47.Scottish Gasには気を付けろ!

  早いもので、まもなく帰国後3ヶ月になる。帰国当初は「やれやれ」と、ホット一息ついたものだが、最近、妙にアバディーンが恋しくなっている。

  帰国後つい最近まで小生を悩ませた事柄があった。滞在中も何かと小生を悩ませた、例のScottish Gasがこの話題の中心である。

  帰国に際して、家の賃貸契約の解除、電気、ガス、電話の精算をしなければならなかった(アバディーンは水道はタダだった)。
  家の賃貸契約の解除は、引越予定日の2ヶ月前には、家賃を支払いに行ったついでに不動産屋の担当者に伝えた。さらにメールが使えたのでメールでも連絡を入れた。すると、備品や什器、家具の検査をしたのち、デポジット(保証金)を返却するとの連絡があった。さらに、その作業は我々が帰国したあとになるだろうから、デポジットの送金先を教えて欲しいといってきたので、送金先と日本の自宅住所などを伝えた。引っ越しの日に、両者立ち会いの上検査するものとばかり思っていたので、先方の申し出にはちょっととまどったが、それが流儀であるとすれば従わざるを得なかった。
  ガスはScottishPowerから買っていた。この会社にもメールがあったので、引越日を伝えると、その日の5日前にメータを読んで知らせて欲しいといってきた。最後の請求書を送ってくれるというものだった。つまりは最後の5日間のガスの使用料は「おまけ」となるらしい。『何とアバウトな』と思ったが、これも流儀とあらば従わざるを得ない。引越日の2日前に請求書が送られてきて精算が終わった。
  電話は、まず格安電話会社AXSに電話をして帰国するむね伝えると、デポジットの精算まで2ヶ月程度かかるが、それは指定の口座に返金するとのことだった。次にBT。こちらは、まず町にあるBTショップに行って契約を解除することを伝えると、そこでは手続きができず、請求書に記載されている電話番号に電話をかけて手続きして欲しいといわれた。その電話番号に電話をすると、デポジットの精算は回線を切断後すぐにはできず、それまでの使用料と相殺の上、残額は日本に送るといわれた。それも流儀とあらば従わざるを得なかった。

  さて電気。Scottish GasはBritish Gas傘下の会社で、請求書などはScottish Gasから送られてきていた。ビッグ・カンパニーであるBritish Gasであるにもかかわらず、ホームページを持ちながら、引っ越し関連の問い合わせメールアドレスを持たず、したがってScottish Gasにもメールで連絡はできなかった。連絡方法は電話とファックスのみ。ファックスを持たなかった我々は、電話しか連絡の方法を持たなかった。
  まず、引越日を伝えるため、請求書の裏面に記載されている指定の番号に電話した。するとオペレータは電気かガスか聞いてきた。電気だと答えると、ちょっと待ってくれ、担当部局に代わるといって別の担当者が電話口に出た。引っ越しをするから精算したいと伝えると、この番号では手続きできないと先方は答え、別の電話番号を伝えてきてそちらに電話するようにといってきた。
  『ちょっと待て。請求書に記載されている電話番号はいったい何だ?』
  教えられた電話番号に電話し、引っ越しするので電気料金を精算したいと伝えると、先方は、あなたはどちらに電話をおかけですか、こちらはテキサコという会社ですと答えてきた。小生、Scottish Gasに電話をしたらこの電話番号を教えられたんです、というと、でもあなたはうちの会社とは取引はしていないでしょう? うちはガス会社ですからと答えてきた。
  『ちょっと待て。Scottish Gasの担当者がその電話番号を教えてくれたんじゃないか!』
  仕方なく、その電話を切って、またまたScottish Gasに電話。日本語なら文句をタラタラいうところだが、英語ではそんなこともできない。用件を伝えるのが先決。今度は、すんなりと手続き完了。こちらも精算は引越日までにはできず、帰国後日本の住所あてに請求書を送るので支払って欲しいといってきた。日本の自宅住所を伝えた。

  帰国して1週間ほどして、まずBTから最後の請求書が届いた。それによれば、最後の使用料とデポジットを相殺して£3.66を返金することが記載されていた。そしてその3日後、£3.66の小切手が送付されてきた。これを銀行に持ち込んで決済することもできたが、£3.66を手に入れるためにそれ以上の手数料がかかることはわかっていたので、この小切手は記念に取っておくことにした。
  また、不動産業者からは、帰国からほぼ2ヶ月が経過しようとしていた9月25日、デポジットの返金に関する明細書が送付されてきた。それによれば、食器類の補充やハウスクリーニングで要した費用の領収書の写しが添付されており、それを差し引いたデポジットは約75%が返金されることが記載されていた。子供もいたし、家のあちこちを汚していたので、デポジットはほとんど返金されないだろうと思っていただけに、75%が返金されたことは驚きだった。これはあらかじめ指定していた口座に入金された。

  さて、再び電気。Scottish Gasから最後の請求書が届いたのは8月上旬だった。そこには21ポンドほどの金額が請求されていた。
  ここで深刻な事態が発生した。それはその請求額をどのように支払うかということだった。請求書には、アバディーンで受け取っていたのと同じ支払用紙が添付されていた。アバディーンでは、それを郵便局か銀行に持ち込み、同時にそれに見合う現金か小切手を振り出して支払っていたが、日本ではそんな仕儀にはならない。何より日本の通貨は円だ、ポンドではない。請求書をそのまま郵便局や銀行に持ち込むことはできない。
  困り果てた小生はまず、銀行から国際送金しようと考えた。銀行から送金するためには、支払銀行とその支店名、受取人名、口座番号を知らなければならない。そしてこの場合、基本手数料、電信料、先方の手数料など、合計6,000円程度が余分にかかってしまう。日本円にしてたかだか4,000円程度の送金に6,000円の手数料は望外だった。しかし、その時点ではその方法しか思いつかなかった。
  支払用紙には取扱銀行とソートコードは記載されていたが、肝心の口座番号はなかった。そこで、Scottish Gasにその件を問い合わせようとした。請求書の裏面には各種問い合わせの電話番号やらファックス番号、郵送の場合の問い合わせ住所が記載されていた。とはいえ、記載されていた番号は英国内からはどこからでも通話料金が市内通話料金で済むという市外局番(0845)で、日本からはつながらないことが予想された。仕方なく、航空便で問い合わせることにした。
  問い合わせの手紙を送付して返事を待っていた8月末、待望の航空便が届いた。
  『踏み倒されないようにScottish Gasも迅速に行動しているな』
と思いながら開封すると、ナント、そこには以前にもお目にかかった「赤紙」が入っていたのである。つまり、督促状である。そして封筒の中にはそれ以外何も入ってはいなかった。
  『おい、またこれか?』
  今度ばかりは、本気で踏み倒そうかと思ったほどだ。こちらは支払う気がある。その振込先を問い合わせている。しかしそれには答えず、ただ単に督促状を送りつけてくるだけ。しかもご丁寧にも「もし支払いが困難な場合は云々」と例の文言。
  それでも根がまじめな小生は、何とか行動をとろうと思い、あれこれ調べ始めた。すると、郵便局で国際為替という制度があるという。これは、為替を送ることになるから、先方の口座番号など知らなくてもいい。『こりゃ、いい手段だ』と考えた小生は、8月末、郵便局で請求書に見合う金額のポンド建ての為替を取り込んだ。その日の為替相場は1ポンドが159円で、かなりの割安感があり、手数料の1,000円を支払っても損をした感じではなかった。
  『初めからこの方法を採れば良かった。でも為替相場は今が円高のピークだろうからちょうど良かったかもな。普段の行いがいいってもんだ』

  為替送金をして、これで支払関係はすべて決着したと思っていた9月中旬、郵便局から一通の封書が届いた。何気なく開封して中をみて飛び上がるほど驚いてしまった。そこには「受取人が受け取りを拒否したので、送金額を返金します。お近くの郵便局で現金をお受け取り下さい」としたためられていたのである。もちろん、先日支払った手数料1,000円は返金されなかった。
  『ど、どーいうことだ、これは!』

  この期に及んで万事休す。もはや残された方法は一つしかない。それは、現地のサムちゃんに支払いを代行してもらうことだった。
  メールで事情を伝えると快く引き受けてくれた。我々が採った方法は、まずサムちゃんの口座に送金し、それと同時にサインをした支払用紙をサムちゃん宛送付、サムちゃんが入金を確認した後、小生から届いた支払用紙を使って郵便局か銀行で支払う、その後、領収印が押された支払用紙を小生宛送り返してもらうというものだった。
  Scottish Gasから請求書が届いた段階で、その方法が思いつかなかったわけではなかった。しかし、アバディーンを離れたあともサムちゃんに手数をかけさせるというのが気の毒だったので、この手は封印しておいたのだった。
  この作業は、10月初旬、サムちゃんから領収印が押された請求書が送付され滞りなく完了した。

  アバディーン滞在中から何かと我々を悩ませたScottish Gasによって帰国後も悩まされ、収支関係のすべての決済が終わったのは、帰国してから2ヶ月半後のことであった。それにしても、結局、小生の問い合わせには、Scottish Gasから一切の返事がもたらされなかった。請求書の裏面に記載されていた問い合わせ先住所は、どんなときに使う住所なのだろうか・・・。[24/10/2000]


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