色と形の感性評価

9807033
橘井 かずき


【目的】
 色彩は人に色々な感情を呼び起こす。これは形態にもいえることで,様々な形が見る人に様々な感情を喚起する。
色彩は固有の感情価を持ち、また、形も例えば円と三角形では異なる印象を与える。
一般に、同じ形態でも施された色彩が異なると違った感情的印象を与えることはよく知られている。
 中野(1972)は形態と色彩の合成図形がもたらす感情価について,形態と色彩の感情価のどちらが予測的であるか検討した。
その結果,重回帰分析で多くの尺度において色彩の方が形態よりも効果が大きいことを示した。
また,椎名・王(2000)の実験では,色彩刺激,形態刺激のバラエティを増させ,データを求め,重回帰分析と因子分析を行なった。
その結果,中野とは逆に合成値は全般に色彩よりも形態の効果が大きいと示唆された。
 形と色の相互作用について感情表現語を用いたSD法で印象の変化を測定し、感性評価から色と形の効果を検討した。
形態刺激によって得られる感情価と色彩刺激によって得られる感情価,
および2群の刺激の組み合わせからなる合成刺激によって得られる感情価の3者の相互関係を比較し,
色彩と形態の合成図形がもたらす感情価がどうのように変化するか考察する。

【方法】
 北星学園大学の学生、男性17名、女性23名の計40名を被験者とし実験を行なった。
色彩刺激として赤、青、緑の3色、大きさはA4サイズの画用紙を使用した。
形態刺激として正三角形、角丸四角形、矢印、雲形、星型の5種類を選び、
合成刺激は以上の3種類の色彩と5種類の形態全ての組み合わせからなる15種類の充実図形で行なった。
実験は間接太陽光の実験室内で、個人面接あるいは最大3名までの同時面接方式で実施された。
同一被験者に対し、色彩刺激3種類、形態刺激5種類、合成刺激15種類の計23種類の刺激を順次1枚づつ提示し、
図形を観察しながらA4白紙1ページに黒インクで印刷された5段階の12尺度にしたがって各刺激図形からうける感情を評定させた。
呈示順序は形態刺激群,色彩刺激群,合成刺激群の順とし,各々の群の中で個々の刺激呈示はランダムとした。

【結果と考察】
 実験の結果、合成刺激は色彩の効果が強く出ていることがわかった。
椎名・王の実験では形態刺激の選び方にバラエティが乏しい場合は色彩効果が強く現れるに対して,
形態刺激の幅が十分に広いときには形態の効果が大きくあらわれると考察しているが、形態の差による大きな変化は見られなかった。
今回の実験では、合成刺激では色彩刺激の影響を受けやすいことが示唆された。
また、形態と色彩を合成することによって色彩の効果が強化されたり、印象が逆になることも示唆された。









(指導教員 豊村和真教授)