最終評価
1.実講義回数
7月5日、講義終了。
3月4日から始まった講義は18週間。途中、黄金周で10日の休みが入ったり、世界杯で「強制的な」休講が入ったり、あるいはキャノン杯のために休講にしたりと、一部のクラスで2回休みになったので、実質的には最初の自己紹介、試験前の総括を含めて16回から17回の講義回数だった。
2.出欠状況
7月第1週に30分ほどの時間を使って、学生から簡単な授業評価をしてもらった。その際に出席していた学生数は、試験前の最後の時間ということもあって、3月第1回目の講義時間を思い出させるほどの学生数だった。
2年生 | 月曜日 | 水曜日 | 金曜日 | 合計 | 3年生 | 火曜日 | 木曜日1 | 木曜日2 | 合計 | ||
初回 | 出席率 | 86.8% | 94.7% | 92.7% | 91.3% | 出席率 | 81.5% | 54.6% | 72.7% | 70.0% | |
第8回目 | 出席率 | 63.7% | 73.9% | 48.0% | 63.7% | 出席率 | 48.4% | 47.5% | 65.0% | 53.5% | |
最終回 | 履修者数 | 182 | 188 | 123 | 493 | 履修者数 | 157 | 141 | 143 | 441 | |
出席者数 | 159 | 167 | 109 | 435 | 出席者数 | 129 | 93 | 118 | 340 | ||
出席率 | 87.4% | 88.8% | 88.6% | 88.2% | 出席率 | 82.2% | 66.0% | 82.5% | 77.1% |
3.授業評価
2年生、3年生とも、小生の講義にどれだけ興味を持ってくれたかを知るために、回答と成績はまったく無関係であることを強調して、簡単な授業評価を実施した。
質問は4項目。それぞれを黒板に書いて、全員一緒に書いてもらった。
有効回答数は、2年生が410、3年生が338であった。
なお、分析にあたっては、あえて相関は取らなかった。
結果からいえば、どの質問への回答にも、かなりのリップサービスが含まれているのような気がする。
(1)出席率
出席率について学生の自己評価。
選択肢 A:すべて出席 B:1〜3回欠席 C:4〜10回欠席 D:11回以上欠席
A | B | C | D | |
2年生 | 39.5% | 57.6% | 2.7% | 0.2% |
3年生 | 29.9% | 58.9% | 10.9% | 0.3% |
出席率についてはちょっと意外な結果だ。とくに3年生。小生の実感としては、毎時間履修者数の半数ぐらいの出席だと思っていたので、もう少し「C」の回答が多いと考えていた。しかも「D」ももう少し多いハズだ。何しろ、最後の回に初めて見た顔もたくさんあったのだから・・・。
(2)理解度
講義・話し方のスピードや講義展開についての総合的理解度を聞いた。
選択肢 A:だいたい理解 B:ほとんど理解できなかった C:まったく理解できなかった
A | B | C | |
2年生 | 84.1% | 15.6% | 0.2% |
3年生 | 88.5% | 11.2% | 0.3% |
もしこの結果が本当なら、まずまず成功したと判断できるかな。
(3)内容
講義で採り上げた内容について聞いた。
選択肢 A:満足 B:だいたい満足 C:ふつう D:あまり満足できなかった E:まったく不満足
A | B | C | D | E | |
2年生 | 31.7% | 48.3% | 15.4% | 4.4% | 0.2% |
3年生 | 37.0% | 48.2% | 11.8% | 3.0% | 0.0% |
これは予想どおり。
学生の知りたいことと小生が扱った内容との間に乖離が生じていることは中間評価の段階でわかっていた。
とくに2年生は、教科書の内容について最後まで納得できない学生がいたようだった。
(4)この授業を受けて、日本・日本語に対する興味
選択肢 A:増加した B:不変 C:減少した
A | B | C | |
2年生 | 78.8% | 21.0% | 0.2% |
3年生 | 78.4% | 21.6% | 0.0% |
日本人専家が講義を担当することは、日本や日本語に対する興味を増加させることにある(と思う)。その意味で、この講義を通して少しでも日本に対する興味を増してくれたら、これ以上の喜びはない。
4.講義内容
【2年生】
中間評価で教科書に対する批判があったので、黄金周明けから、教科書40分、その後自由な質疑応答を行った。活発に質問が出たクラスもあれば、ほとんど出ないクラスもあった。
主な質問の内容は次のとおり(受付順)。
1.「生け花」「茶道」について(答えられず)
2.日本の大学院への入り方(北星の場合のみ説明)
3.野球について
4.日本料理について
5.手紙の書き方について
6.女性の服装について
7.日本の愛情表現について(お茶を濁す・・・)
8.女性の仕事について
9.どんな大学に留学するのがいいか
10.先生は見合結婚か自由恋愛か
11.中国の女子学生にどのような印象を持ったか
12.日本の大学では編入ができるか(中国は編入ができないようだ)
13.ワールドカップで日本でどこまで行くか
14.日本の大学・大学院の難易度について
15.中華料理に慣れたか
16.不況が中国に与える影響について
17.日本の文化などの知識は役立つか
18.日本の大学生の目標はどのようなことか
19.日本の国立大学と私立大学の違いについて。そして就職の有利不利について
20.中国で日本語を学ぶのと日本に留学して日本語を学ぶのとどちらがいいか
21.現在日本で流行の学問は何か
22.日本の父の日について
テーマを限定しなかったので実に多様な質問がでた。
とくに、日本への留学については、多くの学生が関心を持っているので、大学・大学院入学関係の本(たとえば『蛍雪時代』のような受験本)を持参すれば良かったと思った。
【3年生】
3年生は、引き続き、10月の話題から3月の話題までを扱った。
当初予定した資料は14回分で、間に合わないかもしれないと思っていたが、休講などもあって、結局、最後は2回分をまとめて説明しなければならないクラスもあった。
5.受けたこと
黄金周明けも、講義の導入部分で流行語・若者ことばを紹介した。
紹介した言葉は、「MM」(めっちゃむかつく)「MK5」(マジ切れ5秒前)「イケメン」「新カレ・新カノ」「コクる」「オッハー」「バイナラ」(ちょっと古いか)「メリクリ」「あけおめ・ことよろ」「着メロ」「セクハラ」「ストーカー」「コギャル」(これの説明は難しい、何しろ中国にはいないのだから)「汚ギャル」「ママギャル」など。また3年生には、講義の中で、「ジミ婚」「ハデ婚」「パラサイト・シングル」「中食」なども採り上げた。
後半は、日本から持参した昨年流行した曲を聴かせたことがあった。「Can you
keep a secret?」「M」「ミニモニ。じゃんけんぴょん」「明日があるさ」「恋愛レボリューション21」などを聴かせ、比較的簡単な「明日があるさ」を全員で大合唱。最後には学生から思わず拍手が上がるほど盛り上がった(と感じたのは小生だけか・・・)。
6.試験と評価
大外では、試験には「考試」と「考査」の2種類ある。
「考試」は聴力試験など定期試験期間に試験を行うもので、小生が担当した科目は「考査」である。そして「考査」は、講義期間の最終日に試験を行う科目であるという。
成績の評価は、素点で行う。評価は5段階で、「優秀」が100〜90点、「良好」が89〜80点、「中等」が79〜70点、「及格」が69〜60点で、ここまでが合格、その下は「不及格」となる。
講義が始まってしばらく経ってから聞いた話だが、「考査」の科目は、出席点や学期の途中でのリポートなどを加味して評価するといいとのことだった。しかし、出席など取っていなかったし、リポートといっても900名分を読むのはしんどいと思い、そのいずれも実施しなかった。
黄金周明けぐらいから、学生たちは試験の内容について問い合わせることが多くなった。そのつど「大丈夫です。心配いらないので十分に講義を聞いてください」と話したが、学生たちは試験内容にことのほかご執心の模様。
試験内容は、試験実施の1週間前に発表した。
それと同時に、弁公室の教務担当者にお願いして、専用の試験用紙を作成してもらった。
大外では、試験のための統一した用紙はない。紙の大きさや様式を指定して作ってもらうことになる。注文して3日ほどでできあがって引き渡しを受けた。
さて、試験。
これは日本とはまったく様相が異なった。用紙の関係で「一人一枚ずつ取ってください」といっても一人で2枚、3枚と取って解答した学生もいた。これはそれだけ勉強してきた証拠だから致し方ない。しかし、試験が始まってすぐ、隣の者と話をする学生が少なからずいたのには驚いた。日本でなら不正行為現行犯で全科目零点の処分が下ってもおかしくない状況。再三注意したが、それでもおしゃべりをする学生もいた(とくに2年生)。ま、試験体制など取っていない中での試験なので(しかも持ち込み自由)、それも仕方がないかもしれない(と、最後はあきらめ)。
試験時間60分。30分経過後提出可にしていたので、30分経過後ほとんどの学生が提出し、その後は日本の試験と同じような雰囲気に戻った。小生の科目だけが特別だったと思いたい。
採点は、弁公室からもらった「考試考査成績登記表」にクラスごとに記入する。ここには、「平時」「期中」「期末」「総評」の4つの記入欄があるが、小生の場合、試験でだけ評価したので「総評」欄に素点を記入するだけ。
用紙の下には、「成績総結」という表があって、そこには「実考人数」「成績分布統計」がある。受験者数と「優秀」「良好」「中等」「及格」「不及格」の人数を記入する。
受験した人数を計算してみると、2年生461名(韓国語学院生を含む、受験率93.5%)、3年生367名(受験率83.2%)、合計828名。留学によって受験できない学生が誰なのかを確認しなかったので、欠席の理由はわからない。
点数を転記後、最後にサインをして弁公室に提出。念のためコピーを取ってもらった。
7.若干の申し送り
受講態度については、あらゆる面で基本的には日本の学生と同じである。多少ざわつくクラスもあれば静かなクラスもある。活発に発言する学生が多いクラスもあればまったく質問の出ないクラスもある。サボる学生もいれば、熱心に講義に耳を傾ける学生もいる。あくびをしたり寝ている学生もいれば、ケータイの着信音がなることもある。
「日本概況」も「日本文化」も、作文のように、学生の手を動かす授業ではなく講義科目なので、聴力が低い学生にはかなり難しく感じる科目であるかもしれない。
とくに、2年生の日本語能力には大きなバラツキがある。ほとんどの学生は日本語を勉強して1年半しか経過していないので、聴力、会話力とも、日頃の勉強の差が大きく、教科書の内容を理解することさえ困難に思われる学生もいた。
その中で、多くの学生が評価したのは、日本から持参した「小道具」だった。小生、風呂敷を説明したあとの講義は、いつも風呂敷に教材を入れて教室に向かった。街角でもらったテッシュペーパーでさえいいネタになった。かてて加えて、日本のマクドナルドのチラシも多くの学生が興味を示したし、日本ではあまりしなくなったけん玉も、めずらしがって遊んでいた。
講義の内容に関係ないと思われるものでも、話題提供の意味で、小道具はたくさん持参した方がいい。
次回来る方、チョークは1箱以上、黒板消しも新品を含めて3つもあります。安心してお越し下さい。[16/Jul/2002]