質問紙作成の流れ

質問紙作成の一般的な流れを以下に示す。通常社会調査ではW項目の決定までを,心理尺度では,これらすべてのプロセスを視野に入れて,質問紙の作成を行なうことが求められる。

T 測定対象の明確化

 何を測定するための質問紙を作成するのかを明確にすること。質問紙がとらえようとする内容をできるだけ的を絞って具体的にする。

U 項目候補の収集

  1. 自分で考える。
     さきに決めた質問紙の内容にしたがって,とにかく自分で項目を作る。
  2. 人に尋ねる。
     自分だけではうまく項目作成がすすまないときなど,人に尋ねてみる。その際,自由記述形式の質問紙を実施するのもよい。
  3. 関連文献にあたる。
     自分が作ろうとする質問紙に関連する文献や資料を収集し,項目作成に役立てていく。その際下記の文献が参考になる。
これらの方法により,項目の候補を作成する。

V 予備データの収集

 項目の候補に対して予備的な検討を行なう。作成した項目群を一定数の調査対象者に実施する。

W 項目の決定

 作成した各項目の反応の分布を調べる。ある特定の選択肢に反応が集中したり,反応の分布が極端にかたよっている項目がないかどうかを検討する(社会調査で使用する質問紙であれば,通常ここまでの手続きで終わるものが多い)。心理尺度の場合には,続いて項目分析を行なう。これは質問紙を構成している各項目が,調査対象者の反応を適切に弁別し得るか否かを吟味する統計的な手続きである。項目分析にはいくつかのやり方があるが,質問項目全体の得点や肯定率によって,その上位(Good:G)群と下位(poor:P)群に分割し,両群の各項目の得点や肯定率の差異を検討するG−P分析が有名である。この手続きにより,弁別力の劣る項目を削除し,洗練された質問紙に仕上げていく。

X 本調査

 項目分析を通過した項目群,ならびにそれらの妥当性を検討するための測度を抱き合わせて本調査を実施する。再検査法による信頼性を吟味するために,作成した項目群のみをもう一度実施することも考えられる。

Y 信頼性の検討

 信頼性とは,作成した項目群の内容的なまとまり(内的整合性)や,時間的な安定性を示す概念である。折半法やα係数が前者を検討する代表的な方法,再検査法は後者を吟味するための方法である。これらのいずれかの方法を使用して,項目群(質問紙)の信頼性の検討を行なう。

Z 妥当性の検討

 妥当性とは,作成した項目群が,とらえたい内容をどの程度正確にとらえているかを示す概念である。妥当性にはいくつかの種類があるが,基準関連妥当性や構成概念妥当性はその代表である。測定対象に応じてふさわしい妥当性の検討を行なう。


 これ以上の詳細は各ゼミでの指導にまかせる。心理学研究法後期でも説明があるかもしれない。


文献

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