大学生における親子関係と社会的自立の関連
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青野 晋也
【目的】
高学歴化に伴い,親への依存期間が長期化している現在にありながらも親との関係の希薄化が問題にされている。現在の大学生は親とどのような関係をどのように捉えているのだろうか。そして大学生において必要になると考えられる自立の側面である社会的自立に着目した。社会的自立とは個と個,また,個と社会を重視した自立の側面であり,まさに今の大学生にたりないものだと考える。一般に社会的自立と聞けば経済的なものを想像されるが本研究での社会的自立は,男は就職,女は結婚という伝統的性役割間の事象にとらわれることのない対人関係能力に基づき定義した。この社会的自立が大学生においてどのように獲得されているのだろうか。
今までの研究で親子関係を基礎として自立を獲得していくことは確かにされてきているが,それらは社会的自立との検討を含んでいない。このことをうけて社会的自立も他の自立と同様に親子関係を基盤としていくと考えられる。
本研究では大学生の親子関係がどのようになっているのか,そしてその親子関係が社会的自立とどのように関連しているのかを検討した。
【方法】
札幌市の私立大学生に講義内や個別に質問紙を配り回答させた。回答数240名のうち有効回答216名(男子85名 女子131名)を対象とした。
質問内容は@フェイスシート(学年,年齢,性別,居住形態,アルバイト経験の有無,兄弟構成),A親子関係を問う項目:渡邊(1995)によって作成された項目に追加,修正したもの(父母別,各17項目,5件法),B社会的自立尺度:福島(1992)が作成した社会的自立尺度に追加,修正をしたもの(20項目,5件法)からなっている。
【結果・考察】
まず,親子関係,社会的自立尺度について因子分析を行い,親子関係は父母ごとに各3因子,社会的自立尺度は5因子を得た。
社会的自立に関し性別を被験者間要因とするt検定
を行ったところ,社会的自立得点,「協調性」,「共感性」が男子よりも女子の方が有意に高かった。さらに親子関係以外に影響を及ぼすと考えられるアルバイト経験の有無を被験者間要因とするt検定を行ったが男女ともに差は見られなく,アルバイト経験が社会的自立の獲得において影響をしていないことがわかった。
次に社会的自立と親子関係の関連を検討するにあたって,大学生の親子関係がどのようになっているのかを検討した。まず,得られた親子関係6因子について性差をみるために,性別を被験者間要因とするt検定を行ったところ,「父反抗」,「母絆・依存」,「母反抗」が男子よりも女子が有意に高かった。さらに,性別ごとに親子関係間で相関分析を行ったところ,男女ともに高い正の相関を示したのが「父絆・依存」と「父自己主張」,「父絆・依存」と「母絆・依存」,「父絆・依存」と「母自己主張」,「父反抗」と「母反抗」,「父自己主張」と「母自己主張」,「母絆・依存」と「母自己主張」であった。ここからわかるのは,父母問わず親との絆や信頼強いほど自己主張できること,そして親との関係が相互に強く関わりあっていることがわかる。そして,注目したいのが,女子のみに高い正の相関を示し「父反抗」と「母自己主張」,「母反抗」と「母自己主張」である。これは,大学生の女子は親に対し反抗的自己主張をしているということであるととられた。反抗というのは支配からの脱却であり,大学生の女子は親からの圧力が強いことが推測された。
最後に,親子関係と社会的自立の関連を検討するために,男女ごとに親子関係を独立変数,社会的自立得点を従属変数とした重回帰分析を行った結果,男女ともに重相関係数が有意であったことから,親子関係は社会的自立との関連において与える影響が大きいことが判明した。また,特に寄与の大きかったものが男女とに「母絆・依存」であり,親子関係の中でも母親との結び付きが社会的自立の獲得において重要であることが示唆された。
(指導教員 豊村和真 教授)