第三部分 日記風 7月

7月1日(星期一)
 今日から講義は17週目。来週は試験なので、実質的には最終週。
 思えばようやくここまでたどり着いた感じ。しかし、黄金周からは、一日一日がホントに早く感じる。
 夕方、買い物をしたついでに、吉野家百年城店で、最初で最後の牛丼。
 大牛肉飯套餐(牛丼大盛りセット)は、牛丼にスープ(かジュース)、漬け物が付いて16.9元。
 味はまったく日本と同じ。
 しかし牛丼を食べながら考えたことは、日本の食事というのはなんと質素(お粗末?)なことかということ。
 牛丼など牛肉とご飯だけ。中華料理では、3〜4種類の食材とご飯が基本だからなおさら質素に感じる。でも食べ慣れた味を久しぶりに食すと、さすがに美味しく感じる。

7月2日(星期二)
 今日から賓館の冷房が入った。夏モードだ。
 また、賓館の餐庁はお昼の営業を休止した。そろそろ夏休みに入るかららしいが、まだ定期試験だって終わっていない。気が早すぎる。
 夜、日本語学院2002年卒業生晩会が礼堂で開催された。
 時間は6時30分から9時過ぎまで。会場は立ち見が出るほどの入り。
 これは卒業生が主体となって歌やトークショーを繰り広げるというイベント。卒業生はもちろん、日本語学院院長をはじめ、ほとんどの老師が参加していた。
 それにしても中国の学生はエンターテイナーが多い。歌は玄人はだし、舞台の上でおくすることもない。聞けば、この学年には「モデル隊」というのがあるという。彼らたちのファッションショーさながらの出し物には思わず唸ってしまった。
 日本ではこういったイベントはないと思われるので比較はできないが、日本の学生があれだけ快活にできるかどうか。
 でもね、日本語学院なのだから、日本語で進めてほしかったな。

7月3日(星期三)
 学内に卒業を祝うバルーンや飾りが出た。
 5日が卒業式、ということを、誰かから聞いていたのでそろそろその準備が始まったのだろうと思っていた・・・が、実は今日が卒業式だった。
 日本とは違って何の案内もなく、学内が華やいだ雰囲気もない。小生もいつものとおり講義をして、いつものとおり外出などした。外出から帰ってきて、4年生のJさん(キャノン杯で指導をした学生)があいさつに来て、卒業式が終わったことを知った次第。
 どんな形式で卒業証書を授与するのか見てみたかった気もする。

7月5日(星期五)
 今日の講義で、全日程終了。来週は試験。
 さすがにホッとする。
 今週は、出席した学生が多かった。試験の話をすることをあらかじめ伝えていたので、普段サボっている学生も出席したようだ。

7月6日(星期六)
 朝鮮半島を通過した台風5号の残党の影響で、大連も風が強かった。
 その風たるや半端ではない。いつにも増して土ぼこりが舞って大変だった。でも相変わらず雨は降らない。

 京劇を見に行ってきた。事前の予約もなく、突然行ったのだが、開始20分前でも難なく入場することができた。
 大外の正門を左に歩くと、程なくしてお寺風の建物が見えてくる。これは日本が大連を統治していた時に建てられたお寺で、旧東本願寺。その建物をそのまま使って、大連京劇団が本拠地にしている。
 大連京劇団は、毎週土曜日の午後2時から上演していて、今年に入って料金のシステムが変わった。外国人料金(100元)がなくなり、甲:80元、乙:50元、丙:30元の料金体系。
 料金は建物に入ってすぐのところで支払う。
 学生と行った小生は、50元の席。80元の席は前から2列目まで(お茶のサービス付き)。我々は3列目。全部で100席ほど。この日は日本人だけでなく外国人の団体客もいて8割方埋まっていた。
 内容は90分の一話もの。随の時代の物語で、『虹霓関』というタイトル。国王の命令で国王に対抗する勢力の討伐に行った将軍、辛文礼が、相手に弓で殺されてしまう。夫の仇討ちのために戦場に出向いた妻、東方氏だったが、相手の大将、王伯党に一目惚れしてしまう。王伯党を捕らえたものの、どうしても仇討ちすることができず、最後は結婚してしまうというお話。わかりやすい。
 主演女優、張冬梅さんの所作、声に感動。目の動き、歩き方が、どこかエキゾチック。10分ぐらい続いた立ち回りに、観客の拍手。
 10名の楽団員が中国の民族楽器を演奏していて、それを聞くだけでも満足。
 学生と行って良かったと思ったことは、劇が終わった後、劇場の係員に案内させて、楽屋裏などを見ることができたこと。女優の楽屋裏では、演技を終えたばかりの張冬梅さんに握手までしてもらった(ミーハー)。

 また夜には、賓館の餐庁で、日本人専家の送別会。
 16名が集まり、うち6人がこの夏大連を去る。小生もその一人。

7月7日(星期天)
 院生のCさんからの情報で、、大連にもハーゲンダッツがあるということで、懐かしさのあまり行ってみた。
 ハーゲンダッツ。当地では哈根達斯と書く。
 場所は、希尓頓酒店(ヒルトンホテル)の2階。
 5つ星ホテルの中に出店しているだけに、ラウンジのような落ち着いた雰囲気。しかし、ディスプレイなどは日本と同じような造り。値段もまた5つ星。シングルが25元、ダブルが45元。小生、バニラとストロベリーのダブルをオーダー(日本でオーダーするのと同じ組合せに、内心苦笑)。さすがに美味しかった(とはいっても日本と同じだが)。新札幌のDUOの地下にあった、今はなきハーゲンダッツを思い出した。

7月8日(星期一)
 今日から試験。
 教室にいる学生の多さに、思わず最初の講義日を思い出した。
 毎日試験があるので採点も大変。溜めないように終了後ただちに採点しなければならない。体力勝負だ。

7月9日(星期二)
 あいにくの曇り空。蒸し暑い。最高気温は27度の予報。
 散歩で南山旅遊風情街を歩いていると、どこからともなく蝉の鳴き声が聞こえてきた。最初はミンミンゼミ。よく耳を澄ますとアブラゼミのような鳴き声も聞こえてくる。真夏になったのでしょう。

7月12日(星期五)
 終日天気が良かったが、最高に暑い一日だった。最高気温は34度ぐらい。湿気もあって、風はなま暖かい。
 今日で試験が終了。
 今週は毎日採点に追われた。
 今日、学内を歩いていると、無数のトンボに遭遇した。

7月16日(星期二)
 試験の採点結果を弁公室の教務担当に提出。これで、大外での仕事はすべて終了。
 今度は、帰国に向けて荷物の整理をしなければならない。
 手元資金が底をつきかけたので、中国銀行でT/Cを両替してビックリ!
 急激な円高のおかげで、1元14.2円になっていた。
 大連到着直後は10,000円が600元ちょうどだったが、今日は700元以上にもなっていた。当地での100元の価値は相当なもの。
 時節柄(というわけでもないが)、瑞士酒店(Swiss Hotel)8階の日本料理「英虞(Ago)」で鰻御膳を食す。98元。ついでに、大連で初めてお目にかかったSAPPORO BEERも飲む。雰囲気はよし。でも料理の味はいまいち。本格的な日本料理は大連賓館の「紅葉」以来2回目だが、どうも「紅葉」の方がうまいような気がする。

7月17日(星期三)
 まったく暑い。最高気温は連日30度。天気予報では曇り時々晴れなのだが、ほぼ晴れに近い状態で一日が過ぎる。
 賓館の冷房も、朝8時頃から夜10時過ぎまで稼働している。ということは集中管理しているということであり、部屋が暑くても一度切られてしまえば使えない。しかし、冷房が稼働している限りは非常に快適で、場合によっては寒くなって窓を開けてしまうこともある。
 夜は、3年生の男子学生、G君、K君と台北劉家餃子店で食事。
 G君は「最後の晩餐ですね」と粋なことをいう。
 「忘れないでね、ということを簡単に表現する言葉はないかな」と小生。
 「そうですね・・・。」
 「たとえば、英語でいえば、Don't forget meのような3音節か4音節の簡単な言葉。」
 「ありますよ。勿忘我。wu4 wang4 wo3。発音も簡単でしょ。」
 「勿忘我」と小生。
 ここですかさずG君、「先生、いままでで、この中国語が一番うまいですよ。」
 ははは、そりゃどうも。

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