コーダー城 Cawdor Castle

  『地球の歩き方−スコットランド』によれば、「豪族コーダー家のこの城は、シェークスピアの名作『マクベス』の舞台としてあまりにも有名である」「ハイランド一優美な城と称されている」と紹介されている。
  シェークスピアの戯曲などほとんど読んでない小生には、コーダー城がそれほど有名なお城だとは知らなかったが、ハイランド一優美なお城であれば一見の価値がありそうだということで、6月の中旬の日曜日に出かけることにした。

  コーダー城は、アバディーンからはA96をひたすらインヴァーネス方面に走り、ネアン(Nairn)の手前からB9101−B9090を抜けたところにある。地図を見れば、インヴァーネスからはわずかに10マイル程度。
  朝8時30分に自宅を出た我々は、例によって、A90からA96に入った。ちょっと前までは、街道は芝の緑と菜の花の黄色がきれいだったが、いつの間にか菜の花は消え、その代わり、今度は山吹色の草花や低木の花が沿道を埋め尽くしていた。
  日曜の朝だったためか、A96は本当に自動車が少ない。快適なドライブ。途中、バクスターズのビジターセンターで20分ほど休憩し、11時ちょっと前に、コーダー城に到着した。アバディーンからは94.5マイル(約150q)。

  アバディーンを出るときには晴れ間が広がっていたのだが、コーダー城に着いた頃には雲の方が多くなっていた(それでも暗い感じはしなかったが)。
  駐車場に車を停めると、ちょうど同じぐらいに到着した3人の日本人男性と遭遇。子供達が「こんにちは」と声をかけると「こんにちは」と返事をしてくれた(その後は離れてしまった)。車から外に出ると強い風が吹いていた。風が吹くと土が舞い上がる。
  さすがにインヴァーネスに近い観光地だけあって、駐車場には多くの乗用車が停まっていたし、観光バスも2、3台停まっていた。
  早速、チケット売場へ。大人は£5.60、子供は£3.00。我々はファミリーチケット£16.50を購入。ここのファミリーチケットは、大人2名と子供は6名まで有効だ(大家族にはありがたい)。ここで、日本語のガイドブック(£1.50)も購入して敷地内へ。

  背の高い木々の間を抜けていくと正面にお城が見えてきた。お城のまわりが木々に囲まれていて、瀟洒な洋館といった感じ。
  ガイドブックの1ページにはこんなことが書いてある。
  「コーダーという名は、英国の偉大な劇作家、シェークスピアが、有名な作品の一つである『マクベス』の作品にその名を使った事で世界的に有名になりました。『マクベス』は、事実というよりは伝説をもとにして書かれた素晴らしい物語です。歴史上のマクベスはスコットランド人の王で、1057年に死にました。コーダー城の最も古い部分が建てられたのが1057年から300年余りも経ってからの事ですから、マクベス王とこの城との関連は、詩的なもの−というべきでしょう。」
  『なーんだ、マクベスとは無関係なのか・・・』
  「マクベス」に対する知識は持ち合わせてはいなかったが、ここに来れば、少しはシェークスピア通になれるかなと期待していただけに、無関係と知るとやや興ざめしてしまった。

        

  それでも、はね橋を通ってお城に入り、順路に従って内部を見学。ガイドブックによれば、このお城は夏の間だけ一般公開し、冬には、現在ではイングランドとウェールズに住んでいるコーダー家の人々の住居として使われているという。なるほど、よく見れば、調度品などは現在でも使われているような感じに見える。しかし、やはり、これまで見てきたお城と同じで、素晴らしい調度品の数々も、たくさん見てきたのでそんなに大きな感動はなかった。

  一通り順路通りに見て回り、たどり着いたところはギフトショップ。これまたどこのお城でも、出口の前に必ずギフトショップがある。必然的に買い物をすることになる。だがこれも面白いことに、多くのお城を見て回り、その都度ギフトショップで買い物をしてきた我が家の連中は、もはやほしいものがなくなっていた。つまりどのギフトショップも置いてあるものはほぼ同じだ。最近では、お城の名前や紋章が入ったバッジ(£1.50程度)や絵はがきなどしか買わなくなった。
  ギフトショップをひやかしていると、あちこちから日本語が聞こえてくる。見回すと、どうやら日本人ツアー客のようだった。
  『もしかしたら、あの駐車場に停まっていた観光バスに乗ってきたのかもしれないな』
  皆さん、胸にお揃いのバッジを付けている。日本の国内でも観光ツアーでは、迷子にならないように(?)バッジを付けさせられるが、海外でも同じなんですね。それにしても、そんなに多くの日本人を見たのは久しぶりだった。

  お城の出口を出て、お城の裏手にまわった。その方向には観光客は行かないようだったが、見れば小さな橋が架かっており、小川が流れている。橋の上から振り返ればお城がそびえ立っている。川岸に下りてしばし水遊び。水は冷たい。

  そこから今度は庭園へ。ここの庭園には垣根でできた迷路(Maze)があり、面白そうだということで入り口を探すと、現在は一般公開していないと書いてありガッカリ。

  それでも、庭園内を散策。お城の敷地のまわりには、本当に背の高い木々がそびえ立ち、それらに囲まれるように、よく手入れされた庭園があった。この庭園から臨むコーダー城は、さすがにきれいだった。それを優美だと感じるかどうかは個人の感覚の問題だが、確かにしっとりとした雰囲気があった。


Cawdor Castle

  1時間20分ほどして自動車に戻り、昼食。本当は駐車場そばに設置されたベンチで食べようと思っていたのだが、風も相変わらず強く、しかも雨まで落ちてきたので、車内で食べることにした。
  食べながら話し合ったこと。
  お城には、廃墟と化したお城(城跡)と今なお使われているかあるいは最近まで使われていたお城がある。そして想像を巡らせて楽しめるお城は廃墟と化したお城だ。石でできたゴツゴツとした城壁の感覚を楽しみ、ここにはこんなものがあったハズだ、などとそれぞれが勝手な想像ができる。それに対して、今回訪れたコーダー城などは、中に入らずに、まわりからそのお城の美しさを楽しむ方がいい。庭園から見るお城は、どこのお城でも美しく見える。これは日本のお城と同じなのかもしれない。

  そんなことを話しながら、午後1時、コーダー城をあとにした。


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