応用簿記原理を履修する上で、ちょっと困ったときに読んでみてください。基礎編もよろしく(簿記原理履修者向け)。
資産
現金・商品・備品・建物など企業に役立つ財貨や、売掛金・貸付金などの権利の総称。
やや乱暴にいえば、売ろうと思えば売れるものの集まり(現金は違うけど・・・。そして繰延資産は売れないものだけど)。
負債
買掛金や借入金など、将来一定の金額を支払わなければならない義務。
「今日200円を借りた」「今日商品を仕入れて代金50円を支払っていない」ということは、「将来200円を返さなければならない」「将来50円を支払わなければならない」ことを意味する。支払義務のあるものの集合体が負債(あとで触れるけど、支払義務のあるものばかりではなく、支払義務を持たない負債もある)。
資本
企業が経営活動を行うための元手。
費用
給料・交通費・支払家賃など、資本が減少する原因。
たとえば、資本金が100円で、それが全額現金ならば、資産100円=資本100円となる(200円あるわけではないよ!)。
その現金(資産)のうち10円を交通費として使ったとすれば、資産が10円だけ減少することになる。資産と資本は釣り合っていなければならないので(貸借平均の原理)、資産が90円になれば資本も90円になる。なぜ資本が90円になったのかといえば、資産の一部が交通費という費用になった(性質が変わった)ためだと考える。つまり、資産が費用に変われば、その分だけ資本が減少する(見方を変えれば、資産というものは、いつかは費用に性質を変えるものの集合体であるともいえるわけ)。「資本が減少する原因」というのは、このように考えることによって理解できる。
または、収益を獲得するために犠牲になったものを金額表示したもの。
収益
売上高、受取利息や受取家賃など、資本が増加する原因。または、あるものを犠牲にして獲得されたものを金額表示したもの。
これも、費用と同じ理屈で考えてみよう。
貸借対照表
一定時点(期末=決算日)の財政状態を一覧表示したもの。期末に財産がどれだけ残っているかを表示する一覧表。資産・負債・資本によって構成される。貸借対照表から資産=負債+資本という等式が成り立つ。
損益計算書
一定期間(期首から期末まで)の経営成績を計算したもの。期首から期末までの間にどれだけ儲けたかを計算した表。費用・収益によって構成される。損益計算書から費用+利益=収益という等式が成り立つ。ここから利益=収益−費用という等式で利益は計算される。
「損益計算表」ではないのでご注意を!
決算
帳簿を締め切ること。帳簿を締め切る日は決算日。通常年1回。
企業会計は、会計期間を定めて利益を計算することを前提にしている。計算対象の始まりを期首、その終わりを期末といい、期首から期末までの期間にどれだけ利益を上げたかを計算する。そのときの期末が決算日ということになる。
入金伝票
入金取引を記入する伝票。現金の受け取りがある場合に、つまり借方「現金」と仕訳する取引の場合に使用する。伝票それ自体が赤インクで印刷されるため「赤伝」などといわれることがある。
出金伝票
出金取引を記入する伝票。現金の支払いがある場合に、つまり貸方「現金」と仕訳する取引の場合に使用する。伝票それ自体が青インクで印刷されるため「青伝」などといわれることがある。
仕入伝票
5伝票制を採用している場合に、商品の仕入取引で使用する。仕入戻しや値引きは赤字で記入する。
仕入伝票を使う場合には、仕入がすべて掛けで行われたと仮定して処理する。
たとえば、「商品100円を掛けで仕入れした」という取引の場合は、無条件で仕入伝票に記入する。でも「商品100円を現金で仕入れした」という取引の場合には、出金伝票に書くか、仕入伝票に書くか迷ってしまう。そこで、この場合にも、@とりあえず掛けで仕入れたことにして仕入伝票に記入し、Aただちに現金支払いを行ったと考えて、出金伝票に記入するわけである。つまり、伝票を2枚使って処理するわけ。
売上伝票
5伝票制を採用している場合に、商品の販売取引で使用する。売上戻りや値引きは赤字で記入する。
仕入伝票と同様に、売上伝票を使う場合には、販売がすべて掛けで行われたと仮定して処理する。
振替伝票
5伝票制を採用している場合に、入金・出金・仕入・売上以外の取引で使用する。
仕訳日計表
1日の取引を勘定科目ごとに金額を集計する一覧表。
簿記上の現金
資産勘定。
あえて簿記上の現金と表現している意味を考えよう。
簿記上の現金には、通貨(いわゆる現金)以外に、他人振出の小切手・郵便為替証書・振替貯金払出証書・利払期の到来した公社債の利札(りふだ・りさつ)・配当金領収書などがある。これらを所有している、あるいは受け取った場合には、借方「現金」と処理する。これらは通貨と同じ性質を持っていると考えるわけ。
(借方) | (貸方) | |||
受取時の処理: | 現金 ×× | (適当な勘定科目) ×× | ||
当座預金(当座でも可)
資産勘定。
銀行預金、郵便貯金など、銀行や郵便局にお金を預けることはよくある。簿記では、たとえそれが自分のお金でも、財布にある(手許にある)お金と区別して処理する。
銀行との契約によって開設される当座預金は、出し入れ自由で無利息の口座。通常、当座預金の引き出しには小切手が使われる。したがって、簿記では、「小切手を振り出した」場合には貸方「当座預金」と処理することになる。ただし「小切手を受け取った」場合には、借方「現金」と処理することに注意。
(借方) | (貸方) | |||
小切手の受取時の処理: | 現金 ×× | (適当な勘定科目) ×× | ||
小切手の振出時の処理: | (適当な勘定科目) ×× | 当座預金 ×× |
当座借越(当座でも可)
負債勘定。
銀行の当座預金口座に1,000円しか残高がないのに、1,200円と書いた小切手を振り出し、その小切手を受け取った相手が銀行に持ち込んでも、200円が不足しているので決済できない。これでは円滑な経営活動が行えない。信用問題にも発展する。そこで、そういった事態に備えて、あらかじめ銀行との間で契約を結び、万が一に備えることになる。その契約を当座借越契約という。契約を結んでいれば、上記の例の場合、200円分は銀行が立替払いしてくれる。自分が支払うものを一時的に銀行に立て替えてもらうのだから、いずれ銀行に立替額を返済する必要がある(だから負債)。
(借方) | (貸方) | |||
小切手の振出時の処理: | (適当な勘定科目) ×× | 当座預金 ×× | ||
当座借越 ×× |
現金過不足
特殊勘定(資産でもない、負債でもない・・・)。
朝500円を持って家を出た。講義を終え、帰宅して財布を見ると100円残っている。400円使ったことになる。レシートを見ながら支出をこづかい帳に記入すると、350円しか記帳できない。50円は何に使ったのだろうか?
本来ならば、財布にある現金残高と、こづかい帳の残高は一致するハズである。しかし、一致しないことがままある。考えて原因がわかればいいけれど、収支の回数が多くなるとただちに原因がわからない場合もある。
そこで、原因が判明するまで、現金の実際有高と帳簿残高の差額を処理しておく勘定として「現金過不足」を使用する。現金の実際有高が帳簿残高より多い場合には「現金××/現金過不足××」と処理し(現金が増えたことにする)、反対の場合には「現金過不足××/現金××」と処理する(現金が減ったことにする)。
決算日までに現金が不明の場合には、過剰額は「雑益(雑収入)」、不足額は「雑損(雑損失)」勘定に振り替えて、「現金過不足」勘定を整理する(帳簿上なくす)。
(借方) | (貸方) | |||
現金の実際有高>帳簿残高: | 現金 ×× | 現金過不足 ×× | ||
現金の実際有高<帳簿残高: | 現金過不足 ×× | 現金 ×× |
銀行勘定調整表
決算日における銀行側の当座預金残高と、銀行側の残高証明書の金額との不一致を明らかにする表。
不一致の中で企業側の修正が必要なものは修正仕訳を行って企業側と銀行側の当座預金残高を一致させる。
貸借対照表の「当座預金」残高は、修正後の残高になる。
有価証券
資産勘定。
他社が発行した株式、社債、あるいは国や地方公共団体が発行した公債(国債・地方債)を購入したときに処理する勘定。取得原価+手数料等で処理する。自分の会社が発行した株式や社債を処理する勘定ではないことに注意。
売買目的有価証券
資産勘定。
文字通り、もっぱら売ったり買ったりすることを目的に保有する有価証券。なぜ売買目的の有価証券を保有するのか考えてみよう。
満期保有目的有価証券
資産勘定。
国債などを保有するのは、売買目的というよりは長期の利殖(半期ごと一定の利子を受け取る)ことを目的としている。このような場合には、いったん保有した国債は満期(10年とか20年とか)まで持ち続けるのが普通。こういった国債や社債を保有した場合、満期保有目的有価証券勘定で処理する。しかし、満期保有かどうかは会社側の判断によるので、かなり主観的な処理になる。投資有価証券勘定でも可。
その他有価証券
資産勘定。
売買目的でも満期保有目的でもなく購入した有価証券を処理する勘定。じゃあ一体どんな目的で保有するのだろうか・・・。
有価証券の売買
売買目的有価証券を保有する目的は、第一義的に値上がり益(キャピタルゲイン)を得ようとするから。たとえば、東京証券取引所に上場されているある株式を1株1500円で買い入れたとしよう。株価は時々刻々変化している。そこで、買ったときより高くなったとき(このケースでは1501円以上)に売却すれば、もうけが出る。その利益は商品売買以外から得られた利益だ。これも会社にとっては魅力的。というわけで、会社に余剰資金があれば他社の株式を買い、売却時を見定めて値上がり益を狙うわけだ。しかし、かならず値上がりするとは限らないので、損失を出すこともある。
端数利息
社債や国債は、年2回利息の支払いがある。その支払日は3月31日と9月30日に決まっている。一方、社債や国債を購入するのは必ずしも4月1日や10月1日というわけではない。Aさんが持っている社債を4月10日に買ったとすれば、本当なら4月1日から4月10日までの10日分の利息はAさんの取り分だ。しかし次の利息の支払日(利払日)は9月30日。このときに社債を保有しているのはあなただからあなたが半年分の利息を全額受け取ることになる。これではAさんがかわいそうだ。そこで、利払日の翌日以外に社債を買ったときには、前利払日から購入日までの利息分をAさんに支払っておくということになる。このような前利払日から購入日までの利息を端数利息という。この端数利息は有価証券利息勘定で処理する。
有価証券利息
収益勘定。
社債の利息を受け取ったときに処理する勘定。端数利息を支払った場合にもこの勘定で処理する(ただしこの場合には収益の消滅ということで借方で処理する)。受取利息や社債利息という勘定で処理してもいい。
有価証券の期末評価
有価証券の保有目的に応じて評価方法が異なる。
売買目的の場合には時価で評価する。満期保有目的の場合には取得原価。ただし、満期保有目的で保有している社債・国債の場合、もし額面価額と取得原価に差額がある場合には、償却原価法という特殊な処理が必要になる。
その他有価証券評価差額金
売買目的でもなく、満期保有目的でもなく保有している有価証券の原価と時価の差額を、決算時に処理する勘定。
償却原価法
満期保有目的で保有している社債・国債で、額面価額と取得原価に差額がある場合、その差額を満期日までに均等額ずつ加減する方法。満期日には取得原価が額面金額と一致するようにする方法。額面1000円の社債(満期日まで4年)を800円で買ったとすれば、200円が差額になる。この差額は、あなたにとっては「前もって受け取った利息」と同じ意味になる(平べったくいえばあなたの利益になる)。それを一括して当期の利益として計上するのではなく、満期日までに毎年同じ金額だけ利息を受け取ったことにし(この場合200÷4=50円)、その利息分だけ取得原価に加算していけば、最終的には額面金額になる。
(借方) | (貸方) | |||
毎決算時の処理: | 満期保有目的有価証券 ×× | 有価証券利息 ×× | ||
差入有価証券
資産勘定。
新たなお金を借りるために、保有している有価証券を銀行などの貸し手に、担保として渡したときに処理する勘定。お金の返済をしたときには相手から返してもらう。差入保証有価証券、担保差入有価証券勘定でも可。
保管有価証券
資産勘定。
お金を貸した相手から担保として受け取った有価証券を処理する勘定。お金を返済してもらったときには相手に返す。担保受入有価証券、預り保証有価証券でも可。
貸付有価証券
資産勘定。
保有する有価証券を誰かに貸し付けたときに処理する勘定。
借入有価証券
負債勘定。
取引先などから相手が保有する有価証券を借り入れたときに処理する勘定。
手形の裏書
他人(Aさん)振出の手形で、現在自分が持っているものを、第三者(Cさん)に渡すこと。将来の支払いを約束したものが手形で、それを支払日以前にCさんに渡してしまうと、手形に記載された代金を実際に受け取るのは自分ではなくCさんということになる。つまり、手形代金を受け取る権利を手放してしまうことになる。でも、Aさんが何らかの事情でCさんに代金を支払えなくなったらどうなるか。そのときにはあなたがCさんに支払う義務が発生する。裏書には偶然発生する支払い義務があることに注意。
手形の割引
他人(Aさん)振出の手形で、現在自分が持っているものを、支払日前に銀行に持ち込んで現金化してもらうこと。たとえば、Aさんから3ヶ月後に支払日が設定された10,000円の手形を受け取ったとき、あなたは3ヶ月間その手形を持ち続けなければならない。支払日よりも前に現金が必要になったとき、Aさんから受け取った手形を銀行に持っていって現金化してもらうことができる。このとき、代金支払日にはあなたではなく、銀行がその代金10,000円を受け取ることになる。銀行は、実際の支払日よりも早く現金化してくれるので、あなたは銀行に手数料を支払う必要がある。
融通手形
商業手形に対する手形の総称。商業手形は商品売買にかかわって使われる約束手形や為替手形のこと。融通手形は、お金の貸し借りの際に使われる約束手形。
裏書義務見返
特殊勘定。
「うらがきぎむみかえり」と読む。手形を裏書した際に、その事実を備忘的に帳簿に書きとどめ、偶発債務に備えるために使う勘定。このような備忘的な勘定処理を対照勘定処理ともいう。
常に次のような形式で発生し、その事実が消滅したときには(裏書した手形が決済されたり不渡になった場合)、貸借逆に記入して帳簿から消す。
(借方) | (貸方) | |||
手形を裏書譲渡した時: | 仕入 ×× | 受取手形 ×× | ||
裏書義務見返 ×× | 裏書義務 ×× | |||
裏書した手形が決済された時: | 裏書義務 ×× | 裏書義務見返 ×× |
偶発債務
何らかのアクシデントであなたに降りかかってきた支払義務。手形を裏書した場合や割引した場合に、その恐れがある。
裏書義務
特殊勘定。
→裏書義務見返
裏書手形
特殊勘定。
手形を裏書したときに、偶発債務をあらわすために使う勘定。実際の勘定(この場合、受取手形)を減らさずに、偶発債務をあらわす勘定(この場合、裏書手形)を使って処理する方法を評価勘定処理という。偶発債務が消滅したときには、実際の勘定を帳簿上減らす仕訳をする。
(借方) | (貸方) | |||
手形を裏書譲渡した時: | 仕入 ×× | 裏書手形 ×× | ||
裏書した手形が決済された時: | 裏書手形 ×× | 受取手形 ×× |
割引義務見返
特殊勘定。
「わりびきぎむみかえり」と読む。手形を割引した際に、その事実を備忘的に帳簿に書きとどめ、偶発債務に備えるために使う勘定。このような備忘的な勘定処理を対照勘定処理ともいう。
常に次のような形式で発生し、その事実が消滅したときには(裏書した手形が決済されたり不渡になった場合)、貸借逆に記入して帳簿から消す。
(借方) | (貸方) | |||
手形を銀行で割引した時: | 現金 ×× | 受取手形 ×× | ||
支払利息 ×× | ||||
割引義務見返 ×× | 割引義務 ×× | |||
割引した手形が決済された時: | 割引義務 ×× | 割引義務見返 ×× |
割引義務
特殊勘定。
→割引義務見返
割引手形
特殊勘定。
手形を銀行で割引したときに、偶発債務をあらわすために使う勘定。実際の勘定(この場合、受取手形)を減らさずに、偶発債務をあらわす勘定(この場合、割引手形)を使って処理する方法を評価勘定処理という。偶発債務が消滅したときには、実際の勘定を帳簿上減らす仕訳をする。
(借方) | (貸方) | |||
手形を銀行で割引した時: | 現金 ×× | 割引手形 ×× | ||
支払利息 ×× | ||||
割引した手形が決済された時: | 割引手形 ×× | 受取手形 ×× |
手形の更改
満期日(支払日)に、現金の支払いができずに、先方に支払いを猶予してもらうようお願いすること。あなたは、受取人(Cさん)に手形を振り出した。しかし、支払日になっても現金が準備できない。そこでCさんにお願いして支払いを猶予してもらうことにした。このとき、手形の支払日は確定しているので、以前にCさんに渡した手形を回収し、新たに手形をCさんに交付することになる。これによって支払日が延期されることになるので、それに見合う利息の支払いが必要。
(借方) | (貸方) | |||
振出人の処理: | 支払手形 ××× | 支払手形 ××× | ||
支払利息 ×× | 現金 ×× | |||
受取人の処理: | 受取手形 ××× | 受取手形 ××× | ||
現金 ×× | 受取利息 ×× |
手形の不渡り
手形代金が満期日に決済されないこと。
なお、不渡りの際に使用する「不渡手形」勘定は、資産勘定。通常の「受取手形」勘定とは性質が違う手形であるということを明らかにするための勘定科目。
(借方) | (貸方) | |||
保有していた手形が不渡りになった時: | 不渡手形 ××× | 受取手形 ××× | ||
現金 ×× |
荷為替手形
商品代金の早期の回収のために振り出す為替手形。通常、遠隔地への商品の売り上げに際して「売り手」側が振り出す。
荷為替手形は、商品代金の70〜80%で、残りは売掛金となる。振り出した荷為替手形は、銀行に持ち込んで、手数料を支払って現金化する。
(借方) | (貸方) | |||
荷為替を銀行に持ち込んだ時: | 当座預金 ××× | 売上 ××× | ||
支払利息 ×× | ||||
売掛金 ××× |
生産高比例法
定額法や定率法と同じく減価償却方法の一つ。減価償却の計算を毎年(毎期)の資産の利用度に応じて行う。前提として、その資産の全利用量をあらかじめ決めておかなければならない。たとえば、自動車を買ったときの金額が200万円、残存価額は20万円、その自動車の総走行可能距離を10万qとする。最初の年に2万q走ったとすれば、この年の減価償却費は(200万−20万)×2万q/10万q=36万となる。
繰延資産
適正な期間損益計算のために資産として認められる勘定科目。たとえば、会社を創立するためにかかった準備費用は、本質的に費用だ。しかし、その費用は、将来の収益を獲得するために費やされたと考えることもできる。そこで、こういった性質を持つ費用は、支出した年に全額費用計上するのではなく、いったん、資産として計上し、一定期間にわたって少しずつ費用化することが認められている。このような資産を繰延資産といい、損益計算書ではなく、貸借対照表の資産の部に計上することができる。いわば、「本籍:費用、現住所:資産」ということになる。
繰延資産として認められているものは、創立費、開業費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金などがある。
なお、繰延資産については会社法での取り扱いが商法とは異なったこと、また企業会計基準においても検討が進められているので、今後、どれが繰延資産として認められるかは、流動的である。
創立費
資産勘定。
会社を設立するまでにかかった費用。設立登記費用や定款を認証してもらうために公証人役場に支払った費用などがこれにあたる。
繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
もし創立費を資産の部に計上する場合には、償却期間は支出後5年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。
(借方) | (貸方) | |||
創立費計上時: | 創立費 ××× | 現金(当座預金) ××× | ||
決算時: | 創立費償却 ×× | 創立費 ×× |
開業費
資産勘定。
会社設立から実際の開業までにかかった準備費用。広告宣伝費や従業員給料などがこれにあたる。
繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
もし開業費を資産の部に計上する場合には、償却期間は支出後5年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。
(借方) | (貸方) | |||
開業費計上時: | 開業費 ××× | 現金(当座預金) ××× | ||
決算時: | 開業費償却 ×× | 開業費 ×× |
新株発行費
資産勘定。
資金調達の必要などから、新しく株式を発行したときにかかった費用。告知のための新聞への告知費用など。
繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
もし新株発行費を資産の部に計上する場合には、償却期間は発行後3年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。
(借方) | (貸方) | |||
新株発行費計上時: | 新株発行費 ××× | 現金(当座預金) ××× | ||
決算時: | 新株発行費償却 ×× | 新株発行費 ×× |
なお、会社の設立に際して株式を発行した場合には、その発行費用は創立費に含める。新株発行費は、あくまでも会社が開業してから新しく発行する株式の場合に使う勘定であることに注意。
負債性引当金
引当金はすべて負債勘定。そしてとくに、貸借対照表の負債の部に表示する引当金を総称して負債性引当金と呼ぶ。これは、評価性引当金と区別するためにあえてこのように表現している。
ただ、注意しなければならないことは、負債性引当金には、債務としての性格を持つもの(条件付き債務としての引当金)と債務としての性格は持たずに、会計上の必要性から引当金に分類されるもの(会計上の引当金)とがあることである。
なお、簿記の問題とは直接関係ない話ではあるが、法人税法では、負債性引当金としての性質を持つ引当金のうち、返品調整引当金だけが損金計上が認められている(法人税法53条)。
評価性引当金
資産評価の必要上、特定の資産のマイナス項目として、資産の部に表示する引当金。代表は正味の売上債権(売掛金や受取手形)を表示するために資産の部に掲載される貸倒引当金。もちろん、貸倒引当金それ自体は負債勘定。
なお、貸倒引当金は、法人税法で損金計上が認められている(法人税法52条)。
製品保証引当金
負債勘定。
たとえば、テレビやビデオなどの家電品を購入したときに保証書が付いている。そこには「製品保証1年間」などという説明がある。これは、購入後1年間は、通常の使用により故障や不具合があったときには、無償で修理に応じるという、メーカー側のユーザに対する契約である。ということは、メーカー側は、「もしかしたら万に一つ、故障するかもしれない」ということを考えているのであり、それへの対応を考えているわけである。このメーカー側の対応を勘定科目であらわしたものが製品保証引当金。
(借方) | (貸方) | |||
引当金計上時(決算時): | 製品保証引当金繰入 ××× | 製品保証引当金 ××× | ||
契約にしたがって修繕を行った時: | 製品保証引当金 ×× | 材料等(適当な勘定科目) ×× |
修繕引当金
負債勘定。
将来のメンテナンスの必要に備えて設定される引当金。
(借方) | (貸方) | |||
引当金計上時(決算時): | 修繕引当金繰入 ××× | 修繕引当金 ××× | ||
修繕を行った時: | 修繕引当金 ×× | (適当な勘定科目) ×× |
特別修繕引当金
負債勘定。
将来の定期的かつ大規模メンテナンスの必要に備えて設定される引当金。
(借方) | (貸方) | |||
引当金計上時(決算時): | 特別修繕引当金繰入 ××× | 特別修繕引当金 ××× | ||
修繕を行った時: | 特別修繕引当金 ×× | (適当な勘定科目) ×× |
なお、実際の修繕額が、計上していた引当金より多かった場合には、引当金取崩額と実際の支払額との差額を「修繕費」勘定で処理する。
(借方) | (貸方) | |||
引当金計上時(決算時): | 特別修繕引当金繰入 ××× | 特別修繕引当金 ××× | ||
修繕を行った時: | 特別修繕引当金 ××× | (適当な勘定科目) ××× | ||
修繕費 ×× |
退職給付費用
費用勘定。
退職給付引当金を計上するときの相手勘定。
退職給付引当金
負債勘定。
従業員の退職に備えて、退職時に支給する退職金のうち、当期に計上すべき引当金。
(借方) | (貸方) | |||
引当金計上時(決算時): | 退職給付費用 ×× | 退職給付引当金 ×× | ||
退職金を支払った時: | 退職給付引当金 ××× | 現金(普通預金) ××× |
貸倒引当金
負債勘定。
売上債権(売掛金や受取手形)の回収不能に備えて計上される引当金。
差額補充法
貸倒引当金の計上方法の一つ。当期に計上すべき金額と帳簿残高との差額を計算し、その差額分だけ計上する。
たとえば、こづかい帳に500円の残高があるとする。これを何らかの理由によって700円にしたい。差額は200円だ。こづかい帳の金額を700円に増やすためには200円だけを記録すればいい。つまり差額だけを500円に追加するわけだ。
これを貸倒引当金の場合に当てはめて考えると次のようになる。
(借方) | (貸方) | |||
引当金計上時(決算時): | 貸倒引当金繰入 200 | 貸倒引当金 200 |
洗替法
貸倒引当金の計上方法の一つ。貸倒引当金の帳簿残高を、一度取り崩して、改めて当期に計上すべき金額を計上する。
たとえば、こづかい帳に500円の残高があるとする。これを何らかの理由によって700円にしたい。このとき、こづかい帳の残高をいったん「チャラ」にして、改めて700円を計上すればいい。
これを貸倒引当金の場合に当てはめて考えると次のようになる。
(借方) | (貸方) | |||
引当金計上時(決算時): | 貸倒引当金 500 | 貸倒引当金戻入 500 | ||
貸倒引当金繰入 700 | 貸倒引当金 700 |
額面発行
社債の発行形態の一つ。社債の額面(券面に書いてある金額)と実際の発行価額(相手から受け取る金額)が同じ。
たとえば、デパートの洋服に値段を書いたタグ(値札)が付いている。そこには「5,000円」と書いてあったとすれば、これが額面。5,000円の洋服を5,000円で買う。フツーの取引。
割引発行
社債の発行形態の一つ。社債の額面(券面に書いてある金額)より実際の発行価額(相手から受け取る金額)が少ない場合。その差額は社債発行差金となる。
たとえば、デパートの洋服に値段を書いたタグ(値札)が付いている。そこには「5,000円」と書いてあったとすれば、これが額面。でもお金がないあなたは販売員に「安くならないか」と交渉する。その結果、4,800円まで引き下げさせることができた。5,000円の洋服を4,800円で買うことになる(割引発行)。差額の200円はあなたに対するサービス(社債発行差金)。
打歩発行
社債の発行形態の一つ。社債の額面(券面に書いてある金額)より実際の発行価額(相手から受け取る金額)が多い場合。
たとえば、デパートの洋服に値段を書いたタグ(値札)が付いている。そこには「5,000円」と書いてあったとすれば、これが額面。販売員は、「もし5,200円を支払ってくれれば、300円分の商品券を差し上げます。」と申し出るとしよう。あなたは、5,000円で買うか、5,200円で買って300円の商品券をもらうか悩むだろう。
打歩発行は、額面より高い金額で社債を発行することと引き替えに、額面発行や割引発行より利息を高く設定した社債の発行形態である。
社債発行費
資産勘定。
資金調達の必要から、社債を発行したときにかかった費用。告知のための新聞への告知費用など。
繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
もし社債発行費を資産の部に計上する場合には、償却期間は発行後3年以内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。
(借方) | (貸方) | |||
社債発行費計上時: | 社債発行費 ××× | 現金(当座預金) ××× | ||
決算時: | 社債発行費償却 ×× | 社債発行費 ×× |
社債発行差金
資産勘定。
社債の額面(券面に書いてある金額)より実際の発行価額(相手から受け取る金額)が少ない場合のその差額。額面が1,000円、発行価額が900円の場合、差額の100円が社債発行差金になる。これは、利息の前払い的性格を持っている。したがって、「社債利息」勘定や「支払利息」勘定で処理することもできる。
繰延資産の一つで「資産の部」に計上できる。
もし社債発行差金を資産の部に計上する場合には、次償却期間は償還期限内で、償却金額は毎年均等額以上で償却する。
(借方) | (貸方) | |||
社債を割引発行した時: | 現金(当座預金) 900 | 社債 1,000 | ||
社債発行差金 100 | ||||
決算時: | 社債発行差金償却 ×× | 社債発行差金 ×× |
社債利息
費用勘定。
社債を発行すると、通常、年2回利息を支払う義務がある。たとえば、年5%の利率で100,000円の社債を発行すると、利息は5,000円になる。年2回の利払いということは、1回の支払額は2,500円ということになる。これが社債利息。
なお、社債発行差金も、利息の前払い的性格を持つものであり、その意味から、社債発行差金償却を「社債利息」勘定で処理してもよい。
(借方) | (貸方) | |||
利払い時: | 社債利息 5,000 | 現金(当座預金) 5,000 |
株式会社の資本金
株式会社は、個人商店とは違って、株式(細切れにされた所有権)を発行する会社形態を取っている会社。
1株5,000円で株式を売り出し、5,000円が投資家から会社に手渡されると、その金額だけ資本金になる。しかし、会社法上、その全額を資本金にしなくてもよく、払い込まれた金額の1/2は「資本金」と処理しなくてもよい。見方を変えれば、5,000円のうち2,500円は必ず「資本金」にしなければならないことになる。もっとも残りの2,500円を自由に使っていいわけではなく、これは「株式払込剰余金(資本準備金)」という別勘定で処理しておくに過ぎない。
別段預金
資産勘定。
普通預金、当座預金と違って、一時的に銀行に預かってもらうお金を入金する口座。もちろん勘定科目でもある。
別段預金とするものはいくつかあるが、講義では、新株発行増資をして投資家から振り込まれたお金を一時的に処理するケースとして採り上げた。「一時的」というからには、そのあとに何らかの取引が発生して、別段預金から振り替えが行われることになる。
(借方) | (貸方) | |||
新株発行増資をして投資家からお金が振り込まれた時: | 別段預金 ××× | 株式申込証拠金 ××× |
株式払込剰余金
資本勘定。
株式の発行価額のうち、「資本金」として処理しなかった金額を処理する勘定。会社法上、株式の発行価額のうち1/2は資本金にしないことが認められているので、もし、発行価額(払込金額)が5,000円の場合の処理は次のようになる。
(借方) | (貸方) | |||
株式発行時: | 現金(当座預金) 5,000 | 資本金 2,500 | ||
株式払込剰余金 2,500 |
株式申込証拠金
資本勘定。
株式を発行して投資家から銀行口座に払い込まれた金額を一時的に処理するために設けられる勘定。
通常、株式を発行すると公告してから一定期間、投資家からの申込を受ける。その申込期間内に募集株数に達すれば申込締切となる。その際、実際に株式購入の意思を確かめ、払込の事実を確保するために(それだけ資本というのは重要なものだ)、投資家から申込金を徴収する。これが株式申込証拠金。投資家からの払込の都度、別段預金とする。
商品有高帳
取り扱い商品ごとに、時系列的に、商品の仕入、売上、残高を記帳する補助簿。数量の表示が重要。
商品有高帳の作成方法には、先入先出法、後入先出法、移動平均法、総平均法などがある。
後入先出法
商品有高帳の記帳方法の一つ。
「あとから仕入れたものから先に販売された」と「仮定」して記帳する。
総平均法
商品有高帳の記帳方法の一つ。
一定期間の総仕入額を仕入数量で割って平均単価を求めて記帳する。したがって、期間の終わりまで仕入単価を計算できない。
売上原価の計算
売上原価は、「前期繰越高+当期純仕入高−次期繰越高」の計算で求められる。
これを帳簿上計算する場合の方法の一つに、「仕入」勘定を用いる方法がある。
たとえば、前期繰越高が500円、当期純仕入高が2,000円、次期繰越高が450円だった場合、帳簿上(つまり仕訳上)次のように計算することで、売上原価が求められる。
(借方) | (貸方) | |||
当期の商品の仕入: | 仕入 2,000 | (適当な勘定科目) 2,000 | ||
前期繰越高の「仕入」勘定への振替: | 仕入 500 | 繰越商品 500 | ||
次期繰越高の「仕入」勘定から「繰越商品」勘定への振替: | 繰越商品 450 | 仕入 450 |
上記において、当期の商品の仕入は、期間中の仕入額で、残高試算表「仕入」勘定に記載されている。
2行目と3行目の取引を決算時に行うことになる。この仕訳によって、借方仕入が2,000+500=2,500、貸方仕入が450で、2,500−450=2,050となり、これが売上原価ということになる。
棚卸減耗費
費用勘定。
帳簿上の商品の在庫と、実際に棚卸をして確認した商品の在庫との差を処理する勘定。
数量に着目して計算する。たとえば、帳簿上、仕入単価100円の商品が50個在庫があることになっていたにもかかわらず、実際に調べてみると45個しかなかった場合、その差5個が何らかの理由で減少してしまったことになる。その5個分の金額(100円×5個)が棚卸減耗費となり、繰越商品から差し引く。つまり、次期に繰り越す商品の原価は4,500円ということになる。
(借方) | (貸方) | |||
帳簿上の繰越商品: | 繰越商品 5,000 | 仕入 5,000 | ||
決算時: | 棚卸減耗費 500 | 繰越商品 500 |
商品評価損
費用勘定。
仕入単価と時価との差額。
金額に着目して計算する。たとえば、帳簿上、仕入単価100円の商品が50個在庫があることになっていたにもかかわらず、流行遅れなどの理由によって商品価値が下落し、時価が40円になっていた場合、原価と時価の差額(10円×50個=500円)が商品評価損。これを繰越商品から差し引く。つまり、次期に繰り越す商品の原価は4,500円ということになる。もっともこれは、帳簿上の在庫数量と実際の棚卸数量が一致していた場合の話で、実際の棚卸数量が45個しかなかった場合には、10円×45個=450円が商品評価損となる。
(借方) | (貸方) | |||
帳簿上の繰越商品: | 繰越商品 5,000 | 仕入 5,000 | ||
決算時: | 商品評価損 450 | 繰越商品 450 |
低価法
原価と時価を比較して、どちらか金額の低い方を帳簿価額とする評価方法の一つ。
貨物代表証券
正確には「かぶつだいひょうしょうけん」と読む。
商品の運送を引き受けた業者が、売り手に対して発行する有価証券。ということはこれ自体、価値を持っているということ。
陸送業者の場合は貨物代表証券、海運業者の場合には船荷証券を発行する。
未着品
資産勘定。
運送途中にある商品で、すでに所有権を有する商品をいう。具体的には、商品それ自体がまだ届いていなくても、一足早く貨物代表証券(船荷証券)を受け取った時に、その他の商品と区別するために「未着品」勘定で処理する。
(借方) | (貸方) | |||
貨物代表証券受取時: | 未着品 ××× | 買掛金 ××× | ||
荷為替が取り組まれていた時: | 未着品 ××× | 支払手形 ××× | ||
買掛金 ××× |
未着品売上
収益勘定。
商品が届いていないにもかかわらず、すでに受け取っている貨物代表証券を転売したときに使う勘定。
(借方) | (貸方) | |||
貨物代表証券を転売した時: | (適当な勘定科目) ××× | 未着品売上 ××× |
試用販売
一定の「お試し期間」を設けて、相手に商品を渡し、気に入ってくれたら販売するという商品売買の形態。
相手に商品を渡しただけでは収益は認識しない。
試用販売未収金
特殊勘定。
試用販売売掛金でもよい。
試用販売のために、相手に商品を渡したときに、「相手に渡した」事実を忘れないように記帳するときに使う勘定(対照勘定)。
(借方) | (貸方) | |||
試用品を先方に渡した時: | 試用販売未収金 ××× | 試用仮売上 ××× |
試用仮売上
特殊勘定。
試用販売のために、相手に商品を渡したときに、「相手に渡した」事実を忘れないように記帳するときに使う勘定(対照勘定)。
試用品
資産勘定。
試送品、試用商品でもよい。
仕入れた商品を試用販売のために使う場合に、その他の商品と区別するために使う勘定。
(借方) | (貸方) | |||
仕入れた商品を試用品勘定に振り替えた時: | 試用品 ××× | 仕入 ××× |
試用品売上
収益勘定。
一定の「お試し期間」を設けて、相手に商品を渡し、気に入ってくれたら販売するという商品売買の形態で、相手が気に入ってその商品を買ってくれたときに処理する勘定。
(借方) | (貸方) | |||
対照勘定の場合: | 売掛金 ××× | 試用品売上 ××× | ||
試用仮売上 ××× | 試用販売未収金 ××× | |||
試用品勘定の場合: | 売掛金 ××× | 試用品売上 ××× |
委託販売
資産勘定。
商品の販売を他人に委託する販売形態。
相手に商品を委託しただけでは収益は認識しない。
また、先方に委託した商品が販売され、その代金がまだ届いていない時に処理する勘定。この場合、「委託販売」という勘定科目は、委託先に対する債権(お金を受け取る権利)をあらわすことになる。したがって、先方から代金を受け取ったときには、この勘定科目の金額を減じる(貸方に記入する)。
積送品
資産勘定。
委託販売において、受託者に対して商品を発送した時に処理する勘定。一般の商品と区別するために用いる。受託者に渡した商品を積送品勘定で処理する際には、「仕入」勘定から同額を控除する処理を行う。
(借方) | (貸方) | |||
委託品を先方に渡した時: | 積送品 ××× | 仕入 ××× |
積送品売上
収益勘定。
商品の販売を他人に委託する販売形態で、受託者から商品の売り上げの事実を知らされたときに計上する収益勘定。
たとえば、受託者は、委託者から販売を引き受けた商品について、売上計算書を作成して委託者に送付して販売の事実を知らせてくる。そこには、売上高とともに、受託者が受託販売によって得た手数料なども記載されている。
委託者側では、その売上計算書によって収益を認識することになる。
その処理方法には、手取金のみを計上する場合と、先方が受け取った手数料等も含めて計上する場合がある。つまり、10,000円の商品販売について受託者の手数料500円を控除して手取金のみを売上として計上する場合と先方への販売手数料も計上する場合である。
(借方) | (貸方) | |||
手取金のみを売上として計上する場合: | 委託販売 9,500 | 積送品売上 9,500 | ||
先方への販売手数料も計上する場合: | 委託販売 9,500 | 積送品売上 10,000 | ||
積送販売費 500 |
受託販売
特殊勘定。
商品販売の委託者に対する支払い額と控除額の両方を処理する勘定。
受託者側は、委託者に成り代わって商品を販売している。商品の販売に際して各種の費用が発生することもあるし、商品の販売によって販売手数料を受け取ることが普通である。こういった受託販売にかかわる一切の費用や収益をまとめて処理する勘定が受託販売勘定である。
(借方) | (貸方) | |||
受託品を10,000円で販売して現金を受け取った時: | 現金 10,000 | 受託販売 10,000 | ||
販売手数料500円を受け取り、販売額を精算して委託者に伝えた時: | 受託販売 500 | 受取手数料 500 | ||
販売手数料控除後の金額を委託者に送付した時: | 受託販売 9,500 | 現金 9,500 |
上記のことから、受託者側では、結局、受取手数料500円のみが自分のものであることがわかる。
割賦販売
相手に商品を販売し、代金は後日、分割で受け取る契約に基づいた販売形態。
割賦売掛金
資産勘定。
割賦販売により、相手に商品を渡したときに記帳する勘定科目。
割賦売上
収益勘定。
割賦販売により、相手に商品を渡したときに、販売基準で収益を認識する場合に記帳する勘定科目。または、回収基準で、相手から商品代金の一部を受け取った場合に記帳する勘定科目。10,000円の商品を割賦販売し、そのうち1,000円を現金で回収した場合は次のようになる。
(借方) | (貸方) | |||
販売基準の場合: | 割賦売掛金 10,000 | 割賦売上 10,000 | ||
現金 1,000 | 割賦売掛金 1,000 | |||
回収基準(対照勘定)の場合: | 割賦売掛金 10,000 | 割賦仮売上 10,000 | ||
現金 1,000 | 割賦売上 1,000 | |||
割賦仮売上 1,000 | 割賦売掛金 1,000 |
割賦仮売上
特殊勘定。
対照勘定で割賦販売の事実を記録するときに使う勘定科目。相手勘定は割賦売掛金。
未実現利益
まだ自分の利益とはなっていない金額。「捕らぬ狸の皮算用」「ペーパープロフィット」「机上の利益」。「もしアルバイトで10万円稼いだら旅行に行こう」という計画を立てて、現実に10万円のお金もないのに「10万円がある」と考えて行動してはいけないわけで、まずアルバイトをしなければ始まらない。
帳簿上、利益があるように見えていてもその利益が実際に実現しなければ、その金額は帳簿上減らす処理をしなければならない。
これは、「未回収額×売上利益率」で計算できる。なお、売上利益率は売上高に占める利益の割合をいう。
繰延売上利益
特殊勘定。
回収基準において、未実現利益控除法によって処理する場合に使われる勘定。決算時に出てくる。
次のような事例を考えてみよう。当期に原価4,000円、売価12,000円の商品を4回払いで割賦販売した。当期中に回収した代金は3,000円だったとすると、この3,000円は商品原価では1,000円分に相当する。簿記では、この3,000円と1,000円の差額2,000円を利益というが、あえて実現利益と表現することもある。つまり受け取った3,000円の中に2,000円の利益が含まれており、誰が見てもそれは自分のポケットの中に入った(実現した)からである。ということは、未回収額9,000円に含まれる利益(9,000円−3,000円=6,000円)は「まだ自分のポケットには入っていない」、つまり未実現利益ということになる。
未実現利益控除法は、決算時に、売価と原価で記帳した売上高(12,000円)と売上原価(4,000円)をそのままの金額で表示し、いったん仮の利益(8,000円)を計上して、そこから未実現の利益部分(6,000円)を差し引いて売上総利益を計算する方法である。
繰延売上利益は、未実現利益を控除する取引で使われる勘定。
繰延売上利益控除
特殊勘定。
回収基準において、未実現利益控除法によって処理する場合に使われる勘定。
利益処分案
前期から繰り越された利益と当期に獲得した利益の合計を、株主への配当額や役員の賞与額などのようなものに分配するための原案。
たとえば、繰越利益が30、税引後当期純利益が80であった場合、110が配分のための原資になる。これを配当金として40、賞与として30を分配し、残りは次期に繰り越したいという経営者側の意向を書き表したものが利益処分案となる。これは「案」であるので、株主総会で株主に対して提案し、承認されれば、「利益処分案」ではなく「利益処分計算書」として、金額が確定する。
なお、損失の場合には損失処理案という。
利益処分計算書
株主総会の議を得て確定した、利益処分の使途と金額を書いたもの。
なお損失の場合には、損失処理計算書という。
繰越利益
前期までに処分されずに(何にも分配されずに)当期に引き継いできた利益。
未処分利益
当期純利益に繰越利益を加算したり、中間配当額を差し引いたりして残った処分前の(分配前の)利益。
損益計算書の一番最後の利益概念。
損益勘定
決算時に、すべての収益とすべての費用を集めて、利益や損失を確定するための勘定。総勘定元帳に設置される。
繰越損失
前期までに処理されずに(何の補填もせず)当期に引き継いできた損失。
未処理損失
損益計算書の一番最後の金額がマイナスになったもの。
中間配当
期中に株主に対して分配される配当金。
利益準備金
利益を源泉として資本の部に留保される金額。資本を源泉として留保されるものは資本準備金。
任意積立金
使い道を特定せずに資本の部に留保される積立金の金額。
未達事項
本支店会計において、決算日現在で、先方に伝わっていない取引の総称。いいかえれば、一方だけで処理が終わっていて他方では処理が行われていない取引の総称。
たとえば、Aさんにお金を貸したあなたは、返済期日になってもお金が届いていないとしよう。しかし、Aさん側では、返済日の前日に送金していたとすれば、Aさんは返済したことになっていても、入金の事実をあなたは知らない状態になる。まさに情報が届いていないこと(未達)になる。このときの返済日を決算日、あなたを本店、Aさんを支店と考えれば、支店では本店に対する支払いが済んでいても、その事実が本店に届いていない状態で双方が帳簿を締め切ることになってしまう。そこで、簿記では、本店側、支店側が連絡を取り合い、こういった自体が判明したら処理していない側の処理を行う必要がある。これが未達事項の仕訳である。
「支店」勘定・「本店」勘定
本支店会計において、本店の支店に対する債権債務を集約する勘定が「支店」、支店の本店に対する債権債務を集約する勘定が「本店」となる。
たとえば、本店が支店の売掛金10,000円を現金で回収したときには、次のような仕訳を行う。
(借方) | (貸方) | |||
本店: | 現金 10,000 | 支店 10,000 |
本店が受け取った現金10,000円は、本店のものではなく、本来は支店が受け取るべきものである。そこで「受け取った10,000円は本店のものではない(支店のものである)」ことを明らかにするために、貸方に支店に対する債務をあらわすために「売掛金」ではなく「支店」勘定を使って処理することになる。
一方、支店は、みずからが受け取るべき売掛代金が回収されたのであるから、「売掛金」勘定を減らす仕訳が必要になる。
(借方) | (貸方) | |||
支店: | 本店 10,000 | 売掛金 10,000 |
しかし、現実的には現金10,000円は、まだ支店には届いていないわけで、それは本店が回収しているのだから、支店側では、本店に対する債権をあらわすために借方に「本店」勘定を使って処理する。
この本店側の「支店」勘定残高と支店側の「本店」勘定残高は必ず貸借逆に金額的に一致する。
これが一致しない原因が未達事項ということになり、一致させるために追加的な仕訳が必要になる。
内部利益
本店から支店への商品発送の際に加算される利益。
本支店間の商品のやりとりは、あくまでも一つの会社内のやりとりなので、お客さんに対する商品の販売とは違って利益を加算する必要がない。この場合(原価法といわれる)、単に商品が本店から支店に移動したに過ぎない。しかし、支店にも独立採算(しっかりと利益を確保できるようにすること)を求める場合には、本店側ではいくらかの利益を加算して支店に商品を発送する。その際の利益が内部利益である(原価+内部利益を内部振替価格という)。
この内部利益は、支店で商品が販売されていれば、大きな問題にならない。問題になるのは、販売されないまま在庫として商品が残った場合であり、この場合には、合併財務諸表の作成に際して、内部利益は控除されなければならない。
内部利益の計算
内部利益の計算は次のように考える。
本店が原価10,000円の商品に10%の利益(1,000円)を加算して支店に発送したとすれば、支店では11,000円で商品を引き取ることになる。つまり原価の1.1倍の価格で受け取ったわけである。ということは、逆に考えて、11,000円が1.1倍であれば1.0倍(つまり原価)はいくらかを計算すれば、11,000円÷1.1倍=10,000円となる。ということは1,000円が内部利益だったことがわかる。
では、本店から支店に10%の利益を加算して発送した商品16,500円の内部利益はいくらだろうか。
内部利益は、15%の場合もあるし20%の場合もある。考え方は10%の場合と同じである。本店から支店に10%の利益を加算して発送した商品11,500円の内部利益は11,500×0.15/1.15=1,500円である。また、本店から支店に20%の利益を加算して発送した商品12,000円の内部利益は12,000×0.2/1.20=2,000円である。