デルガーシィ城( Delgatie Castle)

  カッスル・トレイルの中で、現在、唯一HSにもNTSにも管理されていないお城が、このデルガーシィ城である。そのせいか『地球の歩き方1999〜2000年版』や1995年に発行されたグランピアン・ハイランズ&アバディーン・ツーリスト・ボードの日本語版の小冊子でも、このお城はカッスル・トレイルの中には含まれてはいない。このお城がカッスル・トレイルの中で示されて紹介されているのは、アバディーン&グランピアン・ツーリスト・ボード発行の2000年版の『カッスル・トレイル・リーフレット』だけである(それにしても、グランピアン・ハイランズ&アバディーン・ツーリスト・ボードとアバディーン&グランピアン・ツーリスト・ボードが同じ団体なのかは不明)。

  デルガーシィ城は4月2日からオープンした。我々が訪れたのは4月の下旬のことであった。
  アバディーンからは、A947を北上してタリフ(Turriff)を目指す。A947は港町バンフ(Banff)が終点。ダフハウスがある町である。タリフからバンフまではわずか11マイル。アバディーンよりはバンフの方がはるかに近い町がタリフである。
  A947は以前にも走ったことがあるが、アバディーンからタリフ方向に走ったのは今回が2度目。しかも前回はタリフよりもだいぶ前で方向を変えたので、実質的には今回が初見参といった感じだ。この道路も極めて走りやすい道路。道の両側にはなだらかな丘が広がり、草をはむ羊たちが気持ちを和ませてくれる。4月は羊のベビーラッシュ。かわいらしい子羊たちも見える。

  アバディーンの自宅を出て50分、約35.2マイル走ってデルガーシィ城の駐車場に到着。A947からデルガーシィ城に入るには、タリフの町を過ぎて右折しなければならないが、そこはカッスル・トレイル、ちゃんと路側に標識が出ているので迷うことはない。

  道路からお城の駐車場までの道は非常に狭い。自動車はすれ違えない。両脇は背の高い木々に覆われているため、幹にコケが生えている。日が入らないのだ。その一本道を走って駐車場に入る。

  駐車場からはお城の裏側が見える。徒歩で正面に通じる小道を歩くことになるが、その小道のまわりは、現在、草花の育成中のようで何とも殺風景。
  正面には、外壁に彫刻があったり、趣のある置物などがある。お城の内部に入るための小さな門(というよりドアといったイメージ)には、両側に一角獣が置かれている。

  まずは入館料を支払う。大人は£2.50、子供は£1.50。
  入館料を支払うと、係りの女性が「日本から来たのですか」と声をかけてきた。「そうです」と答えると、「昨年東京に2週間ほど行ってきました。皆さんも東京からですか」という。「我々は札幌です」と答えると、札幌を知っているという。さらに、小生がアバディーン大学で研修中だというと、彼女は「私もアバディーン大学で日本のことについてのセミナーに昨年参加しました」という。『へー、こんなところにも日本に関心がある人もいるんだなあ』と感心してしまう。

  さてお城の見学。このお城は、各部屋にその部屋を説明した紙片が置かれているだけで、しかも英語なので理解できないものもあった。
  何といってもこのお城はつい最近まで使われていたお城なのだ(ある部屋の陰にはユニットバスの一部が見えていた)。一般に公開されるようになったのはほんの数年前らしい。調度品などがそのままの状態で設置され、今でもそのまま生活できそうな雰囲気だ。


正面右手
   
お城と裏庭

  このお城の城主はヘイ(Hay)家。何でもこのお城は1000年前まで遡れるという。現存するお城としてはもっとも古いものの一つだ。もっとも現在あるものはせいぜい200年前に作られたものだ(ビクトリア様式というらしい)。それらの一部は、ヒストリック・スコットランドが調査鑑定中らしい(ということは、いずれHSの管理になるかもしれない)。興味深いのは、螺旋階段は石造りだが、各部屋は板敷きということ。きれいに磨かれた板の上をそのまま歩くわけで、ジュータンなどはない。
  またヘイ家の人々は東洋に造詣が深いらしく、各部屋に仏像や屏風、陶器などが置かれていた。1世紀頃に作られた仏像もあった。アフガニスタンで入手したらしい。多分、訪れた友人などに見せびらかした自慢のお宝だったかもしれない。

  デルガーシィ城は、バルベニー城と同じように、悲劇のスコットランド女王メアリーが訪れたことが自慢であるらしい。それは1562年のことでわずかに3日間だけだった。この1562年はメアリーがバルベニー城を訪れた年なので、もしかすると同じ時期に訪れたのかもしれない(しかし、何もわからずにお城巡りをはじめたのに、何となく状況がわかってくるから不思議だ。まさに「門前の小僧」)。

  1階から4階まで見学し係りの女性に礼をいって外に出る。外は今にも雨が降りそうだった。
  庭の方向を見ると、まず、庭に向かって設置されている2門の大砲が目を引く。使われていたものかどうかは不明ながら、今まで訪れたお城にはなかったような気がする。また、広大な庭(芝だけで草花はない)には、数頭のロバが草をはんでいた。

  最後に一つ。『カッスル・トレイル・リーフレット』によれば、このお城は実は一般客が宿泊できる。つまり今でも使えるお城なのだ(我々が見たユニットバスはそのためのものかもしれない)。フォー・ポスターといわれる天蓋のあるベッドで寝泊まりして、一週間£189〜£490だという。残念ながら、小生はまだ、泊まってみたいとは思わないが(ちょっと恐い)。


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