アバディーン市・外国語としての英語学校(EAL)

(English as an Additional Language Service, Aberdeen City Council)

  子供達が地元の小学校に入学手続きをすると同時に、アバディーン市が主催する「外国語としての英語学校」(EAL:English as an Additional Language)のサービスの提供を受けることになった。

  入学手続きと同時にもらったEALの案内冊子(Welcome to the EAL Service)によれば、このサービスは特別英語クラスとして、ある小学校で1972年に始まり(名称はESL)、その後、専門組織の編成などが行われ、現在の場所(Old Aberdeen地区にあるLinksield Academy内)で授業が行われ始めたのは1992年、EALと名称が変更されたのは1998年12月のことだ。ほぼ30年の歴史があるといえる。
  現在、EALには市内のプライマリー(小学校)・セカンダリー(中学・高校)40校から160名の児童・生徒が学んでいる。ちなみに、1999年5月現在、アバディーンには少なくとも55の異なる母国語を持つ60カ国以上の国々から児童・生徒が来ているという。

1.組織
  まず、EALは独立した教育機関としてアバディーン市当局で組織化されている。校長もいれば、副校長もいる。また6名の教員と1名の事務管理者が配置されている。
  学年暦も小学校と同じ。小学校が休みの時は休みだ。

2.対象
  案内冊子によれば、ナーサリー2年目(年長)、プライマリーP3〜P7、そしてセカンダリーS1〜S6の英語能力上級者は各学校のクラス内でEALの教員やその学校の教員のサポートを受ける。
  プライマリーP3〜P7、そしてセカンダリーS1〜S6に在籍し、英語がまったく話せない児童・生徒のみが、EALに通って特別の授業を受けることになる(プライマリーP1〜P2はこういったサービスの対象外のようだ)。
  我が家の子供達は、P3とP5に在籍しているので、週に2回(火曜日と木曜日)にEALに通っている。

3.費用
  EALへの参加には、一切の費用はかからない。

4.小学校との連携
  EALは絶えず、子供達が通う学校と連携を取って授業を進めている。
  EALに通い始めた当初は、EALの教員(これはEALの担任とは別の教員)が子供達が通っている小学校まで来て、英語の指導をしていた。
  子供達の小学校の担任とEALの担任が、それぞれの授業内容についてノートを使って情報交換している。これは子供が持っており、EALの担任と小学校の担任とのやりとりが我々にもわかるようになっている。また我々の意見や連絡事項を伝える時もこのノートを使う。

5.送り迎え
  毎週火曜日と木曜日は、朝9時までに小学校の事務室に行く。小学校は朝9時から授業が始まるので、いつもと何ら変わらない時間に登校すればよい。
  事務室で待っていると、アバディーン市当局が手配したタクシーが迎えに来る。タクシードライバーが、確かに手配したドライバーかどうかを事務員が確認してタクシーに乗り込む(だから事務室で待つわけだ)。
  授業は11時45分に終わり、またタクシーで小学校まで戻ってくる。ちょうど12時ぐらいになる。その日はホームデネスの日ということにして、そのまま帰宅して昼食を取り、午後の授業が始まる1時前に、また小学校に戻る。

6.クラス
  我が家の子供達と一緒の時間にEALの授業を受けているのは、P3〜P7までの7〜8名で、それがまた、学年に応じて2グループに分かれている。したがって、7〜8名の児童のために2名の教員が指導に当たっている。ちなみに長男のEALの担任はミセス・カーマロン(Mrs. Cameron)、長女はミセス・コーディネー(Mrs. Cordiner)。
  慣れてくると、小学校よりEALの方が面白いといい始めた。自分に合ったレベルで勉強ができること、そして何よりクラスメイトが自分と同じレベルの英語力なのだから。

7.内容
  これは我々大人でもやってみたいような内容だ。日本の最初の英語教育と同じように、話す力、聞く力、読む力そして書く力を総合的に高めるようにカリキュラムが編成されているようだが、少なくても小生が中学校で最初に習ったような「This is a 〜」などという表現はほとんどない。たとえば、話す力(発音を含む)は、身の回りのモノを英語で表現できるように勉強している。ある時は家にあるもの(屋根・煙突・壁など)を勉強していた。構文よりは単語力の重要性を思い知る(これは実感)。聞く力は日常の会話それ自体がすべて英語なので言わずもがなだ。また読む力は、絵が付いた薄いテキスト(10ページ程度)を使って、段階的に読み進めている。そのテキストが終わると次のテキストに移る。内容はいずれも動きのあるものばかりだ。「誰それが町に行った」「誰それが誰それに会った」など、動作を伴った内容で構成されている。文章の意味がわからなくても絵を見れば、何が書いてあるか、だいたいわかるようになっている。
  もちろん、ホームワークもある。これは書く力を高めるものだ。決して文法などない。たとえば虫食いの二つの文章がある。別の場所に単語(動詞)が二つ用意されている。正しいものをカッコ内に記入するという方法だ。なぜそれが入るのかは文法的には子供達にはわからない。しかし正解する。
  そして、EALの教員は、手作りの単語カードを持たせてくれる。子供達は帰宅後、それを読んでいる。

8.イベント
  日本でいうイベントとはちょっとニュアンスが違うが、週2回、しかも午前中だけの授業でも、いくつかのイベントを経験した。
  まず、セントアンドリュース・ディ(St.Andrew's Day)。これはスコットランドのパトロン、聖アンドリュースの日で祝日(11月30日)。この日の意味を教えてもらったようだ。スコットランドの旗がセントアンドリュース十字旗であることも学んだ。
  バーンズ・ナイト(Burns Night)。1月25日。ロバート・バーンズはスコットランドを代表する詩人(オールド・ラング・サインの作詞者)。彼を忍んでこの夜、スコットランドの伝統的料理(とくにハギス)を食べることを教えてもらった。
  ユニセフ・ディ(Unicef's Day)。1月27日のEALで、ユニセフの活動に賛同し(50pの寄付持参)、それぞれの国を愛するために、民族衣装で登校することになった。事前に「キモノを着てきて下さい」と要請を受けたが、あいにく当地にキモノは持参していなかった(わずか1年だし、寒いところだし必要ないと思っていた)。その代わりとして、「国旗の色の服でもいい」ということだったので白と赤が入った私服を着ていった。日本でもユニセフ募金はあるが、こんなことをするだろうか(小生はいいことだと思うが)。
  パンケーキ・ディ(Pancake Day)。これは古い英国の行事(節句のようなもの?)のようだった。その日は実際に、パンケーキの材料を準備して焼いて食べたそうだ。
  そうやってそれに関する英語を勉強すると同時に、いろいろな行事に対する知識も学べるところがEALだ。

9.父母面談
  これまでに、一度、父母面談があった。我々の英語すらおぼつかないというのに父母面談とは笑止千万。しかし「どんなところで勉強しているのか見てみたい」という思いもあって行ってみた。
  小生の子供は二人の先生にお世話になっているので、二人の教員と面談。
  そこでは、現在どんなことをやっているかを、実際の教材や子供の書いたものを示されながら説明を受けた。今後どのようなことをするのかも聞いた。また、子供の達成度も聞いた。さすが、ビギナーに英語を教えているだけあって説明はわかりやすかった。ただ困ったのは「何か質問は?」といわれたときだった。

10.父母会
  子供がEALで勉強している親のための父母会がある。これは父母面談と同じ日同じ時間にミーティングを持つが、小生は参加しなかった。会場をのぞいてみると、お茶を飲みながら情報交換しているようであった。参加者はそれほど多くはなかった。

11.成績表
  子供達は3月の終わり頃、到達度を示した成績表を持ち帰ってきた。担任が一人一人の児童について記載し、校長が検査したものだ。
  そこには、話す力、聞く力、読む力そして書く力がどの程度の到達度なのか、それは標準的な到達度なのか、それとも進んでいるのかなどが記載されていた。


Turn To Top