坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
―ハイダーの認知的バランス理論―
1999.11.2(Tue)
発表者 中嶋 正実 司会者 松尾 勉
日常生活の中で、私たちは他人と意見が同じだと快く感じたりします。そして一方では、奇妙なことに自分と嫌いな人との意見が違っていると、むしろほっとする場合もあります。このような私たちの心理状態を説明する理論として、最も古典的なものの一つに、ハイダー(F.Heider.1946.1958)が提唱した「認知的バランス理論」があります。今回はこの「認知的バランス理論」について学習していきたいと思います。
この理論は
*坊主憎けりゃ…
このハイダーの「認知的バランス理論」について具体例を挙げて、もう少し詳しく説明していきたいと思います。あなた
(P)の仲の良い友人(O)が「スノーボートは楽しい」という意見(X)をもっていて、あなた(P)は持っていない場合は図のgにあたります。友人(O)はしばしばスノーボードに誘ってくれるが、自分はあまり行きたくない、このような状態はあまり快適とは言えません。認知的にバランスがとれるためには、自分もスノーボードを好きになる(図のa)か、友人(O)がスノーボードを嫌いになるまで待つ(図のb)かの変化が起こらなければならないことになります。これは日常生活の感覚となかなかよく合っているんじゃないかと思います。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というのは図のdで、坊主をO、袈裟をXとした場合で、これはこれで認知的にバランスがとれていることがわかります。同様に「敵の敵は味方」というのは、認知的にはバランスがとれている状態で、cにあてはまります。
*ニューカムの平行理論
(バランス理論)*アメリカの社会心理学者、ニューカムはハイダーやフェスティンガーの理論をもとにA−B−Xモデルを提唱しました。ある人物Aのある対象Xに対する態度、Aの他者Bに対する魅力、BのXに対する態度、BのAに対する魅力、の4つの枠組みは一つのシステムを形成しています。そしてAとBの二人相方がXに 対して同じ態度を持っているときには、A−Bに好意的な関係が成立して平衡状態となります。しかし、A−Xが正(プラス)でB−Xが負(マイナス)というような場合、システム内に緊張感が生じてバランスを保つことができなくなります。その結果Aは、BにXを好きになるように説得する、Xに対する正(プラス)の態度を負(マイナス)に変える、Bに対する魅力を低減するなどの方策をとります。ハイダーは個人内の認知的均衡を論じていますが、ニューカムは対人間の均衡を論じている点で大きな違いがあります。
*感想*
ハイダーの理論とニューカムの理論に対して共通に言える事は「人の心は常に何とかしてバランスを保とうとはたらく。」ということです。私達の心は日常生活の中で、特別意識せずにこのような作業をやっています。しかしよく考えてみると、この「常にバランスを保とう」いう作業は私たちが外界から常にくる情報を処理するために非常に重要な役割を果たしてのではないかと思います。もしこのような働きが私たちの心に無かったら、私たちは生きていくことが非常に難しくなるのではないでしょうか
心理学基礎用語集 加藤 義明 中里 至正 編著
入門心理学 加藤 義明 中里 至正 編著
現代社会心理学 末永 俊郎 安藤 清志 編
はじめてまなぶ心理学 木村 裕 編著
わたしそしてわれわれver2 大坊 郁夫 編著
社会心理学小辞典 古畑 和考 著
心理学パッケージpart3 小川 捷之 椎名 健 編著
発表の際に出された質問
*
ハイダーの理論について*Answer:
この理論はあくまでP〔個人〕、つまり人間を対象にしている理論である。例 P〔自分〕、O〔恋人〕、X〔スリムな体型〕、O〔恋人〕は別にスリムになりたいとは思わない。この場合はどうなるのか?
Answer
:O〔恋人〕を説得してX〔スリムな体型〕に対する態度を変えさせるか、P〔自分〕のX〔スリムな体型〕に対する態度を変える事などの場合が考えられる。〔3〕彼女〔O〕が太った。それでも彼女のことが好きな場合、X〔スリムな体型〕というのは彼女に合わせて変わるか?つまり、P〔自分〕の好みがスリムな体型からポッチャリとした体型へと変わるか?
Answer:
そのようにXに対する態度を変えることによってバランスを保とうする場合もあり得る。ニューカムのモデルについて
Answer:A
−B間の対人関係を維持するために、AがBのXに対する態度を変えようと説得する場合もあり得る。
、