齊 藤 正 彰 @北星学園大学


 

  法令のしくみと相互関係



  〈目 次〉

   0 はじめに
    0.1. 参考文献

   1 法令の構成
    1.1. 条文
    1.2. 本則と附則
    1.3. 編・章・節・款・目
    1.4. 条  
    1.5. 項
    1.6. 号
    1.7. 前段・後段
    1.8. 本文・ただし書
    1.8. 表・別表

   2 法令の相互関係
    2.1. 下位の法令との関係
    2.2. 上位の法令との関係
    2.3. 同位の法令との関係



0.はじめに

0.1. 参考文献

[01] 弥永真生『法律学習マニュアル』〔第2版補訂版〕
    (有斐閣・2007年)
[02] 西野喜一『法律文献学入門』
    (成文堂・2002年)85頁以下
[03]林修三『法令用語の常識』〔第3版〕
    (日本評論社・1975年)
[04]林修三『法令解釈の常識』〔第2版〕
    (日本評論社・1975年)
[05]林修三『法令作成の常識』〔第2版〕
    (日本評論社・1975年)
[06]田島信威『法令入門──法令の体系とその仕組み』〔第3版〕
    (法学書院・2008年)
[07]田島信威『最新 法令の読解法──やさしい法令の読み方』〔3訂版〕
    (ぎょうせい・2006年)
[08]長谷川彰一『法令解釈の基礎』〔改訂版〕
    (ぎょうせい・2008年)
[09]大島稔彦編著『法令起案マニュアル』
    (ぎょうせい・2004年)
[10]田島信威『最新 法令用語の基礎知識』〔3訂版〕
    (ぎょうせい・2005年)
[11]http://www007.upp.so-net.ne.jp/shirabekata/
    (法情報 資料室 ☆やさしい法律の調べ方☆)
[12]http://www.ndl.go.jp/horei_jp/Countries/Japan/Japan_horei.htm
    (法令資料:国立国会図書館 議会官庁資料室
[13]川崎政司(参議院法制局第二部第一課長)「法文の特殊性と民主化」月報司法書士2003年2月号(NO.372)
〈目 次〉に戻る
齊 藤 正 彰 @北星学園大学

1.法令の構成

法令の形式について、特別の決まりがあるわけではありません。ただ、法令は、内容が膨大なものとなることも多いので、構成を分かりやすくするための工夫がなされています。そして、そうした工夫が、長年の間に一定の形として定着しています。
[14]法律の目次
    (法制執務コラム集:参議院法制局
[15]前文とその改正
    (法制執務コラム集:参議院法制局
[16]法令における用語の定義
    (法制執務コラム集:参議院法制局
[17]「春分日」の定義
    (法制執務コラム集:参議院法制局

1.1. 条文

法令は、いわば箇条書きの集合体です。条を書き並べたものが箇条書きであり、法令を構成する基本的な単位も「条」です。
一般に、条の文章、または条によって構成される箇条書きの文章を指して、「条文」といいます。法令の文章のことを「法文」といいますが、法文としての条のことを「法条」ということがあります。
「条項」という言葉は、本来は、法令の規定のなかの「条」と「項」を指すものですが、法令の条文のなかで「条項」と書かれているときは、「条規」と同じく、法令の規定という意味であるとされます。「条規」とは、条文、法令の規定、規則などを指します。
「規定」とは、法令中の個々の条項の定めをいうものです。

1.2. 本則と附則

法律は、通常、「本則」と「附則」に分けられます。
「本則」は、法律の題名や目次などに続いて第1条から始まる部分で、法律の実質的内容をとなる規定が並んでいる、まさに法律の本体部分です。
「附則」は、本則の後に「附則」と題して定められています。現在では、附則は附則で、「第1条」または「第1項」から始まる条名が付けられています(古い法律では、本則から続く通し番号でした。後掲[25]参照)。そこで、本則の条項と区別するために、「附則第1条」という形で言及・引用します。
[18]法律の構成
    (法制執務コラム集:参議院法制局
[19]見落とせない附則
    (法制執務コラム集:参議院法制局
附則には、本則の内容を実施する際に必要となる付随的・経過的な規定が置かれています。
多くの場合、附則の冒頭には、施行期日(いつからこの法律が使われるのか)の定めがあります。場合によっては、法律の有効期間に関する定め、新法と旧法の適用関係の定め、遡及適用についての定め、適用地域についての定めなどがなされていることもあります。
本則において定めた内容についての例外措置が附則に盛り込まれていることもありますので、注意が必要です。
法令の制定・改廃に際しては、現行の法秩序を一気に改変してしまうと、社会に無用の混乱を招く恐れがあります。そうした不都合を避けて、円滑に新たな法秩序に移行できるように、いろいろな調整措置が必要とされることがあります。こうした措置を、「経過措置」といい、経過措置を定めた「経過規定」が附則に定められていることがあります。関係者の利益・不利益に直接関わることであって、本則と同様に重要な意味を有しています。
[20]遡及適用と経過措置
    (法制執務コラム集:参議院法制局
新しい法律の制定によって、既存の他の法律が廃止または改正されることとなる場合には、新法と矛盾・抵触する他法の規定の改廃について附則に定められることもあります。
[21]調整規定
    (法制執務コラム集:参議院法制局
経過措置や関係法令の改廃が多数にのぼるときには、附則に定めるのではなく、それだけをまとめて単独の法律として制定することもあります。
[22]こんなところに大事なことが!―例外事項はどこにある?―
    (法制執務コラム集:参議院法制局

1.3. 編・章・節・款・目

本則は、多数の条から成り立っています。なかには、法文が1つしかなく条文番号のない法律から、民法のように第1044条まであるものもあります。
条文数の多い法令は、その内容的なまとまりごとに「章」に区分されることがあります。もう少し複雑な法令では、章をさらに「節」に区分することもあります。それでも足りなければ、「款」→「目」の順に細分化していきます。
条文数の多い大法典の場合は、章より大きな単位として「編」が設けられていることがあります。六法のうち、憲法以外の5大法典にも、編の区分があります。
章・節などの区分がある法律であっても、条文を引用するときには、「○○法第1章第3節第55条」などとはしません。条文番号は通し番号ですから、「○○法第55条」で足ります。

1.4. 条

例として、民法(平成16年改正前)の冒頭の条文を見てみます。


  第一編 総則             ← 編

第一条【基本原則】 私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ                ← 第1条第1項
2 権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス     ← 第1条第2項
3 権利ノ濫用ハ之ヲ許サス                        ← 第1条第3項

第一条ノ二【解釈の基準】 本法ハ個人ノ尊厳ト両性ノ本質的平等トヲ旨トシテ之ヲ解釈スヘシ
                                     ← 枝番号

   第一章 人             ← 章

    第一節 私権ノ享有        ← 節

第一条ノ三【権利能力の始期】 私権ノ享有ハ出生ニ始マル          ← 枝番号

第二条【外国人の権利能力】 外国人ハ法令又ハ条約ニ禁止アル場合ヲ除ク外私権ヲ享有ス
                                     ← 第2条


平成16年改正(平成17年4月1日施行)によって、民法の冒頭の条文は、次のようになりました。


  第一編 総則

   第一章 通則

(基本原則)
第一条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は、これを許さない。

(解釈の基準)
第二条  この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

   第二章 人

    第一節 権利能力

第三条  私権の享有は、出生に始まる。
2  外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

    第二節 行為能力

(成年)
第四条  年齢二十歳をもって、成年とする。


日本では、条文番号は冒頭から末尾まで順番に続く通し番号とする伝統があります。事後に改正があって、一部の条項を廃止したり、新たな条項を付け加えたりすることがあっても、条文番号を詰めたり、新たに振り直したりはしません。条文番号が変わってしまうと、混乱が発生するからです。そのため、途中に新たな条文を入れる場合には、「第○○条の2」「第○○条の3」という形で追加します(かつては、「ノ2」とカタカナで書いた)。これを、「枝番号」ということがあります。既存の条を廃止する場合には、「第○○条 削除」として、いわば「抜け殻」を残すことによって条番号の繰り上がりが生じないようにします。
刑法に危険運転致死傷罪を新設した際の例を見てみましょう。


   第二十七章 傷害の罪

(傷害)
第二百四条  人の身体を傷害した者は、十年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

(傷害致死)
第二百五条  身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、二年以上の有期懲役に処する。

(現場助勢)
第二百六条  前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

(同時傷害の特例)
第二百七条  二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。

(暴行)
第二百八条  暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

(危険運転致死傷)
第二百八条の二  アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
2  人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

(凶器準備集合及び結集)
第二百八条の三  二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2  前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。

   第二十八章 過失傷害の罪

(過失傷害)
第二百九条  過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(過失致死)
第二百十条  過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。

(業務上過失致死傷等)
第二百十一条  業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
 自動車を運転して前項前段の罪を犯した者は、傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。


道路交通法の例を見てみましょう。


第七十五条の二 公安委員会が自動車の使用者に対し次の表の上欄に掲げる指示をした場合において、当該使用者に係る当該自動車につきその指示を受けた後一年以内にその指示の区分ごとに同表の中欄に掲げる違反行為が行われ、かつ、当該使用者が当該自動車を使用することについて同表の下欄に定めるおそれがあると認めるときは、当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、当該使用者に対し、三月を超えない範囲内で期間を定めて、当該自動車を運転し、又は運転させてはならない旨を命ずることができる。
自動車の使用者に対する指示 違反行為 当該自動車を使用することについてのおそれ
第二十二条の二第一項の規定による指示 最高速度違反行為 著しく交通の危険を生じさせるおそれ
第五十一条の四(第七十五条の八第三項において準用する場合を含む。)の規定による指示 放置行為 著しく交通の危険を生じさせ又は著しく交通の妨害となるおそれ
第五十八条の四の規定による指示 過積載をして自動車を運転する行為 著しく交通の危険を生じさせるおそれ
第六十六条の二第一項の規定による指示 過労運転 著しく交通の危険を生じさせるおそれ

 前条第三項から第十一項までの規定は、前項の規定による命令について準用する。
   (罰則 第一項については第百十九条第一項第十二号、第百二十三条第二項については第百二十一条第一項第九号)

(報告又は資料の提出)
第七十五条の二の二 公安委員会は、安全運転管理者が選任されている自動車の使用の本拠について、自動車の安全な運転を確保するために必要な交通安全教育その他自動車の安全な運転に必要な業務の推進を図るため必要があると認めるときは、当該安全運転管理者を選任している自動車の使用者又は当該安全運転管理者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。
 公安委員会は、速度、駐車若しくは積載又は運転者の心身の状態に関しての自動車の適正な使用の推進を図るため必要があると認めるときは、自動車の使用者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。

   第四章の二 高速自動車国道等における自動車の交通方法等の特例

    第一節 通則

(通則)
第七十五条の二の三 高速自動車国道及び自動車専用道路における自動車の交通方法等については、前四章に定めるもののほか、この章の定めるところによる。

(危険防止等の措置)
第七十五条の三 警察官は、道路の損壊、交通事故の発生その他の事情により高速自動車国道又は自動車専用道路(以下「高速自動車国道等」という。)において交通の危険が生じ、又は交通の混雑が生ずるおそれがある場合において、当該道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るためやむを得ないと認めるときは、必要な限度において、その現場に進行してくる自動車の通行を禁止し、若しくは制限し、又はその現場にある自動車の運転者に対し、第十七条第一項及び道路法第四十七条第四項の規定に基づく政令の規定にかかわらず路肩又は路側帯を通行すべきことを命じ、若しくは第八条第一項、第三章第一節、同章第六節若しくはこの章に規定する自動車の通行方法と異なる通行方法によるべきことを命ずることができる。
   (罰則 第百十九条第一項第十二号の二)


枝番号は条文番号だけではなく、「第4章の2」のように、章や節をまるごと新設する場合にも用いられます。
「第75条の2の2」「第75条の2の3」は、第75条と第76条の間に「第75条の2」と「第75条の3」が追加された後、第75条の2と第75条の3の間にさらに条文を付け加える必要が生じたために、このような形となったものです(「孫番号」ということがあります)
[23]条の枝番号と削除
    (法制執務コラム集:参議院法制局
[24]条の枝番号や「第○条 削除」という条は整理されないのか
    (法制執務コラム集:参議院法制局
枝番号・孫番号の多い例として、地方税法を見てみましょう。


(個人の事業税の徴収の方法)
第七十二条の四十九の十四  個人の行う事業に対する事業税の徴収については、普通徴収の方法によらなければならない。

(個人の事業税の賦課の方法)
第七十二条の五十  個人の行う事業に対し事業税を課する場合においては、第四項に規定する場合を除き、道府県知事は、当該個人の当該年度の初日の属する年の前年中の所得税の課税標準である所得のうち第七十二条の四十九の八第一項においてその計算の例によるものとされる所得税法第二十六条及び第二十七条に規定する不動産所得及び事業所得について当該個人が税務官署に申告し、若しくは修正申告し、又は税務官署が更正し、若しくは決定した課税標準を基準として、事業税を課するものとする。ただし、[略]



(政令への委任)
第七十二条の百十六  第七十二条の七十八から前条までに定めるもののほか、本節の規定の実施のための手続その他その施行に関し必要な事項は、政令で定める。

    第四節 不動産取得税

     第一款 通則

(不動産取得税に関する用語の意義)
第七十三条  不動産取得税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。[略]



第七百一条の四十八  削除

(事業所税の期限後申告及び修正申告納付)
第七百一条の四十九  第七百一条の四十六又は第七百一条の四十七の規定によつて申告書を提出すべき者は、当該申告書の提出期限後においても、第七百一条の五十八第四項の規定による決定の通知があるまでは、第七百一条の四十六又は第七百一条の四十七の規定によつて申告納付することができる。
2  [略]

第七百一条の五十  削除

第七百一条の五十一  削除

(事業所税の賦課徴収に関する申告の義務)
第七百一条の五十二  指定都市等の区域内において事業所等を新設し、又は廃止した者は、当該指定都市等の条例の定めるところにより、その旨その他必要な事項を当該事業所等所在の指定都市等の長に申告しなければならない。
2  [略]


近年の法律の条文には、見出しが付けられています。法律制定時に付された見出しは、条番号の直前に( )を用いて表示されています。
これに対して、古い法律には見出しがありませんでした。そこで、市販の六法などでは、編集の際に読者へのサービスとして見出しを追加しています。このような見出しは、【 】や[ ]で標記されています。こうした見出しは、それぞれの六法の編者が付けたものですから、六法によって相違があることがあります。


(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。

第二百条  削除

(予備)
第二百一条  第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

(自殺関与及び同意殺人)
第二百二条  人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。




第一九九条【殺人】  人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ処ス

第二〇〇条【尊属殺】  自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

第二〇一条【予備】  前二条ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其予備ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役に処ニ処ス但情状ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得

第二〇二条【自殺関与・同意殺】  人ヲ教唆若クハ幇助シテ自殺セシメ又ハ被殺者ノ嘱託ヲ受ケ若クハ其承諾ヲ得テ之ヲ殺シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス
(有斐閣『六法全書』平成4年度版より)  


1.5. 項

「条」の内容をさらに区分する必要がある場合には、区分される内容ごとに文章を区切って、改行します。区分されたまとまりを「項」と呼びます。
[25]条・項・号・号の細分
    (法制執務コラム集:参議院法制局
戦前に作られた法令では、単に改行するだけでしたが、戦後の法令では、第2項以下の行頭に算用数字で項番号をつけるようになりました。市販の六法などでは、戦前の法令についても、編集の際に読者へのサービスとして項番号を追加しています。
[26]法令の平易化について―これまでのあゆみを振り返る―
    (法制執務コラム集:参議院法制局
さらに、第1項には項番号をつけないのが正規の法文のスタイルですが、六法などでは第2項以下がある場合には「1」を付しているようです。いずれにしても、第2項以下がある場合には、「第○○条第1項」と発音します。
項番号には、枝番号は使われません。例えば、第3項と第4項の間に新しい項を付け加えるときは、付け加えるものを新しい第4項とし、従来の第4項以下を1つずつ繰り下げます(旧第4項は第5項になる。前掲[23]参照)

1.6. 号

条文のなかでいくつかの事項を列記する必要がある場合には、「号」を用います。条・項がいずれも1つの文として成立しているのに対して、号は、事物の名称や、「〜すること」のような名詞節の形になっています。
号名は、漢数字で標記されます。号の内容をさらに細分化して列記するときには、「イ、ロ、ハ、……」とします。
号名にも枝番号が用いられることがあり、「三の二」のような形になります。

1.7. 前段・後段

1つの条・項・号が内容的にいくつかに区分できる場合、2つに区分できるときには「前段/後段」、3つに区分できるときには「前段/中段/後段」と呼んで、指し示す部分を特定します。また、複数の文から構成されているときには、「第○文」と呼ぶこともあります。

1.8. 本文・ただし書

後段が前段の例外を定めているような場合には、後段は「ただし」(古い法令では、「但し」あるいは「但」と書かれている)の語で始まるので、この部分を「ただし書き」と呼びます。ただし書きに対する原則を定める前段のことを「本文」といいます。
民法の例で見てみましょう。憲法の講義でも出てくる、非嫡出子の相続分について定めた条文です。


(法定相続分)
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

赤字の部分を特に指示したいときは、「民法第900条第4号ただし書き前段」といいます。

1.9. 表・別表

内容の理解の便宜から、法令のなかで表が用いられることもあります。
表が各条項のなかに組み込まれている場合、これを「第○条の表」「第△条第1項の表」などと呼びます。
大きな表や、複数の条項に関係する表は、「別表」として法令の末尾に置かれます。別表が複数ある場合には、「別表第一」「別表第二」などと呼ばれます。
[27]法令中の「図」・「表」
    (法制執務コラム集:参議院法制局

2.法令の相互関係

法律は、孤立しているわけではなく、他の法令との相互関係に注意する必要があります。第4項で見るように、「法律」以外にもさまざまな法形式があり、それらが効力(形式的効力)の上下関係をもって法秩序を構成しているのです。

2.1. 下位の法令との関係

あることがらを規律する場合、国会が作る「法律」の中にすべての必要事項を書き込むとは限りません。法律では大枠のみを定め、技術的事項や専門的事項は行政機関の定める「命令」に委ねることが多いのです。前述のように国会は「唯一の立法機関」ですが、現代は、国家機関の活動が複雑多岐にわたり、高度の専門的・技術的判断や現実の需要への弾力的対応を求められる場面が少なくないため、すべてを国会が「法律」で定めることは困難であると考えられているのです。
法律を執行するために必要な手続などの細則について行政機関が定めるものを「執行命令」と呼びます。法律による個別具体的な委任に基づいて、法律の内容を補充・具体化するために、本来は法律で定めるべき内容を行政機関が定めるものを「委任命令」と呼びます。
「○○法」が制定されると、それに合わせて、「○○法施行令」「○○法施行規則」という命令が作られることがしばしばあります。大型の六法を見ると、主要な法律については、その施行令が当該法律に続けて収録されていたりします。
法律の内容が具体的にどのように実施されるかについては、これらの法令にも留意する必要があります。

2.2. 上位の法令との関係

近年は、国際関係の密接化にともない、いろいろな条約が締結されるようになりました。そして、これらの条約を実施するための法律が整備されることも増えています。条約は法律に対して優位するとされているので、既存の法律も、条約に矛盾・抵触しないことが求められます。したがって、法律について考えるときには、関連する条約についても注意する必要があるのです。
また、憲法の定めに適合しない法律は、裁判所の違憲審査によって、その適用を排除されることになりますから、憲法規定との関係についても留意する必要があります。

2.3. 同位の法令との関係

上位の法令に違反する下位の法令は、その効力を否定されます。では、同位(同じランク)の法律同士の関係は、どうでしょうか。
同位の法律の間には、「後法優先の原則」と「特別法優先の原則」がはたらきます。
法律と法律の内容が相互に矛盾・抵触する場合には、時間的に後に制定された法律(後法)が、時間的に先に制定された法律(前法)に対して、優先的に適用されます。
ある事柄について一般的に規律する法律(一般法)がある場合に、同じ事柄について、そのうちの特定の場合・事物・人・地域などに限定して適用される法律(特別法)があるときには、2つの法律の制定時期の前後関係にかかわらず、特別法が優先して適用されます。
例えば、商法は民法に対して特別法であるといわれます。また、民法については、財産関係や家族関係についての非常に多くの特別法が存在しています。法律の内容を理解するには、このような特例規定を無視することはできません。
[28]基本法
    (法制執務コラム集:参議院法制局



このページの冒頭に戻る
 home