基礎演習
創造的イマジネーション
〜自由な心は生産の技術〜
2000.11.16
発表者:佐藤直樹 司会者:土橋一輝


<まだ おさないころ>

まだ おさないころ 五才の時
よく 本の中の星の王子さまに
あこがれました

中学生になったころ 一三才の時
たくさんの恋に
希望をもちました

年ごろだねといわれるころ 一七才の時
たしか三つ年上のあの人に
初恋を感じました

みちがえたよといわれるころ 二〇才の時
いまの主人と
愛しあったことをおもい出しました

いまではもう三〇をすぎましたが
ふと思いだす
むかしのことです

そう わたしの前を
足音もたてずに
すぎていった思い出です

とおい とおい
なつかしい なつかしい
思い出です

(河田宣世『あこがれ』 和田プリント 1985年、59〜60ページ)

上記の詩は、実は河田宣世さんが10歳の時に書いたものである。
このように人は子供でさえ未来の情景を想像し、既に体験したかのような創造世界を
構築することができる。このような、新しい形象や行動の発現は創造的で複合的な行動
なのである(内田伸子、引用文献参照)。
私たちは以前の経験を保持し、再生するだけでなく、以前の経験や印象などの諸要素
からイメージや行動を創造的に作り出すことが出来るのである。
私たちは誰でも、自分の頭の中でイメージを自由に操れる楽しさを味わっている。
しかしながら、それもある範囲内に限られることを認めざるをえない。
例えば、「宇宙開発が進んで、だれもが宇宙ステーションに住めるようになったら
どんなことが起こるか」と質問されたら、あなたはいくつかのイメージを想像することが
出来るだろう。しかし、自分のイメージが尽きたとき、他の人の答えを聞いてみると、
自分が考えもしなかったイメージを作っていることに驚くだろう。
ということは他人のイメージを追認する能力は持っているということだ。
逆に言えば、何らかの障害が自分のイマジネーションがそこへ辿り着くことを妨げているのである。

「想像imagination」とは
過去の経験から得られた様々なイメージを、組み替えたり、変形したりして、
新しいイメージを再構成することである(心理学パッケージ4)。


創造的人間とは?
創造的な人はしばしば私たちが思いつかないような斬新なアイディアを出して私たちを驚かせる。
それでは、創造的人間は平均的な人々とどのようなイマジネーションの違いがあるのだろうか。
創造的な人の特徴を下記に示す。

1. 無秩序を好む
創造的な人は無秩序を好む<>平均的な人々は秩序・安定を好む
しかし創造的な人々の好む無秩序は更に高次の秩序を求めるが故の仮の無秩序である

2. 独立独歩
創造的な人は他者の意見に左右されにくい。例えばアッシュの実験のような状況
であっても強い独立性を示し、自らの判断を曲げることが無い。

3. 鋭い観察力
創造的な人は観察力が鋭い。正確な観察に価値を置き、平均的な人々であれば
見過ごしてしまうような点に気付き、それを指摘する。

4. 退行
想像的な人は平均的な人々と比較して無意識の世界と深い関わりをもっている。
空想・夢想の世界に「遊ぶ」ことができる。そうすることによって彼は
自我を更に高めることができる。

創造的な人はより原始的であると同時により文化的である。
より破壊的であると同時に建設的である。


創造的イマジネーションを妨げるもの
冒頭で触れたように、私たちは誰でも他人のイメージを追認する能力を持っている。
それを自ら作り出せなかった要因とはいったい何なのであろうか。ここではJ.L.Adamsの
「創造的思考の技術」を参考に、創造的イマジネーションを阻害する要因を挙げる。

1. 知覚的障害
知覚的障害とは「問題解決者が、問題それ自体あるいは問題を解くのに必要な情報の
いずれかを明確に知覚することを妨げる障害」のことである。
例:固定観念、問題領域の限界を狭めすぎる傾向、飽和状態など

2. 感情的障害
感情的障害の主たる例は「冒険することへのおそれ」である。またその他に「創造するより
判断することを好む」、「やる気の無さと熱心すぎること」などである。
感情的障害はわれわれが自由に柔軟にアイディアを生み出す可能性を妨げる。

3. 文化的および環境的障害(特に日本では顕著か?)
文化的障害は「ある一定の文化様式の傾向が現れた時」起こってくる。
例:「空想は時間の浪費であり怠け者がするものだ」、「理性・論理・実用性は良く、
感情・直感・快楽は悪いもの」、「伝統は変化よりも好まれる」、社会的タブーなど
環境的障害はわれわれの身の回りの社会的・物理的環境から生まれてくる
例:同僚同士での協力の欠如、自身のアイディアだけを尊重する上司、気が散ること(電話など)、
援助の欠如など

Adamsはこれらに加え、「知性的障害」(情報不足や表現力不足)もあげている。
これらの障害を意識して(そして排除して)想像することで、創造的イマジネーションが
引き出されてくるのであろう。


終わりに
「創造性が生まれる脳のプロセスは、今のところ全くわかっていない」(伊東正男「脳の柔軟
性と想像のメカニズム」)人が自らの経験から生まれるイメージを操作し、経験以上のこと
を創り出すというイマジネーションは非常に不思議だと感じた。
想像という領域は、心理学ではまだそれほど研究されていない分野で、
最近になってようやく本格的な研究が始まった分野だそうなので、
これから行われる研究によって「創造」の秘密が明らかになることを期待したいと思った。

参考・引用文献
『想像力-創造の泉を探る』内田伸子著・講談社現代新書(1994.9.20発行)
『創造的思考の技術』J.L.アダムス著 恩田彰訳・ダイヤモンド社(1984.1.20発行)
『創造性と自己実現』資生堂企業文化部編(1994.3.15発行)
『心理学パッケージpart4』


○出された質問

創造的な人と平均的な人の境界線はどこか?>>>相対的なもので、はっきりとした境界線は無い

『創造』は必要か?>>>何かを作り出す上では必要だと考える。

創造的人間の特徴はどこから導き出された?>>>(後日調査)調査結果へ

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