ダノター城(Dunnottar Castle)

  ダノダー城は12世紀まで遡れるお城で現在は廃墟になっている城跡だ。このお城は、映画『ハムレット』の舞台として使われたということをある本で知り、海に面した岩場に立っているということで行ってみた。

  ダノダー城はアバディーンの南にあるストーンヘイヴェンという町にある。アバディーンからは40分ほどの距離である。
  すでに4月でしかも土曜日。駐車場には6〜7台の車が止まっている。しかしお城に続く道を入ろうとすると「Closed」の看板。閉館しているハズはないとは思ったが、駐車場に車を停め、我々も一応お城に向かって歩く。

  お城に近づけば近づくほど『あんなところに行けるのだろうか』と思ってしまうほど、お城への道は魅惑的。というのもこの方向から見ても断崖絶壁なのだ。ちょうど海の中の巨大な岩の上にお城が立っているように見える。『海の中に建っているのではないか』と思うほどだ。これは正しい。しかし、エントランスからお城までは、一旦海岸の近くまで下りて、さらにお城の下の岩の所まで登っていくという感じだった。『こんなところによくもこんなお城を建てたもんだ』と思わずにはいられないほどの場所だ。
  間近に見ると、そのロケーションの良さに心底惚れ込んでしまうようなお城だ。

  しかし、看板のとおりお城の中には入れなかった。入り口にはしっかり施錠されていたのである。


ロケーションは最高

  翌日、もう一度訪れてみた。この日は日曜日ということもあって、昨日以上の車が駐車場に停まっていたが、この日もやはり「Closed」。このお城、一体いつ開館するのだろう(永久に入れなかったりして・・・)。



石畳は各段に模様が描いてある。

【ダノター城再訪】
  3度目に我々がダノター城を訪れたのは5月上旬のことだった。
  4月に入ってお城めぐりをしている最中に、あるお城で今年の「スコットランド・カッスル・トレイル」(Scotland's Castle Trail)のリーフレットを見つけた。そのリーフレットにはカッスル・トレイル以外のお城が紹介されていて、その中にダノター城があった。それを見ると、ダノター城の開館期間はグッド・フライディ(今年は4月21日だった)から10月の最終週までとなっていた。どおりで4月の中旬に訪れても開館していなかったわけである。

  今回は必ず開いていると確信して、とある土曜日の午前中に訪れた。この日は、天気予報とは裏腹に曇り空。しかも肌寒く感じる日であった。駐車場のそばに掲げてある看板は、今回は「Open」。
  早速、自動車を駐車場に停めて、お城目指して歩く。お城に通じる道を歩き、崖っぷちにある入り口の門まで行くと、前回は固く閉じていた門が開いていた。
  その門をくぐると、そこはもうお城の中で、牢屋が右手に見える。天井が高く、岩がむき出しになっていて濡れている。『気持ち悪いなあ』
  しかしチケット売場がない。駐車場には、大人£3.50、子供£1と書いてあったのだが、お城の入り口にはチケット売場がなかった。『もはや入場料は取らなくなったのかな』と思っていると、入り口を入って左に折れる通路の奥に小さなチケット売場があった。そこで入場料を支払う(このチケット売場の係員は男性だったが、今まで見たお城の係員とは違って、何か下町のお兄ちゃん風情。なぎらけんいち風)。


こんな小道をくぐり抜けてお城に入ってくる。
    
お城の岩に根を張った草花

  一言でいって、このお城は素晴らしいの一言に尽きる。廃墟であるので天井のある建物はあるものの、ほとんどは壁だけが残るお城である。しかし、断崖絶壁のすぐ側まで建物が建っている。しかも窓にはガラスなど入っていないので、天井のある建物は格好の鳥のすみかになる。いたるところに鳥のフンが落ちており、建物に入ると、海ガラスが飛び立つ。ロケーションと歴史と海ガラスの組み合わせはかなり恐い。

  もともとこのお城の歴史は14世紀まで遡れるようだ。それが世紀を経ながら建物が少しずつ建てられていったらしい。したがって現在残っているものは、14世紀のものもあれば、それ以降、17世紀ぐらいまでのものもある。我々の目からすれば、どれも一緒のように見える。とにかく建物が点在している。ここは、その建物にその建物の名前や用途が書かれているのでわかりやすい。
  ところで、このお城にも、あのメアリー・クィーン・オブ・スコッツが1562年と1564年に訪れているという。

       

  何より、このお城が有名なのは、1685年に122名の男性と45名の女性が、ホイッグス・ボールト(Whig's Vault)といわれる丸天井の部屋に収監されたことである。それは9週間におよび、その間、わずかな食料だけを与えられただけであるという。今見ると、その部屋は結構な広さに見えるが、167名がここにいたのかと思うとやっぱり狭い。理由は政争がらみのようだ。


本の表紙にもなるパフィン

  ところで、入場の際、チケット売場でパンフレットを買ったが(£3.50)、その中に、パフィンの写真が出ていた。パフィンはシェトランド島などの、スコットランドでも北の島々で見られる海鳥だ。これは日本では、根室沖の島(名前は失念した)で見られるエトピリカのような、愛らしい鳥だ。これが、ダノター城の岸壁で見られるという。『まさか』と思ってパンフレットを読むと、春から初夏に見られると書いてある。ちょうど今の時期だ。子供達と、断崖絶壁の上から海を見下ろす。見えるのはカモメだけ・・・と思ったら、パフィンがいたのである。岩壁のちょっとした場所にたたずんでいる。背中は黒で目のまわりと腹は白。くちばしの前と足がオレンジ色。かもめに比べればずっと小さいので見分けが付く。
  「かわいー!」
  子供達から思わず声がもれる。そのパフィンはしばらく岩場にいて、飛び立った。しかし飛び方はかなり下手で、そのまま海に滑空する感じ。現に、そのまま海上を漂っていた。よーく目を凝らすと、波にゆられるパフィンが何羽か見えた。こんなところでパフィンが見られるなんて感動。

  その後は、さらにお城を見て回ったが、話題はパフィンのみ(それほど可愛らしく珍しい鳥だったわけだ)。

  ダノター城には、1時間半ほどいたのだが、アッという間の時間だったように思えるほど、見るところが多かった。

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