たのだから、印象が異なるのは当たり前で、迫力といった点で数段劣っている日本の番組に魅力を感じなかったのは仕方がないことかもしれなかった。

  ところで、アバディーン滞在中、クリスとパブに行って発見した面白いゲームがあった。それは、“Who Wants to Be a Millionaire ?”のゲーム機だった。£1を投入すると(50pだったかもしれない)、ビデオ映像にスタジオが映し出される。クリス・タラントが出てきてゲームが進行する。何問か正解すると、最大£20程度が戻ってくるという、日本ではお目にかからないようなゲーム機であった。それを見付けた我々は、パブに行くたび、そのゲーム機があれば熱中した。もちろん解答者はクリス。小生はとなりで声援を送る。物知りのクリスでさえ、5問程度正解が続いても、その上にはなかなか進めなかった。それでも、£2が戻ってきたときには、我々は驚喜したものである(結局、その後すってしまったが)。
  「この機械、日本に持って帰りたいよ。」
  小生は、半ば本気でクリスに話したものである。

  さて、昨年のクリスマス。
  12月に入ってアバディーンに向かってクリスマスカードを発送した。それと前後して、子供たちの友達を中心としてクリスマスカードが届き始めた。その中に、クリスとヒロコさんからのカードがあった。お二人からは、カードだけでなく、クリスマス・ギフトが届いた。その前に、我が家でも日本食のギフトを送ってはいたが、まさか我々にもギフトが届くとは思ってもいなかった。日本の慣習ならば、届いたらすぐに開封する、ということになるだろうが、クリスマスプレゼントは、25日までツリーの下に飾っておき、25日の朝に開くというのが本場の流儀。我が家でもきれいな包み紙に入ったプレゼントの中身を想像しながら25日を楽しみに待った。
  25日の朝、いくつかあった包みの一つの中から出てきたものは、ナント、“Who Wants to Be a Millionaire ?”PC版であった。

  早速インストール。そして起動。
  「おおーっ、まさしくあのBGM!」
  テレビと同じようなオープニングの画像に続いてクリス・タラントの声。
  『なつかしー』
  「さあ、これから100万ポンドに挑戦しましょう。まずは何人でプレイしますか?」
  このゲームは一人でもできるし、4名までの参加者で遊ぶこともできる。
  一人プレイを選択。
  「あなたの名前を入力して下さい。」
  名前を入力。
  「このゲームについての説明は必要ですか?」
  ルールはわかっている。ノーだ。
  すると、「さあ始めましょう」というクリス・タラントの声とともに、例のBGMが流れ、スタジオ風景そっくりの画像とともに、英国で見たのと全く同じ表示が映し出された。その中には、オーディエンス、フォン・ア・フレンド、フィフティ・フィフティを表すマークもあった。

  問題の出題形式も同じだ。問題が画面中央に映し出され、その下にAからDの選択肢がある。本物と違う点は、クリス・タラントが問題を読まないことだけ。解答方法は正解だと思うアルファベットをクリックするだけ。正解ならばクリス・タラントが「ウェルダン!」などと誉めてくれるし、不正解ならば「残念ながら・・・」と応えてくれる。絶えず流れているBGMも同じ。クリス・タラントは番組と同じように、解答者を励ましたり、ライフラインがまだ残ってますよなどとしゃべっている。

  「うひゃー、まったく同じだよ、コレ。」
  緊張しながら問題に答える。
  しかし、最大の問題は小生の英語力だ。
  問題文の意味がわからないのではない。出題の仕方は、中学レベルの疑問文だから何が問題になっているのかは理解できる。わからないのはその内容である。英国人なら誰でもわかる英国の地名、聖書のエピソード、あるいは同じ意味を持つ英語の言い換えなど、英国人ならいとも簡単に答えられるであろうと思われる問題がまったくわからない。第1問からオーディエンスを頼る。挙げ句の果てに、2,3問目に勘で答えて不正解だったりすると、クリス・タラントに「簡単な問題だったのに」などといわれる始末。最初の頃は、最低の保証額である£1,000(第5問)までに3つのライフラインをすべて使ってしまうことが多かった。

  遊び始めたのが年末年始の休暇中だったのが幸い(災い?)してか、あっという間にのめり込んでしまった。
  何日か遊んでいるうち攻略法が見え始めてきた。まず、言葉に関する問題は、わからないものであれば英和辞典を引くこと。もちろん、実際の番組では許されることではないが、基本的に英語力が不足している小生にはいい英語の教材に思えた。それらを覚えることに心掛けた。次に、何度かやっていると、同じ問題が出題される場合があることがわかった(それでも1,000問以上が収録されているという)。そこで間違った問題は、正解を覚えるようにした。さらにライフラインの使い方のヒントも得た。ライフラインのうち、オーディエンスの答えは8割方正解だ。しかし、中には、支持者が2つに分かれることがある。この場合、1%でも多い方が正解であるとは限らない。そんな場合は、フィフティ・フィフティを利用する。すると、支持者が多かった1つが残り、もう一方は消える。残ったものが正解である。
  侮れないのがフォン・ア・フレンド。フォン・ア・フレンドのボタンを押すと、英国で慣れ親しんだ電話の呼び出し音が2回聞こえ、小生の友達役が出る。クリスとなにやら話して回答。自信を持って回答する場合もあれば、「わかりません」といってすぐに切ってしまう場合もある。友達の回答が100%正解であることもない(とくにジェーンは要注意だ)。そんなときもフィフティ・フィフティを利用する(もしまだ使っていなければの話だが)。

  こうして多いときには2時間も遊んでいたが、最近、時間をかけた分だけ成果が出始めてきた。5問目までは、すんなりと正解することが多くなったのである。しかもここまではライフラインを使わないことも多くなった。5問目を正解すると£1,000である。最低保証額だ。ここから画面は番組と同じようなカメラワークになり、照明もだんだんスポットライト風になる。画像も一問ごとに変化する。BGMも緊張感が高まるようなものに変わる。
  「そうだ、こうやって1問ごと階段を上がっていったんだ。」

  しばらくすると、クリスからメールが届いた。
  「ミリオネアはどうだい?」
  このメールをもらうまでに、一度だけ10問正解があった。£32,000である。これは二つ目の保証額である。10問正解すると、画面にクリス・タラントが書いた小切手が映し出される。これも本物と同じ。
  「£32,000をゲットした。ミリオネアももうすぐだろう。」

  現在まで、10問正解以上が6度だ。その中には、11問目まで正解だったが(£64,000)、12問目で不正解で£32,000まで下げられたのが2度あった。
  自分でも笑ってしまったのは、運良く12問目まで正解したときのことであった。12問目は£125,000である。すでに£125,000を手にしているのである。13問目が映し出された。わからない。すでにライフラインを使い切っている。£125,000とはいえ、その金額が実際にもらえるわけではない。バーチャルだ。思い切って勘で答えることもできる。そこで間違ったとしても何の問題も起こらない。
  しかし賞金ランキングが自動的に登録される仕組みになってるので、もしここで不正解ならば、£32,000として登録されるだけである。これはどう考えても悔しい。実際の解答者よろしく、首を左右に振りながら£125,000をもらって帰る、という選択をしてしまった。クリス・タラントの賞賛の声を聞きながら・・・。

  クリス、ヒロコさん、本当にありがとう。[22/1/2001]

Turn to Top