大学生女子のボディイメージと自尊感情および食行動
9707071
古谷 友美
[目的]
古川(1996)によると,近年の青年期の若者たちは痩せている方ほうが魅力的で美しいという考えを持ち,痩せたいという願望を持っているという。多くの女性は,肥満に恐れ,自己が満足する体型を作り上げようとし,極度の痩せ願望が発生することを考えると,肥満度と痩せ願望は密接に影響し合っていると考えられる。このように痩せ願望は,肥ることを嫌う若い女性たちを中心に発生するが,神経性無食欲症,神経性大食症の摂食障害患者とも同様のものである。馬場(1989)によると,摂食障害患者のほとんどが極度の痩せ願望や自己のボディイメージに歪みを持つことが明らかにされている。
さらに,摂食障害を引き起こす原因としては,社会的要因,家族的要因,個人的要因がある。本研究では,特に自尊感情の低さや抑うつ傾向と関連している個人的要因に焦点を当て,研究を進めることにした。
本研究の仮説は以下に示すとおりである。
仮説1:肥満度が高くなるに連れ,満足度が低くなり,痩せ願望につながる。
仮説2:EAT得点が高い者は,低い者よりもボディイメージの歪みが大きい。
仮説3:自尊感情得点が低い者は,高い者よりもボディイメージの歪みが大きい。
仮説4:EAT得点が高い者は,自尊感情得点が低い。
[方法]
被験者:北星学園大学 全学部 全学科 女性30名
ボディイメージ測定装置(全身像映像写技法)による実験を行い,各被験者のボディイメージ(現実像,理想像,理想とする男性像,女性像)を測定した。測定した値は,「認知した像/実像×100」で表し,認知した像が実像と同じサイズならば100となる。この値を「認知指数」と呼ぶ。さらに,ボディイメージに関するアンケート(身長,体重,体型に関する自己評価,満足度,願望,理想体重,関心度,食欲,ダイエット経験,ダイエット方法,芸能人への憧れ,住環境),食行動に関する質問紙としてEAT_26,自尊感情を測る質問紙として自己評価的意識インベントリーの調査を行った。
[結果・考察]
(1)肥満度と満足度,痩せ願望のつながり
肥満度とボディイメージに関するアンケートの重回帰分析を行ったところ,自己評価と関心度に結びついていることが分かった。さらに重回帰分析の結果,自己評価と願望が結びついていることが分かった。この結果から,肥満度が高くなるに連れ,自己評価でも自分は太っているとみなすようになり,自己を太っているとみなすほど,痩せたいと願うことが分かった。よって,仮説1は肥満度と満足度の結びつきは得られなかったが,自己評価を介して,痩せ願望に繋がることが分かリ,従来の研究とは少々異なる結果が導かれた。
(2)EAT得点とボディイメージ
EAT得点の高い者は,現実左側と理想左側以外の全ての現実像,理想像の認知指数の差が大きかったことから,EAT得点が高くなるほど,ボディイメージの歪みが大きくなることが分かった。よって,仮説2は証明された。
(3)自尊感情とボディイメージ
自尊感情得点と現実像,理想像認知指数の差に相関が見られるかを検討したが,有意な相関は見られなかった。よって,仮説を証明することはできなかったが,数値だけを見ると,自尊感情得点の低い者は差が大きくなることが分かった。
(4)EAT得点と自尊感情得点
EAT得点が高くなるに連れ,自尊感情得点が低くなることを証明するために相関検定を行ったところ,有意な相関が見られたため,仮説4は証明された。
(指導教員 豊村和真教授)