スレインズ城(Slains Castle)

  バンパイヤ伝説の中でももっとも有名で象徴的なのがドラキュラ(Dracula)。約100年前に、この小説を書いたのがアイルランドの小説家にして俳優だったブラム・ストーカー(Bram Stoker)。彼がドラキュラを書くためのインスピレーションを得たといわれているのが、このスレインズ城であるという。

  このお城(廃墟)までは、アバディーンからはA90を北上し、途中でA975に乗り換えてクルーデンベイ(Cruden Bay)を越えて23.3マイル、約35分。A975は、左手にはなだらかな丘陵がどこまでも続き、右手には北海が臨めるという、最高のロケーションの中を走る道である。
  実はスレインズ城には、過去2度来ていた。正確にいえば、スレインズ城に通じる歩行者用小道が始まる駐車場に2度来ていたのである。しかし、2度とも北海からの強風に行く手を阻まれ、接近することができなかった。そして今回が3度目の挑戦だった。

  4月中旬の日曜日、この日は快晴微風。駐車場に車を停めて歩行者用小道をお城目指して歩く。今度は左手に北海を見ながらお城を目指すことになる。途中、白と黒のコントラストが美しいマグピー(Magpie)の鳴き声に耳をすませば「マグピー、マグピー」と鳴いているように聞こえたのでちょっと面白い。ややぬかるむ小道を歩くこと15分、スレインズ城到着。


大きなお城です。

  このお城は、NTSもヒストリック・スコットランドもかかわってないようで、廃墟がそこにあるだけ。何の説明プレートもない。しかし、ダノター城と同じように、お城の立地条件といった点では最高の場所にあることは確かで、断崖絶壁の際(きわ)にお城が建てられている。
  長さ100メートルはあるだろうと思われるほど大きな城で、1階部分はほぼ残されており、いくつもの部屋がある。歩いていると迷子になってしまうほどだ。もちろん天井部分はないので光は入るが、場所によってはかなり暗いところもある。

  ただ残念なことに、かつてはあったであろう彫刻などは一切なく(取り外されたか略奪された)、建物それ自体は面白みに欠ける。
  それでも、聞こえるのは岩にはじける波音とカモメの鳴き声だけという静寂の中にいると、「ドラキュラのお城」という先入観のせいかもしれないが、何故か恐怖心が出てくる。


お城のすぐ下が北海。水平線が丸く見える。

  このスレインズ城からクルーデン・ベイ方向に散策路が続いていて、何人かはそちらの方に歩いていっているようだったが、軽装の我々には少々つらい道のりのように思えたので、約1時間、お城を見学して帰路についた。


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