第三部分 日記風 4月

4月1日(星期一)
 日本では今日から新年度が始まる。当地ではまったく関係なし。しかし、大外の中庭にある池に水をはっていた。
 昨日今日と大連は最高気温が18度と、まったく暖かくいい天気。日本では花粉症情報などが出ているようだが、当地ではそんなものはない。ま、つねに埃っぽいのだけれど・・・。
 最近、3年生の何人かから、佳能杯(キャノン杯)という日本語弁論大会に出場しようと思っているので、論文を添削し、内容についてアドバイスしてほしいと依頼された。
 キャノン杯。この名前は先輩諸氏から聞いていたが、どのような仕組みなのかは、未だにはっきりしない。小学生の部(朝鮮族の学校では小学校・中学校で日本語を教えているという)、学部学生の部、社会人の部、独学生の部などがあるという。小生のところに来ているのは日本語学院の学生(学部学生の部)と、日本語学院に研修に来ている学生(独学生の部)だ。最初の予選は、どちらも課題はいくつか与えられていて、それを4分以内に発表するという。
 今日も一人の学生が部屋をたずねてきた。聞けば、今週学内選抜があるらしい。学内選抜では4つほどのテーマが与えられ、それについて原稿を書いて練習するという。どうも小生の感覚からいえば、指定されたテーマそれ自体がわかりにくいように思える。幅広い展開が可能なように、あえて焦点をぼかしたテーマにしているのではないかと思うが、指導する方からいえば、厄介この上ない。

4月5日(星期五)
 ここ数日、毎日快晴の空が広がって暖かかったが、今日は、午後から雨模様だった。
 大連には珍しく、まとまった雨で、時折風も吹き、それはお昼過ぎから夜半まで続いた。最近乾燥して埃っぽかったので、恵みの雨といった感じ。
 ただ、この雨、学生たちには授業を欠席する口実を与えたようで、いつも欠席者が少ない今日の2年のクラスは、若干出席者が少なかったように思われた。

4月6日(星期六)
 昨夜遅くまで降り続いた雨は今朝には上がっていた。当地の先生たちは「こんなことは珍しいです。でも恵みの雨です。」と話してくれた。
 今日は、朝8時30分から、「第13回キャノン杯日本語コンクール学内予選大会」が開催された。小生も日本側審査員として、審査に加わった。
 各学年の予選会を通過してエントリーしたのは47名(うち9名が欠席)。いずれ劣らぬ出来具合で、甲乙付けがたかった(この時の模様は別にリポートするつもり)。

4月8日(星期一)
 昨日に続いて今日も黄砂。当地では沙塵暴(シャーチェンバオ、砂嵐)と表現するようだ。
 天気予報は晴れマーク一つ。最高気温は14度の予報だったが、どうもどんよりして埃っぽい(当たり前か・・・)。
 土曜日に行われたキャノン杯学内予選の通過者27名が発表された。その学生たちを日本人教師に割り当て、これから2週間特訓が始まる。小生に割り当てられたのは3名。しかし、特訓といっても、何をどうやっていいか詳しくわからない。そりゃ、同僚の先生たちに聞いてだいたいはわかるが、効果的な方法は学生のレベルによって異なるだろうし、担当するからには学生にはがんばってほしいし、これから悪戦苦闘の2週間になりそうだ。準決勝戦は4月20、21日。

4月11日(星期五)
 今日はちょっと肌寒い一日だった。風も冷たかった。
 学内では、あちこちの建物で窓ふきが行われている。今日は図書館棟で窓ふきをしていた。驚くのは拭いているのは全員学生であるということ。どの窓にも学生が張り付いて窓を拭いている。はたから見ると何だか危なっかしい。それでも何となくいい気分になる。

4月13日(星期六)
 今日は天気予報に反して、曇り空で風も強く、夕方から肌寒くなった。
 労働公園の桜はすでに葉桜状態。
 しかし、大外のキャンパス内にあるライラックが紫の花を付けた。
 妙に北星が懐かしく思えた。ライラックは大外にだけあるのかなと思いきや、注意して見れば、大連市内に、何カ所か発見した。そのほとんどの花の色は紫である。
 札幌より、一ヶ月以上早いのではないだろうか。今年の大連は暖かいせいもあるので、開花が早いのかもしれないが、それでも早い。
 今日、当地に来てはじめて「肉まん」を食べた。
 学生に聞けば、当地では、中に具が入っている饅頭を「包子」、何も入っていないものを「饅頭」というのだそうだ。学生に勧められて小生が食べたのは、マイカルの近くにある中国版ファストフード店。具の種類は数多くあるが、ここはやっぱり日本でおなじみの肉まん(猪肉)。豚まんだ。具はトロッとした感じ。皮は柔らかい。日本の肉まんとは味が違っているけれど、味に変なクセもなく美味しかった。『寒い季節に食べたらもっと美味しいだろうな』と感じた。

4月14日(星期天)
 今日は昨日と違って、最高にいい天気で暖かかった(予報では曇りだったが・・・)。
 今日は、学生とともに、部屋で餃子を作った。
 はじめから予定していた訳ではなかったが、「餃子でも食べようか」ということになり、学生が「私が作りましょうか」と申し出たので、急遽、夕食は手作り餃子と相成った。初めての本格的な自炊。
 メンバーは、3年生の男子学生、2年生の女子学生2名、そして小生の4名。
 材料は、豚挽肉、白菜、長ネギ、具の薬味に生姜と塩。そして、タレは、醤油、餃子に合うという酢(日本の酢とは色が違い、味もさっぱりしている)、ニンニク。皮は、当地では「10枚いくら」という単位で買うのではなく、グラム単位。我々は1s買って4元。デザートに西瓜6分の一を買って、しめて34元(約560円)。改めて物価の安さに驚く。

4月15日(星期一)
 ここ数日、朝といわず、夕方といわず、グラウンドで学生たちが整列し行進する姿を見かけるようになった。
 最初は『体育の授業なのだろうか』と思っていたが、学生に聞けば、運動会に向けての練習だという。運動会はゴールデンウィークの直前に行われるが、そこでしっかりと行進できるように、教師の指導の下、行進の練習をするのだという。
 もちろん講義時間中は練習はできないので、早朝か夕方に練習することになる。朝一番は午前7時から45分間。クラスごとに(したがって30〜40人ごとに)整列して歩いている。夕方は授業が終わった4時30分以降練習している。
 講義は今日から第7週目に入った。

4月16日(星期二)
 今日は、朝の天気予報では曇りのち雨とのことだったが、一滴の雨も降らなかった。学生によれば、こんなふうに雨の予報でもはずれることがよくあるという。予報の精度が低いということではなく、それだけ大連付近の天気は変わりやすいということだろう。雨の代わりに相変わらずの強風。賓館の小生の部屋は西側の一番奥の部屋で、日中は窓から日光が入り込むので明るい。しかし、窓の向こうはグラウンドで、しかも窓の立て付けが悪いため、強い風が吹けば、グラウンドの土ぼこりが舞い立ち、窓の隙間から入り込むので始末が悪い。
 そういえば、大連は港町ながら、街の中でカモメの姿を見ることはない。アバディーンでは、街中のいたるところにカモメがいたのとは大違いだ(まさか、食べてしまったわけではあるまいな・・・)。

4月17日(星期三)
 今日はいい天気だったが、相も変わらず風は強い。
 水曜日ということで午後から授業はない。今日は午後からグラウンドで綱引き大会があった。
 小生、同じ時間にキャノン杯の全体練習会と重なったため近くで見ることは出来なかったが、激しく舞う土埃の中、大きな声をあげて綱引きをやっていた。早朝のクラス単位での行進の練習といい、日本の大学生ならこんなことをやるかな、と思わずにはおれない。文化の違いを感じる。

4月18日(星期四)
 今日、大外の中庭の階段にマリーゴールドなど小さな花を飾り始めた。いよいよ本格的な春になったようだ。

4月22日(星期一)
 今日から講義は第8週目。いよいよ折り返し地点。
 今日は、大連には珍しく終日小雨が降り続いた。朝のうちは霧が立ちこめて視界が悪かった。
 毎朝7時15分から放送している「大連早班車(Dalian Morning Express)」(ニュース)の終わりに天気予報がある。毎朝それをチェックしていたのだが、ここ数日別の番組になっていた。『番組の改編があったのだろうか』と思ったら、朝7時からに時間が変わっていた。天気予報は7時15分からだった。最近の大連は天気はいいのだが、なにしろ風が強くて困る。乾燥しているので(湿度は30%前後)、土ぼこりがすごい。
 来週は10日間のゴールデンウィーク。学生たちの間では、GWの過ごし方が話題になっているようだ。小生にも予定を聞いてくるが、現在のところまったく予定はない。せっかくの長期の休みだからどこかに行こうという気持ちもわかるが、学生たちに聞けば「どこに行ってもすごい人です」という返事。日本でもGWはすごい人出になるが、ここは中国。しかも海外からも来る。「中国にいるのだから」という気持ちもあるが、たぶん遠出はしないだろうと思う。ま、近場を見て回るぐらいかな。

4月24日(星期三)
 連日行われている運動会の練習が本格化してきた。
 小生の部屋から見えるのだが、今日は旗を持ったり、ボンボンを振ったりしながら行進していた。
 学生によれば、毎年学院のグラウンドで行われている運動会だが、今年は、大連市内の大学が一堂に会して大連市人民運動場で開催されるという。したがって、練習にもおのずと力が入るとのことだった(力が入るのは学生というより指導者の方)。


練習は朝7時から7時45分まで

4月26日(星期五)
 今日で大連滞在丸2ヶ月。講義をやっていると月日がたつのは早く感じる。
 大外では、明日は午前中振替授業がある。これは、月曜日の午前中の振替であるというが、何のための振替なのかはわからない。
 そして午後運動会の予選、日曜日は運動会。
 土曜日、日曜日に行事があるためか、大外のゴールデンウィークは4月29日から5月7日までだという。国民の休日としてのゴールデンウィークは29日から5月5日までの一週間なので、休みが2日ほど多い。中国のゴールデンウィークが制度としていつから始まったのかは不明ながら、消費拡大をねらったものだという。それだけ裕福な国民が多くなったということだろう。テレビのニュースでは、ゴールデンウィーク中の観光地のホテル・旅館の空室情報を伝えている。聞けば、日本と同じでどこの観光地も人人人らしい。
 学生の中には帰省する者も少なからずいるようだ。

4月27日(星期六)
 今日は午後から3年生が6名(男女各3名)が来室して、餃子を作って食べた。
 今回は皮から手作りで、具も2種類。
 餃子を食べながら(もちろん、餃子だけではなく、おかずも3種類作ってくれた)、韓国の大邱市で行われた中国対韓国のサッカー国際試合を見た。学生によれば、国際公式戦で中国は韓国に一度も勝ったことはないという(日本だって韓国には容易に勝てない)。だから勝てなくて当たり前、負けてもガッカリしませんともいう。しかしその応援ぶりを見ると、心中密かに勝利を期待していたように見えた。結果は両チーム無得点で引き分け。

4月28日(星期天)
 今日は大外の運動会。
 変わりやすい天気だったが、午前中の強い日差しのため、顔が真っ赤になった。
 学生の情報では大連の大学が一同に会するとのことだったが、これは間違いで、「大外のすべての学部が一同に会する」運動会だった。

4月29日(星期一)
 今日は、終日曇り空で雨がち。肌寒かった。
 今日から大外はゴールデンウィークに入った。小生も久しぶりにのんびりした。

4月30日(星期二)
 テレビでは、GW関連の情報が多くなっている(ちなみに、GWという省略表現は当地では通用しない。また、NHK国際放送のニュースではゴールデンウィークではなく「大型連休」と表現するようになっていることに気付いたが、これはいつからだろう?)。
 当地の、GWは、正確には「五・一黄金周」と表現するようで5月1日から7日までの一週間。
 赴任当初にもらった学年暦ではGWは5月5日までとなっていたが、どうやら7日までに延びたらしい(ある先生によれば、国の方針が変わったからだという)。
 5月1日は「労働節」(メーデー)。テレビのニュースでは、労働に貢献があった人々を表彰する式典の模様を放映していた。日本でも春の叙勲なんてものがあり、時期的にはだいたい同じ。しかし当地では、テレビで見る限り、働き盛りの労働者が表彰されている点が日本とは大きく違う。
 そういえば、南楼餐庁で夕食を食べるとき、食堂のお姉さんが「日本から来たの?」と聞いてきた。小生うなずくと「対不起は日本語でなんていうの?」と質問してきた。小生「ご・め・ん・な・さ・い」というと、他のお姉さんたちと練習していた。でもまったくいえない。小生、お盆を持ちながら即席日本語講座。学食で働く人々は、日本でも中国でもいい人ばかりだ(生協食堂の皆さんは元気かな?)。

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