<アメリカ大学院留学の手順>

ここではアメリカ大学院留学(修士)の手順を私の経験をもとに簡単に紹介します。
私は英語が苦手で、学部の時には留学など考えたこともありませんでした。
ですので、留学を思い立ってから、英語の勉強や留学の準備などを一から始めました。
このページは、私のような留学初心者の方のお役に立てればと思い作りました。

記憶をもとに書いたので、間違いがあるかもしれません。
またこれを作成してからかなり年月が経過しているので変更もあると思います。
すべての事柄について必ず自分で確認して下さい。
2011年9月執筆



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<アメリカ大学院留学の手順・大まかな日程>


ここでは私が受けたいくつかの大学(歴史・アジア研究の分野で大学院修士課程)の大まかな入学手順を記憶を頼りに説明します(必要書類等は下記参照)。他の分野(特に理系)や博士課程の場合は異なるかもしれません。もちろん、大学によっても異なります。必ず自分の受ける大学のHPで確認するなり、メールで問い合わせるなりしてください。

ちなみに私は6校くらい受けて2校から合格を貰い最終的にシアトルのワシントン大学に決めました(2008年9月入学)。リサーチアシスタントという仕事付きでした。当時はリーマン・ショック前でアメリカの経済がよかったので、運が良かったと思います。ワシントン大学の写真

さて、アメリカの大学は9月頃から始まります。願書締め切りは前年の12月頃です。余裕を持って前年の夏くらいからは準備をしておきましょう。

☆入学前年
8−10月
志望校選び。このあたりは個人差あり。私は直接関心のある先生にメールを出し、受け入れてもらえるか聞きました。はじめは英語の大学ホームページを見て受験要項を探して確認するだけで大変でしたが、慣れると時間がかからなくなります。

10月下旬
できれば10月下旬までにTOEFLとGREを受験して、必要点数を取る。(結果が出て大学に届くまでに一ヶ月ほどかかるので、早い方がいいです。)予約はネットから出来ます。早めにしましょう。

10月下旬
推薦書依頼(指導教員などに。英文三通)。英文で書くのは先生も大変ですので最低一ヶ月くらい前には頼んでおきましょう。オンラインで書いてそのままネット上で提出できるものが多くなっています。

10−11月
Statement of Purpose (志望動機や研究計画のエッセイ)とWriting Sample(論文サンプル)を仕上げる。もちろん英語で。添削して貰う必要があるのでその時間を考慮に入れて早めに仕上げましょう。
大学学部時代の成績証明も準備しておきましょう。英文で貰う場合には和文より時間がかかります。特に、一校で二通以上いる場合がありますので大学HPでよく確認。
願書提出時に財政証明がいる場合は銀行で貰いましょう。これは受験者がアメリカで生活していくお金があるか確認するためのようです。後述のように合格後送付する場合もあり。

12月1日
入学願書締切(だいたい12月1日から1月上旬の間)

☆入学年
3月上旬
合格発表!(電子メールか封筒で来る)ちなみに合格した一校は電話での簡単な英語の面接がありました。

4月中旬
入学先決定→Statement of Financial Ability Form送付(一年間の授業料が払えることを証明する財政証明。願書といっしょに先に送付する場合もあり)→大学からI-20(ビザ取得に必要な書類、パスポートの次に大切)が送られてくる
(もらったI-20は渡米時、必ずパスポートと一緒に携帯しましょう。私はスーツケースに入れていて、危うく入国できないところでした。)

6月―7月
F-1ビザ(学生ビザ)取得。パスポートももちろん必要。F-1ビザ取得は業者などに頼むこともできるようですが、私は自分で申請しました。いろいろなHP等を参考にすれば自分でも十分できます。
部屋決め。渡米前に決めておく人と渡米してホテルに仮滞在しながら決める人がいます。大学の寮、ホームステイ、アパート等の選択肢有り。私は初めのうちはホームステイしていました。アメリカは場所によっては危険なところもあるので注意しましょう。例えば大通りは比較的安全でも路地一本入ると急に危険になるということがあります。土地勘がない時は特に注意です。

9月上旬
渡米(私は9月9日に渡米しました。秋学期がいつ始まるかによって渡米日時は異なりますが、少なくとも授業開始の2週間前には渡米するのが良いと思います。)

9月中旬
オリエンテーション、授業登録など。授業登録はオンラインで出来ますが、私の大学の場合、留学生の新入生は大学で直接入学手続きを行うまで登録できませんでした。
その他にも銀行口座を開設したり、携帯電話を契約したりと色々とすることがあります。大学でも留学生向けのいろいろなイベント(BBQやツアーなど)が開かれると思います。積極的に参加して友達を作ってみてはどうでしょうか。Facebookのアカウントも作りましょう!

9月下旬
秋学期開始 (大学によって開始時期は多少異なります)



<大学院留学の準備>


(1)大学院の選び方
まずどの受験するかを決めなければなりません。もちろん、行きたい大学があったり、学びたい教授がいるから留学するんだ!というのが筋かもしれません。その場合もう大学は決まっているでしょうから、ここは飛ばして下さい。私の場合、まずアメリカで自分の研究をしてみたいという漠然な思いがあったので、それから大学院を絞り始めました。

私は前年の夏頃から大学を受験する大学を絞り始めました。上記のように、すでに行きたい大学や、指導してもらいたい教授がいる場合は、その教授にコンタクトを取って受け入れ可能か聞いてみるといいでしょう。もし、それがない場合は、日本の大学の教授に相談して、自分の分野でのおすすめの大学院はどこか、またはアメリカに知り合いの教授がいないか聞いてみるといいでしょう。もし、アメリカに知り合いの教授がいる場合、その大学を受けるとか、その教授に日本の教授を通してコンタクトを取り、アドバイスを受けることができるかもしれません。私は所属学部にアメリカ人の教授がいたのでその先生に相談したり、指導していただいていた日本人教授に、知り合いのアメリカ人教授を紹介してもらったりしました。やはり知り合いの教授を通して情報収集するのはとても大切だと思います。

その他の方法としては、アメリカの大学ランキングサイト(USNewsなど)で、自分の分野の優れた大学を探し、その大学のHPから、自分の研究に近い教授を探し、その教授にコンタクトを取る方法があると思います。その場合、自分の経歴や、研究などを簡単にまとめた自己紹介を添えて受け入れ可能か聞きましょう。はじめはこのメールの作成にも大変時間がかかります。多くの先生は、好意的な返信を下さいます。もちろん、だからと言いって合格させてくれるわけではありませんが。
また、この時に、自分の受ける学部はこの学部でいいのか(例えばアジア研究学部と歴史学部どちらを受けるべきか等)、修士課程か博士課程どちらを受けるべきか、財政援助はどれくらいの確率でもらえるか等も聞いてみると良いかもしれません。大学によって事情が違うので、有益な情報がもらえると思います。

受ける大学の数は人それぞれですが、わたしは6校くらい受けました。先生によっては10校くらい受けるべきという先生もいました。自信がない場合は、色々なレベルの大学をたくさん受けるといいのではないでしょうか。ただあまりたくさん受けすぎると、願書やエッセイ・ライティングサンプルをそれぞれの大学で書かないといけないので大変です。もちろん、一校書いてしまえば、後はその応用で対応できますが、やはりエッセイなども全く同じというわけにわいかないと思います。


(2)願書提出時にいるもの
アメリカの大学院では、大学院入試というものはありません。以下の必要書類を期限までに出して、審査の結果を待ちます。以下の書類が総合的に判断されるそうです。その他にも、大学院の財政状況や、院生の研究分野の配分、教授のさじ加減など、様々な要素が絡んでくると思われます。

@願書
これはほぼすべての大学でオンライン化されています。大学のHPに行き、オンラインの願書にログインし、必要事項を記入しましょう。多くの大学では、このオンラインの願書に、TOEFLの点数や、エッセイ、ライティングサンプル、成績証明書スキャンを添付して、そのままオンラインで提出できます。願書提出費用として50〜70ドルくらいかかります。
大学のHPでどこを探せばわからない方は、とりあえずProspective Studentsをクリックしましょう。
ちなみに、多くの大学で、Graduate School(大学院入試課のようなもの?)とDepartment(各学部)の二部門が、それぞれ別々の書類を要求してきます。必ず、2つのオフィスのHPを確認し、どちらのオフィスにどの書類がいるのか確認しましょう。

ATOEFL
これが第一関門です。とにかく必要な点を取らなければ話になりません。だいたいどこの大学でもibtで80点後半が最低点です。この点数以下でも、付属語学学校に通うことを条件に入学を許可されることがあります。もちろんこれは最低点で、Ivyリーグなど難関校ではもっと高い点が必要でしょう。ただ私は恥ずかしながら最低点ギリギリでした。テストを5回受けて、初めのテストは50点台、願書締め切り間近の5回目でやっと最低点をクリアしました。なので低くても可能性はゼロでないと思います。諦めずに頑張りましょう。点数がギリギリだと大学付属語学学校の授業を取るという条件で入学許可という場合などもあります。
ちなみにTOEFL ibtはリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングがあり、それぞれ30点で120点満点です。試験会場のパソコン上で行うのですが、かなりユニークなテストです。例えば、スピーキングはマイクに向かって答えを録音します。でもみんなひとつの会場で受けるので、リスニング中に他の人が話しているのがガンガン聞こえたりします。何度か受けて、場になれることが必要だと思います。

Bエッセイ(Statement of Purpose)
よく英語ではStatement of Purposeと言われます。エッセイでは通常、自分はどんな研究をしてきて、なぜこの大学に入りたくて、大学院ではどんな研究をしようと思っているかを英語で書きます。A4で3〜4枚でしょうか。このエッセイが審査で最も重要だと言われています。よく推敲して、ネイティブに添削してもらいましょう。

Cライティングサンプル
ライティングサンプルは、これまで自分が書いたレポートや卒業論文をまとめて英語にします。だいたいA4ダブルスペースで15枚くらいでしょうか。大学によって違います。ネイティブに添削してもらいましょう。

DGRE
GRE(Graduate Record Examination)はアメリカ人が大学院入学時に受けなければならないテストです。殆どの場合、留学生も受けなければなりません。日本でも主要都市で受験できます。科目は数学(Quantitative)と国語(Verbal)とライティング(Writing)があります。通常、特に必要最低点というものは設けられていません。数学はそれほど難しくありませんが、Verbalはネイティブ用の英語の試験なので、激ムズです。とにかく聞いたこともない難しい単語をたくさん覚えなければならないのですが、私は結局良い点が取れませんでした。ただし、留学生で修士課程を受ける場合はそれほど重要な要素にならないかもしれません。不安であれば、直接受け入れの先生に相談してみましょう。大学から奨学金を貰いたい時などは、GREの点数が高いほうが有利になるそうです。

E推薦書
推薦書は、学部時代の先生にお願いしましょう。通常3通必要。英文ですので、なるべく早めにお願いしましょう。多くの大学ではオンラインで書くことが出来、そのまま大学に送信することができます。

F成績証明
大学学部の成績証明書を英文で貰いましょう。英文での申請には時間がかかるので早めにしましょう。ひとつの大学でも学部と大学院事務局の両方に送らなければならない場合や、日本語と英語の両方の証明書がいる場合などがあるので、それぞれの大学HPで何通必要かよく確認しましょう。現在では、証明書をスキャンしてオンライン願書に添付するだけでよい大学もあります。ただしその場合でも、合格後には紙の証明書を提出しなければならない場合が多いです。
アメリカの大学にはGPAという成績の平均ポイントがあります。日本でも最近導入されてきていますが、自分の学部の成績にGPAがない場合もあります。その場合、記入する必要がないか、AやBといった成績をGPAに換算して記入しなければならないか、受験する大学によって違うので、かく大学HPで調べてください。

G財政証明(必要なら)
財政証明とは学生が最低一年間その大学の授業料と生活費を払えることを証明するものです。財政証明は入試の審査には影響しません。学生ビザの発行に必要な書類なので、合格後に提出の所が多いと思いますが、願書と一緒に提出するところもあります。
日本の銀行、郵便局で、大学の一年間分の授業料と生活費に足る金額の証明書を英文でもらってください。奨学金を貰う場合はその証明証などが入ります。アメリカの大学の授業料は高いですから、自腹の場合は生活費を合わせると300万以上は必要でしょう。各大学のHPに目安が書いてあります。自分の口座にお金がなければ、親の預金でも大丈夫です(サイン必要)。

その他にも、大学によって必要な書類があるかもしれないので、各大学のHPで確認してください。とにかく、HPをくまなく読むことです。はじめは大変かと思いますが、どこも似たようなものなのでなれると思います。それだけで英語の勉強にもなりますし。

日本から大学に郵送で書類を送る場合は、けっこう時間がかかります。願書締め切り間際にバタバタしないためにも、余裕を持って準備してください。(私の苦い経験から・・・)


(3)お金の問題
アメリカの大学院に行く時に考えなければならないのはお金の問題です。私の行ったワシントン大学は州立大学でしたが、年間24,000ドルくらいかかりました。私立となると、もっと高くなるでしょう。私は幸運にも一年目にリサーチアシスタントと二年目にティーチングアシスタントをすることができたので、お金の面は何とかなりました。以下、考えつくお金の準備の仕方を書いておきます

@自費
自費で払えるという方はそれで結構です。仕事をしていて蓄えがあるとか、お金持ちの家庭のご子息とかがここに入るでしょう。ただもし金銭的に苦しいなか自費で留学をするなら、その前に留学先で勉強することにそれだけの価値があるか、自分の将来のビジョンと照らしあわせてしっかりと考えましょう。海外体験だけなら旅行や短期留学でも可能です。

A奨学金をもらう
奨学金には日本でもらえる奨学金と受験する大学からもらえる奨学金があります。
日本でもらえる奨学金は様々なものがあります。日本学生支援機構がやっている留学生交流支援制度(長期派遣) やフルブライトなど個人の財団がやっているものなどです。どこも競争率が高いと思います。私はいくつか申し込みましたがダメでした。もしあなたが日本の大学の学生なら、その大学から海外留学援助として、いくらか助成が出るかもしれません。問い合わせてみましょう。返還しなければならないもの(日本学生支援機構の第二種奨学金(海外)や教育ローン)は審査が通りやすいでしょう。
志望先の大学からもらえる奨学金にも様々なものがありますが、GREなどの成績がよいことが条件となると思います。また博士課程の場合、全学生に何らかの財政援助がつくことが多いですが、修士課程ではなかなかそうはいきません。大学からもらえる奨学金はあるか、それは入学時に自動的に審査されるのか、それとも別に応募しなければならないのか、大学のHPで調べて、わからなければ事務にメールしましょう。
ちなみに、私が合格したもう一校の私立大学は、奨学金の応募など何もしませんでしたが、授業料が9割免除でした。

BTA・RAをする
アメリカの大学院の場合、通常ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の仕事をすると授業料が全額免除となり、更にお給料がもらえます(月1500ドルくらい)。これはアメリカに留学して一番驚いたことの一つです。普通、新入生は特に応募しなくても自動的にTAとRAの仕事が割り振られます。もちろん、全員にポストがあるわけではないので、選ばれなければなりません。二年目からは、自分で応募しなければなりません(私の大学の場合)。
それから、まれに他の学部のTAやRAに申し込むこともできます(例えば教育学部の人がアジア言語学部の日本語のTAに申し込むなど)。この場合は新入生でも別個に応募しなくてはいけません。また、普通他学部の院生よりその学部に在籍している院生が優先されます。日本語のTAなどは日本人が多く働いているので、応募がないか探してみるといいかもしれません。

わたしは一年目にRAの仕事がもらえたので、ワシントン大学を選びました。ただし、二年目にRAの仕事がなくなり、金銭的に窮地に陥ったところ、なんとか日本語のTAに採用され勉強を続けることができました。今考えると、かなり綱渡りだったと思います。実際、韓国や台湾から来た同級生の留学生たちは自腹で勉強していました。まあ、みなお金持ちでしたが。
RAやTAの仕事は、それなりの給料をもらうのでとても忙しいです。授業や自分の研究と両立しなければならないので、非常に大変です。でもその分やりがいもあります。日本語のTAでは実際にクラスを教え、たくさんの素晴らしい生徒に出会うことができました。

お金の問題は大変重要な問題です。でも、たとえ今金銭的めどがついていなくても、入学時に何らかの援助があるかもしれませんので、がんばってチャレンジしてみてください。 
 

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