3つの障害(知的障害者、精神障害者、身体障害者)に対する意識と態度に関する研究
9807045
水口 美保子
【目的】
本研究では、『健常者が3つの障害(精神障害・知的障害・身体障害)に対して持つ意識と態度』をテーマに、健常者が精神障害者・知的障害者・身体障害者それぞれに対して持つ受容的態度、接近許容度、知識量、交流経験量を多次元的に捉え、健常者の認識の実態を把握する。自己との関連の強さや知識量の違いが受容的態度に及ぼす影響や、障害の種類による認識の差等を明らかにする。また、3つの異なった群〔高校生・社会福祉学部以外の大学生(経済・経営情報・英文学科)・社会福祉学部の大学生(福祉臨床・福祉計画・福祉心理学科)〕を調査対象にすることで、それぞれの群間での認識の差を比較する。
そこで発達の差(年齢・学年の違い(本研究では高校生と大学生の違い))や、今もなお残る精神障害に対する差別や偏見の影響による障害の差(精神障害・知的障害・身体障害)による違いが生じるという推測をもとに以下の仮説をたてた。また、知識量(または交流経験量)と受容的態度(または接近許容度)との関連性における仮説もたてた。
仮説@:3つの障害全てに共通して、障害者に対する受容的態度(他、接近許容度(仮説C)・知識量(仮説F)・交流経験量(仮説K))は、高校生、社会福祉学部以外の大学生、社会福祉学部の大学生の順に高くなり、社会福祉学部の大学生においては、著しい伸びが見られるであろう。
仮説A:高校生、社会福祉学部以外の大学生、社会福祉学部の大学生全てに共通して、3つの障害間における受容的態度(他、接近許容度(仮説D)・知識量(仮説G)・交流経験量(仮説L))は、精神障害者、知的障害者、身体障害者の順に高くなるであろう。しかし、障害全般に対しての理解が高いと思われる社会福祉学部の大学生の3つの障害間に大きな差は見られないであろう。
仮説B:高校生と社会福祉学部以外の大学生においては、女性の方が男性よりも3つの障害全てに共通して受容的態度(他、接近許容度(仮説E)・知識量(仮説J)・交流経験量(仮説O))は高いであろう。しかし、社会福祉学部の男性は、もともと社会福祉に対する興味・関心が高いと考えられることから、社会福祉学部の大
学生に性差は見られないであろう。
仮説H:高校生、社会福祉学部以外の大学生、社会福祉学部の大学生の全てに共通して障害に関する知識が高ければ高いほど受容的態度(または接近許容度(仮説I))は高くなり、それはどの障害にも共通するだろう。
仮説M:高校生、社会福祉学部以外の大学生、社会福祉学部の大学生全てに共通して、障害に関する交流経験が多ければ多いほど受容的態度(または接近許容度(仮説N))は高くなり、それはどの障害にも共通するだろう。
【方法】
調査対象は東海第四高校(一般コース)85名、北星学園大学(経済学科・経営情報学科・英文学科)242名、北星学園大学(福祉臨床・福祉計画・福祉心理学科)107名の合計434名である。男女の内訳は、東海第四高校=(男性40名、女性44、不明1名)、北星学園大学(経済学科・経営情報学科・英文学科)=(男性132名、女性109名、不明1名)、北星学園大学(福祉臨床・福祉計画・福祉心理学科)=(男性34名、女性73名)である。
質問紙は「精神障害」「知的障害」「身体障害」に関する設問(受容的態度16項目・接近許容4項目・知識4項目・交流経験5項目)をそれぞれ見開きで1頁(計3頁)設定し、表紙には在籍する学校(コース)、性別の記入欄を設定した。
【結果・考察】
受容的態度、接近許容、知識、交流経験全てに共通して、学校間、障害間、男女間によって差がみられるところもあればみられないところもあり、仮説全てが支持される結果にはならなかった。つまり、発達の差や障害の差、性差は障害に対する認識に絶対的な影響を与えてはいないことがわかった。これは、障害によっては高校生と大学生の間に大きな認識の差はないことや、社会福祉学部の大学生の中にも障害によっては知識や接近許容度に差が出るということ、男女による違いが生じること等をを示す結果である。また、知識(または交流経験)が受容的態度(または接近許容)を高める要因となる場合もあればならない場合があることも明らかになった。しかしこれらの結果には、3つの障害の区別が出来ていないということが影響している可能性も考えられる。
(指導教員 豊村 和真教授)