ボディイメージに及ぼす不安と被服態度の影響について
9907010
藤本 真理
【目的】
現代社会は、細くあることを強要する社会的圧力(村上,1998)や、その事に関わる情報の氾濫、とりわけ被服に関する情報などからボディイメージが歪められていることが問題とされる(石戸,2001)。 そして情報の氾濫により、知らなければ不安を感じることもないが、情報化社会に住んでいるがゆえに、現代人はたくさんの不安を抱えさせられているとされる(渋谷,1999)。
また現代人は子どものころから世間一般の肥満体型に対する不当で否定的な評価を取り入れるが、思春期・青年期になると、女性の方が男性よりも、この偏見的な風潮に影響されやすいとされている (Wooley & Wooley, 1979)。
本論文では自己を確立している最中にあり、不安定な時期と言われる高校生、大学生に対し、被服に関する態度と、不安を指標としてボディイメージの歪みを検証することを目的とする。具体的には以下の仮説を検証する。
《仮説》
@ EAT尺度、不安、被服態度には、おのおの性差があるとされているが、見かけの差と考 えられる。
A EAT尺度、不安、被服態度の変数間に関連性がある。
B 不安尺度、被服態度尺度において、先行研究に見出されたものと同様の因子が抽出される。
なおボディイメージは、EAT尺度が高いほど歪んでいると仮定し、ボディイメージの測定にはEAT尺度を使用する。
【方法】
質問紙による調査を行った。使用した尺度は山本(1988)の不安尺度、柳(1985)のEAT尺度、神山(1983)の被服関心度質問表を使用した。
予備調査を2002年9月中旬に北星学園大学の生徒29名に行った。予備調査は質問の形式を簡略化するためと信頼性を高めるために行った。予備調査から偏りの認められた項目を削除し、使用する尺度項目を選定した。
本調査は2002年10月上旬に北星学園大学の生徒、男性54名、女性82名、合計136名に対し授業の最後の時間を使用し回答させ、教室出口で質問紙を回収した。また被験者の数を増やすために北広島高等学校3年生、男子50名、女性55名にも同様の調査を留置法で行った。
【結果と考察】
仮説@の結果は、t検定からはEAT尺度と被服態度に女性の方が男性よりも得点が有意に高かった。不安は有意な差が認められなかった。しかし、t検定は性別のみならず、背後に存在するあらゆる要因も含めた平均値の差の検定であり、ここで生じた差は見かけの差と考えられる。
見かけの差を検討するために、共分散分析を行った。この分析は性別のみを考慮しEAT尺度を測定した。その結果、EAT尺度に対して性別に差は認められなかった。性別と不安の交互作用、性別と被服態度の交互作用が認められた。すなわち、純粋に性別のみを考慮した時には差が認められないが、不安や被服態度が関わってきたときにEAT尺度に対して性別に差が生じると推測された。
ここから、性別の差は純粋なものではなく、背後に不安や被服態度以外にも何らかの要因が関わってくる時に、性別の差が生じるものと推測される。
仮説Aの結果は、EAT尺度、不安、被服態度おのおのの変数間に、弱い又は中程度の正の相関関係が認められた。 性別ごとに相関を見たところ、EAT尺度と不安の相関、EAT尺度と被服態度の相関は、女性の方が男性に比べて相関関係が強かった。不安と被服態度の相関は、男性の方が女性に比べて相関関係が強かった。
仮説Bの結果は、不安尺度から抽出された因子は現在の状況についての不安、自分の能力に関する不安、外部に対する関わりかたの不安因子の3因子が抽出され、山本(1988)の先行研究において、外部との関わりにおける不安に共通項が見出された。項目ごとの性別の比較には大きな差は見られなかった。
被服態度から抽出された因子は、自分の個性を高めつつ心理的安定感を求める因子、同調・慎み・常識を求め、対人的外観を整える因子、快適さを求める因子が抽出された。中でも自分の個性を高めつつ心理的安定感を求める因子に、女性の方が男性に比べて得点が有意に高かった。女性は自己の独自性を表明しようとする反面、流行の枠にいることに安定感を求めていると考えられる。またファッション業界の細身の服を売り出す傾向に乗せられているようにも見受けられる。
指導教員 豊村和真教授