2000/11/02
同調と責任の譲渡
発表者 鈴木 伸枝 司会者 田嶋 友美
人間には、「同調」という現象があることが広く認められ、よく知られている。
同調という現象にもさまざまなものが考えられるが、その中で今回は社会の規則やきまりを破る方向の同調において、その同調の程度を規定する要因にはどんなものがあるか考えてみたいと思う。
同調…他者や集団が提示する標準や期待にそって、それらの標準や期待と同じ、あるいは類似の行動をとること。
< レフコウィッツらによる研究(1955)>
信号待ちしている大人の歩行者2013人の歩行者を対象として、1人の実験協力者(モデル)を用い、信号違反者の人数を測定した。違反者として測定の対象になったのは、モデルが歩き始める前は信号を守って立ち止まっていたのに、信号が青にかわったときにはセンター・ラインをこす位置にいた人である。
<実験のねらい>
(1)信号を守らないという行動は、他人の違反が先に起こった場合に、より起こりやすくなるのか
(2)このような同調傾向は、先に違反する人の社会経済的地位によって左右されるか
1の解答を得るため、モデルが赤信号を守る条件(遵守条件)と、45秒(信号が青にかわるまでの時間)のちょうど真ん中くらいのときに赤信号を無視して渡る条件(違反条件)を設けた。
さらに2の解答に対して解答を得るため、半数の場合に、アイロンのかかった背広、白いワイシャツ、ピカピカの靴など地位の高いことを典型的に表す服装をし(高地位条件)、半数の場合には、同一人物が汚れた靴、よれよれのズボン、デニムの上着という格好(低地位条件)をした。
2通りの服装条件と、遵守−違反の2条件を組み合わせた4条件に、モデルが全くいないとき(統制条件)を加えた5条件で信号違反者の人数を測定した。
<実験結果>
以上の結果から、モデルの違反により同調行動が発生したことがわかる。さらに、同調傾向は先に違反した人の地位に左右されたといえる。 「みんなしている」と、その行為に違法性があってもそれが「許され得る」ものになったかのような錯覚に陥ったり、罪の意識が薄まるように感じるという同調の危険性をこの実験は示しているといえる。 <感想> 私達の周りのさまざまな場面に同調は隠れているだろう。明らかに誤った行為であっても、人間は同調してしまうというのは、とても危険なことだと感じた。 機会があれば、同調がプラスに働く場合なども調べてみたいと思う。 引用・参考文献 心理学パッケージpart4 よくわかる心理学28講〜女性の視点から〜 堀野 緑・川瀬 良美・森 和代・上瀬 由美子 福村出版 質疑応答 Q:同調という語の説明の中の「期待」とはどういう意味か? A:例えば、周りの人たちの意見が同じ場合に自分にも同じ意見を期待される、などの意 味。 のか? A: 募金など。どちらの同調が起こりやすいかは、その行動の精神的、肉体的な行いやす さ、リスク、利益の程度によると思われるので断定はできない。 Q:なぜ測定対象者は「センターラインをこす位置にいた人」なのか? A:曖昧な人を加えないためや、隣の人につられて気づかずに行く人との区別のため。 Q:地位が高い人がサクラのときに同調した人が多いのはなぜか? A:権力のある人に同調する方が、信号違反という罪を許されるような気がするからでは ないかと思う。 意見等 ◯違反するサクラの数の変化、信号待ちしている人の人数変化によって同調する人の数も 変化するのではないか。 ◯同調する人の地位によって2次的な違反者の数が変化するのではないか。 ◯午前か午後かや信号待ちしている人の職業によっても違反者数に変化があるのではない か。 ◯実験状況を詳しく知りたい。 ⇒実験した時間帯:PM12−1時、2−3時、4−5時 場所:テキサスの都心部の中心、3つの街角、ということしか書かれていない。このこ
とを考えると信号待ちしている人が1人だったとは考えにくいと思う。違反者の地位に ついては書かれていなかった。 この実験の改良点、応用など ◯信号待ちの人1人に対して実験時間を統一して実験を行う。 ◯サクラの人数を変化させてみる、場所を変えてみる、時間を変えてみる、など。
統制条件と遵守条件の間には、有意な差はなかった。
遵守条件(%)
違反条件(%)
統制条件(%)
社会的地位高い
1
14
1
社会的地位低い
0
4
1
統制、遵守の2つの条件より、違反条件で信号無視が起こった。
地位が高そうな人物に見えるときに、著しく違反が多くなっている
Q:よい方に生じる同調には何があるか?よい方、悪い方のどちらの同調が起こりやすい