齊 藤 正 彰 @北星学園大学


学術文献の探索について



   


3. 法学文献の体系的調査

特定の事項について調査・研究するために、体系的に法学文献を収集する方法について考えてみます。

3.1. 基礎調査とブラウジング

まず、調査・研究する事項に関する基本的な知識・情報を得ること(講義を聴く、概説書・体系書を読む、注釈書で関連条文の意味を知る、演習書あるいは論点解説書・判例解説書で議論状況をさらに詳しく知る)が重要でしょう。そして、そこで「参考文献」として紹介されているものや、註で引用されている文献を読み、さらに、それらに引用されている文献を調べる、というのが芋づる式の調査法です(ちなみに、複数の研究者が分担執筆している本の場合、自分の読んだ記述が「どの本に書いてあったか」だけではなくて、「誰が書いたものか」をチェックしておくことが肝要です)
なお、書店の店頭や図書館などで目についた文献を拾い読みするような調査を「ブラウジング」(Browsing)というようです。 上で述べたのは既に調査・研究のテーマが(ある程度)決まっている場合ですが、これから研究テーマを選択するというときには、興味のある分野の文献をパラパラとめくってみることが役立つ場合があります。
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3.2. 事項調査

分からない用語に出会したら、その意味を調べましょう。法律学・法令用語についての主要な辞典については、「国法の諸形式とその調査」の1.8. 法令用語の調べ方を参照してください。
そのほか、判例集や大学紀要などの逐次刊行物の略称(と正式名称)、外国語の法律用語、法律文書にしばしば引用されるラテン語などを手際よく調べるためのツールを確認しておきましょう。
[55]田中英夫編集代表『英米法辞典』(東京大学出版会・1991年)
[56]田中英夫編集代表『BASIC英米法辞典』(東京大学出版会・1993年)
[57]山田晟『ドイツ法律用語辞典』〔改訂増補版〕(大学書林・1993年)
[58]ベルンド・ゲッツェ『独和法律用語辞典』(成文堂・1993年)
[59]山口俊夫編『フランス法辞典』(東京大学出版会・2002年)
[60]Termes juridiques研究会訳『フランス法律用語辞典』〔第2版〕(三省堂・2002年)
[61]畑中和夫ほか編『中日・日中法律用語辞典』(晃洋書房・1997年)
[61a]森征一=二宮正人『ポ日法律用語集』(有斐閣・2000年)
[61b]山田信彦編著『スペイン語法律用語辞典』(信山社・2006年)
[61c]萩原金美編著『スウェーデン法律用語辞典』(中央大学出版部・2007年)
[62]柴田光蔵『法律ラテン語辞典』(日本評論社・1985年)
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3.3. 遡及検索

3.3.1. 基本的な方針

遡及調査とは、必要な情報を過去の文献の中から探し出す作業です。(1) 自分の研究テーマに関連する文献を広く収集する作業(とりわけ、研究を始める際や、研究成果をまとめる際には、関連文献の網羅的な調査が行われることも多いでしょう)や、(2) 特定の文献の調査(ある研究者の論文を収集する、ある判例についての評釈を収集する、など)が考えられます。
学術論文の探索については、紙媒体による検索と、電子媒体による検索とが考えられますが、網羅的に文献を収集しようとする場合に効率よい検索を考えるならば、大量の書誌情報を迅速かつ容易に検索できる電子媒体で先に検索したうえで、電子媒体の弱点を紙媒体でカバーする、という手順が有効であるように思われます。
電子媒体には、
・検索語の設定その他の事情により漏れが生じうる
・載録対象文献の制約による漏れがありうる
・載録対象期間の制約によるタイムラグがある(とりわけCD-ROM版の場合)
(載録対象の範囲内でも)そもそも載録に漏れがある
といったことを考慮して、

[A]『戦後法学文献総目録』
[B]『法律判例文献情報(冊子体)』
[C]『法律時報』12月号の「学会回顧」
[D]文献情報が掲載されている逐次刊行物

などで補完することを考えた方がよいでしょう。[A]は、『法律時報』の「文献月報」を項目別に整理してまとめたものです。現在は、1992年12月までの分が刊行されています。[B]は、各年ごとに索引が付きます。
学術文献検索のための電子媒体として著名なものは、前述 の[43]『雑誌記事索引/NDL-OPAC』・[44]『NICHIGAI/WEBサービス MAGAZINEPLUS』と、『法律判例文献情報』『法律時報文献月報検索サービス』でしょう。それぞれの特性があるので、その点を勘案して利用することが肝要です。
近年は、電子媒体による検索サービスを何らかの形で提供している大学が多いと思われますので、以下では、こうしたサービスの利用を前提として考えていきます。問題は、自分が利用可能なサービスがどれであるかです。

3.3.2. NICHIGAI/WEBサービス『MAGAZINEPLUS』を利用しての文献の調査

『MAGAZINEPLUS』は、「 857万件の雑誌記事情報に加え、戦後国内の学術雑誌が刊行した人文社会系の年次研究報告や学術論文集59万件の論文タイトル情報を加えた、総計916万件にのぼる国内最大の雑誌・論文情報データベース」とされています。 国立国会図書館の「雑誌記事索引」を完全収録(1946年〜1974年のデータが2005年11月に追加されました)したうえで、さらに、「記念論文集」と「一般論文集」の「論文タイトル情報」を収録しています。
「雑誌記事索引」は、「雑誌記事」という名称の通り、「雑誌」に掲載された論文を載録の対象としています。したがって、著名な研究者の還暦・古稀、退官・退職などの記念論文集に収録されている論文は載録の対象外です。
他方で、「記念論文集には一定のレベル以上の論文が寄せられていることが多い。……講座もの・企画もの……の収録論文も一般にはレベルが高い」(大村敦志ほか『民法研究ハンドブック』(有斐閣、2000年)218-219頁)と言われます。ここでいう「記念論文集・講座もの・企画もの」は書籍であって雑誌ではありませんから、これらに収録されている個々の論文は「雑誌記事索引」には載録されていません『MAGAZINEPLUS』は、そうした論文集などに収録された論文も載録対象としています。
ただし、論文集のデータが2003年までとなっていることは気になります。現在までの数年間の分については、なんらかの方法を考える必要がありそうです。もちろん、載録対象期間内についても、網羅的に載録されているわけではありません。後述する『法律判例文献情報』や『法律時報文献月報検索サービス』をも利用できるときには、それも併せて検索することが考えられますが、紙媒体で補完することも考えてみましょう。
今ここで必要な作業は、最近数年間の、雑誌以外の出版物に掲載された特定のテーマの論文についての書誌情報の調査です。そこで、[C][D]を利用することによって、主要な論文集または論文集に収録された論文そのものを発見することができるでしょう([D]としては、例えば憲法・行政法については、日本公法学会の学会誌である『公法研究』誌の「学界展望」欄がこれに当たります)
『法律判例文献情報』を利用できない場合には、[B]で調査してみることも考えられます。
『最高裁判所図書館邦文法律雑誌記事索引』は「当館が受け入れ、備え付けた邦文雑誌……の邦文法律記事」を対象としていますので「雑誌記事索引ファイル」が載録する範囲を越えているとは思えません。『法律関係雑誌記事索引』は、「定期刊行物及び記念論文集で法務図書館収蔵のものの法律関係の記事」を載録しているので、執筆者名索引にあたってみる意味はあるかもしれません。しかし、刊行が遅い=載録している情報が古いという問題があります。
場合によっては、重要な論文であれば「雑誌記事索引」で検索された(最近の)論文において引用されているはずだ、と割り切ることも可能でしょう。
載録対象期間以前の文献の調査については、後述します(過去の文献まで「網羅的に」調査する必要がないのであれば、載録対象期間以前の重要文献については『雑誌記事索引ファイル』で見つかった文献から芋づる式に知ることができる、として割り切ることも考えられます)
なお、人名の入力について、かつては「検索の手引き」の「入力文字について」のところに、「漢字は新字で入力して下さい 例)澤→沢」と書いてありました(『法律判例文献情報』との対比もあわせて、「拙稿が収録されていない!?」参照)。しかし、現在は、「利用のしかた」の「入力文字」のところを見ると、「以下はどちらを入力しても同じものとして検索します」とされ、その対象として、「*漢字の新字、旧字、異体字」が挙げられています。

3.3.3. 国立国会図書館HPの『雑誌記事索引/NDL-OPAC』を利用しての文献の調査

『雑誌記事索引/NDL-OPAC』は、「国内で刊行され、国立国会図書館が収集する雑誌のうち、(採録対象誌として)指定の雑誌に掲載された記事情報を収録」したもので、1948年から現在までの記事情報を収録し、週次で更新されています。
「学術誌・大学紀要・専門誌を中心として、人文・社会/科学・技術/医学・薬学と全分野をカバー」しているとされます。したがって、キーワードや執筆者名で検索しても、他分野の無関係な文献がヒットすることは、しばしばあります。
解説などの付されない法令・判例そのものの記事は載録されませんが、外国法令の翻訳は、載録されます。また、判例評釈も載録されます(ただし、原則として2頁以下のものは載録されない)
載録対象期間は1948年以降とされていますが、実際の載録対象期間は、載録対象誌ごとに異なります。例えば、『法学教室』は192号(1996年9月)以降、『法学セミナー』は130号(1967年1月) 〜 369号(1985年9月)と、 436号(1991年)以降が載録対象とされています(もちろん、このことは、NICHIGAI/WEBサービス『MAGAZINEPLUS』にも当てはまります)。なお、『ジュリスト』は1号(1952年1月)から、『法律時報』は20巻8号(1948年8月)から載録されています。商用の文献検索データベースが使えない環境において、『法学教室』の1996年以前の分も検索対象としたいときには、有斐閣サイトの『法学教室』検索ページ(創刊号(1980年10月)から検索可)を併用することも考えられるでしょう。
前述のように、『雑誌記事索引』では記念論文集・一般論文集等の中の論文を取りこぼすことになります。これについては、『一般資料の検索』で調査してみることが考えられます。さらに、利用可能であれば『法律判例文献情報』や『法律時報文献月報検索サービス』を併用するというのが1つの方法でしょう。
あるいは、それほど重要な論文であれば『雑誌記事索引』で検索される論文に引用されるはずだ、という割り切り方もあるかもしれません。記念論文集等が最新のものであれば引用される可能性は低くなりますが、その場合は同様に『法律判例文献情報』への収録も間に合っていないでしょう。
載録対象期間以前の文献の調査については、後述します(過去の文献まで「網羅的に」調査する必要がないのであれば、載録対象期間以前の重要文献については『雑誌記事索引』で見つかった文献から芋づる式に知ることができる、として割り切ることも考えられます)

3.3.4. 『法律判例文献情報』を利用しての文献の調査

『法律判例文献情報』は、従来はCD-ROM媒体で提供される『法律判例文献情報CD-ROM』でしたが、現在は「D1-Law.com 第一法規法情報総合データベース」の中で提供される形に変わりつつあるようです。収録対象の文献は、「法律関係図書、法律専門雑誌・研究紀要等約1,300誌及び朝日・読売・毎日・日経新聞に掲載された法律関係署名論文・対談等」とうたわれています(ただし、少なくともかつての『法律判例文献情報CD-ROM』は、「記念論文集・講座もの・企画もの」の収録論文の載録について網羅性を欠く嫌いがあるように思われます。Tips参照)
『法律判例文献情報』は、載録内容が法学関係の文献に限定されているので、『MAGAZINEPLUS』や『雑誌記事索引』のように、他分野の文献がヒットしてしまう煩わしさがありません。また、検索用にキーワードの補充も行われていますが、あまり期待しすぎるのは禁物でしょう。
更新頻度の低かった『法律判例文献情報CD-ROM』に対して、インターネットでの提供となった『法律判例文献情報』の更新頻度は「毎月」とされています。これでも、更新頻度はそれほど高いとは言えません。最新情報を補充するために、『雑誌記事索引/NDL-OPAC』との併用を考えたほうがいいかもしれません。また、キーワードの選択による漏れをカバーするために、[B]〜[D]や、

[E]『法律時報』の「文献月報」

をチェックすることも考えたほうがいいかもしれません。

[F] 削除

3.3.5. 『法律時報文献月報検索サービス』を利用しての文献の調査

『法律時報文献月報検索サービス』は、『法律時報』創刊号(昭和4年)から直近号までの[E]と、同誌に掲載の「判例評釈」欄(判例評釈の所在情報)をインターネット上で検索できるサービス(有料)です。大学で利用可能な場合もあるでしょう。個人での契約も可能です。
「法学研究者待望の文献情報」という触れ込みですが、期待の割に、載録漏れが多いような印象を受けます。
しかし、『法律時報文献月報検索サービス』の漏れを補完するのに、出自が同じ[A][C][E]を用いることはできません。また、憲法・行政法の分野での[D]としての、『公法研究』誌の「学界展望」欄も、[E]の情報を基礎としていることに留意しなければなりません(ただし、学会では「学界展望」欄の執筆者を告知して文献の寄贈を奨励しており、執筆者が独自に発見・収集する場合もあるので、必ずしも[E]の載録範囲に限定されるわけではない)

3.3.6. 電子媒体の載録期間以前の文献の調査

上述の電子媒体への載録以前の文献を探すには、[A]を利用するのが有効でしょう。これは、『法律時報』に掲載されている「文献月報」を項目別に整理してまとめたもので、1992年12月までの分が刊行されています。現在は3年分が1冊になっていますから、必要な範囲のものを調べていけばよいわけです。もちろん、『法律時報文献月報検索サービス』が利用できる環境にあれば、その利用も考えられるでしょう。
また、[40]の累積索引版を利用することも可能でしょう。
なお、簡便なものとして、

[G]『雑誌文献目録』(日外アソシエーツ)

があります。この[G]は、[40]の累積索引版をもとに主題別の文献目録として再編成したもので、巻末に主題索引および人名索引が付されています。現在は、1984年までの分が刊行されています。ただ、[G]は、利用しやすく編集されている反面、遺漏についての不安が残るように思われます(後述4.1.参照)

3.3.7. 戦前の文献の調査

さらに、戦前の文献をも射程に入れるならば、

[H]『法学文献総目録』

などを利用することとなるでしょう。[H]は[A]の前身です。もちろん、『法律時報文献月報検索サービス』が利用できる環境ならば、戦前の文献も『法律時報文献月報検索サービス』によって調査することができます。
戦前の法学文献を探索するための書誌については、[16]に詳細なリストが掲載されています。

3.3.8.電子媒体の載録期間以降の文献の調査

いかなる索引誌・データベースも、作成・発行によるタイムラグを回避できません。月刊の文献情報といっても、それはすでに数ヶ月前の情報なのです。
そこで、最後は「現物」に当たるしかないことになります。つまり、理屈としては、新刊雑誌や新刊書の目次を片っ端から調査する、ということになります。
次に述べる最新動向調査の重要性の一端は、ここにあるといえるかもしれません。
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3.4. 最新動向調査(逐次文献調査)

調査・研究テーマに関連のある文献、とりわけ逐次刊行物を定期的にチェックする方法です。ある程度の期間にわたって研究を行う場合には必須の作業でしょう。
自分の研究領域に関する重要な逐次刊行物(Core Journal)を特定し、その最新号を常にチェックする方法と、新刊書・新着雑誌を一通りチェックする方法が考えられます(両方の方法をうまく組み合わせることが肝要でしょう)。新刊書は、新聞・雑誌の広告、『これから出る本』、出版社の出版案内や広報誌、ホームページなどを活用します。大学図書館・図書室は、新着雑誌を別置するコーナーを設けるのが一般的です。新着雑誌は定期的に入れ替えられます(1週間ごと、など)。その周期に合わせて、新着雑誌をチェックしに行くとよいかもしれません。ただし、自分の所属する大学の図書館にすべて逐次刊行物が所蔵されるわけではありません。漏れを少なくするためには、他の(より大きな)大学の図書館を利用するという方法も考えられますが、[B][E]などを利用することも考えられるかもしれません。こうした最新動向調査の作業は、自分の調査・研究テーマに関する最新文献を見落とさないためだけではなく、新しいテーマを見つけるためのブラウジングの要素もありそうです。
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4. 遡及検索のtips

4.1. 日外アソシエーツ社の索引誌

前述(3.3.5. [G])のように、文献を探す簡便な索引誌として、日外アソシエーツ社によるものがあります。例えば、憲法学については、
[63]日外アソシエーツ編『憲法に関する10年間の雑誌文献目録:昭和50年-昭和59年』
    (日外アソシエーツ・1987年)
[64]日外アソシエーツ編『憲法に関する27年間の雑誌文献目録:昭和23年-昭和49年』
    (日外アソシエーツ・1982年)
があります。他の分野についても、同様に編纂されています。
そのほかにも、
[65]日外アソシエーツ編『文献目録憲法論の50年:1945〜1995』
    (日外アソシエーツ・1996年)
もあります。学術論文の載録については、その網羅性の程度に留意する必要があるかもしれません(逆に、情報収集対象誌を見ると分かるように、新聞記事や、一般の週刊誌・月刊誌の記事には強いようです)
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4.2. 逐次刊行物の総索引または総目次

大学の研究者が執筆した論文を探すには、その研究者の所属する大学の紀要を調べてみるというのも1つの方法でしょう。定期的に総索引や総目次が作られている紀要も、少なくないでしょう。そこで、「事項索引」または「執筆者索引」を利用して検索します。
雑誌や紀要の総目次・総索引がどの巻号に掲載されているかは、
[66]天野敬太郎=深井人詩編『日本雑誌総目次要覧』
    (日外アソシエーツ・1985年)
[67]深井人詩=田口令子編『日本雑誌総目次要覧84/93』
    (日外アソシエーツ・1995年)
などによって知ることができます。
ある研究者がどこの大学に所属しているかが分からないときには、インターネットで検索してみるほか、学会名簿や、
[68]『全国大学職員録』(廣潤社・年刊)
[69](削除)
[69a]http://read.jst.go.jp/
    (ReaD研究開発支援総合ディレクトリ:JST 科学技術振興機構
などを利用して調べることもできます。
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4.3. 文献目録ないし文献研究書

このほか、特定領域に関する文献目録ないし文献研究書の利用も考えられるかもしれません。
さらに、芋づる式調査法の応用として、参考文献リストが充実している文献を利用する、という方法も考えられます。「全集」「大系」などのシリーズに属するものや註釈書、厚い研究書などには、詳細な文献リストが掲げられていることが多いようです。
例えば、
[70]芦部信喜監修『注釈憲法(1)』
   (有斐閣・2000年)
[71]樋口陽一『比較憲法』〔全訂第3版〕
   (青林書院・1992年)
などには膨大な参考文献が列挙されています。
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4.4. 記念論文集の業績目録

特定の研究者についての網羅的な研究業績リストがあれば、非常に便利です。近年は、インターネット上でそうした情報を公開している研究者も増えつつありますが、以前から、信頼性と網羅性を期待できる研究業績リストが存在しています。それは、還暦・古稀記念、退官・退職記念などの記念論文集に収録された研究業績リストです。例えば、
[72]芦部信喜先生還暦記念『憲法訴訟と人権の理論』
   (有斐閣・1985年)
[73]芦部信喜先生古稀祝賀『現代立憲主義の展開(下)』
   (有斐閣・1993年)
[74]佐藤幸治先生還暦記念『現代立憲主義と司法権』
   (青林書院・1998年)
[75]樋口陽一先生古稀記念『憲法論集』
   (創文社・2004年)
また、所属大学の紀要で、退官・退職記念号や追悼号が企画されたり、それに関する記事が掲載されることがあります。その場合も、たいていは業績リストが掲載されているでしょう。
たとえば、
[76]岡田信弘「中村睦男先生の経歴と業績」
   北大法学論集52巻3号(2001年)145頁以下
などが挙げられます。
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5. 芋づる式検索

5.1. 「芋づる式」とは?

学術文献には、参照すべき文献について情報が盛り込まれているはずです。もちろん、末尾にまとめて列挙してある場合だけではなく、註をつけて引用してある場合もあるでしょう。このように、参照指示あるいは引用されている文献を遡って辿っていく方法を「芋づる式」と言います。これは、重要な文献検索方法の1つです。
芋づる式を「古いやり方」「手抜きしたやり方」と見るのは早計ではないでしょうか。芋づる式を軽んじる見方の背後には、索引誌やコンピュータによる検索への過信ないし過度の期待があると思えるのです。たしかに、芋づる式は、ある意味で、コンピュータによる検索に比べて網羅性に欠けるでしょう。しかし、コンピュータは、基本的には、「検索語(利用者が入力したキーワード)を標題(著者が付けたタイトル)に含む文献」を網羅的に表示しているにすぎない場合が多いのではないでしょうか(キーワードを補充するなどの手当がなされていることもありますが、それも標題をもとにしたものでしょう)。利用者と著者(あるいはデータベース作成者)の「意思疎通」を前提とした「網羅性」は、ときに脆弱さを露呈します。
これに対して、芋づる式は、専門の研究者が文献を渉猟し、当然に内容を読んだうえで引用・紹介しているはずです(さまざまな制約はあるけれども)。芋づる式の出発点として適切な、情報量が多く、かつ信頼性の高い文献を見つけるには、相応のコツがあるようです。芋づる式の要諦については、[12]を参照してください。
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5.2. 文献調査の目的と道筋

このページの冒頭で、学術文献の探索は、

(1) 文献の存在の調査 → (2) 文献の所在の調査 → (3) 文献の入手方法の調査

という順序を辿るのが通常ではないか、と述べました。
この(1)の作業は、

(A)特定の文献の書誌情報を調査するのか
(B)特定の主題に関する不特定多数の文献情報を収集するのか

によってアプローチを異にします。
さらに、(B)の作業においては、

(a)情報の文脈を重視する手法
  (当該主題についての議論状況を把握し文献評価を行いながら収集する)
(b)情報の網羅性を重視する手法
  (当該主題に関する文献情報をもれなく収集する)

が考えられます。
Book Reviewなどに拠るのが前者の手法であり、コンピュータによる検索は後者の手法となるでしょう。
いわゆる「芋づる式」の文献検索は、(1)(B)(a)の作業をしていると言えるでしょう。芋づる式で文献の存在が判明したなら、あとは(2)の作業を経て当該文献を入手できるわけです。しかし、参照した文献の引用註が出典についての十分な情報を提供していない場合には、(1)(A)の作業をする必要が生じることになります。

つづく(2)の作業は、(3)の形態(購入・帯出・複写・閲覧など)と密接な関係を有しています。
「自分の所属する大学に所蔵されている資料」という入手方法上の制限が前提となっている場合もあるでしょう。

ときに、(1)と(2)は同時であり得ます(例えばOPACでキーワード検索をするとき)
また、(1)と(2)は逆転することがありえます(例えば図書館で書架の本を見ながら文献を探すとき)
いずれも、(3)のあり方が絡んでいる場合が多いでしょう。

さらに、ある探索ツールはいずれか特定の作業にしか役立たない、というわけでもなく、用途ごとに截然と分類できるわけでもないでしょう。
何のために何をしようとしているのか、作業の目的・手順・段階を意識していないと、「文献を調べる」といっても無駄な、あるいは不十分な仕事をしてしまう可能性があります。


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