精神障害(者)に対する態度の変容についての研究
−社会福祉学部の大学生の基本的態度からの検討−
0207069
山之内 恵里
目的
精神障害者が、豊かな地域生活を送るには、それを支援する福祉専門職の肯定的な態度が必要になる。福祉専門職の肯定的態度を育成するには組織的な教育プログラムが必要され、それを確立するには、精神障害(者)に対する態度を多次元的に捉えたり、その人の持っている基本的態度ごとに態度を肯定的に変容させる有効な方法を検討しなければならない。そこで、本研究では、社会福祉学部の大学生を対象にし、どのような方法が、精神障害(者)への態度を肯定的に変化させるのに有効なのかということを検討するために、精神障害(者)に対する態度への、知識、接触経験、情報の影響を、被験者の基本的態度別に検討していくことを目的とする。
方法
北星学園大学社会福祉学部の学生421名(男性110名、女性311名)に質問紙調査を行なった。
調査は、2週連続して講義内で行われ、1週間のうちの精神障害(者)に対する態度の変化を調べた。
質問紙は、@精神障害者との接触経験項目(接触経験なし、浅いかかわり、深いかかわり)、A精神障害(者)に対する態度項目(AMD測定尺度)24項目、B精神障害(者)に関する知識項目30項目、C精神障害者に関する情報文(経済、就労、疾病、人権、関係なしの5種)、D1回目の調査と2回目の調査の間に行なった行動(積極的情報収集行動、間接的情報収集行動、接触行動)から構成されており、1回目の調査で使用された質問紙は、@とAとBとCからなり、2回目の調査の質問紙は、AとDからなっている。
結果・考察
本研究では、接触経験と知識と情報文の有意な主効果がどの基本的態度群においても見られなかった。これは、接触経験と知識と情報文が単独で精神障害(者)に対する態度に影響を与えているのではなく、それぞれの要素が併合して影響を与えていると考えてよいだろう。
基本的態度肯定群については、知識低群を対象にして、精神障害者との恋愛・結婚に関する態度が肯定的に変化させるには、経済の情報を提供することが効果的であると思われる。また、精神障害(者)の自己回復可能に関する態度については、知識低群より知識高群の方が肯定的なため、精神障害(者)に関する知識を提供することが態度を肯定的にすることに有効であると思われる。
基本的態度中立群については、知識高群を対象にして、精神障害(者)に対する態度全体を肯定的にするには、経済の情報を提供することが効果的であると思われる。また、群全体において 、精神障害(者)の自己回復に関する態度を肯定的にするには、経済と疾病の情報文を提供するのが効果的である。
基本的態度否定群については、知識低群を対象にして、精神障害(者)との社会的距離に関する態度を肯定的にするには、疾病の情報文を提供するのが効果的であると思われる。群全体の精神障害(者)の理解不能・危険視についての態度と精神障害者との恋愛・結婚に関する態度を肯定的にするには、自分の精神障害(者)に対する態度について意識する機会を提供することが効果的であると思われる。また、精神障害(者)の自己回復可能に関する態度を肯定的にするには、疾病の情報を提供することが効果的であると思われる。
また、本研究の結果から、精神障害者と接触するときは、知識を伴うと精神障害者の自己回復可能に関する態度が肯定的になるということができる。
本研究において、精神障害(者)に対する態度を肯定的にするための効果的な方法が、態度に及ぼす精神障害者との接触経験、精神障害に関する知識、精神障害(者)についての情報文の影響を、被験者の基本的態度ごとに検討した。これは、今後の福祉教育における精神障害(者)に対する態度を肯定的にするために必要な教育プログラムを作成する際に有効な知見になると思われる。
(指導教員 豊村 和真 教授)