大学生における障害児・者に対する

受容的態度についての学部間比較

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竹内 力


 

【問題・目的】

 日本の障害児・者に対する福祉や法律はノーマライゼーションや地域福祉の理念が広まり,近年好転しているが,健常者の意識・態度は必ずしも適切とは言えない。一般に障害児・者に対する社会の態度は否定的である。これらの態度を改善し,障害を受容しなければ社会が好転したとは言えない。よって近い将来の社会を担う大学生の障害児・者に対する態度を把握することは重要である。

障害児・者に対する態度についての研究には多様なものがある。その中の多くは障害児・者に対する態度の構造は多次元的なものであることを指摘しているが,障害の種類や研究者によってその因子構造は多岐に及んでいる。よって本研究では大学生の障害児・者に対する態度がどのような構造を持つのかを検討する。

また,多くの先行研究が障害児・者に対する態度を規定する要因として,知識や交流経験を挙げている。本研究では,専攻の違いを知識の違いと捉え,社会福祉−非社会福祉の学部間で障害児・者に対する受容的態度にどのような差があるのかを検討する。また,先行研究では一致した結果が得られていない性差の検討も同時に行う。

【方法】

被験者:北星学園大学在籍の大学生を対象に質問紙調査を行った。回答に不備のあったものを除き,分析に用いた被験者は384名(男性117名,女性269名)で,内約は社会福祉学部189名,非社会福祉学部197名であった。なお,学年別には1年生216名,2年生118名,3年生39名,4年生13名であった。

質問紙:@フェイスシート;性別,学年,学部,障害

児・者との交流経験についてなどを記入させた。A徳田(1990)による「障害児・者に対する多次元的態度尺度」をより簡素で明確なものにし,25項目からなる「障害児・者に対する受容的態度尺度」を作成した。被験者は各項目に7段階評定[1;そう思わない−7;そう思う]で回答し,尺度得点が高いほど障害児・者に対して好意的

 

 

あると解釈される。

【結果・考察】

 因子分析の結果「対等」,「積極的行動」,「統合教育」,「実践的交流」,「自立生活」の5因子が抽出された。本学の学生の障害児・者に対する受容的態度はこれらの5つの多次元的要因によって規定されると言える。なお,社会福祉−非社会福祉の学部別に因子分析を行ったが,ともに同様の結果が得られ,各因子を構造する項目も同じであった。因子構造においては学部間に差は見られなかった。

 性別による検討では「自立生活」と「実践的交流」については女性が,「積極的行動」については男性の方が好意的であった。この結果は,知識や認知的な成分においては女性のほうが障害児・者に好意的であるが,現実場面で行動を起こせるのは男性である,ということを示している。

 社会福祉−非社会福祉の学部間では「実践的交流」についてのみ,社会福祉学部の方が好意的であった。社会福祉学部の学生は障害児・者と交流を持ちたいと考えている。この結果は先行研究を支持するものであったが,他の4因子について差が見られなかったのは,被験者の学年が影響していると考えられる。被験者の大部分が12年生であり,社会福祉学部の学生だからといって障害について正確な知識を有しているとは言えない。また「対等」については,女性の社会福祉学部が男性の社会福祉学部・女性の非社会福祉学部よりも非好意的であった。これは社会福祉学部の女性が障害児・者と健常者を区別していると解釈される。これにも学年と知識の影響が考えられ,専攻の差が知識の差とは言い難いかも知れない。

 交流経験の有無については,「統合教育」,「実践的交流」,「自立生活」,「積極的行動」において交流経験のある人の方が障害児・者に対して好意的であった。

これらの結果から,大学生の障害児・者に対する受容的態度は専攻や性別よりも,障害児・者との交流経験の影響が大きいと言える。(指導教員 豊村和真教授)