by KT
「障害者」に対する健常者が持つ態度に関する研究
9807077
山内 典子
《目的》
わが国の障害を持つ人々に対する教育・福祉は年々発展しており、ノーマライゼーションや地域福祉などの理念の広まり、福祉八法の改正をはじめとする行政サービスの変化など、この十数年の間に障害者を取り巻く状況は好転してきているといえよう。しかし、これらの変化の基盤となる社会の人々の障害者に対する意識や態度は必ずしも十分とは言えない。教育や福祉が変化し効果的に実践されるためには偏見や差別問題の解消が重要である。
障害者に対する態度に影響する要因はいろいろ考えられるが、障害を持つ人との接触経験や知識がある人のほうがその態度が好意的になるとの結論が出た研究は圧倒的に多い。そこで本研究では健常者が障害者(精神障害者、知的障害者、身体障害者)に対して持つ受容的態度を、知識・経験がどのように関係するかを中心に、自己とのかかわりの強さによる受容的態度の変化と障害の種類を比較し、健常者の障害者に対する認識の実態を把握する。また、専攻や性別による受容的態度の違いも検討し、様々な面から健常者の障害者に対する態度を分析することを目的とする。
《方法》
調査対象は北星学園大学経済学科、経営情報学科、英文学科、社会福祉学部各学科、札幌市にある介護福祉系専門学校生の合計449名である。
質問紙は、精神障害者、知的障害者、身体障害者それぞれに対する関心、地域交流、働きかけなどから構成される16の受容的態度項目、隣人、友達、恋愛、結婚をどの程度許容できるかに関する4項目、出現率、犯罪率など知識に関する4項目、会話経験やボランティア経験に関する5項目の他に、裏表紙に、7つの病名を3つの障害に分類し、障害の区別が出来ているかを問う項目、19の施設の中から福祉施設を選ぶ問い、6つの福祉施設を数の多い順に番号をつける問いなど専門的知識の項目等から構成される。
《結果・考察》
まず、精神障害、知的障害、身体障害の3つを区別できているかを検討した所、精神遅滞を精神障害に分類している人が半数いたが、正しく分類した群とそうでない群で受容的態度などに違いが見られなかったので、3つの障害を区別できているものとした。
受容的態度は身体障害、知的障害、精神障害の順で高く、特に身体障害に対して受容的である。トイレやスロープなど障害者用と書かれたものは大抵身体障害者用であり、健常者は知らずと障害者=身体障害者というイメージを持ってしまっているため他の障害に比べ受容的なのではないか。
知識と経験はともに受容的態度と相関関係にあり、どの障害でも共通していた。知識や経験が多いほど受容的であるといえよう。下位項目について検討した所、出現率や誕生可能性が低いと思っている人は障害者を特別視しているので受容的態度が低いと考えられる。また、精神障害者は健常者より犯罪率が高いと持っている人が他の障害より多くこれが受容的態度に影響したと思われる。経験項目についてはボランティア経験が受容的態度に影響を及ぼしていることが明らかになった。自主的経験なのでこの経験がある人は障害者に関心があり受容的であると思われる。裏表紙の専門知識が多い人についても障害に関係なく受容的であった。また、福祉系の学科(学校)とそうでない学科では福祉系の学科のほうが受容的であった。福祉に関心がある人が多いため障害者に対しても受容的なのだろう。そして知識や経験は身体障害、知的障害、精神障害の順で高く、また福祉系の学科の方が高かった。
許容項目において、身体障害では友達になることを許容できるかどうかが受容的態度に影響していたが、知的障害と精神障害においては隣人になることすら拒む人がいることが明らかになった。各項目毎に見ても身体障害を許容する人が多かった。しかし、恋愛や結婚となるとどの障害でも許容できなくなる傾向がある。また福祉系でない学科の生徒はどの程度でも許容できないことが明らかになった。性差においては受容的態度と知識では女性の方が高かったが経験については違いが見られなかったので一概にどちらが受容的とは言えない。
以上のように受容的態度には知識や専攻の違い、経験が深くかかわっており、正しい知識を得る場と交流の持てる場を福祉団体や都道府県が設けて行くことが健常者の障害者に対する誤った認識を改善する有効な手段であろう。 (指導教員 豊村 和真教授)