黄色い青ポチ フィット

内山 智


余は如何にしてペーパードライバーとなりし乎

自動車免許を取ったのは、大学2年生のときだったので、かれこれ20年以上になる。しかし、運転にはまったく自信がない。ずっとペーパードライバーだったのだ。路上検定は3回目でようやく合格というお粗末なもので、2回とも路上駐車車両の側方通過のとき、間隔が不十分で教官にブレーキを踏まれたのだった。車の左側がどの辺なのかという感覚が身についていなかったのだ。実際にクルマをぶつけないと、こういった感覚は身につかないはずである。だからといって教習車といえどもぶつけるわけにはいかない。車両感覚がないことへの不安と言うこのトラウマはずっと続くのであった。

更に、就職するまでずっとお金がなかったので、クルマを買うこともできず、また事故を起こしたときに十分対応できる保険に入る余裕もなく、そのままずっとペーパードライバーになってしまったのだ。

旧型のフィットのエンブレムのiの点は、1300ccは赤色で、1500ccは青色なので、1500ccのフィットは青ポチと呼ばれる。
私にフィットするクルマ

しかし、このままではいけない。マイカーを持つということは移動の自由を獲得することである。自分の好きなときに、好きな場所へ行ける。経済的な問題は解決した。問題は側方通過のトラウマだけだ。一念発起して購入したクルマが、ホンダのフィットの旧型である。フルモデルチェンジ直前の2007年10月に納車した最後期型である。側方通過のトラウマ対策には、俗にヘタクソ棒と呼ばれるコーナーポールを付けることにした。

オートマチック車にはペーパードライバー講習で5時間乗ったのが初めてだった。あのエンジンブレーキの利かなさ加減は結構怖かった。だが、マニュアルトランスミッションはペーパードライバーには荷が重いので、パドルシフト付きの1500tの青フィットにした。

ボディーカラーは、ロータス・ホンダ 99Tを彷彿とさせる黄色を選んだ。黄色は目立つから、挙動不審なペーパードライバーにとっては安全な色でもある。SOHC VTECエンジンの黄色い青フィットは、4800回転が最大トルクで、1速で5000回転付近まで引っ張るとグワッという力強い加速とともに、クルマらしいエンジン音が得られる。 混雑した道では、オートマチックにしてハンドル操作に集中、空いている時や坂道では、パドルシフトでアクセル操作に対するダイレクトな反応を楽しむという使い分けができるフィットは、私の身の丈にあったピッタリのクルマなのだ。


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