障害者に対する受容的態度と関連する知識項目作成の試み
−高校生・短大生・大学生を対象として−
0107037
笹尾 絵梨
【目 的】
障害者に対する受容的態度と関連している要因として、知識が多く取り上げられている。受容的態度と知識が関連しているなら、知識の有無をもとに知能検査のように受容的態度を測ることもできるのではないか。そこで今回の研究では障害者への受容的態度と関連する知識を選び出し、その性質について分析することを目的とする。
また先行研究で、知識と接触経験・性別が関連していると報告しているものがあるが、使用された知識項目が異なったものであるため、その信頼性は確かなものではないと考えられる。そこで今回は性別・接触経験と知識との関連もあわせて検討する。
【方 法】
対象者は、北星学園大学の大学生532名(男性145名、女性385名、性別不明2名)、短大生183名(男性1名、女性181名、性別不明1名)、札幌市内の高校生209名(男性99名、女性110名)、合計924名だった。
調査用紙は障害者福祉に関する知識項目75項目と、菅原(2003)の障害者に対する受容的態度尺度25項目、性別や年齢など被験者のプロフィールを記入する3項目、障害児(者)との接触経験、頻度に関する2項目から構成されている。
【結果と考察】
全体の回答内訳では、実際の経験・生活場面やテレビなどで知識を得ることができるような項目や、認知度が上がってきた内容の項目の正答率が高かった。逆に不正解が5割以上だった項目は3項目と少なかった。またわからないという回答が5割以上だった項目は、専門的な知識の項目が多かった。
性別と知識項目との関係では、男性の方が正答率が良い項目も確認されたが、概して女性の方が、障害者福祉に関連することについて男性よりも知識を多く持っている傾向があることが推察された。
接触経験と知識との関係については、接触経験の多さよりも、接触経験の有無が正答率に影響を与えている可能性があることが推察された。
受容的態度因子として、「仲間意識因子」「過大評価因子」「統合教育因子」「否定的態度因子」が抽出された。この4つの因子得点(ここでいう因子得点とは、対象者が因子に支配されている程度を表す“対象者の因子負荷量”ではない)からそれぞれ3群に分け、知識項目の得点と、わからないと回答したものを得点化した「わからない得点」との関連を調べた。その結果、各因子得点が上がるほど正答率が上がる(下がる)項目、またわからないと回答する人が多く(少なく)なる項目が確認された。以下では各受容的態度因子と相関が見られた項目の性質を述べる。
仲間意識因子は、より実践的な交流の意思が含まれている因子という性質から、数多くの知識項目との相関が見られ、関連があることが推察された。
過大評価因子は相関が見られた項目が少なかったが、障害者に対する不当な評価、また間接的に障害者を援助する方法についての知識項目との相関が見られ、関連があることが推察された。
統合教育因子は、教育に関連する知識項目、また障害者を援助する道具・方法に関する知識や専門的な福祉の知識との相関が見られ、関連があることが推察された。
否定的態度因子は、障害者に対する差別的・不当な表現、事柄を含む知識項目、また障害者を優遇する制度の知識項目や、福祉の専門的な知識項目との相関が見られ、関連があることが推察された。
また因子得点が上がるほど正答率が下がる、またわからないと回答する人が増える項目が確認されたのは、過大評価因子と統合教育因子のみだった。
今回の調査の結果、障害者に対する受容的態度と関連する知識項目、その性質の傾向が確認された。しかしまだ曖昧な部分は多々あるので、これらはあくまで項目の候補として残すことが望ましい。また引き続き今後の調査が望まれる。
(指導教員 豊村和真教授)