老鉄山温泉

 大連およびその周辺には温泉がある。もし自動車があれば、そして中国流の運転術を身に付けることができれば、勇んで温泉めぐりに出かけていたかもしれない。

 5月中旬に日本人専家のM先生から温泉旅行に行きませんかとお誘いを受けた。
 M先生によれば、大連には、大連の諸大学で日本語を担当している教師たちの集まりである日本人教師の会という組織があるという。おもな活動内容は日本語教育の相互研修だという。その日本人教師の会がお互いの親睦のために温泉旅行を企画したのであった。原則的には会員登録が必要らしかったが、そこは日本人どうしということで、小生も参加させていただくことにした。

 朝9時30分、松山賓館前に集合。松山賓館の中に、日本人教師の会の事務局がある。事務局には各種の参考書や資料もあり、コピーも格安でできるとのことで、事務局の中を見せてもらおうとしたが、あいにく土曜日で事務局は閉まっていた。
 9時30分に松山賓館を出た貸し切りのマイクロバスは、途中、大連理工大学前で数名の方々をピックアップ、結局参加者は、男性14名、女性4名、計18名だった。この中には、小生のように、会員登録してない方や、会員の知人の方、会員の奥さんなどもいて、すべてが教師というわけではなかった。参加者の所属先はバラエティに富んでいて、詳細に確認したわけではないが、大外以外に、理工大、東北財経大学、大連大学、そして高校で日本語を教えている方もいた。

 旅順に向かう高速道路を通って龍王塘を通り過ぎて10時50分、目的地の温泉に到着した。
 温泉の名は老鉄山温泉。

 この温泉は、昨年11月、北九州の方が資本を提供してオープンしたもので、日式温泉と銘打っている。
 入り口には「名湯」の文字。
 これを見たI先生が一言、「これは中国語では美味しいスープという意味になるんじゃないか」と周囲を笑わせる(「湯(タン)」はスープの意味)。
 玄関のたたきで靴をスリッパに履き替え、受付でロッカーの鍵とビニールの巾着に入ったお風呂セットを受け取る。お風呂セットの中には、タオル・歯磨きセット・くしが入っていた(これ、持ち帰りができる)。
 脱衣場にはロッカーがズラリと並んでいる。日本では珍しくなったが、風呂場にはさんすけさんも数名いた。
 風呂は内風呂と露天風呂(男湯なのに何故か「美人湯」の文字が書いてある)、温度は低いながらサウナもある。
 とりあえずは内風呂へ。
 賓館ではシャワーばかりだったので、2ヶ月ぶりに手足を伸ばしてゆっくりとつかる。
 極楽極楽。
 土曜日の日中だったが、訪れている客は少ない。
 泉質は地下1,500メートルから汲み出される低張性弱アルカリ性単純温泉(ま、透明なお湯というわけですな)。
 効能をみれば、とりわけ皮膚に良く、特殊活性効果があるという。だから「美人湯」というのだそうな。
 効能はこればかりではない。神経痛、肌肉痛(筋肉痛?)、関節炎、肩周炎(肩こり?)、運動麻痺、腰痛、痔、肥満、病後回復、疲労回復、便秘、動脈硬化、痛風、月経不順などなど、あるわあるわ。もう何でも来い、といった効果抜群の温泉というわけだ。
 つぎに露天風呂。
 この日は最高にいい天気で、露天風呂は、太陽燦々の中でお湯につかるというあんばい(後で知ったことだが、この日最高気温は26度まで上がった)。
 極楽極楽。
 一緒に行った先生たちと、「こちらは何なんだろう?」と話し合った場所があった。
 露天風呂から女性用露天風呂の方向に入り口があり、中国語で「パンツをはくこと」と書いてある。
 我々が何気なくそちらの方に歩むと、物憂げにしていた係員(ここでは服務員という表現ではなくやっぱり係員だろう)がステテコのようなパンツを指さし中国語で何かいった。つまりはそのパンツをはくということだ。
 とりあえずそのパンツをはいて入り口を抜けるともう一つの露天風呂があった。そこは、ナント、混浴露天風呂だった。
 混浴風呂とはいっても、素っ裸で入るのではない。男はパンツをはいて入る。先客として年輩の女性が入っていたが、女性はほとんど体を布のようなもので包んで入っていた。どうも風呂に入っているという感じがしない。そこまで身を包んでまで一緒に入る必要があるのだろうかと思ってしまう。
 そしてこの混浴露天風呂。内風呂、露天風呂と比べて、お湯が汚い。日本にもモール温泉のように葉っぱのカスが浮遊している温泉もあるが、それとは明らかに違う。早々に「男だけの」露天風呂に戻る。

 洗い場には、石けんとシャンプーが用意されていて、シャワーの湯量も申し分ない。
 一通り温泉につかってサッパリして温泉を出る。
 すると、さんすけさんが上下に分かれた浴衣もどきを持ってきてくれた。ちょうど浴衣地で作った甚平のような感じ。
 この浴衣に、日本語で「北区しらかば荘」と染め込んであって思わず笑ってしまった。
 『北区しらかば荘ってどこ?』

 昼食時間までリクライニングシートが並んだ休息室で休み、昼食は「居酒屋」ののれんが掛かった食事処(ここの小姐、日本語が少しできる)。
 メニューは、サバ塩焼き、冷や奴、茶碗蒸し、ごはん、みそ汁、お新香。
 でもそれだけでは物足りなく、幹事さんが料理を別注。運ばれてきたのは、やっぱり中華料理。

 昼食後、もう一度お風呂につかって、午後3時、帰路についた。

 最後に老鉄山温泉情報。
 この温泉は大連賓館前からバスで行くことができる。
 毎週火曜日と木曜日を除く毎日、朝10時にバスが出ていて、現地を午後3時に出発して大連に戻る。たしか昼食付きで100元とのことだった。ただし、バスに乗るために予約が必要(予約電話番号:2656197または6219008)。
 また温泉宿になっていて、宿泊も可能。ちなみに、朝食付きで、4人部屋680元、デラックス2人部屋1,180元。[25/May/2002]

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