援助行動の質の高さと性格特性・性別の関連
0207068山本至
【目的】
援助行動を促進、また抑制する要因は何かという、援助行動の規定因についての研究は、援助行動研究の初期から中心的な研究対象であった。しかし、規定因の中でも多くの研究者によって検討されてきた性格特性・性別についての研究は、研究間で一貫した結果が得られず明確な結論を出せていない(原田,1990;高木,1998)。
また一方で、援助行動が被援助者にとって必ずしも好意的に受け止められるわけではないことが明らかにされており、被援助者の視点から援助行動を検討する研究も行われている(西川,高木1990など)。
これらの問題を踏まえ、本研究では援助行動に質という考えを取り入れて、援助行動の規定因について検討する。まず、援助の質の高低によって援助行動を分類し、質の高い援助と質の低い援助ごとに規定因との関連を分析する。そして、質の高い援助の規定因と質の低い援助の規定因を比較し、被援助者に受け入れられない質の低い援助は行わずに受け入れられる質の高い援助を行うという、適切な援助態度は何によってもたらされるのかを明らかにする。
【方法】
北星学園大学の学生109名(男性46名、女性63名)を分析の対象とした。方法は伊藤(1996)の追試的に行い、援助の質と性格・性別の関連を再検討した。
<質問紙の構成>
1.援助行動に関する項目:伊藤(1996)が作成した、質の高低で2つに分けられた援助方法によって構成される、援助行動する意志を測定する質問項目を用いた。質問項目は5つの援助場面によって構成され、それぞれの援助場面に質の高い援助方法2つ、質の低い援助方法2つが提示されている。被験者には、これら援助方法をする意志があるか、ないかについて5件法で回答をさせた。
2.性格に関する項目: 柳井・柏木・国生(1987)の「新性格検査」より、「共感性」、「自己顕示性」、「持久性」、「社会的外向性」を測定する項目それぞれ10項目ずつを抜き出し(計40項目)、被験者に4件法で回答させた。
【結果・考察】
まず、援助行動得点を、質の高低の区別なく全て集計したもの(集計方法T)、質の高い援助だけを集計したもの(集計方法U)、質の低い援助だけを集計したもの(集計方法V)、集計方法Uの得点から集計方法Vの得点を引いたもの(集計方法W)の4つの方法でまとめた。
上記の集計方法ごとに性格特性との関連を重回帰分析、性差を分散分析で調べた。その結果、共感性、持久性、性差に関して有意な関連が見られた。
共感性は集計方法Tとの正の関連が見られ、先行研究で明らかにされてきた「共感性の高い人の方が援助をしやすい傾向にある」とする知見を支持するものとなった。ただ、共感性は集計方法UとVの両方で正の関連が確認された。このことから、共感性の高い人は質の高い援助だけでなく、質の低い援助に関しても援助をしてしまっているといえる。
一方、持久性は集計方法Uと集計方法Wの2つとの間で正の関連が確認された。集計方法Uとの正の関連が確認されたことから、質の高い援助について持久性が高い人ほど行いやすいといえる。さらに、集計方法Wでも正の関連が見られたことから、持久性の高い人ほど質の高い援助はしても質の低い援助はしないという傾向が大きくなっている。以上のことから、持久性が質の高低を判断しながら質の高い援助だけをしやすくするという、適切な援助態度を促進する要因であるといえる。
以上の共感性、持久性の性質が見られたが、このことは原田(1990)の研究から、共感性が促進するのは対処の仕方が明瞭な援助、持久性が促進する援助は“じっくりと最後まで援助する必要のある”援助とされていることより、適切な援助態度に必要な困窮への対処を詳しく検討する要因が共感性でなく、持久性に当てはまったためと考えられる。
また、有意差の確認された性別の要因に関しては、男女に経験の違いのある援助場面が影響していることが原因であると考えられ、今後援助行動の質問項目を見直す必要があることがわかった。
(指導教員 豊村和真教授)