経歴

1984年、北海道大学文V系に入学し、法曹を志すがすぐに挫折。1988年、さらに憲法の研究を深めるため、北海道大学大学院法学研究科に進学。途中、政治哲学に寄り道して、憲法の研究が遅れ、ようやく1995年に博士課程修了。北海道大学法学部助手を経て、1996年に北星学園大学経済学部専任講師。2005年より北星学園大学経済学部教授。

研究テーマ

研究見取図 "人間だから、意見が違うのは当たり前"
学生からよく聞く言葉です。でも、この言葉は、人間の本性についての深い洞察に基づいてなされた発言ではありません。それに、この<当たり前>の人間社会の事実が、私たちが生きる社会や政治のあり方をどれほど深く規定しているかについて、とことんまで突き詰めた末の発言でもありません。それでも、"人間だから、意見が違うのは当たり前"という学生の素朴な直感には、人間についての重要な真理が含まれています。私の研究は、この人間社会の多元性という<当たり前>の事実を真剣に受け止めるということから出発します。
"多様な考えや価値観をもった人間が、共同して社会を営むためには、どのような原理やルールが必要なのか?"
これが、私の研究のメインテーマです。私が共感するリベラリズムの思想は、暴力や恐怖、または威光や霊力ではなく、人間同士の合意や約束に基礎をおく<正義の原理>に基づいて、社会を組み立てようと考えます。
"みんなが合意できる正義なんてあるの?"
そんな声がすぐに聞こえてきそうです。たしかに、あの9.11以来、正義という言葉は濫用され、正義を語るものは嘲笑の的でさえあります。しかし、私は"正義はある"と信じたいと思います。"正義はある"という希望を私に与えつづけているのが、ジョン・ロールズという20世紀を代表するアメリカの政治哲学者です(残念なことに、彼は昨年の暮れに逝去されました)。これまで私は、ロールズの理論に示唆を受けながら、基本的人権の道徳的基礎づけの問題に取り組んできました。私の研究の見取り図は、図に示したとおりです。しかし、この見取り図に当てはめる<ピース>が手元に少ししかなくて、この<パズル>の完成にはまだまだ時間がかかりそうです。これからも、学生と一緒にこの<パズル>に必要な<ピース>を探していきたいと思います。

学生への期待

権力と権威につねに厳しい批判の目を向けてください。批判は、批判する相手とつながろうとする参加の意志と、批判によって相手が変わるはずだという希望の表現です。また、批判は、相手を最後まで見届ける責任を批判する当の本人に負わせます。"仕方がない"とつぶやいて、批判をやめたとき、私たちは批判的な態度がもつ、参加や希望、責任といった「徳」をも失ってしまうのです。そして、何よりも自分を批判してくれる友達を大学生活のなかで見つけてください。辛辣な批判者や頑固な反対者が、もっともよく人間を成長させるからです。

研究業績

北星学園大学教員情報


このページのトップ
憲文録|Hokusei Gakuen University −Ichiro Iwamoto