なぜ迷惑行為は行われるか ―理由とその対策―
0107050 高橋 野枝


【目的】
@やむをえない理由で迷惑行為をするケースを明らかにするために、各迷惑行為の特徴を分析すること。
A迷惑行為の問題を根本的に解決するためには社会での経験が役立つものと考え、迷惑行為に対する態度や社会考慮に対して就職や就職活動などの社会経験が与える影響を検討すること。
B迷惑行為の低減を効率的に図るために経験頻度、迷惑認知度、社会考慮の高低を群分けし、迷惑行為をする理由とその対処法に違いがあるかどうかを検討する。同時に、具体的で有効な迷惑対処法を模索すること。

【方法】
被験者は本学学生およびその関係者209名(男性60名、女性149名)。
フェイスシートで性別、年齢、学年、学科、就職(活動)経験の有無、アルバイト経験の有無および業務内容を尋ねた。迷惑行為25項目について、経験の有無(2件法)及び迷惑認知度(4件法)を尋ね、吉田ら(1999)の社会考慮尺度13項目(4件法)を実施した(社会考慮)。また、迷惑行為5項目(@授業中の私語 A区域外の駐輪 Bお酒 C無灯火 D遅刻)について、その行為をする理由及びしない理由(理由)、それについての対処法(迷惑対処法)を自由記述形式で記入させた。

【結果・考察】
@経験頻度得点(経験の有無25項目の個人平均)、迷惑認知得点(迷惑認知25項目の個人平均)、の高低により被験者を群分けした(高低経験群の2群及び高低認知群の2群)。
A経験頻度、迷惑認知、社会考慮の関係
社会考慮得点について、高低経験群、高低認知群を被験者間要因とする2要因分散分析を行った結果、高経験群及び高認知群の社会考慮が有意に高いことが示された。交互作用は見られなかった。
Bそれぞれの迷惑行為の特徴(目的@・Aの検討)
迷惑行為25項目の経験の有無、迷惑認知度の平均値と標準偏差を算出し、各項目の特徴を分析した。迷惑とわかっていてもついしてしまう行為として「広がっての歩行」があげられた。
性別・就職(活動)経験の有無・アルバイト経験の有無を独立変数、経験頻度及び迷惑認知度を従属変数とするt検定をそれぞれ行った。 全体的に女性より男性の経験頻度が高く、迷惑認知度が低かった。
就職経験のある者の方が経験頻度・迷惑認知度・社会考慮が高く、アルバイト経験のある者の方が、経験頻度・社会考慮が高かった。就職やアルバイトなどの社会経験が社会考慮や迷惑行為に対する態度に影響することが示された。社会経験がある者の経験頻度が高いのは、社会経験が多い分迷惑行為をする機会も増えるためだと推測した。迷惑行為に対する態度への影響はアルバイトよりも就職(活動)の方が大きかった。

C理由・対処法と経験頻度・迷惑認知度との関係
(目的Bの検討)
自由記述で得られた回答をカテゴリ分けした。理由については個人の都合、個人意識、行為の対象、周囲の状況、ルールなどの観点で、迷惑対処法については共生意識、個人意識、周囲の状況、規制などの観点で分類した。理由×高低経験群、 対処法×高低経験群、理由×高低認知群、対処法×高低認知群、理由×高低考慮群、対処法×高低考慮群のクロス表を作成し、カイ二乗検定を行ったところ、理由×高低経験群および対処法×高低認知群いくつかのセルにおいて度数の分布に偏りが見られた。
高経験群には5項目全てにおいて、「個人の都合」を理由に各迷惑行為をする者が多かった。低経験群には「お酒」「遅刻」をしない理由を「個人意識」とした者、「区域外の駐輪」及び「無灯火」しない理由を「ルール」とした者が多かった。「個人意識」「ルール」には、自分がその行為をすべきでないという意識や理由が明確である回答が主であったため、「その迷惑行為をすべきでない」という自分なりの理由や意識を持つことで迷惑行為は減ると予想した。
高認知群には、「授業中の私語」及び「お酒」を、共生意識や個人意識を持てば減らせると考えている者が多かった。そのため、自分が周囲の者と協力することや、マナー・モラルを広く知らせるという積極的な姿勢を持てば迷惑行為の低減につながると予想した。
確実に迷惑行為を減らす方法があることは分かったが、その中には実現が難しいものや根本的な解決にはつながらないものも多く、根本的な解決のために行為者の認識を変えるには、教育や啓蒙活動などの地道な方法が必要であると推測した。

(指導教員 豊村和真 教授)