血液型性格判断について
     9907099
    中野 文絵


【目的】
日本人の多くは,人の性格が血液型によって異なるという血液型性格判断説を知っている。我々は日常生活において,違和感なく血液型の話をしている。自己紹介や面接などにおいて,血液型が紹介される場面もしばしば見受けられる。対人関係で相手を把握するために我々はいろいろな手段を使う。それは外見の印象であったり,話し方であったりと様々である。その手段のひとつに血液型性格判断が存在する。
それぞれの血液型には,その血液型を持つ人々が共通に持っていると信じられている特徴があり,これは血液型ステレオタイプと呼ばれている。血液型ステレオタイプは「血液型によって人の性格が異なるという信念」と定義されており,科学的根拠がないとされているにも関わらず,多くの日本人に支持されてきた。血液型性格判断は娯楽として用いられることが多いが,特定の血液型に偏見が抱かれ,差別に結びつく側面があるという点も問題となっている。しかし,この血液型ステレオタイプは常識として定着している。
血液型性格判断は,人付き合いの補助的機能を果たし,占いと同じように自分の運命や人の行動を予測する道具となる機能と,権威体系に頼って複雑な試行判断を避ける機能を有していると考察された。では,現在血液型性格判断はどのような機能を果たしているのだろうか。
現在の大学生は血液型性格判断をどのように捉えているか。血液型性格判断が占いに近いものか,科学的現象に近いものか,それとも独自の分野を持つものなのかを検討し,現在の大学生における血液型性格判断の位置を明らかにする。また,血液型性格判断がどのような機能を果たしているかを考察し,10年前の奥井(1993)の研究との比較を行い,時代の流れによる大学生の考え方の変化について考察する。
【方法】
札幌市の大学生160名(男性78名,女性82名)に質問紙を配布した。
講義中に担当教授の了解を得て質問紙を配布した。被験者には当調査の真の目的は伝えていないが,質問紙配布前に血液型性格判断に関する知識や態度を調査するということを伝えた。
質問紙は奥井(1993)の調査で使用された質問項目に基づき,それに若干の修正を加え作成した。
【結果・考察】
 血液型による性格の差異について男女間で5%水準の有意差がみられた。女性の方が男性と比べて血液型性格判断説を支持する傾向にあった。雑誌などに掲載されている血液型性格判断を読むと回答した人は148人であった。しかし,その内容については,「ふーん,そう」と思う程度であまり信頼していなかった。
 被験者の約半数(53.97%)がステレオタイプ群であった。ステレオタイプ群は,血液型性格判断だけではなく,占い類の信頼度も高かった。(図参照)


 被験者全体でみると,血液型性格判断は占いに近いものと考えられており,重要視されていなかった。
 奥井(1993)の研究と比較して血液型性格判断を強く信じる人は減少した。しかし,現在でも血液型性格判断は常識として定着している。無意識に持っているのがステレオタイプであり,被験者の約半数が今現在でも血液型ステレオタイプを持っていた。現在の大学生には占い類の信頼度は低いものの,現実性に富み,目にする機会が多いが,それを真剣に受止め,実生活に役立てようとする人は少なく,ひまつぶしにみたり娯楽の一環として見る人が多いようである。血液型性格判断は,相手を把握する道具として以前のように重要視されなくなったといえよう。情報化社会が発展し現在では占いは数え切れない数だけあり,血液型性格判断もそのひとつになろうとしている。血液型性格判断は今後も人付き合いの補助的道具としてではなく,占いと同類の娯楽として楽しまれていくだろう。  
           (指導教員 豊村和真教授)