第三部分 日記風 5月

5月1日(星期三)


吉野家勝利広場店

 今日は労働節。そして黄金周のスタートである。
 何かイベントがあるのかなと思って外出したが、人出はすごいもの、イベントらしいイベントには遭遇しなかった。
 そういえば、ここ数日、ポプラ(と思われる)綿毛が街中を浮遊している。今日も、賓館を出るとすぐ、綿毛の群れに巻き込まれた。巻き込まれたというほど大げさなものではないが、大外の近くにポプラがあるらしく、大外のキャンパスはことのほか綿毛が多い。しかしそれにも増して、街の緑が本当にきれいになった。一番いい季節を迎えたかもしれない。
 今日は快晴の空が広がり、気温もぐんぐん上がって午後2時で19度だった(夜6時55分からの大連電視台の天気予報による)。とはいえ、日が陰るととたんに涼しくなる。とくに夜は肌寒く感じるほど。日中気温が上がれば暑くなるものの、夜は急激に気温が下がるという気候は、札幌に似ている。
 そういえば、2、3日前から、部屋の中に蚊を発見。まだ早いんじゃないかなと思うが、思い出せば、群英超市には、蚊取り線香が目に付くところに陳列されていたような・・・。
 さらにもう一つ。
 今日、大連市内4店目の吉野家が勝利広場に開店した。店舗はデイリークイーン(DQ)と複合店のもよう。小生、まだ行ってないので情報はここまで。

5月2日(星期四)
 今日は曇り空で肌寒かった。
 今日、南山旅遊風情街に散歩に行くと、あの奇妙な日本人形がすっかり撤去されていた。
 小生のHPを読んで『こりゃいかん』と思って撤去したのだろうか(そんなバカな)。でもなければないで何か物足りない感じがするから不思議だ。


桐の花(バスターミナル付近)

5月7日(星期二)
 今日で黄金周も終了。
 街中を浮遊している綿毛の正体がわかった。ポプラかなと思っていたのだが、肝心のポプラの木が見つからない。『はて?』とは思っていた。
 今日、散歩の途中で児童公園に立ち寄った。公園の中には綿毛がおびただしく浮遊していた。そしてそのあたりを見回すと、ヤナギ並木が続いていた。近づいてみると、たしかにヤナギの葉っぱの間に実(?)があり、そこに綿毛が着いていた。
 「綿毛の正体見たり、ヤナギかな」
 キャンパス内に学生の姿が多くなったように感じる。BACK TO SCHOOL。
 さ、いよいよ、後半のスタート。

5月8日(星期三)
 今日から今学期の後半が始まった。
 キャノン杯決勝戦に出場するJさんとの練習再開。

5月9日(星期四)
 5月7日夜、北京から大連に向かっていた中国北方航空機が大連沖で墜落したが、そのニュースの詳報が、大連電視台でもCCTVでも報じられるようになった。8日のニュースでは、事実だけが報じられ、中国政府が救出作業に力を入れるというコメントだけだった。いかにもあっけない報道だった。
 しかし今日は、映像と共に、乗客の国籍なども詳しく報道していた。とはいえ、日本に比べれば、その扱い時間は非常に短い。日本なら、特別番組も編成して終日報道しただろう。

5月10日(星期五)
 ゴールデン・ウィークあけの最初の週が終わった。
 今週は、講義内容をちょっと変更して、いくつかの遊びを紹介した。
 2年生には、早口ことばとけん玉、3年生には「あっち向いて、ホイ」とけん玉を紹介したが、どちらも大受けだった。
 早口ことばは、決して早口でいうことはできなかったが、それでも学生の多くが滑舌も良く上手にしゃべることができ、ちょっと驚いた。「あっち向いて、ホイ」は、ゲームの前にジャンケンの仕方を復習したが(すでにジャンケンは知っていると思ったので)、実際にゲームの中で使うことははじめてのようで、それだけでも受けた。さらに、「あっち向いて、ホイ」は、動作と同時にかけ声も出さなくてはならないので、ことばを優先すると指が動かず、指を優先するとかけ声がおろそかになり、なかなか大変だった。しかし、クラスごとに競わせると、大いに盛り上がった。
 さらに、けん玉は、実演して見せて、希望者にやらせてみた。小生が実演して成功するたびに拍手(玉を剣に刺すところまでできて内心ホッとした)。学生はなかなかうまくできない。そのたびに声援が飛んだ。結局、2年生でひとり、3年生でひとりが、剣に玉を刺すところまでできて、そのときには、大きな拍手が教室内を包んだ。
 たまには、こんなお遊びもいいでしょ?

5月13日(星期一)
 講義は第10週目に入った。
 今日は、お昼に、ユニホームを着た学生が、サッカーの試合をやっていた。
 赤地に白文字の横断幕も飾られたし、応援する学生の姿も見える。
 横断幕には「大外2002校園文化節足球聯賽」と書かれている。校園文化節だから文化祭ということだろう。足球聯賽はサッカーリーグ戦だ。ということは、キャンパス内(校園)の文化祭の一環としてのサッカーリーグ戦が始まったというわけだ。
 それにしてもお昼時にリーグ戦をやるなんて、日本ではあまり考えられないことだ。

5月14日(星期二)
 今日は雨の予報だったが、結局、一滴の雨も降らなかった。曇りがちの日が続いているが、本当に雨が少ない。
 大連に住む日本人や日本からの旅行者のための月刊誌が2種類ある。一冊は「コンシェルジェ大連」、もう一冊は「i.D.(インフォメーション大連)」である。小生、ホテルのフロントで手に入れたり、学生に持ってきてもらったりして毎月両方を手に入れて読んでいる。
 そのどちらも、5月号には、アカシア祭りの記事が掲載されていた。大連はアカシアの町といわれる。そして、迎えて14回目のアカシア祭りは、5月25日から31日までの一週間開催されるという。
 草花や木々に造詣の浅い(こんな表現があるかな)小生にとって、アカシアは花が咲いてはじめてわかる程度の知識しかない。アカシアの町といわれる大連とはいえ、大外のまわりにはアカシアの木が探し出せなかった。
 かつて西田佐知子の「アカシアの雨がやむ時」という歌は、アカシアの花が散るときに、あたかも雨が降るようにポタポタと花が落ちる様子を歌った歌だということを何かで読んで、『そうか、アカシアの花は鈴なりに下向きに咲いてそれが落ちるのか』ということを知って、えらく感動したことがある(大げさだが、決して比喩としてアカシアのような雨が降るという意味ではないということを知っただけでも驚いたものだ)。
 そのアカシア祭りは今月下旬。まだ10日以上ある。
 とはいえ、散歩をしていて、すでに開花しているアカシアを見付けた。それは、大外から中山広場の方に向かって延安路を下り、延安路と華昌街が交わる交差点の右手にあった。道路の左右にアカシア並木があり、花が鈴なりに咲いていた(実は大外にもっと近い、意外なところにあったことを、そのあとで知ることになったが、ずっと見過ごしていたのだった)。
 やはり今年は、暖冬なのだろう。この調子だと、桜祭りの同じように、祭りの期間中には花は終わりにさしかかっているかもしれない(アカシアの雨が降るお祭りというのもいいかもしれない)。

5月15日(星期三)
 今日は朝から雨がち。最高気温は15度の予報。一斉に傘の花が咲いたが、英国なら誰も傘をささない程度の雨でおしめり程度。
 3年生のG君が一枚のパンフレットを持ってきてくれた。見れば、「大連外国語学院2002校園文化節」と書いてある。13日から始まったサッカーリーグ戦はこの文化節の一環だった。
 G君にいろいろ聞いてみたがどうも要領を得なかった。というのもこのイベントは今年が4回目で、その位置づけもまだ流動的なようだ。
 主催は、共青団(共産主義青年団)大連外国語学院委員会。
 内容は、実にさまざま。北星の体育祭と大学祭をまとめたようなもの(とはいえ規模は小さい)。
 5月13日から6月12日まで 足球大賽(サッカートーナメント)。
 5月15日、午後6時から 校礼堂で舞踏大賽(忘れて行かなかった!)。
 5月22日の午後 東山公寓(民間の寮らしい)で「披砂拾金」跳蚤市場(ハハハ、わかりやすい、ノミの市)。
 5月27日から31日まで 図書館で諸子百家の本の展示会。
 6月5日、午後6時から 校礼堂で主持人大賽(アナウンサーコンテスト)。
 5月中旬 図書館で書画大賽(書道や絵画のコンテストなのだろうか)。
 5月15日から6月12日まで 七楼(7号館)で弁論賽(弁論大会)。
 そして7月3日の夕方5時30分から、校礼堂で卒業生のパーティが開かれるらしい(内容は不明)。
 これらの行事は大外のすべての学部にかかわる行事で、これらの他に各学院でこの時期にイベントが行われるという。日本語学院は、22日の夜に、日本語寸劇大会が開かれる予定。

5月16日(星期四)
 今日は、北星から漢学院に留学している学生2名と、情報交換をかねて食事会。
 日本でならさしずめ居酒屋で、ということになるのだろうが、当地には日本風の居酒屋はない(もちろん、日本料理を出す飲食店はたくさんあるが、非常に高い)。というわけで、大外近くの北京ダック専門店でのコンパということになった(これも日本では考えられないが)。
 彼らの中国語は、お店の小姐とメニューを見ながら交渉できるほど。安心してまかせられる。
 大連で食べる北京ダック。北京で食べるものと味は同じで値段は安いという。一羽80元。
 お互いの近況などを話しながら、しばし楽しい時間を過ごした。

5月17日(星期五)
 10日ほど前、教務係の張さんから次のような依頼があった。
 2年生のクラスに、韓国語学院の学生で、韓国語と日本語を学んでいる学生が24名出席している。彼らは卒業年次生で、今月末までにすべての成績を出さなければならない。ついては、彼らのためにリポート課題を与えてほしいというものだった。
 先週、その課題を提出して学生に連絡してもらったが、今日、そのリポートを受け取った。成績は24日までに提出してほしいとのこと。
 この採点が非常に難しい。日本語能力を重視するか、内容を重視するか。
 しばらく悩みそうだ。


グラウンドの撒水

5月20日(星期一)
 講義第11週目。
 数日、最高気温が24〜26度の日が続いている。最低気温も17度前後。半袖で過ごすことが多くなった。
 3年生のKさんが寸劇大会の招待状を持参してくれた。
 それを見れば7本の寸劇が披露されるらしい。
 そしてKさんはもう一つの資料を持ってきてくれた。それは7本の台本だった。
 「審査員は5名の先生にお願いしています。先生にはその審査委員長を引き受けてくれませんか」とKさん。
 Kさんによれば、かつて北星から派遣された先生たちにも審査委員長をお願いしているという(聞いてないなあ、そんなこと)。
 「ボクより年輩の先生で適任者がたくさんいるじゃないですか」と小生。
 「先生は来年はいないでしょ?今年だけですからお願いします」とKさん。
 『うまいことをいうなあ、殺し文句だな、これは』と思ったが、そういわれれば引き受けないわけにはいかない。台本は、各賞を決めるための参考にしてほしいとのことだった。

5月21日(星期二)
 またまた驚愕の事実!
 南山旅遊風情街に散歩に行くと、すっかり撤去されていたあの奇妙な日本人形が復活していた。なければないで寂しかったが、もとの場所にあると、やっぱりヘンだ。


大外中庭のバラも咲き始めました

5月22日(星期三)
 毎日暑い日が続いている。
 今日の最高気温は27度。予報では23度だったから、それを4度も上回った。
 講義が終わってから街を散歩したが、あまりの暑さに早々に部屋に引き上げた。小生の部屋、北向き。直射日光が入らないことを恨んだこともあったが、こんな時は涼しくていい。
 アカシアの花からのいい香りが街中を包んでいるが、すでに散り始めている木もある。今週末からのアカシア祭りは、文字通り、アカシアの雨の中の祭りになりそうだ。

5月24日(星期五)
 ここ数日、テレビの映りが非常に不安定。
 NHKだけならまだしも、CCTV1以外のチャンネルが軒並み映らなくなるから厄介だ。どうやら小生の部屋だけ、あるいは賓館だけの現象ではなく、学内の食堂でも同じような現象になっている。
 テレビに関してはさらにショックなことがある。
 30日から始まるワールドカップ。当然、NHKで日本の応援をしようと考えていたが、国際放送では放映権がないので中継できないという。だとすればNHKなど映らなくてもいいから、CCTV5か大連電視台4(いずれもスポーツチャンネル)だけでもスッキリと映ってほしいものだ。

5月25日(星期六)
 数日前、果物屋でレイシを見たので買ってみた。
 冷蔵庫で冷やして食べてみると、みずみずしい香りが口の中に広がった。やはり日本で食べる冷凍物とは甘さが違う。
 学生に聞けば、まだまだ値段は高いという。これから夏に向かって価格も下がって味覚を楽しませてくれるだろう。

5月26日(星期天)
 昨日から第14回アカシア祭りが始まった。
 市内各地でいくつかのイベントが開かれているようだ。小生は、合同結婚式が開かれ、しかも大連国際旅遊商品展覧会が開かれることになっていた星海広場に行った。
 しかし、訪れた時間が悪かったのか、星海広場は観光客こそいたものの、お祭り・イベントといった雰囲気はなく、何とも肩すかし。
 事前に、学生たちにアカシア祭りについて聞いても、知らない学生がほとんどだったので、アカシア祭りは、ごく一部の日本人のための祭りで、大連市民にとっては、それほど名の通った祭りではないかもしれない。
 しかし、ところどころで、まさにアカシアの雨が降っていて、なかなか風情があることは違いがない。

5月27日(星期一)
 今日も暑い一日だった。雨雨降れ降れと歌いたくなるほど雨が恋しい。先週末に咲き始めた大外中庭のバラが一斉に咲き乱れ、すでに終わりを迎えているものもある。この暑さだもの、花もまいるだろうな。
 今日から講義第12週目。
 2年生の講義で自由に質問させたが、日本の大学院についての質問が相次いだ。すでに2年生から将来の進路について真剣に考えている学生がいるようだ。このあたりが、日本の学生と、ちょっとだけ違うところか。
 そういえば、今日から大連生活も4ヶ月目に突入。でもいまだに中国語が使えない。今日など、すべて日本語で通して買い物をするという荒技を演じてしまった。でも目的のモノを無事入手。かろうじて金額が正確に聞き取れたのが救い。

5月28日(星期二)
 夜、8時30分頃、突然停電。真っ暗闇。
 賓館の窓から見ると、日本語学院棟、図書館棟も真っ暗。しかし、漢学院やほかの建物は煌々と明かりが点いている。もちろん、学外も停電はない。
 図書館や日本語学院の教室で勉強していた学生が、ぞろぞろと出てきて、寮に帰っていく声が聞こえた。
 停電は約40分間続いた。原因はまったく不明。

5月29日(星期三)
 大連電視台の新聞総合頻道でニュースを見ていたら(相変わらず眺めているだけだが)、大連市が公式ホームページを立ち上げたという。もっと早く立ち上げていると思っていたので、ちょっと意外な感じだ。ちなみにURLは、http://www.dl.gov.cn
 一雨ほしいなあと思っていたら、午後4時頃に稲光がして雷鳴がとどろき、大粒の雨が落ちてきた。夕立のような感じだ。雷は当地に来て初めて。
 雨は1時間程度続いたが、どうやら気温が高いせいだろうか、アッという間に乾いてしまった。
 そして明日の天気は、晴れマーク一つで、最高気温は26度の予報。最近、最高気温26度は動かない数字になっている。

5月31日(星期六)


こんな時だけ日の丸に愛着

 今日からワールドカップ。
 NHK国際放送では放映権の都合で一切放映しない。
 中国ではCCTV5(体育頻道)で放映する。オープニング・セレモニー前から、『我愛世界杯』というタイトルで随時情報を流し始めていた。どうやら『我愛世界杯』というのが、中国の今回のワールドカップ放送の統一タイトルのようだ。
 賓館で一人ワールドカップを観戦するのも味気ない。とりわけオープニング・セレモニーや開幕第1戦ぐらい、にぎやかに見たいもの。
 というわけで、夕食後、中山広場に向かった。
 中山広場にある大連賓館の屋上には巨大な電光スクリーンがある。いつもは真っ黒なままだが、中国国家隊(ナショナルチーム)が初めて出場するワールドカップだから、当然、このスクリーンで放映すると考えたからだ。
 日本・韓国と中国との時差は1時間。中国時間の方が1時間遅い。したがって、韓国で7時30分から始まるオープニング・セレモニーは当地では6時30分ということになる。いい時間だ。
 6時20分頃、中山広場に着いたが、案の定、すでに多くの人々が思い思いにスクリーンを見ていた。
 開幕第1戦が始まる7時30分には、目算で500〜700名程度の市民で中山広場はふくれあがった。面白いことに、人々は、絶対に芝生の上に座らず、歩道や芝生と歩道を分ける縁石の上に、新聞を敷いて座っていた。行儀がよろしい。
 広場には小生の教え子たちも観戦に来ていて、何人かから声をかけられた。小生は、3年生と一緒に縁石の上に座って観戦。
 フランス対セネガル戦は0−1でセネガルの勝ち。当地の人々は、なぜかセネガルを応援する声が多く、シュートが決まったときには大きな歓声が上がった。
 9時20分、試合終了。
 人々が家路を急ぐ。
 中山広場には、大量の新聞紙が残されていた。

Indexへ