労働節そして五・一黄金周

 大外は4月29日から実質的なゴールデン・ウィークに入った。
 キャンパス内にも学生の姿は少なくなった。とはいえ、いつものように朝早くからバスケットボールを楽しむ学生もいるし、数は少ないながら、いつものように校舎内で勉強している学生もいる。

 中国での実質的なゴールデン・ウィークは5月1日から7日までの7日間である。
 テレビのニュースを見れば(画面を眺めているだけだが)、この期間の観光地のホテル・旅館の混雑率を毎日流しているし、日本と同じように、駅、空港から各地に向かう行楽客の様子を伝えている。その様子を見るだけでこちらが疲れてしまうほどの人の群れが映し出されている。

 賓館に残留した小生は、今までのネタをまとめてホームページを作ったり、あたりを散歩したり、たまには日本から持参した仕事などをして過ごそうとした。
 幸いにして、賓館南楼、漢学院の餐庁は通常営業しているので食べることには困らないという環境だった。

 5月1日。
 この日は最高にいい天気だった。最高気温は19度。日陰は涼しく、日向は太陽光が肌に突き刺さるほど。
 そして労働節、メーデー。
 中国だから、と何となく期待して、街の中を徘徊した。中心部の広場では何か労働節に関連したイベントを、華々しくやってるかもしれないと思ったからである。その日の夜のニュースでは、いくつかの場所で労働節関連のイベントが行われたようだが、残念ながら小生は遭遇しなかった。というより所期の目的とは違って、人混みの中に疲れて、早々に引き上げたからである。


勝利広場(アドバルーンの奥に見えるのが大連駅)

 最初に向かったのが中山広場。ここはいつもと同じ風景。次に友好広場を経由して勝利広場。
 勝利広場から大連駅が見える(現在大連駅舎は修復工事中)。いつもに増して人があふれかえっている。切符を買う人、電車に乗る人、物売り、観光客、無秩序な人の群れ。あたかも駅舎が人人人で膨張しているような感じ。
 勝利広場では、労働節とは無関係の音楽会が開かれていた。出演者は小学生から大人までのアマチュアたち。ここもまた、それを見る人であふれている。

 勝利広場には地下街がある。ナント地下6階まで掘り下げられていて、地中に6階建てのデパートがあるような感じだ。
 中山路を横断するために、勝利広場地下街を抜けようと思ったのが間違い。地下街それ自体は広いので自由に歩くことができたが、いくつもある地上出口は下りる人、昇る人でごった返し、なかなか地上にたどり着くことができなかった。
 それでもどうにか邁凱楽(マイカル)側の青泥窪橋街に出ると、そこにもすごい人。
 青泥窪橋街はいつでも車両の進入が禁止されている。そしていつものことながら、この街では、いくつかのブースがしつらえられ、なんらかの宣伝広告が行われている。よく目に付くのはウェディングドレスとメイクアップの宣伝。実際にモデルがウェディングドレスを着て、メイクアップしている姿を披露している。結婚式場や写真館がスポンサー。また、地元中国や韓国の家電品メーカーもよくブースを開いていて、この日は、若手のバンド演奏に、これまた若い女性グループのクラブ系ダンスを披露していた。もちろん、そのブースのまわりにも人人人、である。
 いつもなら、そんな中でも歩くことはできたが、この日はまったく縦断することはできない。人の波ではなく人の渦巻き状態。仕方なく、新瑪特(ニューマート)の中を移動。

 何とか邁凱楽前を脱出。
 『これじゃ、どこに行ってもダメだ』と思い、ふと目をやると労働公園。
 『そうだ、公園ならのんびりひなたぼっこができる』と思い、公園の中へ。
 前回来たときには入場料は3元だったが、4月20日から5月20日まで、「百花之春遊園会」とやらで、入場料は10元になっていた。

 労働公園の中は、まさに花盛りといった風情で、それはそれは見事だった。とくに、チューリップが満開で、園内のあちこちで、赤、黄色などのチューリップが咲いていた(この日の夜の大連電視台のニュースで、その様子が話題になっていた)。
 また、入り口付近には、国から勤労表彰された大連の人々の写真も飾られていて、労働節らしさがあった。


わたあめ屋さん大忙し

冷たい飲み物、アイスクリームもよく売れる

 それにしても、ここもすごい人だった。
 のんびりひなたぼっこどころではなかった。
 前回、学生と来たときには、ちょうど端境期だったようで、花らしい花は咲いてなく、訪れる人も少なかったが、今回は、どこに行っても観光客がいた。公園の奥にある遊園地には、子供連れが遊具に乗るために長蛇の列を作っていたし(中国人も列を作って順番を待つこともあるんだな、と妙に感心)、小動物のまわりにも人が集まっていた。


何を覗いているかといえば・・・。

輪投げでした(でも賞品一種類)。

 前回目にした日本から贈られた桜は、どうやら八重桜だったようだ。ソメイヨシノはとっくに葉桜状態になっているが、贈られた桜は、今が盛りとばかりに咲いていて、これもボリュームがあって見事だった。

 5月3日。
 2日は雨がちで、3日も曇り空だった。
 この日は、数日前に誘われた学生の親戚の家にお邪魔した。
 この学生、Kさんは、「先生、ずっと賓館にいるのは退屈でしょ。単身赴任でもあるので食事に来ませんか」と電話してきた。小生、はじめは遠慮して断ったが(Kさんの自宅ではなく、おばさんの家というのも気が引けた理由の一つ)、どうしてもといわれてご馳走になることにした。


Kさんのお父さん、おばさんと親戚の皆さん

 Kさんのおばさんの家は老虎灘にあって、山の手のマンション街。
 見かけは古めかしいが、室内は非常にきれいで驚いた。大型平面TVもあり、しかもカラオケセットもあったのにはさらに驚いた。
 到着すると、Kさんのお兄さん(義兄)がちょうど餃子作りの真っ最中(あとで制服を着たときわかったことだがお兄さんは陸軍の軍人さん)。小生も手伝ったが、お兄さんに「なかなかうまい」とほめられて、ちょっと照れる(お世辞なんだろうな、きっと)。
 お昼頃から食事を囲んでしばし日中文化交流。
 「日本ではビールを注ぐときは泡を出すように注ぎますよ。」
 「そうですか。」
 「ええ。それから、ビールを注ぐときには瓶を相手の方に向けて持って注ぎます。相手はグラスを持ちます。」
 「中国ではそれは相手に失礼です。相手のグラスを自分のそばに持ってきて、そこでビールを注いでビールの入ったグラスを相手に渡します。」(もちろん、Kさんの通訳付き)
 いわれてみれば、たしか、アバディーンのクリス君もビールを注ぐときに小生のグラスを自分の方に引き寄せて注いでいた。日本の一般的な注ぎ方は「無礼講」モードなのだろうか。
 それにしても、Kさんのお父さん、中国式乾杯の嵐。お昼から何度も乾杯、そのたびにビールを干すはめになった。
 Kさんによれば、「Kさん以外、お父さんも親戚もみんな料理が上手です」といっていたが、そのとおり、すべての料理(6〜7品)が美味しかった。おまけにビールまで出されたので、お父さんや親戚の人と一緒に大いに楽しく飲んで食べた。最後は「ハオチー、ハオフー、タイパオラ」状態(ちなみに「沢山食べ、沢山飲み、もうおなか一杯」という意味だが、もちろん、カタカナで書きあらわせるほど発音は簡単ではない)。

 5月4日、五四青年節。比較的いい天気。
 この日は賓館や大外の中庭でのんびり過ごす。食事は、Kさんのおばさんからおみやげにもらった餃子。一度茹でた餃子は焼き餃子にして食べる。これがまた美味しい。

 5月5日。この日も暖かくいい天気。
 散歩などをしながら、後半の講義展開について考える。
 賓館に戻ると、3年生のG君が来て、「時間があれば午後から餃子つくりをしませんか」と誘ってきた。もちろんOK。
 G君は、約束した時間にKさん(イニシャル「K」という学生が沢山いる!)と訪ねてきた。
 「先生、餃子は作れますか」とG君。
 「包むぐらいなら」と小生。
 「私はできません」とKさん。
 G君と小生「ええーっ!」
 「南の地方では、東北地方のような餃子は作りません。似たものはありますけど・・・。お母さんが作ってましたし・・・」とKさん弁明(Kさんは浙江省出身)。
 「お嬢さんなんだ、Kさんは。」
 「い、い、いいえ。」
 というわけで、この日の餃子担当はG君。
 材料は、群英超市と同じ建物に入っていて、裏通りに面した金鼎農貿市場で調達。この日の餡(日本でいう具)は、豚挽肉と長ネギだけというシンプルなもの。
 ここで、G君の餃子講座。
 〔材料:3〜4人前〕
  豚挽肉 たくさん
  小麦粉 たくさん
  長ネギ 適量
  ショウガ 適量
  塩・サラダオイル・コショウ・味精 少々
 まず、小麦粉に塩を混ぜてぬるま湯を入れ、表面が滑らかになるまでひたすらこねる(塩を入れるのは練った小麦粉を固めるためだとか)。
 一方、豚挽肉にみじん切りにした長ネギを混ぜ、そこに、みじん切りしたショウガ、サラダオイル、味精(「味の素」です)、コショウ(日本のコショウとは香りが違い、餃子の餡がとても美味しくなる)、ぬるま湯を入れてかき混ぜる。
 こねた小麦粉を棒状に延ばして、適当な大きさにちぎり、今度は一つずつ、めん棒で延ばして皮を作る(G君、うまい!)。
 皮に具を詰める(G君と小生の共同作業。Kさんも見よう見まねだが、そこは中国人、小生よりうまい。当たり前か・・・)。
 あとは沸騰したお湯に入れてできあがり。
 実は、G君、最初に小麦粉に塩を入れるのを忘れたのだが、出来映えも味もGOOD!


こねる

延ばす

ちぎる

広げる

第1号

ちょっと皮が柔らかいけど味はいい

 食事のあと、G君は「カラオケに行きますか」と誘ってくれたのでカラオケボックスへ。
 大外近くのカラオケボックスは休業していたので、昆明街のカラオケボックスまで行った。ちなみにカラオケボックスは「練歌房」と書く。
 「ゴールデン・ウィークだし夜だし高いと思いますよ」というG君の予想に反して、1時間10元という格安料金。
 当地に来て初のカラオケボックス。基本的には日本と変わらない。違うのは、中国語の歌が多いことぐらい(ハハハ)。採点機能付きのマシン。
 韓国語、日本語の歌もあった。しかし、G君によれば、安いだけあって、中国語の歌は古いものばかりだという。日本語の歌もまた、小生が学生時代に歌っていた曲が多い(最近の歌があっても歌えないけど)。
 小生、「歌いたい曲がないねえ」とグチりながらも、次第にオンステージ状態。学生に受けたのは「夢想花」。
 「先生、今日の夢に出てきますよ、飛んで飛んで、まわってまわって、が」とはKさん。
 「うなされないように。」
 というわけで、3人で2時間半。

 5月6日。
 日本ではこの日でゴールデン・ウィークは終わりだが、当地では7日まで。
 何となく学内に学生の姿が多くなったように思える。終日のんびり。
 この日の食事も、前日残った餃子。またまた焼き餃子。でも、うまいんだなあ、これが。
 夜、「先生、これからいってもいいですか」と瀋陽に帰省していたCさんが電話をしてきた。
 「これ、おみやげです」といって、Cさんが差し出したものは、ナント、冷凍してクーラーボックスに入れて持ってきてくれた餃子だった!

 5月7日、今日でゴールデン・ウィークも終わり。
 学内には学生の姿が多くなった。Back To School。
 終日、講義資料の作成をするつもりだった・・・と、そこにR君から電話。
 「先生、ゴールデン・ウィークも今日で終わりです。最後にどこかに行きましょうよ。」
 というわけで、午後から、海之韵広場に向かった。
 海之韵広場(日本語では「うみのいん」と読むのだろうが、意味としては「海の調べ」というようなイメージのことば)は、三八広場から59路バスに乗り15分。入場料は大人10元、R君は学割で5元。


「50」の球や部品で作った龍のモニュメント

巨大な亀が海に「帰」ろうとしている

気の早い人は泳いでいる(でも寒そう)

 そのあたりは、大連の東に位置しているためか、東海公園とも呼ばれるらしい。オープンしたのがいつかは定かではないが、モニュメントなどは、1999年(大連開基100周年、中国建国50周年)に作られたものもあったし、現在でも製作途中のものもあった。全体的には新しい広場だ。
 それにしてもお天気も良く、海面を渡る風も爽やか。家族連れやカップルの姿も数多く見られた。ぼちぼちと歩く。2時間ほどボンヤリと過ごす(野郎二人ではもったいない)。
 帰りに、大連で一番美味しい拉面屋だという、三八広場のそば、嘉信国際ホテルの近くにある兄弟拉面店に行って、大排面(6元)を食べた。料金前払い。午後4時頃だというのに満席。しかし食べたら帰るという流儀のようで長居をしている客はいない。食券を渡して椅子に座っていると、5分もしないうちに持ってきた。
 味は濃い醤油味。面は日本の面によく似ている。その拉面にゆでタマゴを入れ、さらにテーブルの上に置いてあるニンニクの皮をむいて拉面に入れる。タマゴを入れるのはわかる。しかし、ニンニクを生のまま丸ごと入れるというのはどういうことか。
 「ニンニクは、そのまま食べます。殺菌ですよ。」
 『ふーん』と思いながらも、面をすすり、タマゴを食べ、ニンニクをかじる。食べれば食べるほど美味しく感じる。例によって面の量は多いのだが飽きが来ない。やみつきになる味。

 『遠出はしなかったけれど、結構楽しんだな』と思っていた7日の午後8時30分過ぎ。3年生のKさん(これまたKというイニシャル)から電話。
 「先生、大連に住むおじいさんのところに行ってきました。おみやげをもらってきました。ロビーに来てもらえますか」という。
 と、ここまで聞いて『また餃子かあ?』と思いながら、とりあえず賓館のロビーへ。
 「これです」とKさんが差し出したものはゆでタマゴだった。
 「鶏のタマゴ?」
 「いいえ、鴨? アヒル? たぶんアヒルかな」とKさん(中国語では「咸鴨蛋」と書く。日本語での表現を知らないらしい。しかし大きさからいってアヒルだろう。鴨のタマゴにしては大きすぎる。ちなみにあとで調べてみると、やはりアヒルの塩漬けタマゴだった)。
 「これはお粥と一緒に食べると美味しいです。ちょっと塩辛い味が付いてます。黄身が美味しいですよ。」
 「じゃ、ビールにも合うかな?」
 「もちろん!」
 ということで、ゆでタマゴ6個をもらって再見。

 学生の皆さん、そしてご家族・親戚の皆さん、本当ありがとうございました。おかげで、退屈せずにゴールデン・ウィークの「全日程」を無事終了しました。[11/May/2002]

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